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1.5話 魔導師ミシェル・ロンド

今回は、1話の補足回。番外編のようなものです。これからも、補足回は○.5話と表記します。

短編にするつもりが、めちゃくちゃ増えてしまいました。飽きずに最後まで読んでやってください。悲しいので。

 私、ミシェル・ロンド ー竹内梨花ー は、いわゆる〝異世界人〟である。

 17年前のある日、塾から家に帰る途中だった私は、地面に突如として出現した、光の穴に落ちた。出ようと必死にもがいていた私の身体は、徐々に傷ついていき、程なくして滅びた。

 魂だけとなり、意識が朦朧とする私に、男の〝声〟のみが語りかける。


 「また身体無しか…。最近の〝召喚者〟は脆くて扱いづらいのぉ…。まぁ我のせいでもあるし、貴様に、ちょうど持て余している人造人間(ホムンクルス)の身体をくれてやる。好きにするといい。ただ、何もしなかった場合、待っているのは完全なる死、のみじゃがな」


 その〝声〟は、邪悪に笑う。

 この時、私は決心した。

 -生きて、強くなって、いつかこいつを、自分を呼び出したこいつを、自分の手で殺してやろうとー


 その意志に答えるかのように、人造人間(ホムンクルス)の核が発光し、変化を始める。

 彼女の〝殺戮の意思〟に沿った形に…。


 「竹内梨花に呪術師(ソーサラー)の素質あり。人造人間(ホムンクルス)との融合により魔導師(ウィザード)への進化に成功、か。これは面白くなってきたな…」


 〝声〟の主 ー自らを〝(マスター)〟と名乗る男がそう呟く。

 そして梨花に、優しく語りかける。


 「そうじゃ、お前に新たな名を授けてやろう。お前は今日から〝ミシェル・ロンド〟と名乗るがいい。その方が色々と、都合がいいからな…」


 こうして私は、竹内梨花の名を捨て〝魔導師(ウィザード)〟ミシェル・ロンドとして、この異世界で生きる事になったのだ。


 …それからちょうど、1年ぐらいが経っただろうか。

 私は、あまり表立った行動はせず、森でひっそりと、奴を殺すためにトレーニングを重ねながら暮らしていた。そんな私に、悲劇が襲いかかる。


 「フハハハハハ、こんな所にとても美しい人造人間(ホムンクルス)女子(おなご)がおるぞ!連れ帰り、我の妃にしようではないか!」


 鷹の顔、人の身体。背中から生える、大きな翼。

 -鷹人族(ガルダノイド)だ。


 私は、抵抗(レジスト)しようと身構えたが、圧倒的な妖気(オーラ)を前に、手も足も出なかった。

 この膨大な妖気、もしかして、噂に聞く〝魔王〟ガルアなのか?


 「…そう。大正解だ。俺の名は〝魔王〟ガルア・ドルスザク。覚えておけ。」


 そう言い放つとともに、魔王ガルアは魔法の詠唱を始める。

  -禁断魔法:精神の檻(スピリットロック)

 自分以外の者への忠誠を一切禁ずる、魔王のみが使用可能な最上位魔法、禁断魔法である。

 ミシェルは抵抗なんてできる筈もなく、魔法陣に囲まれる。その魔方陣はミシェルの心臓に集約し、強烈な痛みを与える。

 呪いをかけられたミシェルは、こうして、魔王ガルアの下に仕える事となった。


 ミシェルは、ガルアのどんな要求にも答えた。ーそれは、ミシェルにとってこの上ない苦痛であった。


 …それを知ってか知らずか、魔王ガルアはミシェルにこう告げた。

 

 「お前にはもう飽きた。つまりは用済みということだ。解放してやるが、タダでは帰さん。とことん(いじ)めてやるわ!」


 そう言って、私の胸に手刀を突き刺す。


  -グチャー


 あぁ、これはきっと、心臓が潰れた音だろう。


 「お前は俺を甘く見過ぎていたようだ。あの世でしっかり悔いるがいい!」


 魔王ガルアはそう叫び、高らかに笑う。

 

 えっと……こいつ、馬鹿なのか?

 まさか、私の身体が人造人間(ホムンクルス)である事を忘れている?

 …まぁいい。少しからかってやろう。


 「何かなさいました?どうもないんですけど…」

 「何!?貴様、人造人間(ホムンクルス)…なのか!?」


 いやいや、あんたが言うてたんやがな。あまりの呆れに、怪しい関西弁が出てしまった。


 「ぐぬぬ…。ならばこれはどうだ!〝老化の呪い(オールド・カース)〟!」


 こんな魔法、いつ使うんだろう?と、疑問に思っていたほどの雑魚魔法を繰り出してきた。

 まぁ、嫌な魔法ではあるけど…


 ーみるみる私の身体は衰え、老婆となり、魔王領土から蹴り出された。

 

 そして私は三日三晩、当てもなく歩き、ようやく先進国〝ナドニウス王国〟にたどり着いた。


 大草原であるアポロン平原を彷徨っていると、中心辺りに見覚えのある顔を見つける。

 どことなく、昔の面影が残る整った顔立ち。私の初恋の人、斎藤和也だ。

 勉強ばかりしていて、周りからは〝キモい〟と言われていたが、私は彼の優しさが大好きだった。ときおり見せる笑顔は、とてもかっこよくて、憧れだった。

 …私は、募る思いを伝えられないまま、この世界に来てしまった。それだけが、心残りだったのだ。


 -まさかこんな所で再開できるなんて…、神様、ありがと♥ ー


 婆さんにそんな事言われても、嬉しくねぇよ、と神は思う。


 「絶対、この気持ちは伝えなきゃ」


 と、ミシェルは意気込む。

 だが、焦りは禁物だ。なにしろ私は今、ヨッボヨボの老婆なのだから。

 徐々に近づく事にし、いつかガルアの封印を解いて、告白しよう。

 

 「もし、そこのお方。」


 -ここから先は、みなさんもご存じでしょう?-






このストーリーは、17年前のお話です。

ナビゲーターが読み上げるはずの進化の情報を、主が読んでいますね。

謎ですね。もうすぐ判明しますので、楽しみにしててください。

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