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7話

2021/7/2 内容の修正を行いました。

 都内。


とある高層マンションの屋上にやってきていた俺は、眼下に広がる街並みを眺めていた。


 何故こんな場所にいるのか。それは "猫の捜索" をする為となる。これが今回の "何でも屋への依頼" 。


猫の捜索といえど依頼は依頼。相談にきた女性の依頼を受けると、早速行動していた。



「さてと、どこにいるのか……ソナー。対象は件の猫」




 スキル ソナーA アクティブ


 魔力の波により対象を探知する。

 ランクにより範囲増加。




 スキル、ソナーを発動すると、脳内で依頼主である女性から教えられた猫の特徴をイメージする。すると、自身を中心として、見えない魔力の波のようなものが広がっていった。


 ソナーのランクはA。その効果範囲は、自身を中心として半径約200m程。


 今回の依頼は、普通に考えれば難易度が高いといえるだろう。猫について分かっていることは特徴くらいなものだ。


 おそらく、猫は都内のどこかにいるとしても、見つかるかどうかは完全に "運次第" 。


 ここで、運といえば、俺の所持するスキルには "運UR" というものがある。




 スキル 運UR パッシブ


 自身が良い方向に向かう確率の上昇。

 ランクにより効果増加。




 パッシブスキルである "運UR" は常時発動されているスキルで、その効果は非常に安定したものだった。


 正確には "UR" の部分も大きいのだろうが、きちんとスキルの性質を理解していれば、どんな場面でも腐ることがないのが何よりの強みだろう。


 しかし、この運のスキルは、世間一般的には "外れスキル" と呼ばれていて、要は使えないスキルとして認知されていた。


 理由としては、まず効果が分かりにくいことが挙げられる。

 

 低ランクでは目に見えた効果も期待できないし、運のスキルは持っているからといって、宝くじの当選確率が上がるわけではない。気になる異性が振り向いてくれる確率が上がるわけでもない。


 都合の良いことに影響を与えるといった意味のスキルではないのだ。


 説明にある "自身が良い方向に向かう確率の上昇" という文言を理解していない者が多かった。


 であれば、今回の俺が猫を助けようとする行動はどうなるのか。



「……見つけた。今回 "も" 運が良かったな」



 これが運のスキルの影響かどうかは正確には分からない。それでも、この依頼を受けた選択は間違ってなかったということは分かった。それで十分だ。



「それじゃあ、早速お迎えに行きますか……ん? スコープ」



 対象である猫の反応は、ソナー範囲ぎりぎりに見える川付近を示していた。


 反応は動いていることから、猫は移動中かと思いきや、移動速度が猫にしては速すぎると思いスキル、スコープを使用すると、案の定、川に流されている猫の姿を視認する。


 慌ててその場へと転移すると、無事猫を救出することに成功した。



「おいおい、俺がこなきゃ死んでたぞ? 後でちゃんと飼い主に感謝しないとな?」



 抱える猫にそう語り掛けると、猫の様子がおかしい。


 猫はかなり衰弱していて、動物にあまり詳しくない俺でも、抱える腕からはその命の灯が消えていくのを感じた。


 急いで病院に向かわないと行けないが……転移可能なのは自身だけだ。猫と一緒では転移が使えない。



「どうする……全力で走れば間に合うか?」



 脚力には自信がある。それでも、今から動物病院を探して間に合うのだろうか。微妙なところだ。


 数多くのスキルを所持しているが、他の者を癒す、回復するようなスキルは持ち合わせていなかった。


 インベントリの中には、DGO内で入手した回復系のアイテムがたくさん入っているが、 "地球で使えるのはスキルのみ" 。アイテムの類はDGO内でしか使えなかった。


 手詰まりな状況に対して事態は一刻を争う。すぐさま手にスキルカードを持つと一言。



「スキルガチャチケット、1枚購入」



 躊躇うことなく100万ゴッドを支払うと、手元にはスキルガチャチケットが出現した。チケットの色は金。頼む、と願いを込めて、スキルチケットを使用した。


 入手スキルは、




 スキル ライフパサーA アクティブ


 自身の生命力を一定量対象に分け与える。

 ランクにより効果増加。




「良くやった相棒! ライフパサー!」




 お目当てのスキルを見事に引いた。相棒の "運UR" には感謝しかない。さっそく腕に抱える猫に向かってライフパサーを発動する。


 生命力とは体力、所謂HPのことだ。俺の生命力が淡い光となって弱った猫へと分け与えられていく。


 猫の最大生命力がそこまで多くなかったからか、ライフパサーによる疲労感のようなものもない。


 猫は次第に元気を取り戻していくと、キョロキョロと驚いた様子でこちらを見つめ、目が合った俺の顔をペロペロと舐め始めた。



「はは。良かったな」



 すっかり元気になった猫のアゴの辺りを撫でてやると、猫は嬉しそうに目を細めた。その様子に、俺は自然と笑みが零れたのだった。






****************************






 猫を抱え、徒歩により自宅に帰ってきた。


 依頼主である女性に連絡を入れると、よほど心配だったのだろう、慌てた様子でやってきた飼い主へと無事に猫を返すことができた。


 女性からは依頼料を受け取ると、今回の依頼もこれで無事完了となる。



「もう逃げ出すなよ?」


「ニャ~」



 飼い主に抱かれる猫のアゴを撫でながらそう言うと、猫は気持ちよさそうに鳴いて返事をしたのだった。






****************************





 

 なんでも屋は攻略サイトと同じで、趣味でやっている仕事。


 こういう仕事があっても面白いんじゃないかと、地球でスキルが使えるようになった2年前から始めた仕事になる。


 営業時間は不定期。俺が不在の場合はポストを利用してもらう形をとっている。


 依頼料については、依頼内容を聞いてからの相談になるけど料金はかなり安く設定していて、基本依頼が達成されてからの後払いとしている。


 依頼失敗の際は代金は貰わない。幸い、現在まで依頼を失敗したことはなかった。


 この仕事は1人でやっているから、従業員がいるわけでもないし、あまり依頼が殺到しても対処に困ってしまうので、店の宣伝等は殆どしていない。


 ここを訪れるお客は、基本的にはDGOの攻略サイトに小さく載っている広告を見つけたか、以前になんでも屋を利用したことがある人物からの紹介といった感じだ。


 今後、あまり客足が多くなるようなら、バイトなり雇うことも検討するが、ただ、なんでも屋として働ける条件を満たしてる人物がそう簡単に見つかるかどうか。


 一瞬、白夜のメンバーが頭に浮かんだが、メンバーは皆忙しい連中である。


 ちなみに、なんでも屋と謳ってはいるが、命の危険がありそうな危険な依頼は普通に断るし、犯罪絡みは完全にお断りだ。


 あまりにしつこい客には依頼を受ける際に料金を前払い、かつ、天文学的な数字のゴッド払いのみにする。


 一度ゴッド払いで話が決まったのに、後からゴッド払いをやめるというのは通用しない。これは拒否と同じ扱いになってペナルティが発生する。


 ペナルティとは全財産の消滅を意味する。


 スキルにゴッドというものが生まれてからは、世の中が滅茶苦茶、カオス化しているかというと、特別そんなことはない。


 前に少し触れたことがあるが、犯罪率は軒並み低下したくらいである。


 これは、神により加えられた、地球での全世界共通の法律 "ワールドペナルティ" が関係してくる。


 このワールドペナルティとは、簡単にいえば "地域ごとのマナーやモラルに則ってスキルを使用しましょう" といったものだ。


 他に迷惑のかかる一方的なスキルの使用は、禁止とまではいかないまでも、ペナルティが発生するようになっている。


 軽いモノでゴッド額の減少。一番重いモノでスキルカードの剥奪。殺人何かは一発でスキルカードの剥奪だ。


 スキルカードが剥奪されれば、スキル使用不可能になり、当然DGOにログインすることも不可能になる。今後ゴッドを入手することも一切出来なくなるわけで、この重すぎるペナルティのおかげで犯罪が激減していた。


 正当防衛のようなスキルの使い方なら問題はないし、これがスキルを使用していない "既存の犯罪への抑止力" にもなっていた。


 この正当防衛も度が過ぎれば当然アウト。この判定は随時神が行ってくれる。判定具合は地域ごとの法令に沿った形だ。


 両者が特別迷惑に感じていなかったり、両者同意の上での決闘のようなものであれば特に問題もないし、新しい喧嘩、戦争の形として、それを安全に行えるようなシステムまで存在していた。


 それが "デュエル" である。


 ゲームでいうPvP。プレイヤーvsプレイヤー。


 これは単体であれ複数であれ、全員が了承するとその場に特殊なフィールドが構築される。フィールドの広さは対象人数により変化する。


 デュエル中は、HPがなくなるとフィールドから強制退場されるというシンプルなもの。

 

 このフィールド内であれば、どんなスキルを使っても良いし、相手を殺してしまうようなこともない。


 フィールド内ではダメージにより多少の痛みはあっても、四肢が欠損するようなことはないし、フィールドから出ればHPも完全に回復されている。


 安全性からスポーツ的側面ももっていて、従来の喧嘩と違い、デユエルは非常に人気であった。今年から正式にオリンピック種目にもなったくらいだ。



「平和なのはいいことだ」



 名の知れたプレイヤーには、様々な手段で各国政府から代表候補としての通知が届いたりもしている。


 俺にも通知が届いているが、攻略作業が遅れそうであるし、そこまで興味もない為、普通に辞退するつもりだ。


 それよりも、明日。もしかしたらDGOで "面白いことが起きるかもしれない" 。俺はそんなことを考えながら、明日に備えて休むことにしたのだった。


次回の投稿はリアルの都合で26日以降になると思います。

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