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4話

スキルインベントリの説明に『パッシブ』を追加しました。


2021/6/13 内容を修正しました。

 早朝。


 目を覚ますと、そこは見慣れない天井……といったこともなく、いつもの見慣れた自室。


 起きて早々にDGOにログイン……もしない。顔を洗うと、毎朝の日課であるランニングの準備を始めた。






****************************






 ランニングから戻ると、シャワーを浴びる。焼き上がったトーストを朝食としながら、TVをつけた。


 TVでは今もなお、DGO関連の話題が多く取り上げられていた。大概は既に知っている情報だが。


 DGO関連にそこまで熱心ではないライトな層も多くはないが存在する。よって、似たような内容でも繰り返し放送されることが多い。


 耳よりな情報があれば儲けもの程度の気持ちでTVを眺める。静かな食事よりTVでもつけてた方が落ち着くというのも理由だが。


 神について。あの神は良い神様だった。というのが、現在の世間一般での評価となっている。


 神がもたらした、ここでは "改変" と呼ぶことにするが、改変は結果的に、善人も悪人も含め、全ての人間を対象として "メリット" の方が遥かに大きかったというわけだ。


 始まりから2年が経とうとしている現在も、当然のように世界ではDGO旋風が吹き荒れていた。


 良い話では、例えば、ちょうど今ニュースでも流れているように、犯罪率の減少等が挙げられる。


 犯罪がゼロになることは流石にあり得ないが、目に見えて減ったのは改変のおかげで間違いない。



「犯罪が減ったのは良いことだな……まぁ "地球では" って補足が必要になるけど」



 TVを消すと、 "DGO" について、改めて情報を整理する。




 DGO 。


 そこはまるでゲームのような世界である。


 地球と似ている部分もあるが、地球とは根本的に異なる別の世界、所謂 "異世界" というやつだ。


 DGOの世界へ行くことは誰でも可能。


 世界に入ることを "ログイン" と呼び、こちらの世界に戻ることを "ログアウト" と呼ぶ。


 DGOへ参加している者達は "プレイヤー" と呼ばれ、現在は老若男女問わず、様々な人がこのプレイヤーだ。


 初回ログイン時には、この世界の仕組みを簡単に説明してくれるガイド的な存在から説明を受けることになる。


 そしてこの時、DGOで過ごす自身の容姿の設定を行うことになる。ここで決定した容姿を "アバター" と呼び、この辺りは、もうそのままゲームのキャラクタークリエイトのようなものだと思ってくれて問題ない。


 容姿、名前、まさかの性別も変更可能だ。決定後のやり直しは不可能だが。


 ログインすると、地球での肉体は "一時的に消滅する" 。消滅といっても慌てることはない。


 自身の肉体は一時的に精神体となり、自身の作成したアバターに統合される。ログアウトをすれば、再び地球にある肉体へと戻り、目を覚ますといった感じだ。


 ログイン中に経過した時間は、ログアウトしても、地球では同じように経過している。


 DGO内ではゴッドを稼ぐことができるから、時給○○ゴッドで、みたいな募集も頻繁に見かける。まるでバイトのようだった。



「実際、バイトと大して変わらないからな」



 この世界には "NPC" と呼ばれる存在もいて、見た目は普通の人間と変わらない。


 NPCは俺たちのことをプレイヤーと知っていて、会話も可能だ。言語は自動翻訳されるし、コミュニケーションをとることに問題もない。


 NPCには "人間以外" の種族も存在している。


おかげでDGO内の街並みなんかは、原始的だったり、機械的だったり、多種多様となっている。この辺りはファンタジー世界そのものだ。旅行気分でログインするプレイヤーも多い。


 そして、ここからが最も重要な要素。


 この世界には "魔物" と呼ばれる生物が多数存在していて、常に危険がつきまとう。


 が、 "死ぬことはない" から、危険ということでもなかったりする。


 この魔物を倒すことで "素材" を獲得できる。


 素材はNPCに売却したり、プレイヤーとトレードを行ったりでゴッドに変えることが可能だ。


 ただし、戦闘で死んだ場合 "所持しているゴッドが半分になる" 。通称 "デスペナ" 。デスペナルティと呼ばれるやつだ。



「ゴッドは預けたりが不可能だから、死亡することに危険はないとしても、デスペナには注意が必要だ」



 デスペナ対策としては、死なないように徹底するか、ゴッドは貯めずに使い切っていくしかない。



「ちなみに俺は、対策は "特にしてない"」



 なくなったらまた貯めればいいだけだ。この辺りは三者三様である。


 何故こんなシステムが存在するのか?


 これについては、正確なことは一切分かっていない。神のみぞ知るというやつだ。


 それでも、このデスペナがあるおかげで、プレイヤーがDGOに "ログインしっぱなし" ということにもなっていなかった。


 これがなければ、地球が過疎ってしまっていたかもしれない。あの神様もちゃんと考えているようだ。多分。良い神様みたいだし。



「当たり前だけど、それでも、一部の連中は入り浸りだけどな。白夜にもいるけど……」



 地球もDGOも偏りなく過ごしている俺とは違い、殆どログアウトすることなく、延々とDGOにログインし続けている "とあるギルドメンバー" の姿を思い浮かべると、少し苦笑いとなった。



「まぁ、人には事情があったりするからな」



 詮索するつもりもない……話を戻そう。


 そんな感じで、DGOでは、基本的に自分より格下の魔物を数多く倒し、入手した素材を売ることが、安全なゴッド稼ぎの方法として知られていた。


 ゲームでいうところの金策というやつだ。


 上記の "格下狩り" は、この世界で最もシンプルかつ "誰でも気軽に" ゴッドを稼ぐ方法だ。



「どんな人間でも、例えば、子供が虫を追いかけて捕まえるように、ゴッドが得られるからな」



 今回は更に分かりやすく、実演してみようと思う。



「さて、DGO説明ツアーの開始だ」



 決して暇なわけではない。本当だ。


 そうして、スキルカードにログインと念じた俺は、DGOの世界へとログインした。






****************************






 白夜城エントランス。



「ん? おぉマスター、おはよう! 今日は珍しく早いじゃないか!」



 前回ログアウトした場所であるギルドホーム "白夜城" へとログインすると、直後に声をかけられる。


 声をかけてきたのは、白夜所属のギルドメンバーである "アレクサンダー・太郎" こと "アレク" だった。Tシャツ短パンというラフな格好をしている。


 名前で、ん?と思った人がいるかもしれないが、本人は大真面目で、アバターにこの名前を付けたらしく、馬鹿にすると激オコになるから注意してくれ。


 アレクは日本好きの外国人。


 先に言っておくと、先程のDGOに入り浸りのメンバーというのはアレクのことではない。


 金髪長身筋骨隆々。だけどイケメン。アレクの見た目はそんな感じだ。


 戦闘にもなれば "パニッシャー" の異名で恐れられている。



「おはよう、アレク。ちょっと野暮用だ」


「こんな朝から用事? 手伝おうか?」



 アレクはいい奴である。。非常にいい奴なんだが……以前、今のようにアレクを連れていって起きた "とある事件" が思い出された。


 あれはひどかった。まさにパニッシャーの異名そのままで……やめようこの話は、震えてきた。



「……いや、大丈夫。大した用事じゃないんだ」



 申し出は嬉しいが、本当に人手が必要なこともない。アレクに大丈夫と返事をすると、白夜城から転移した。






****************************






 到着したのはとある平原。


 ここは"レイヤ平原" と呼ばれる場所で、弱い魔物しか存在しないDGO内では初級という位置づけのエリアになる。


 別名 "始まりの平原" とも呼ばれているこの場所は、DGOのスタート地点でもあった。



「この平原から離れていくほど、魔物は強くなると思ってくれていい。少し歩こうか」



 平原を少し歩いていると "スライム" がいた。名前通りのおなじみの存在である。


 スライムは、小学生でも倒せるくらいの弱い魔物だ。


 問答無用でスライムを "踏みつぶす" と、スライムは消滅した。その場には "グミのようなモノ" を残して。


 これを手に取ると、




 素材 スライムゼリーB 所有権〇〇


 ぷるぷると不思議な感触。

 地域によっては料理の材料に使われる。




 素材名、素材ランク、素材の説明文、それにこの素材の所有権を持つプレイヤーの名前が視界に表示された。



「素材のランクは "B" だな。悪くないランクだけど、所詮スライムゼリー。売っても20ゴッドくらい」



 日本円にして20円である。売却額は素材そのものの価値とランクによって変動する。



「20ゴッドでは駄菓子くらいしか買えないが、柔軟に考えれば、DGOの世界では "子供でも自分で駄菓子を買う資金の調達が行える" ということだな」



 素材の "所有権" 判定について。


 例えば "2人の子供" が一緒に1匹のスライムを倒せば、スライムゼリーは1個ではなく "人数分獲得" できる。所有権がない素材は取ることができない。だから喧嘩になることもないのだ。



「……例外もあるけどな」



 少し先に目を向ければ、無邪気にスライムを追いかける子供達の姿があった。それだけであれば何も問題はなかったが、よくよく様子を見ると、子供達は飢えた獣のような表情でスライムを追い回していた。何あれ、怖い。




「スライムゼリーは食べれるって説明文だったが……食べるつもりなのか? 地域によっては料理の材料……」



 魔界の名物とかだったら危なくないだろうか? 子供の好奇心は侮れない。食べるつもりならやめた方がいいと、声をかけるべきか悩んでいると、



「いやでも……見た目は子供でも、所詮はアバター。中身がおっさんの可能性もあるよな」



 そんなホラーはやめてほしい。ホラーは苦手なんだ。俺は声をかけることをやめると、足早に、次なるエリアへと転移した。






****************************






 次に転移した場所は "サザード砂漠" 。中級エリアだ。


 名前の通り、見渡す限り砂漠である。この辺りから、初見だと死亡する確率がぐっと高くなる。


 砂中に姿を隠した魔物も多く生息していて、常に不意打ちには注意が必要だ。



「この砂漠に来るのも久しぶりだな……」



 久しぶりに砂漠へとやってくると、額からはもう汗が吹き出ていた。かなりの暑さである。


 俺は "インベントリ" から、冷たい果実酒を取り出し口にする。




 スキル インベントリA パッシブ


 生物以外を収納するこが可能

 ランクにより容量増加




 目に見えない、大容量で持ち運び可能な鞄が、このインベントリである。


 インベントリ内のモノはいつでも出し入れ可能で、内部は" 時間が止まっている" 。冷たいものは冷たいまま取り出すといったことが可能だ。


 ランクによって容量が増えるこのスキル。インベントリAだと、今は一番大きいもので "一軒家が丸々収納" されていたりする。びっくりした?


 少し楽になったが、それでもまだ暑いから、本題に入ろう。


 砂漠を歩いていると、サソリ型の大きなハサミを持つ魔物 "デスシザー" が砂中に潜んでいるのを見つける。


 近づくと、デスシザーがこちらに不意打ちを仕掛けようとするが、逆にこちらが不意打ちを行う。


 俺は手に持つ "刀" を一振り。すると、その場には素材である "ハサミ" が落ちていた。




 大きなハサミB 所有権○○


 デスシザーの持つ大きなハサミ。

 主に武器の材料に使われる。




 素材ランクはまたBだった。



「本当ならBランクは割と珍しい方だ。話してなかったが、俺の持つスキル "運UR" はドロップ率にも影響するからな。このハサミは、売れば大体1000ゴッド弱ってとこかな?」


 このデスシザーは、運動が得意な男子高校生が "数人" いれば倒せる魔物といったところか。


 戦闘系スキルでも持っていれば更に楽になる。



「戦闘ではスキルが重要になるけど、もし倒せなかったとしても、いつかは勝てるのがDGOの良いとこだな。ただ、デスペナルティのことは忘れちゃいけない」



 再び歩き始めると、ほどなくして、前方でプレイヤーが戦闘をしているのが見えてきた。


 最近入手したスキル、スコープAを試運転がてらに使用する。




 スキル スコープA アクティブ


 遠くを見ることが出来る。

 ランクにより距離増加。




 すると、複数のデスシザー相手に苦戦している、というか、今にも全滅しそうな少年少女3人組の姿が目に入った。



「……見捨てるのは気分が悪い、か」



 すぐさま助太刀を決めた俺は、転移を発動。


 

「えっ!?」



 いきなり目の前に現れた俺の姿に驚く少女。同時に、その少女を狙った毒針攻撃を代わりに受け流し一閃。デシスザーはハサミへと姿を変えた。









 デスシザーを倒し終えると、足元にはハサミが "12個" ドロップしていた。


 倒したデスシザーは3匹。少年少女3人×デスシザー3匹でハサミ9個。そこに俺が加わって+3個、という計算だな。


 いきなり横やりを入れてしまった形になったが、素材はある程度その戦闘に参加、貢献したと判断されれば、直接とどめを刺した者以外もちゃんと獲得できるようになっている。


 これは支援や直接戦闘以外の行動でも大丈夫だ。


 だから、この少年少女達のように、複数人の "PT" と呼ばれるチームを組んで行動している者も多かった。



「大丈夫か? 急に横から悪かったな。ほら」



 自分に所有権のあるハサミを拾うと、すぐそれを少年少女達に1つずつ渡した。


 一度獲得した後であれば、あげるなりも自由というわけだ。最後に "回復薬" をリーダーらしき少年に渡す。



「あ、ありがとうございます!」



 素材と回復アイテムを受け取った少年からお礼を言われた。


 少年少女達はどこか緊張しているというか、少女達に関してはやたら目がキラキラしている気がする。何だ? 気にしなくて良いとだけ伝えると、俺はその場から転移したのだった。






****************************






 一方、砂漠に残された少年少女達。




「今のって…… "あの" 白夜のギルドマスターだよな? 何でこんなエリアにいたんだろ?」



 少年がそう言うと、仲間の "少女2人" が答える。 



「分かんないけど、絶対にそう!! 何かのイベントかな? でも……かっこよかったなぁ」


「……やばい。俺女だったら惚れてたかも」




「「…………えっ? お(あなた)男だったの!?」」




 仲間の衝撃発言に、この砂漠だけ少し温度が下がった気がした。


少し長くなりました。次回の投稿は明日の予定です。

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