3話
『スキルカード出現』部分を『スキルカードが出現』に、脱字修正しました。
2021/6/13 内容の修正をしました。
日本。
都内にある自室、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと一口。
俺は "あの世界" からログアウトすると、 "元の世界" へと戻ってきていた。あの世界とは、スキルカードによりログイン可能である世界、 "DGO" のことだ。
"DGO" とは。
当初は新世界、裏世界等、様々な呼び方をされていた世界。
政府も正式な名称を決めあぐねていると、ある時期からネットを中心にこの呼び方が定着していった。
ドリーム・ゴッド・オンライン。その頭文字をとった略称が "DGO" である。神=GOD の文字を並べ替えたものでもあった。
まるで何かのMMOのような名前だが、このDGOは、まさにMMOのような "ゲーム" と類似している点が非常に多いのも名前の由来である。
どういうことかといえば、DGOの世界では "死ぬことがない" のだ。
ゲーム世界では、死んでも生き返れるのは良くあることで、中にはキャラクターが消滅するようなゲームもあるが、一般的には前者として知られている。
DGOの世界では、当然のように死んでも生き返ることができる。
他にも、ゲームとしか思えない要素は盛りだくさんであり "あの神" が現れてからは、世の中の常識は変化し、なかなか面白いことにもなっている。
「スキルカード」
そう呟けば、手元には、どこからともなくスキルカードが出現していた。
スキルカードは持ち主の体内に存在していて、自由に出し入れが可能となっている。発声せずとも、念じるだけでも出現させることが可能だ。そして、カードはカードの持ち主しか触れることができない。続けて一言、
「スキルチケット、1枚購入」
すると、今度は手元に "金色のスキルチケット" が現れた。これは100万ゴッドを消費して1枚交換可能である "スキルを入手することのできるチケット" だ。
100万ゴッドは日本円にすると100万円。となれば、このチケットがかなり高価なモノだということが分かるだろうか。
そして、このチケットには銅、銀、金、虹と色がついていて、虹であれば高ランクスキルが確定。金は期待大。銀は普通。銅は低ランク確定といった感じ。
虹のチケットが出る確率はかなり低く、銅のチケットしか見たことがない何てのは良くある話だった。
なので、現在この手に持たれた金色のチケットは、人が見れば大騒ぎとなるレベルである。基本的にチケットの購入は、なるべく人目につかない安全な場所で行うのが常識となっていた。
そんな "貴重" なチケットを、特に "緊張" することもなく使用する。決してダジャレではない。
「チケット使用……使えないこともないだろうけど、外れだな」
スキル スコープA アクティブ
遠くを見ることが出来る。
ランクにより距離増加。
このように、チケットを使うと、同時に視界に入手したスキル名とそのランク、スキル効果の説明が出てくる。スキルのランクが高いほど、そのスキルの効果が高くなるというわけだ。
当然、使用したチケットはその場で消滅する。使用していないチケットには使用期限のようなものはなく、好きなタイミングで使用することが可能だ。
今回はAランクのスキルだった。高ランクではあるが、ここで注意するべきことが。
チケットの色は "あくまでスキルランクが決まるもの" であり、スキル自体が優秀であるとは限らない。ゴミみたいなスキルの高ランクが出てきた、そんなことも良くある話である。
それに、銅チケットから高性能のスキルが低ランクで出るようなこともない。基本的には、優秀なスキルは銀以上のチケットからの出現であり、銅チケットが出た場合は地面を叩くことになるだろう。
既に所持しているスキルが出現することもある。スキル集めはなかなかハードだった。
と、世間ではチケットやスキルについては、もう一般常識になりつつあるが、ここで自身のスキルカードを覗いてみる。
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氏名 〇〇 〇〇 /スキル 運UR,…etc/G 51億3800万
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スキルカードには、所持しているスキルが高ランクのモノから順に記載されるが、俺の場合は所持スキルの数が多すぎて簡略化されていた。
他の所持しているスキルは、カード上ではなく、視界に表示させて確認することが可能だ。
一番初めに、持ち主の適正で選ばれたという、この "運UR" のスキル。
現在では、一般的に出回っているスキルの最大ランクは "SR" で、このSRより、更に珍しいのがこの "UR、ウルトラレア" だ。
SRでさえ所持者が少ない現状、URの話は全く聞かなかった。というか最大ランクはSRというのが常識となっている。
URの存在については公表していないし、公表する気もない。当たり前である。高額の宝くじに当選したとして、それを無暗に公表する者はいないだろう。
「むしろ、事件に巻き込まれるリスクが増えるだけだろうしな」
先程も説明したが、高ランクのスキルは入手困難であるし "スキルを奪うスキル" そんなスキルもあるのだから。
ここからはゴッドの話をしよう。
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氏名 〇〇 〇〇 /スキル 運UR,…etc/G 51億3800万
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カードに記載されているゴッド額は51億以上。日本円にして、51億円以上を所持しているということになる。
このゴッドは税金の対象外ということもあって、まさに大金だ。
そんな大富豪な俺はといえば、現在、都内にあるマンションの一室を借りていた。部屋を見渡せば、普通の2DKである。
「……これで十分なんだよな」
DGO内の、白夜城にある自室同様に、最低限な物しか置かれていない部屋。物欲がないわけではないけど、無駄に散財をすることもなく、こういう形となっていた。
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時刻は深夜。小腹がすいたので、近くのコンビニにへとやってきた。レジに商品を持って行くと、
「ゴッド払いで」
「かしこまりました」
現在はこんな感じである。スキルカードを見せることもなく支払いは完了、入出金でのミスも起きることはない。
コンビニから出ると "スキルを発動" した。
「転移」
スキル 転移SR アクティブ
自身の居場所を、一度訪れたことのある場所へと移す。
ランクにより距離増加。
何と "スキルはDGO内じゃなくても使用可能" なのだ。
移動系スキルに分類される "転移SR" を発動した俺の体は、一瞬で自室のドア前へと移動していた。
スキルは似たものも存在する。転移と似たものだと、テレポート、ワープ等がある。効果にそこまで違いはなかったりするが、似たスキルを所持しているメリット等の話は今はやめておこう。
部屋内に直接の転移ではなく、ドア前に転移したのにも理由がある。
自室のドアには、表札ではなく『なんでも屋 ~御用の際はインターホンを、不在の場合はポストをご利用下さい~』のプレートが。これを裏返し『Close』にすると、部屋へと入る。
俺の日本での職業は "なんでも屋" だ。
説明が多くなってますが、もう少しのご辛抱を。今日はもう一話投稿予定です。