1話
なろう初投稿です。1話は短めとなっています。
薄暗い洞窟。
壁に設置された松明に照らされ、頭部に角を生やした巨大なモンスターが眠るように横たわっていた。ほどなくして、モンスターは角だけを残し、その姿を消滅させる。
俺は地面に落ちている角を拾いあげると、視界には何やら文字が浮かび上がった。
文字には、手にしている角についての簡単な説明文。加えて、素材の価値を示すランクの表示。見れば、この角は "Sランク" ということらしい。
手に持つ角を "インベントリ" へと収め、その場を後にする。
俺の体が一瞬光輝くと、視界は一転。薄暗い洞窟から、滝の流れる音が心地よく響く、どこか涼し気な場所へと移動していた。
周囲をドーナツ状に滝が囲んでいるこの場所の中心には、豪華な城がある。その頭上には、数多の星が美しく流れる夜空が広がっていた。
城を含め、視界に見える一帯全てが "白夜のホームエリア" だ。
城前へとやってきた俺は、躊躇うことなく、その扉を開けた。
「おかえり」
城内に入るとすぐに声をかけてきたのは、赤いセミロングの髪をした女性。ギルドメンバーの1人 "ジュン・ミナミ" である。
「ただいま。ほら、約束の品だ。ちゃんと取ってきたぞ。残りは好きに使ってくれ」
「わお、仕事が早いわね。流石 "マスター" 。ありがとう」
頼まれていた素材を "インベントリ" から取り出し、全て渡すと、笑顔を浮かべたジュンからお礼を言われた。
気にするな、とだけ簡単に返事をすると、ギルドホーム内にある自室へと向かう。
自室。広さはあるが、生活に必要なものは最低限しか置かれていないシンプルな部屋。城が豪華なだけに、この部屋には少し物足りなさを感じるかもしれないが、これが良いんだ。
ギルドホーム全体のデザインや外観、内観の設定は、かなり細かく自由に行える。簡単な作業ではないが。素人目からでも見て分かる豪華な造りをしたこの城の大部分は、先程のジュンによる仕事となっていた。
彼女の本職はデザイナーである。それも、なかなか有名なデザイナーらしい。 "ジュン・ミナミ" という名前も本名だという。この "世界" で本名を使う者は多く、これは特別驚くようなことでもないが。
生憎と、デザイナーについて詳しくない俺は、彼女のことは知らなかった。調べれば分かると言われたが、特に調べることはせず、現在に至る。
「……もうすぐ2年、か」
ギルド "白夜" を作ってから、間もなく2年が経とうとしていた。そして "世界が変わった" のも、また2年ほど前の話。
今日はこれで休むことに決めると、その旨をギルドメンバーに伝えた俺は、この世界から "ログアウト" したのだった。
2話目も連続で投稿します。