1 プロローグ
アースフロンティア。
俺が40歳独身で趣味と言えばゲームしかなく毎日せっせと遊んでいるVRMMORPGだ。
基本無料っていいよな。
課金を否定しないが、俺みたいなオッサンは無課金にそそられてしまう。
このゲームは勇者になるも鍛冶師になるも、商人や料理人、遊び人などほとんどの職種になれるのが魅力的だ。
ただ簡単になれる訳でもなく、最上位職種は上位職種を5職種、上位職種は普通職種を3職種をレベル150まで上げないと出来ない。
俺は賢者になりたかった。
賢者は最上位職種の一つだ、そのため今は魔導士になるために普通職種3つレベルアップしている。
魔法使いと精霊使いはレベル150になったので今は残りのムンクをせっせとレベルアップしている。
戦闘系の上位職種である聖騎士は戦士と騎士とモンク。
同じ様に上位職種である狂戦士は盗賊と格闘家とモンク。
回復系の上位職種であるビショップは司祭はシャーマンとモンク。
とレベル150に上げた職種が戦士と騎士、盗賊と格闘家、司祭はシャーマン、魔法使いと精霊使い。
モンクを上げれば上位職種4つに手がかかる。
そういう意味から俺は毎深夜遊んでいるわけだ。
俺はいつものようにゲーム内の自分達のギルドスベース「ハゲ頭の脳筋」にログインした。
「よう、ハゲルドのオッサン来たか」
「ごめん、ちょっと遅かったかな、チョビン」
パーティーメンバーであるハゲ頭のアーチャー、チョビンだった。
俺がギルマスをやってる「ハゲ頭の脳筋」は全員ハゲてるオッサンだ、まあハゲ頭のおねーちゃんがいるわけないしな。
「アマルドはまだ来てないか?」
「いつものように遅刻してるよ、寝てんじゃねーか」
「半蔵は?」
「最近遊びに来ないな、仕事溜まってんじゃねーの」
「かもな」
うちのギルドは8人、ほとんどが社会人だ。
最年長は自称72歳のツネゾーだった。
ゲーム上の年齢なんてテキトーだしな、俺が40歳を31歳に誤魔化してるし。
あ、誰かログインして来た。
「あ、リーダーいたじゃん」
「どうせ毎晩来るよ、ハゲリーダー」
こいつら相変わらず口悪いよな。
「おう、ハゲマナとヒゲミナ、久しぶりで口わりーぞ」
「うるせーぞ、ハゲマス、俺はマナトスだ」
「そうだ、俺もミナオだ、ハゲ」
「あー今日はダンジョン行ってもフォローしたくねーな」
「「げっ」」
「なんだよ、いつも笑ってるじゃん、悪かったよ」
マナトスとミナオがシュンとしている。
「はははは、嘘だよ」
「「このハゲヤロー」」
「うるさいよ、さて、アマルド来ないから出るか?」
「そうだな、リーダー」
俺はチョビン達に確認した。
「大丈夫だ、アイテムも十分だな」
「おう、行けるぜ」
「マナトスとミナオはまだレベル低いからアルザス大渓谷にするか?」
「それがいいと思うよ」
チョビンは頷いている。
「えー、またそこかよ」
とマナトス。
「ま、しょうがないよ、まだレベル50だし」
とミナオ。
俺とチョビンはベテランだが、マナトスとミナオは始めてまだ半年だからな。
俺達はギルドスペースを出て、ゲートを使いアルザス大渓谷に向かった。
アルザス大渓谷は山や谷の間に森林がある所で、出てくるモンスターはレベル20から50。
ほとんどがグレーウルフやリトルラビット、ワイルドベアやワイルドボア、レッドサーペントにビッククラブなどが出る。
レベル122、モンクの俺やレベル135、アーチャーのチョビンは余裕だが。
レベル50、戦士のマナトスとレベル50、魔法使いのミナオはキツイ。
「ほら、マナトス、ミナオ、俺が挑発してる間に仕留めろよ」
俺がグレーウルフの群れを挑発し、チョビンが弱めている。
マナトスは俺の影から仕留めており、ミナオはアイスカッターで頭を切断した。
「はい、これで10頭終了だな」
マナトスとミナオはゼエゼエしている。
俺は仕留めたグレーウルフをインベントリに入れる。
今日はリトルラビットが15匹、グレーウルフが10匹、ワイルドボアが5匹、ビッグクラブが12匹だった。
「チョビン、もう少しやるかい?」
「そうだな、彼らのレベルを1つぐらいあげようか」
「えー、まだやんのかよ、明日テストあんのに」
とマナトスが文句を言った。
「お前、社会人って言ってなかったか?」
「ち、ちげーよ、テスト作るんだよ」
「はあー、先生か、お前」
「そ、そうだよ」
「多いんだよなー、深夜ゲームやる先生って」
俺は頷きながら呟く。
「そうなの?」
ミナオが俺を見ている。
「ああ、俺の友達な先生なんだけど、未だにやってるよ、Hゲーム」
「「ええー」」
「なんだよ、Hゲームだけだよ、別に犯罪してないぞ」
「いや、別に・・・・ちなみに高校?」
「あ、そうだけど」
チョビンは笑ってるけど、マナトスとミナオは引き攣ってるな。
「まあ、それなら今日は戻るか」
「そうだな」
俺達が戻ろうと考えている時。
一瞬VRの画面が歪んだ様に見え、いきなり地面が揺れた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
渓谷にいるため、両側から巨大な岩が落ちてくる。
地面はいまだに揺れたままだ。
俺は3人がいる真ん中で防御魔法を掛けた。
単純な物理攻撃では問題ない、しかし地震は未だに止まらず、立って入れない。
マナトスとミナオは泣いて騒いでいる。
チョビンは冷静だが、青ざめていた。
次の瞬間、足元が割れた。
多分、俺は気絶していたんだろう。
メニューを開くと時間が深夜3時13分だった。
1時間ほど気絶してたか。
上を見ると10mほど落ちていたと思う、自分はモンクのため常に身体強化になってる。
レベルも高いのでケガはなかった。
俺はすぐにパーティーを探すことにした。
「チョビン!マナトス!ミナオ!」
俺が声をかけるが静かなままだ。
場合によっては死んで、デスペナルティをくったか。
しかし、VRMMORPGで地震で亡くなってデスペナルティなんて最悪な運営だな。
文句言ってやる。
その前に確認するか、と探索スキルを使用した。
俺の周囲10mいないに青いポイント出ていた、大丈夫だ生きている。
俺の後ろに1人、右側に2人がいた。
3mほどにいる後ろの方から助けに向かう。
床が割れて空洞化している、大きな岩や砂利状態で歩きづらい。
ようやく届いてみると、20歳前後の女性だった。
俺は気絶していると思われる女性を見て茫然自失となってしまった。
この美人なお姉さんは誰だ?
革鎧とミスリル製の鎧を着て、ミスリル製のクロスボウが横に置いてある。
「チョビン?」
俺は彼女を揺らしながら起こす。
数回起こしたところ、彼女は目を覚まし俺を見た。
「誰?」
いや、俺も誰だと思うよ。
「君はチョビンか」
「ああ、そうだって、声が、声が女の声に戻ってる」
「君、女性だよな」
「・・・はい」
「スキンヘッドでチョビ髭だったチョビンは女だったのか」
彼女は俺を見ながら聞く。
「それであなたがハゲルドさんか?全然似てないぞ」
うん?俺は手鏡を出して自分の顔を見た。
「あれ?俺の顔だ」
ふさふさの栗色の髪とたれ目の俺がいた。
俺はそのまま彼女に手鏡を渡す。
「えー!なんでチョビンじゃない」
あの飲み過ぎで声がダミ声だったチョビンがコロコロした綺麗な声に変わってる。
よく見ると彼女に覚えがあった。
「君、お天気キャスターだった高階こよりさん?」
俺が聞くと彼女は手で顔を隠した。
いや、その反応でバレるよ。
そういや彼女がTVに出なくなった時期とゲームで遊び始めた時期が合うなあ。
「取り敢えず他の2人を探そう、別に君はログアウトしても構わないけど」
「いえ、仲間ですから」
俺は探査スキルで引き続き探すことにした、彼女も後ろで付いて行く。
2人はまだ動いていない、未だに気絶しているのか。
「マナトス!ミナオ!大丈夫か!」
俺の声に気付いたのか、彼が答えた。
「来ないでぇー」
どう聞こえても女の子の声だった。
「あー、もしかして君たち2人とも女か」
・・・・・・・・・
「まって、でもしょうがないからそっちに行くぞ」
「いえ、行きます」
岩の後ろから2人が出て来た、これは双子か?
見た感じ中学生か高校生だな。
彼女達は俺を見てビクっとし、高階さんを見てびっくりし笑い出す。
「なんだー、オッサンはハゲルドだけやん」
「チョビンさんもネナベだったんだ」
確かにな、しかし8人のうち3人はネナベかよ。
「しかし、オッサンハゲてないしな」
「うっさい、マナトス。ハゲでなくて悪いか!!」
「いんや、あたしも騙してるしな」
「しかしなんだ、今までのあの男声は。君ら普通にかわいい声じゃんか」
「今はネットゲームでネカマやネナベで声の設定が出来るんですー」
「そうか、まあキャラはやりたい放題だしな」
きゃあーきゃあーうるさいのー、このチビガキども。
「高階さん、取り敢えず今日はログアウトしましょうか、詳しい話は多分運営から出るでしょう」
彼女は自分のメニューを見て呆然としている。
「ハゲルドさん、ログアウトが押せません」
俺は急いで自分のメニューを確認する、いつもの場所のログイン、ログアウトが暗くなっている。
俺はみんな見る、全員ログアウトが使えないのを確認したのだろう。
言葉もせず俺達はゲートに向かった。