召喚された理由
「勇者様!勇者様!」
女性の声に目を覚ます、そこにはゲームなどで見る城内部。前方には一緒に来たであろう中学生達、綺麗なドレスを着た少女、俺達の周りを囲む黒いローブを着た怪しい人達。
そして城内部奥の王座に座る派手な衣服を着た男性と女性。
「よくぞ来てくださいました!勇者様!」
「おぉ!成功したぞ!」
成功だ、成功だと周りは喜んでいるようだ。
「まずは、状況を説明してもらいたいんだが」
このままでは、ずっと言っていそうなので、俺が話を切り出す。
「はっ!?も、申し訳ありません!」
それでは、とドレスを着た少女が話を始める。
「私はリースホルン国姫、クレア・リースと申します。」
リースホルン国?聞いたことない国だ、そんな国この地球にあったか?
「皆様は、こう思われてるはずです。ここは何処だ。と」
「そ、そうだ!ここは何処なんだ!お前らは誰だ!」
今まで状況を把握しきれていなかった中学生達も喋れるくらいには回復したらしい。
「どうかお怒りをお納めください。ここはリースホルン国、皆様方、勇者様とは別の世界になります。」
「待て、その勇者ってなんだ?」
と、俺が問う。
「はい、勇者とは、別世界の選ばれし5名の人間の事です、そして我々リースホルン国が別世界からお呼びしました、世界の敵、魔王を倒していただきたいのです!!」
別世界とか勇者とか魔王とか、おとぎ話のようだ、現実味がないが、夢でも見てるようだ。
「6人よ」
「え?」
ロングヘアーの少女が言う。
「だから、5人では無く6人よ」
みんなが俺をみて沈黙する。
とりあえず、この沈黙を打破するため自己紹介をしよう。
「暁月 孝一、23歳 独身です。」
「ブハッ」と無表情の娘が吹き出す。
「うそ… どうして…」などど姫様が顔色を青くして言っている。
話を聞くに、別世界から来る勇者は5人、それがなぜか6人目の俺も一緒に召喚されている、そんなバカなー、という状況。
そう、これはつまりあれだ、巻き込まれた。っというやつだ。
ひとまず、俺の事は置かれ、中学生達の自己紹介をした。
刈り上げ少年が、東 拓也
爽やかイケメンが、 赤城 翔平
八重歯ツインテールが、 遠坂 美由
ロングヘアー少女が、 霊峰 雪
無口無表情少女が、小鳥遊 ミノ
と、みんな自己紹介が終わると俺の話しへと戻る。
さて、次は俺の自己紹介だな。
「俺は、暁月 孝一 23歳 独身だ」
「さっき、聞いたわ。最後の独身ってとこ必要かしら?」
「ブハッ」
くっ!ロングヘアー少女こと霊峰 雪、なかなかに棘がある。
高校時代の友達は結婚結婚って、早過ぎるだろ、去年はほとんどが結婚式に行った記憶しかないんだぞ。
ともあれ、自己紹介が済んだのなら、勇者でもない、俺はどうすればいいのか。
「いえ、まだ勇者ではないと、決まったわけではありません」
「どういう事だ?」
「皆様、手を前に出して「ステータス」と、唱えてください。」
言われた通り、手を前に出してステータスと唱える、そうすると、掌に半透明のウィンドウが現れる。
周りを見ると、中学生達も目を見開きステータスを、まじまじと見ている。
「皆様のステータスには、[体力][攻撃力][素早さ][防御力][魔力]と、表示されている項目があるはずです。」
ステータスに目を戻す。
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ステータス
暁月 孝一[アカツキ コウイチ]
23歳
独身
Lv1
[体力] 100/100
[魔力] 200/200
[攻撃力]150
[防御力]200
[素早さ]350
[スキル]
・言語理解
・鑑定
[属性]
・空間
[神器]
・不明
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すごい、俺の個人情報らしきものがうつっている、特に独身ってところが輝いてみえる。
体力やら攻撃力やら高いのか低いのかよくわからない。
「ステータスですが、一般的な人間はLv1平均50です。そして、現在最強のお方は、全ステータス1000超えにして、ドラグーンのララ・クーラ様です。」
50が平均って…俺は強いって事か?
「質問いいかな?」
「はい、翔平様」
「さっき、ステータス見合ったんだけど、みんな全ステータス900超えなんだけどさ」
900超え!?なにそのチート!?
俺なんて最高でも300なのに、全員900超えてんの!?
「900超え!?Lv1で全ステータス900超えなんて!素晴らしいです!!」
周りからも驚きの声が聞こえる。
「おぉ!素晴らしい!これなら成長すれば魔王も倒せるかもしれん!!」
「そうですね!あなた!」
今まで座っていただけと2人が歓喜の声をあげる
「待ってください、僕だちはまだ、魔王を倒しに協力するとは一言もいっていません。」
「な!?」
翔平がばっさりと言い切る。
「お、おおお待ちください、勇者様!そそ、それは何故です!?」
「ひとつ、僕たちは魔王について何も知りません。ひとつ、僕たちは本当に魔王と戦うべきなのか。」
ほう、この爽やかイケメン、顔的に正義感だけが強い奴と思ったが、以外と冷静だ。
「私たちを見捨てると言うのですか!?」
「ちょっと待ちなさいよ」
今まで黙っていた、八重歯ツインテールこと、遠坂美由。
「さっきから黙って聞いてれば、魔王を倒せ?私たちを見捨てる?
あんたたちの勝手で無理やり連れて来られたのに、私たちがあんたたちを助ける義理なんてないんだけど。」
「で、ですからそれは先ほど…」
「謝ったから?大好きな家族、大事な友達から引き離されて謝って済む問題なの?ねぇ?」
確かにごもっともだ、別れも言えずに無理やり連れて来られたんだ、それをごめんなさいで済む話ではない。
「帰る方法はあるのか?」
俺が聞くと姫さんは少し動揺をみせた。
「あ、あります。魔王が帰還魔法を知っています。」
「あなた、そんな見え見えの嘘で押し通せるとでも?」
綺麗な長い髪を手でなびかせながら霊峰 雪は姫様を睨む。
「ほ、ほんとうです…」
姫様は顔を真っ青にしている、もう弁解の余地はないだろう。
「申し訳ないが僕たちはあなたたちを助ける事は出来ない。」