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見学

気が付くと時刻は9時。

あの後、結局クラシックを聞きながら寝ちまってたのか……

しかし、腹減ったな。

ここでアタシは気が付いた。

この世界にはサラダしかないのだ。


「そんなんじゃ満たされねっつの」


アタシは街に出て、一旦元の世界に戻ることにした。

カップラーメンを買ってこの部屋に持ち込もうと思ったのだ。

早速街に出てゲートに向かう。

時刻は夜だが、外には街灯がついているため、出歩けないことはない。


「くっ、狭すぎだろ!」


アタシは何とかゲートをくぐり、元の世界にやって来た。

コンビニに向かい、カップラーメンを大量に購入し、またゲートをくぐる。


寮に戻ってくると、カップラーメンを一つ取って、食堂に向かう。


「あのお、お湯ってありますか?」


すると、食堂で働くおばちゃんエルフがお湯を沸かしてくれたので、それを注ぐ。

アタシは今日、玉ねぎのサラダしか食べてなかったので、めちゃくちゃ腹が減っていた。


「うめえーーーーっ」


そう言いながらズルズルすすっていると、他のエルフたちが顔をしかめながらこちらを見る。

ん?なんか文句あんのか?

好きなもん食って何が悪い。


そして、部屋に戻って爆睡した。






翌日、目が覚めた。

そういや、今日はノダメの指揮を見学に行くんだったな。

部屋で準備していると、コンコンとノックする音が聞こえた。


「ん?」


「僕だ。起きてるかい?」


「ああ、チアキかよ。入っていいぜ」


すると、チアキがギイと中に入って来た。

そして勢いよく扉を閉める。


「な、なんで服を着てないんだっ!」


ああ、そういや上半身裸だったわ。

あいつ、結構ウブなのか。


「わりーわりー、今着替えっから」


数分後、静かに扉が開き、ゆっくりとチアキが中に入って来た。


「君は心臓に悪いよ……まだここのことを知らないだろ?だから僕が案内してあげようと思って来たんだよ」


「へえー、チアキってやさしーじゃん!案内してくれよ」






こうして、2人でコンサートホールに向かう運びになった。

コンサートホールに向かう途中で聞かれた。


「ところでファング、昨日は何食べてたんだい?」


「ん?カップラーメンだけど?」


「カップ……?君のこと、ちょっとウワサになってるんだよ。まるで魔物の死体みたいな匂いのするものをズルズルすすりながら食べてたって」


「はあ?そんな匂いしねーよ。今度一個分けてやっから食ってみろよ」


しかし、引きつった表情で、あはは、と言っただけだった。

エルフには分かんねーかなあ。

でも一回食べたらぜってーはまるのによ。






コンサートホールに到着すると、すでに団員が揃っていて、各自で音出しを行っていた。


「ファング、全体が見渡せるように2階席から見学しよう」


そう言われ、アタシたちは2階席に向かった。

アタシはライブハウスしか知らなかったから、こういうホールは初めて見たけど、なんというか、学校の舞台をめっちゃ華やかにした感じだなと思った。

椅子に座って待ってると、チアキが説明してくれた。


「いろんな楽器があるだろ?手前左から、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ビオラ、チェロ。奥側左から、ハープ、打楽器、真ん中に木管楽器がいくつかあって、ホルン、コントラバスだ」


「ふーん、よくわかんね」


「……」


そうこうしている内に、ノダメがやって来た。


「おっ!来たぜ」


会場が静かになり、ノダメが打ち合わせを始める。


「今日から早速音楽祭の課題曲の練習に取り組んでいきたいと思います。楽譜は事前に配っているので大丈夫でしょう。もらってないという方はいませんね?では、始めましょう」


そういうと、ノダメがタクトを構えた。

前に見せてもらったタクトだ。

空気が静まり返り、ノダメがそのタクトを操ると、静かに曲が始まった。


「おお、ノダメかっけーじゃん!」


普段はさえない爺さん風なのに、スーツに着替えてあの場に立つと、すげえ人に見えるから不思議だ。

実際すげー人なんだろうけど。


「そういや、演奏中は魔法が飛び交うんじゃなかったのか?」


「まあこれは音合わせだからね。魔力を使うのも集中力がいるから、指揮者がイメージしておいて、実際にやるのはリハと本番の時くらいかな」


「なんだよ。それを見たかったのによー」


ノダメが演奏を止めて、細かい所の修正を行っている。


「ヴァイオリン!この小節はもっと情緒的に!」


全く注文の意味が分からん。

ヴァイオリンも大変だな。


20分くらい見てたら退屈してしまった。


「チアキ、ちょっと外行かね?飽きちまったよ」


「えっ、君も指揮するんだろ?もっと見といた方がいいんじゃ?」


「へーきへーき、アタシ、アドリブは結構きくんだわ」


ちょっとだけオケを見学して、アタシたちは街を見に外へ出て行った。


瞬く間に時は過ぎ、とうとうアタシが指揮をとる日がやって来た……

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