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プレリュード

アタシの名前は倉闇牙(くらやみきば)

年は20。

アタシには両親も兄弟もいない。

赤ちゃんポストに投機されていたらしく、そこに名札が置いてあったらしい。


キラキラネームを残して、両親はどっかに行きやがった。

こんな名前を付けた両親だ、ロクなもんじゃねえだろ。

だからアタシははなっから探すつもりもなかった。

孤児院で育って、学校にもちゃんと通ってた。

でも、そっから非行に走って、中学から通うのをやめちまった。

だからアタシは小卒だ。


その内孤児院を追い出された。

さすがに生きていけないから、飲食店の皿洗いとか、バイトを始めた。

それでどうにか生活していけるようになったら、非行に走ってる暇もなく、気づいたらいっぱしのフリーターになってた。


住まいは都内で、家賃は3万の木造クソアパートに住んでる。

トイレは水洗じゃねーし、洗濯機を置く場所もねえ。

でも、アタシの給料じゃ、せいぜいこんなとこにしか住めない。


こんなとこに一人でいたら、マジで気分が滅入る。

友達も彼氏もいねー。

彼氏はいたことあったけど、アタシのがさつな性格に耐えられなくなって、みんなかわいい系に乗り換えやがる。

ふざけんな。


そんで、つまんねーからギターを始めた。

少しでも他人と関わりたいから、路上で演奏するようになった。

仕事から帰って、夕方6時くらいから支度を始め、家から電車で20分の思いっきり都心に向かう。

人が多い方がやる気が出る性質なんだ、アタシは。


ギター1本で弾き語りをやってるんだけど、まあそこそこ人は集まる。

しかし、屈辱的なことに、アタシのオリジナルソングはどうもウケが悪いらしい。

ヒットソングで客を集めた後、このオリジナルをやるとみんな眉間にしわを寄せやがる。


演奏後、話しかけてくるやつの中にはこういう意見を言ってくるのが多い。


「ちょっと、憂鬱な気分になるんだよな。もっと明るい曲がウケるんじゃない?」


アタシにそんな曲は作れん。

作れるのは、孤独とか、絶望とか、マイナスの感情を表した曲だけだ。






その日も、いつもみたくギターの演奏を路上でやってたら、あるジジイが最後まで残って見ていた。

特徴としては、ちょっと耳がとんがってる。

そして、演奏後そのジジイが話しかけてきた。


「いい曲をやりますね。いかにも魔族が喜びそうな曲だ」


魔族が喜びそうとは。

喧嘩売ってやがるなこいつ。


「爺さん、ケガしたくないなら早く帰った方がいいぜ」


すると、ジジイは予想外のことを口にしてきた。


「あなたに我がオーケストラで、ギターソロのパートで参加してもらいたい」


「オーケストラ?」


アタシは一瞬わけが分からなかった。

メジャーデビューの誘いじゃないよな?

だったら喜んで受けるけど、なんでオーケストラ?


「どういうことか説明してくれよ」


「では、あなたの家に行って詳細を説明しましょう。他人に聞かれたらマズい内容もありますので」


なぜかジジイを家に招待することになってしまった。






帰り道、何度も質問したが、ここで話すのはマズいので、の一点張りだ。

家に到着し、中に入ってもらう。

客人を入れるのは初めてだから、何をどうもてなしたらいいのか分からず、とりあえずペットボトルのお茶をコップに入れて出した。


「お茶は、うちの世界の方がうまいですな」


そりゃあ、オーケストラをやってるくらいのやつなら、最高のお茶っ葉で飲むんだろうよ。


「じゃあ、早速教えてくれよ。アタシは何を手伝ったらいいんだ?ギャラは?」


「では、改めて。私の名前はノダム・メイソン。種族はエルフ。この人間世界にギターの奏者を探しにやってきました」


「は?」


全く意味が分からない。


「ちょっとお湯沸かしてくるわ。あんたにぶっかける用の」


「まあ慌てなさるな」


そう言って、ノダメは詳細な内容を説明して来た。


どうやらこのジジイ、話を鵜呑みにするなら、エルフとか魔族がいる世界からやって来たらしい。

その魔族との休戦協定を結んだ際に、それを記念して毎年行われる音楽祭にアタシを招きたいとのことだ。


魔族は陰鬱な曲を好む。

だから、それに合わせた曲を弾くのだそうだが、オーケストラの演奏の間にギターソロのパートがプログラムに組み込まれていて、それを担当したエルフがあろうことか、明るい曲を弾いちまった。

そんで、そいつは魔族の怒りにふれてぶっ殺されたらしい。


魔族は次にもし、最高の弾き手を準備しなかったら、和平条約を破棄するとまで言い出した。

そんで、こっちの世界まで来たんだと。


「ほんとにそんな世界あんのか?証拠は?」


すると、ノダメはカバンをまさぐり始めた。



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