『雨原 連 2』
造がリボンの束と竹刀を持って玄関まで行ったものの、そこでピタリと足を止めた。
「造?」
「どうせなら、派手にぶち壊すかな……」
その呟きは、やはり嫌な予感しかしなかった。
何をしだすのかと思いきや、まず壁際に立った。コンコンとノックの要領で壁を叩いていく。
冷や汗が頬を伝うのを感じた。
「ここ……借家って知ってる……?」
返事のように他とは違う軽い音が鳴った。
「もちろんっ♪」
その言葉とは裏腹に、造は竹刀を振り上げていた。
そういえば――造って昔剣道やってたんだっけ……?
一瞬にして、造を止められるなんて甘い考えは消え失せていた。
「せーのっ!」
竹刀がこつんと壁にぶつけられた次の瞬間、僅かに軌跡のような光が見え、粉々に崩れた。不思議なことに、瓦礫の断面は真っ直ぐキレイに整っている。
見事に壁を破壊し、二つの部屋を繋ぐ道が完成したことで、造はドヤ顔で無い胸を張っていた。
――でも、いくらなんでもこの壁脆すぎないか?
「盗み聞きはよくないわよ?ネズミさん」
ニコニコと微笑みながらカッターナイフを手にする晴河と、縄で手を縛られた、包帯を巻く少年の姿が視界に入った。
「やっぱり人殺しだったわけね……晴河栞!」
造は竹刀を片手に仁王立ちになる。
先ほど用意していたリボンは腕に二つほど結んである。
「雲月ちゃん……これは私の使命なのよ?口を挟まないでくれないかしら」
聞く耳を持たないと言うように造は鼻で笑った。
「断る!あたしは人殺しなんか認めないんだから!」
晴河は近くにあった分厚い本を拾い上げ、宙に放る。カッターの刃先が煌めき、幾重にも直線を描く。その直線をなぞるかのように、本には亀裂が入り、バラバラに破れてしまった。
――晴河の『きる』能力、もしかして鎖以外にも使えるということか?
凶器同然のカッターの刃が、造に向けられる。
「警告よ。今すぐ出ていきなさい」
「嫌よ」
造は即答していた。まるで怯みもせず、晴河に向かってただ悠然と構えていた。
二人共、方向性は違えど、確固な意思がある。だからこそ引き下がることはない。
「皮肉よね……使命はぶつかるようにできてるんだもの」
「『つくる』と『きる』……確かに相成れないけど、つくられたものが壊されるのは普通だと思う……」
造の声は微かに震え、怯えているようにも見えた。
「――でも!それは最後の最後であるべきだよ!」
晴河は造の思いが詰まった言葉にも、顔色一つ変わらなかった。
「それとこれは別だと思うわ」
……僕は自分の使命がわからないけれど、少なくともこんな強い思いがある造とは対立したくない。
「大切な人から受けた使命を、他人に邪魔されるのは心外だわ」
晴河の表情が真剣そのものに変わる。造が悔しそうに歯を食い縛っているのがわかった。
「そこまで言うなら……あたしは力ずくであんたを止める」
「やってみなさい。お嬢さん」
僕は対峙する二人の間には入り込めず、取り残されていた。
――まあ、あっちよりは事情通だけど。
捕らえられた少年――シュウはさっきから茫然としたままだ。
まもなく乱闘を繰り広げられるだろうこの二つの部屋で、無知な被害者が巻き込まれるかもしれない。そんな恐怖が胸を締め付ける。
だが、二つの部屋が完全に統合されているわけではないので、悪魔が睨み合う穴からしか向こう側には行けない。
――どうしたら……!
周りを見渡し、シュウを晴河から救い出す方法を探す。
ポケットにはいつもの鋏があり、僕も『きる』能力を使うことができる。でも、それだけじゃダメだ。それだけだと襲われるだけだ。
キョロキョロと周囲を確認する。
ふと、床に落ちていたシーツに目が止まる。多少汚れがついていたから取り替えようとしていたのかもしれない。
シーツ拾い上げ、壁から距離をとった。 深く息を吸い、軽く体を動かす。
造も晴河も僕の様子までは意識を向けるヒマはないようだ。
――今なら問題ないはずだ。お互いがお互いから目を離せないわけだから。
「よし……!」
鋏を二、三度振るうだけで壁は意図も簡単に壊れてしまった。間髪入れずに部屋の中へと飛び込む。
晴河が侵入へと気づき、こちらへ走ってくる。予想通りの行動。対処として、晴河の頭へからバサリとシーツをかけた。
「っ……!」
驚いた表情ごとシーツに隠された晴河に向かって、造は竹刀を下ろした。
造が晴河を足止めしてくれるうちに、僕はシュウの縄を解く作業に移る。
「早く逃げよう」
ほどけたのを確認すると、腕を掴んで玄関へと目指す。だが、その手を勢いよく振り払われた。
シュウが僕を真っ向から見つめる。
「置いてっていいのか?」
「足手まといになるだけだよ」
――ビリッ
布が裂ける音が響き、晴河がシーツを投げ捨てる。
邪魔されたのが気に食わなかったのか、強く睨まれる。
スカートの陰からカッターを取り出し、投擲するため構えた。
少しでも離れようと急いでシュウを連れ出すが、ドアノブを掴もうとした瞬間、首の横をカッターがすり抜けた。扉にガツンと刺さる。
ガクンとシュウの力が抜け、その場に倒れこんでしまう。
どうやら投げられたカッターが、偶然にもシュウの足についた命の鎖を切っていたようだ。
呼吸が止まるどころか、心臓が動いていなかった。人工呼吸を試しみるも、一向に効果は現れない。
「ほら雲月ちゃん、他の子が死んじゃったわよ?」
「最初から狙ってたくせに……卑怯者!」
造がやけくそ気味に竹刀を振るい、晴河はそれを全て受け止める。
引き離すかのようにカッターを持つ手を振るわれ、慌てて造は後ずさった。
「もう……生き返らないのか……?」
自分でも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「無駄よ。命の鎖は魂と身体を繋ぐ唯一無二のもの……魂が還ることはないわ……」
晴河の説明を聞き、僅かな可能性が見えた。つまり、鎖を管理する能力なら助けられるかもしれない。
顔を上げ、造に潤む瞳を向ける。
「……造、なんとかできないのか?」
暗い表情のまま造が首を振った。
「あたしは『つくる』だけ。壊れたものを戻すことはできないの……」
絶望という二文字だけが頭に浮かぶ。
「そんな……」
「ごめんね」
――僕は思いを伝えることも、本当のことも言えないままなんて!
自分の無力さを噛み締める中、ふと、覚えのない記憶が頭を過った。
☆☆☆
子供の頃のことで、確か……
ヨウがお母さんに殺されかけた日のこと。
切れないはずの命の鎖が、偶然にも千切れた時だ。
大事な親友を助けたくて、何度も何度も名前を呼び続けた。
それで――
『こやつを救いたいならば、我と契約せんか?』
突然、どこからともなく、紫色の着物を身に纏った、小学生くらいの幽霊が目の前に現れたんだ。
もちろん僕は了承した。契約の意味を考える時間さえ惜しまれるほど、焦っていたんだ。
『お主は名をなんという?』
見た目に似合わず古風な口調で幽霊は問う。
「雨原連」
『そうか、お主は連というのか』
幽霊は楽しげに笑った。まるで宝物を探しだしたかのように、実にキラキラとした瞳で。
『お主には管理者として、『つなぐ』使命を与えるぞ』
「つな……ぐ……?」
子供の僕はまだあんまり言葉を知らなくて、幽霊に質問したんだっけ。
『切れた鎖の端を何かでくっつけるだけじゃ』
言われるがままに、その辺に落ちてた包装用のリボンで鎖の端を結んだら、ヨウは無事に息を吹き返した。
『契約は成立したようじゃが、お主には罰も与える』
――そう、管理者になる契約の代償……晴河は不老不死、造は人と触れ合えないだっけ……
「ヨウを助けられたから、私はどうなってもいい!」
僕ってどれだけ単純なんだろう。でもそのおかげでヨウを救えたんだろうけど。
幽霊がずいっと距離を詰める。息がかかりそうな、すぐに身体が触れ合ってしまいそうな距離。
『お主は――』
幽霊が僕の頬に手を添えた。そっと唇を近づけてきた。
反射的に目を閉じると、柔らかいものが唇に触れた。ほんのり温かく、気持ちいい。
温かさが消えたのを感じると、ゆっくり目を開いた。
幽霊はペロリと、色っぽく唇を舐める。
『他人の使命を代理できる権利にしておくかのぅ』
今思うと、僕が鎖を切れた理由は晴河の使命を代理したから……?
でも、晴河と僕じゃ切った後の状況が違う。晴河じゃないとしたら、あれは誰の使命なんだ?
☆☆☆
深い記憶の海から抜け出し、意識を今に戻す。
「絶対に助けるから……シュウ!」
僕が初めて好きになった、大事な大事な親友でもあるから。
――決して失うわけにはいかない。
机の上に広げられた紐の一つを手に取り、シュウの鎖を繋げるように結びつける。金色に輝き、淡い光がシュウへと集まった。
「けほっ……」
一度咳をしてから、シュウは重い瞼を開いた。シュウの瞳に僕の姿が映り込む。
「れ、ん……?」
名前を呼ばれ、涙が溢れだす。
弱々しく震える手が、僕の頬に触れる。いつものように優しく微笑まれ、胸をホッと撫で下ろす。
「よかった……」
安心したのもつかの間、晴河は立ち上がってカッターを手にしていた。
「私、使命は1日1回って決めてるの……でも、雲月ちゃんが邪魔しないように殺したいのよね……」
危ない発言だけれど、晴河らしいと思う。人を殺すことが快感というわけではない。でも、何も考えずに行ってるわけじゃない。
「あたしだってこの使命には大切な意味がある!死ぬわけにはいかないの」
晴河が造の前に移動するのと、竹刀を一文字に振るうのはほぼ同時。
少なくともリーチが長い分竹刀のほうが速く届くはずだったのだが……
「わかりやすいわね」
竹刀は晴河の頭の上を通過し、カッターは造の鎖を捉えた。切られた鎖が砕け、リボンが新しい鎖と化す。
驚く晴河をよそに、造は竹刀を床に落とし、晴河の襟と袖を掴んで床へと投げた。
「『つくる』能力もなかなか便利でしょ」
だが、晴河は受け身をとって体勢を整えた。途端に手に余るほどのカッターを上着の裏側から取り出す。そのまま、両手いっぱいのカッターを造に投げつける。
鎖以外は生身の肉体のため、細やかな傷がいくつもできる。また、傷口からは血が垂れていた。
いわゆる絶体絶命の状況だったが、それでも造は焦る素振り1つ見せない。
造はさっき僕が晴河に投げつけたシーツを拾い、大きく広げることで、飛んでくるカッターを絡めとった。視界を取り戻すために脇へすぐに捨てる。
追撃するように晴河は辞書くらい分厚い本を棚から引き出して投げるが、造は頭を1つ分下げることでそれを避ける。
恐ろしいことに、本は造がいた場所へ正確に放たれていた。
――基本的に晴河の特技は投てきっぽいな。
二人共晴河の部屋で暴れだしたので、造の部屋にいる僕は安心して傍観できる。
本当なら逃げるべきなんだろうけど、まだ身体を起こすことができないシュウを置いていけないので、仕方なく残っている。
「うおっ、なんだよこの騒ぎ……!」
声がした方を向くと、ヨウが真冬のような厚着をして部屋に入っていた。
「なんでヨウが?」
ヨウは冷えピタやマスクをつけ、顔を赤く染め、全身汗だくの状態だ。げほげほと咳をしている。明らかに重症だ。
「メールしたぞー……お前の粥食いたい……て」
「メール?」
騒音や埃やカッター等が飛び交う中、懸命に携帯を探す。
確か造の部屋に居たときはまだ持っていて……そのあとシュウを助けるために晴河の部屋に行ったから…………
「あ」
携帯電話は晴河に踏まれ、見事に真っ二つに割れていた。
多分、部屋に突っ込んだ時に落ちたんだろうな……。
ところで、部屋を仕切るはずの壁は全くその役目を果たさなくなってきていた。時おりカッターがこちらの部屋へと飛んでくることがある。
晴河の能力や造の物理的な力で物が壊れ、ガラスの破片らしきものが飛び散った瞬間、僕の中で何かが切れた。
――ドコンッ!
近くに落ちていたマンガを蹴り飛ばし、二人の間の本棚へ見事にヒットした。注目が集まる。
「いい加減にしろ……」
いつもは出さない低音に二人は固まった。追い討ちをかけるように鋏を本棚へと投げる。ガラガラと音を立て、中身が雪崩れた。
「シュウとヨウに怪我させたら、いくら兄さんの知り合いでも容赦しない」
警告を聞き入れたのか、晴河はカッターを手放した。そして造へと小さく小さく舌打ちする。
造もべーっと舌を突きだし、そっぽを向いた。
「とりあえず掃除でもしたらどう?僕はヨウにお粥作りに行くからさ」
このアパートは1部屋にリビングとダイニング、そして風呂とトイレがあり、2部屋共戦っていたリビングにベットがあったため、瓦礫等で埋まっていたりするのだ。
「えー……」
家事嫌いな造から不満の声が漏れる。
「部屋が一体化した以上、雲月ちゃんを殺す機会は増えたし……まあいいわ」
造の態度に呆れてか、晴河が肩をすくめる。
「今度なんでも言うこときくからさ、シュウは帰って寝とけよ」
母親のように心配しながらシュウを送り出すと、ヨウを連れて部屋へ戻った。
微かに隣の部屋から聞こえる声に耳を傾けつつ、熱々のお粥を作る。
『さて、それじゃ掃除始めますか』
『掃除なんてできるのかしら?』
『当たり前でしょ!』
『不器用じゃないの。隙ができやすい大振りな攻撃も多いわよ?』
『うるっさい!』
どうやら、なんやかんや仲良くやっているようだ。
「ヨウ、お粥食べたら帰れよー?」
「へーい」
☆☆☆
「あの……ありがと。連」
翌朝、造の部屋へ赴くと、もじもじと照れながら造がお礼言ってきた。
珍しく素直なので悪いものでも食べたんじゃないかと心配になってくる。
部屋を覗くと、晴河がぐったりとしながらフローリングに大の字で寝ていた。
「私は雲月ちゃんと違ってか弱いのよ~!」
「あたしが体力バカみたいじゃない!」
「あら?朝まで掃除したのは誰のせいかしら?」
何も言い返せないらしく、苦虫を噛み潰したような表情になる。
だが、すぐに脱力し、その場に倒れこんだ。
「朝ごはん抜きだし、お弁当じゃなく購買のパンとか、栄養足りないよー」
「僕の部屋にまだパンがあったはずだから、着替えついでにサンドイッチでも作ってくるよ」
たまにはと優しくしてみると、造は神を崇めるように目を輝かせて合掌していた。どれだけ飢えてるんだよ……
「まあ!それじゃあお昼休みに屋上で待ってるわね!」
嬉しそうに晴河が声を上げ、シャキッと背筋を伸ばしていた。
昨日のことが無かったかのような様子に、呆れを通り越して賞賛だ。
「ま、いっか」
――しばらくは普通の生活ができそうだし、安心した……かな。
「それじゃ、部屋に帰るから」
「待ってちょうだい!」
僕を引き止めた晴河は造を警戒しながら耳元にそっと囁いた。
「これから……私が鎖をきったら、つないでくれるかしら?」
どうやら僕の使命を知り、晴河は改心するつもりらしい。というか、それこそ管理者なのかもしれない。
命を『つくる』
寿命に合わせて『きる』
そして、まだ生きるべき命を『つなぐ』
そうやって、命の鎖を管理することで、人を絶滅させないようにしているのかもしれない。
「……ど、どうかしら?」
お願いが恥ずかしいなんて、意外とかわいい晴河へと笑顔を見せた。
「問題ないよ」
☆☆☆
約束通り屋上に行くと、晴河もヨウもすでに居た。
シュウと造と一緒に座る。
「もう風邪大丈夫なのか?」
ヨウは親指を立てて僕に向けた。
「完全復活っ!」
そんなヨウの弁当箱には、ネギと生姜を使った料理が多々あった。
――無理してきたっぽいなー……よっぽど家が嫌いなのか……
「ねぇねぇ、ごはん!」
犬なら尻尾をブンブンと振っていそうな勢いで造が叫ぶ。
苦笑しながら軽く造の頭を撫でてやると、幸せそうにえへへと笑った。
ハンカチの包みを開くとラップにくるまれた大量のサンドイッチが姿を見せる。
「おいしそー!」
よだれを垂らしながら造は手当たり次第にサンドイッチを口へ放り込んでいた。
おしとやかに、一口ずつサンドイッチを口に運ぶ晴河。
これが女子力の差ってやつなのか?
「連くんって料理上手よね」
美味しくなかったのか、シュウが大きくため息をついた。
「どうしたんだ?」
シュウは失恋したようなどんよりとした空気を纏っている。ベシベシとヨウが笑いながら肩を叩く。
「晴河さんのこといいなーって思ってたのに、昨日の事件でさめた……」
――えっ!?本当に失恋!?嬉しいような悲しいような……
「ふふっ……集君みたいな可愛い子なら歓迎してもよかったのに……」
あれ?今、集君って……今回の事件で距離が縮まったから?
目が合った晴河は僕に向かってぱちんとウインクを送ってきた。 宣戦布告かとも思ったが、どうやらシュウをからかおうとしただけらしい。
「よし!」
晴河の意図に反し、沈んでいたシュウはすぐに明るさを取り戻した。
「晴河さんは一瞬の気の迷い!俺には大本命がいるから!」
――なんかすっごく輝いてる……!
でも、本命なんかいたのか……
なんだろ、なんか、胸が痛いな……
「んで……大本命って?」
お茶を飲みつつ、大胆にもヨウが聞いた。
シュウは胸を張り、もったいぶるように笑い声を上げた。
「大本命は――」
静寂の重い空気に、なんとなく緊張してしまう。
「レイちゃん!」
「…………は?」
はっきりと名前を告げるシュウだが、みんなポカンとしていた。知らない名前に首を傾げる。
「ヨウは知ってるだろ?お前の幼馴染みで、昔よく遊んだ女の子!」
なるほど……子供の頃の記憶が曖昧になって、レンじゃなくレイって覚えたのか……!
というか、隠してるとはいえ女として否定されてるみたいで気分が良くない。
「ぷっ……くくっ……」
笑いを堪えるヨウはもっと気に入らない。
僕の視線に気づいたヨウがニヤリと笑う。
「そーいえばレイが、今週の土日に遊びにくるってさー」
――なんてウソつくんだよ、あいつは!
シュウはすっかり信じ込んだ様子で、造や晴河にレイちゃんとやらの自慢話を始めた。
その隙にヨウは静かに耳打ちしてくる。
「せっかくなんだし、シュウとデートしろ」
「はぁっ!?」
……ほんとに意味がわからない。
兄さんが帰ってきた時、なんて話したらいいんだろう?
『雨原 連
あまはら れん』
性別…女
年齢…15才
得物…鋏
思い人…風野集
住所…結城アパートの202号室
男として暮らしていて、兄と幼馴染みの殀、保険の先生しか知らない。
愛用の鋏は殀の家である刃物店のもの。
両親とは別居中で兄は家出中。
連という字には「つなぐ」の意味がある。