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三十六話

『嘘だっ!!私はそんな事実は知らないっ!!アーサーだって何も言わなかったっ』


自分が人の命を奪ったという過去を忘れているのか、それとも本当に知らないのか。少なくともいまのクロアはいつものクロアではなく、完全に我を失って吠えていた。


「クロアが...どういうことか説明してもらおうか」


「説明か。口でいうのは簡単だがそれを言って信じるか?」


確かに興味はある話だが、仮にも敵の言葉だ。現に今シリウスの言葉をそのまま信じることもできていない。半信半疑で先ほどの答えを待っている。


「まぁそれもあったんじゃないか。ぐらいの話はきかせてやる」


「おい貴様」


クロアが剣から人の姿に変わる。

勝手に形態変化するのはいつものことだが、今度ばかりは剣獅に一言もかけることはなかった。


「久しぶりだな白のエクスカリバー」


「私は初対面だが。貴様は私のなにを知っている」


シリウスは指を立ててこう言った。


「真実」


実に単純な答えで、同時にわかりやすかった。

クロアの考えが紋章を通して伝わってきた。知りたい、その真実を。


「聞かせろ女。私は真実が知りたい」


あれだけ聴かせることを反対していたメイガスももはや手遅れかと止めるつもりはないらしく、剣獅たちの答えを待っているようだった。

クロアを含めて、真実を聞きたいのはみな同じだった。


「あれは十五年前の話だ。当時俺たち五人はそれはまぁ仲良くしてた。だが俺たちの中心にいた男、先代の剣騎がある日病に倒れた。そこで自分の剣を息子に封印するためにある術を行った」


「術?」


剣獅は術と言われても紋章術以外知らない。それもその一種だろうが、正直どんなものかが想像がつかない。


「剣姫三人の命を引換にした代償封印術。それは見事に成功、そして先代剣騎は剣姫とともに眠りについた。母親を守護者(ガーディアン)として監視させてな」


これから指す意味。それはつまり剣獅の両親は剣姫だったのだ。ようやく合点がいった。

新聞記者でも何日も家に帰らないわけがないすべては剣姫の仕事だったのだ。剣獅が生まれてからの十数年ずっと隠してきたのだ、知られまい知られまいとひたすらに隠して自分を遠ざけるようにして。


そして父親がいなかったのもそのせいだ。いつか聞いたことがあるなぜ自分に父親がいないのかと。答えは死んだと聞かされていた。

あまり実感のわかない話だった。せいぜいそうなのかぐらいに思っていたし、それで困ることもなかった。だが、今はどうだその父親の存在が自分を今この場に存在させているではないか。

それに、親しい友の親の屍を自分は踏み倒してこの場にいるのだ。これほど胸の痛い話はない。


剣獅はその場で卒倒しそうだった。

半ば残った精神力だけで立っていた。


「つまりだ。お前らの親はこの剣に殺されたも同然なんだよ。こいつはてめえらの親の命を喰らって生きてるんだよ」


その場にシリウスの高笑いが響いた。

その声をかき消すかのごとく剣獅は叫んだ。


「うるせぇぇぇぇっ!!来いエクスカリバー」


剣獅は剣を取ってシリウスへと斬りかかる。そこにもはや冷静の二文字はなく完全に取り乱している。

ただ剣を振っているだけの相手などシリウスにかかれば剣を抜くまでもなかった。

躱して強烈な蹴りを叩き込む。

それでも剣獅は向かっていく。何度と地面を転がされようともただ我武者羅に向かっていくだけだった。


「ふん。お前の存在がこいつらから母親を奪った」


「黙れ...」


「お前さえいなければこいつらは寂しい子供時代を過ごさずに済んだ。母親が恋しかったろうなぁお前が奪った」


「黙れぇっ!!それ以上喋るなぁっ!!」


剣獅の怒りに合わせてクロアの色がどんどんと黒く染まっていく。

まるで毒にでも犯されるように。


「それだそいつこそ二本目のエクスカリバーだ。楽しくなってきた」


「あいつまさかこれを狙っていたのか」


メイガスはいまさらながらと思いつつようやく気づいた。シリウスの狙いは初めからこれだったのだ。

怒りによる剣獅の覚醒の促進。その結果どうなろうが知ったことではないただ強者との戦いを望んだのだ。


「今すぐここから離れろ。もう弩級や竜王どころではないぞ」


しかし時既に遅し。それはついに目覚めた。


「ぜやああああああっ!!!」


二本の剣を持った剣姫、いや剣騎。世界最強の力を持つという剣姫の王。

絶叫とともに剣獅の中から這いずりでた化物。


見た目からは判断がつかないが、明らかに今までの剣獅とは違う。例えるならば、普段が柔らかい雰囲気に対して、今は近づけば串刺しになりそうなほどに冷たい怒気。


「やっとか。これでお前の親に負けた屈辱を晴らせるぞ」


今までにみなかったほどの笑顔とともにシリウスの剣が閃く。剣獅はその剣を剣ではなく二本指で掴んで、手に持った剣二本をシリウスに向けて振り抜いた。

シリウスもさる者。剣を手放して攻撃がヒットするのをどうにか回避する。


この短い攻防の間に、シリウスだけが肩で息をするほどに疲弊していた。対して剣獅は息一つ乱すことはない。

まっすぐにシリウスに向けて冷徹な視線を向けている。


「先生剣獅はどうなって...」


「彼はもはや私でも手がつけられないだろうねぇ。世界最強の力を手にしたんだから」


メイガスはただ見ているしかできないことでの自分の力の無さを呪った。

世界五指と言われていても所詮はそんなものだった。

自分には何もできない。先代剣騎が剣を封印するといったときも止めることができなかった。


「親なら子の始末ぐらいつけにきたらどうなんだい。沙織」


メイガスの願いは虚しく。剣獅の力は止まるところを知らない。

剣獅は持っていたシリウスの剣をシリウスに向かって第一宇宙速度で放り投げる。ミサイル規模の速さで放たれた物体は、ギリギリのところで躱したシリウスの体を掠め、竜王の体を貫通させる。

さらに勢いは止まらず、後ろに広がる森や山を壊して突き進んでいく。


いますぐに剣の名前を呼んで呼び戻すのもありだが、それまでのおよそ三十秒程度は丸腰でこの二本持ちの剣獅と戦わなければならない。

あまりに分の悪い選択になる。


正直剣が取られた時点で詰んだようなものだった。

シリウスの負けは九割固まった。あとは剣獅の剣を奪うしか望みはない。

奪って、どうにか持ちこたえながら逆に二刀で戦う。

それしか逆転の一手はない。


ならばとシリウスは剣獅の剣を奪うべく剣獅の腕へと手を伸ばす。

だが、剣獅は予想外の行動を取った。なんと自ら剣を突き出してきたのだ。

完全に剣を奪う体勢に入っているシリウスでは避けられない。

シリウスの両腕が二本の剣に貫かれる。


「あああああっ!!!」


断末魔の悲鳴をあげる。

腕を貫かれた痛みとショックで理性は残っていないようだった。

これでは勝負にならない剣獅の勝ちだ。


「失せろ」


剣獅もメイガスが先日やってみせたように、シリウスを吹き飛ばす。

ただし存在ごと消すようなレベルで。


「ぬああああああっ!!」


シリウスは消し飛ばれされ、そのあとには何もなかった。

そして剣獅の次の標的はこともあろうに絢香たちに向けられる。


「俺はすべてを消し去る」

















いかがでしたでしょうか俺っ娘マダム。キャラ設定は剣獅の母親より一つ下の年設定です。

たまたまその場に居合わせただけの人間が雄弁に語ってくれてます。

そしてまだ続けんのかこの回。こんなことしてるとまたどうしようかってアイデア詰まります。とりあえず次でこんな話は終わって夏休み...やってること変わんねえ。

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