天狗様になりたいです。
ぴーぴーぱーちく。
あーあ、朝っぱらから煩い。黒子。
三千世界の鴉を殺しても、黒子がいる限りのんびり朝寝などできゃしないと確信する。
俺、時津美樹也。シガナイ、イタイケナ高校二年生。
「うるさい・・・黒子。」
「あらぁ~。美樹ちゃん、おはようございますぅ~。いい天気ですよ。死に日和ですよ!!」
・・・そんな日和があってたまるか。つうか、外、まだ薄暗いんですけどぉ。
黒子がいなきゃ、俺は、寝日和だっつーの。
折角の日曜日なのに・・・なのに、なぜに朝の五時に起きてんの!?
とか思って、もう一度寝ようとしていた俺に黒子が無情の一言を・・・。
「美樹ちゃん、お仕事ですよぉ~。」
なんですと!?
「こんな朝?っぱらからなんなの!?」
頼むから、こんな時間は止めたげて。俺、可哀そう。
「ほら、行きますよ?」
ひとりで逝ってくれ・・・・。
えー、右手に見えますのは、滝でございます。誰がどう見ても、滝でございます。
いつだか自分呪いの馬鹿・・・もとい、客をGETした神社を脇を通り抜け、山をえっちらおっちら登りまして、更にグネグネ道を進むとある山中の滝。
自殺の名所とも名高いがな。
わー今日の獲物・・・もとい、客は普通っぽいぞ。
(常々、変な客ばっかりだからね。)
・・・のはずが。
「・・・滝行じゃね?」
客は、何故か白装束に身を包み、滝に打たれてる。
そう、手を顔の前に持ち上げて・・・・印を組んでいた。
「ほんとですねぇ。修行してるように見えますねぇ。」
今回のは、誤情報じゃね?
ん、間違ったんだな、コンもタダのキツネ(もどき・・・ちっさい)の子だったんだなぁ。
「ちょっと、近づいてみましょう。」
・・・ちょっと待て。黒子。
ターゲットに近づくって・・・・・、つまりは。
「はいはい、行きますよ?」
どーーーん。って、背中を思いっきり押された俺。
どっぼーーーん!!
勢いよく滝壺へ吸い込まれていく。
がぼぼぼ・・・・・。
いーやー、俺が逝く。
ジタバタともがいて、どうにか水上に顔が出た。
「げほ。ごほ。黒子の鬼畜!!俺、死んじゃう!!」
「あらぁ。美樹ちゃん、修行が足りませんねぇ。滝に打たれてみますか?」
遠慮する。
つうか、冷たい。とてつもなく、水が冷たい。俺の心臓、丈夫で良かった。
(黒子の心臓には、きっと、モッフリもふもふフサフサと毛が生えてるはず!)
は!!
そんな事より、客の様子を窺うつもりだったのに・・・気づいちゃってるよね?
うん、そりゃね。勢いよくどっっぼんしたからね。
と、視線を滝に打たれてる白装束へ向ける。
「気づいてねぇ。」
無視か?なあ、敢えて、無視してるか?白装束。
「何か呟いてますね?流行りのツイッターってやつですか??」
・・・ノーコメントだ。めんどくさい。
「・・・ぶつぶつ。・・・ぶつぶつ。」
本当にぶつぶつと何かを呟く。
よーーく聞いてみると・・・。
「早く俺を連れて逝ってくれ。俺の御霊を連れて逝ってくれ。寒いんだ。」
・・・寒いんじゃん。
しかも、ちょっとキレぎみ。
「もしもーし、おじさん?」
とりあえず、話しかけてみる。
くわっ!!と目を見開いた白装束。怖いっす!!
「・・む。むむむむ!お・・お主はもしや!!」
うへ?俺の事知ってんの?マジで?俺、知らんよ?
「お主・・・いや、貴方様は、天狗の子供か?」
・・・はあ?
天狗になった記憶ないよ?俺。
「ち・・違うのか・・・うううう。まだまだ、修行が足りなんだ・・・・」
やたらと凹む、白装束。
「えーと、取りあえず、水から上がろう?寒いし。」
凹みながらも素直についてくる白装束。
「えーとね、俺、こーゆー者です。」
ビショビショのまま、名刺を渡す。
「・・・」
胡乱げだ。すっげ、不審者見る目だ。
でもさ、おっさん、『天狗』だって胡乱だぜ?
胡乱でも、ウーロンでもなんでもいい。ゴーイングに死神さん呼んでやる!!
「(久々に)おーーーーーい、死神さーーーーん。」
久々なので、長めに伸ばしてみました。
「わっはははは!!ワシを呼んだか?」
・・・流石だよ。あんた・・・どっから持ってきた?天狗のコスプレ。
真っ赤なお顔で鼻高々の天狗のお面。山伏装束。黒い背負子。そして、右手には羽団扇!!
「うおーーーー天狗様!!!!」
大興奮の白装束!あ、興奮し過ぎだよ?鼻血でてるよ?
読めたよ。白装束。あんた・・・天狗になりたかったのね?
でもね、死んでも天狗になれないと思うよ?幽霊には、なれるかもだけど。
「黒子・・・もう帰ってもいいよね?俺、風邪ひいちゃう。」
「あの衣装、いいですね。私も着たいですぅ。天狗様になりたいですぅ~。似合うと思いますかぁ?」
・・・心底、どーでもいい。
コトを見届けずに、俺はびしょびしょの服でぐちょぐちょと水を撒き散らしながら帰ったのだ。
・・・へーーくっしょん!!




