教祖になっちゃいますか?
そこは、とある悪名高い宗教団体の本部の地下の1部屋。
目の前には、数十人のろうにゃくにゃんにょ・・・なんか違う。
彼等は、今まさに怪しげな薬を手に持っている。
「ちょっと待った!!」
集団催眠状態の信者たち数十人をギロリと睨み、鼻息荒く言ってやった。
「ええい、これが目に入らぬか~」
ビシィ!!
と、俺は右手に持ったソレを前に突き出した。
ざわざわっ・・・ざわざわっ・・・
ヤリ切った感で、胸を張る。俺。
(トメばーちゃんと夕方再放送の黄門ちゃまを見るのが最近の日課。)
ざわざわっ・・・ざわざわっ・・・
ざわめきは止まらない。
その時、どこの誰かは知らないけれど、ぽそりとした呟きが・・・。
「・・・小さすぎて、見えないですけど・・・」
はへ?
「美樹ちゃん。流石に一番最前列の人でも見えませんよぉ~、名刺は。」
そう、俺がビシッと見せたのは、『死神紹介屋』の名刺。
・・・ですよねーー。
ぐっ。失敗ぐらいあるさ。失敗の先に成功はあるって、誰かが言ったとか言わないとか。
「ごほん。・・と、とにかくだ。俺は、死神を紹介する。自殺反対。ダメ、絶対。」
早口マシンガンで、説得。
ポカンされても、知ったこっちゃない。
死神さんを紹介すれば、良いのだ。
そう、だから。
「おおおーーーーいい。死神ぃーーーーーず。カモーーーン!!」
特別バージョンで、死神さんを呼び出した。
あちらこちらで悲鳴が・・・。キイロいけどね。
最前列のおっさん、なんであんた顔赤らめてんの?
どれなの?どれ(死神ぃーず)がおっさんの心にズッキュン来たのよ?
とかとか、1件落着と思いきや。
バサリと、俺の背後(室内のちょっと高めに作られた壇上)に奥の部屋から人が現れた。
「な・・何事ですか!!」
わぁ。すごいね、その髭。
もっさもさの髭を振り乱し、ちょい小太りの白装束を纏ったおっさんが叫ぶ。
「信者たちよ!!惑わされてはいけない!!地獄に堕ちるぞ!!」
うはー。
「みなの者よ!!魂の昇天を願ってたのではないのか?吾を裏切ると、堕とすぞ!吾こそが神の使いなのだ!!吾こそが選ばれた人間なのだ!!」
黒子と死神ぃーず、黙って肩を竦める。
「出たな、悪党!」
魂を救います。をキャッチコピーに、表では慈善活動。
その実態は、騙した人々からお布施とばかりに全財産を教団に貢がせる。
斡旋推奨してるのが、何と!自ら穢れたこの世に離別するのです、てな事。
そう、つまり・・・自殺を推奨してたのだ。
人の心は弱い。何かに縋りたい時もあるだろう。
けれど、弱った心に隙入り自殺推奨なんて許せねぇ。
俺は、叫ぶ。
「死神ぃーず、懲らしめてやりなさい!!」
キラキラじゃなくて、どす黒バージョンで!!
――――ゆらりゆらり・・・。
黒い影がひとつ。またひとつ・・・。
(黒バージョンの死神・・・ホンモノだ。やっと、死神認識。)
教祖を完全に囲い込む。
ガクガクと震える膝。戦慄く唇・・・。
「ぎ・・ぎよぇぇぇぇえええ。ごめんなさいーーーーー!!解散しますーーー。お金返します―――。」
半狂乱に陥った教祖さま。
ブルブルガクガク・・・略してブルガク。・・・ワンモア。
ガクガクブルブル・・・略してガクブル。・・・オーキードーキー。
おっさん、カーテンに隠れてるつもり?
お尻が丸見えよ?
こうして、悪党を懲らしめたのだ。(満足)
そんな俺に、目を覚ました信者たちは感謝感激雨霰。
キラキラ眼差しが俺を射抜く。
「あらぁ、皆さん、美樹ちゃんをあっつーい眼差しで見つめてますねぇ。」
うは。一斉に俺を見ないで。色んな意味で怖いっす。
「いっその事、教祖になっちゃいますか?」
ならねぇよ。




