私の胸に飛び込んで下さい。
「うああああああああ」
叫び声が響く深夜の学校の屋上。
うは。アレに近づきたくねぇ。
ちょっと引き気味な俺に、黒子は言った。
「さあ、雄叫び返しですよ!!」
しねーから。
アホな黒子はほっといて、俺は、叫び声の主に恐る恐ると近付いて行く。
あれ、この顔に見覚えがある・・・。
うーん。
考える事、数秒・・・、答えが出てこない俺の代わりに黒子が答えを出した。
「生徒会長さんじゃ、ないですか?朝礼で、挨拶とかしてましたよ。」
・・・ああ、成程。
言われてみれば、そーかもしんない。
「あのぅ・・、ちょっといいですかね?」
くるりと向き直った生徒会長。
顔は虚ろで、焦点の合わない目がコワい。
たしか、噂で聞き齧った話、会長の両親ともに医者。
優秀なが兄二人で、当然、医者と医学生。
会長やってるだけあって、当人も成績は常にトップ3だったはず。
うは。
俺の成績は、教えねーよ?
ああ、ほら。人間って、学校の成績だけじゃないだろ?(たぶん)
「し・・設楽会長?
えーと、俺じゃ、役不足かも知れないですけど・・・。」
言い淀む俺の肩をがっしり掴んだ会長。
だから、コワいって!!
ビビる俺に構わず、会長はその胸の内を吐き出した。
曰く、両親や兄たちは、一切、自分に期待していない、と。
自分は、駄目な落ちこぼれなのだ、と。
・・・俺、どーすんの?
会長が落ちこぼれなら、俺、ミジンコよ?
ミジンコな俺には縁のない話だが、会長は、勉強をすればするほど焦燥感が募た。
そして、夏休み最後の夜、遂に耐えきれなくなったらしいのだ。
そんな会長を諭しつつ、お仕事を進める。
「おーい、死神さーん!」
呼ばれて飛び出て、アキラです。
ああ、アキラさんなら大丈夫そうだ。(他のは、ちょっと・・・)
死神さんと話終わる頃、会長を呼ぶ声が聞こえて来た。
「兄さん・・・。」
正門の方に見えたのは、会長のお兄さんたちだった。
俺たちを見つけると、すっごい勢いで屋上に駆け上がって来た。
(この学校のセキュリティーは、どうなってんのさ。)
部屋を覗いて、姿が見えなかったから、心配になって探しに来たらしい。
「期待していないんじゃ、ないんだ。」
会長は、絵を描く事が好きな子供だったらしい。
中学に上がる頃、兄たちを見ていた会長は、絵を描くのを止めて勉強をするようになったのだとか。
兄たちは、楽しそうに絵を描いていた弟が、好ましくもありまた、羨ましくもあった。
だから、本当に好きな道を選んで欲しかったのだ、と会長をぎゅっと抱き締めながら言った。
会長は、兄の胸に頭を押し付け、泣きじゃくるのだった。
「兄弟愛ですねぇ。ウルウルですぅ〜。」
黒子は涙を拭う真似をした。
黒子、目元が濡れてねぇよ?
アキラさんは・・・・うん。予想通り、号泣だよね。
俺も少しばっかしウルッときた。
羨ましかった。俺、一人っ子だし。
ちょっぴりセンチになった。俺。
そんな俺に、黒子は両手を広げて、こう言った。
「さぁ、どうぞ!!私の胸に飛び込んで下さい!」
・・いや。結構です。




