盃でも受けちゃいますか?
「ちょおっっと、待ったーー!!」
スパーーン!!と、襖を両手で開ける。
沈黙。注目。一斉睨みに日本刀がカチリ。
きゃあーー!俺、死亡確定!?
「なんだテメェは!」
ギラつく眼光は、それだけで殺れそうです!!
イザとなったら、黒子、助けろ(不安)!
親鸞真似して他力本願、上等ってんだい。
行け!俺。
「ままま、待って下さい!!
この子を、ひとりぼっちにするんですか!?」
ビビりながらも、刀を腹に刺そうとしてるじーさんに、いい放つ!
「この子の為にも、待って下さい。」
と、五歳児の肩に手を置く。
「坊・・。」
ギラギラ兄さんたちの殺気が、少し緩和した。
「おじぃちゃん・・・。」
じーさんは、はっとしたように、目を見開くと手を開いた。
カタン・・・。
離された刀は、畳の上に落ちる。
「勇也・・・・。」
じーさんが、ぽつりと言うと、五歳児(勇也っていうのか。)が駆け寄って抱きついて、うわーんと泣きじゃくった。
ほっとしたよ。俺。切腹は、痛そうよ?
しばしの沈黙の後、渋い声が空気を震わせた。
「お若いの。」
ぎくり。
俺は、ピキーンと背筋が伸びて、敬礼してしまったよ。
「はいぃぃ!」
これ、過去最高のいい返事。
タラリ。と、暑くもないのに、汗が滴り落ちるが敬礼したままじーさんのお言葉を待つ。
「世話を掛けたな。」
渋いその声は、そう言うと孫(勇也)の頭をそっと撫でた。
そして、ギラギラ兄さんたちはというと、完全に殺る気を収めてくれたようだ。
じーさん曰く。
昨年に息子夫婦(次期組頭)を抗争で亡くし、更に半年前にばーさんが亡くなった。
そして、昨日に若い組員が問題を起こしてしまったそう。
統率のとれなくなった、耄碌した自分に失望と憤怒と。
思い悩んでしまって、勇也の存在がすっぱ抜けてしまったのか。
はあ。大変なんスね。こちらの世界も。
でも、ギラギラ兄さんたちは慕ってるように見えるけど?
それに、勇也もね。
「美樹ちゃん、死神さん呼びましょう。」
と、黒子が言うので・・・。
せーの。
「おーい、死神さーん。」
本日の死神さんは・・・?
ああ、ちょっとヤンチャっぽいのが可愛らしい、ユウさんでした〜。
「お控えなすって。手前、生まれはXXの・・」
・・・。
森の石松ばりの口上を言いきったユウさん。
満足げだ・・・。
ギラギラ兄さんたち、お口開いてますよ?
「そうそう、本日はゲストをお連れしました。」
ん?そんなパターンもあるの?
どうぞ〜。と呼ばれたのは、ちまっとしてるがキリリと表情締まった、着物の似合うおばーさん。
誰でしょう?と、思っているとススススーとじーさんに近付いて、一呼吸置いてから・・・。
「この大たわけが!!!!しゃんとせんか!!!」
じーさんよりも迫力の大音声で、一喝した。
うおぅ。家が一瞬、揺れましたよ?
どうやら、半年前に亡くなったおばーさんだったみたい。
じーさんは、初めこそ固まっていたが、お説教されているというのに泣き笑いの表情をしていた。
嬉しそうな勇也を見たら、怖かった思いも吹き飛んだよ。
落ち着いた頃合いで、俺は黒子にさっきの疑問を聞いてみた。
「ところで、なんで勇也に黒子が見えたの?」
俺が問いかけると黒子は、床の間に掛っていた虎の掛け軸と睨めっこしたままに答えを返してきた。
あ。虎が目を逸らした。はい、黒子の勝ち〜。
「ふふふ。七つまでは神のうちって、言うじゃないですか。」
皆が見えるわけではないですけど、純粋な子には見えるんですよ。と黒子。
・・・純粋ね。
まあ、仕事も終わったし、後はユウさんにお任せして、帰ろうかとユウさんを振り返る。
って、ギラギラ兄さんたちと盛り上がってましたぁ~。
しかも、なにその手に持ってる三三九度に使うみたいな盃は。
「あらぁ、私たちも、盃でも受けちゃいますかぁ~?」
受けるか!
俺は”カタギ”で生きてくぜぃ!!
まぁ、死神紹介屋がまっとうかどうかは、甚だ疑問だけどね。




