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デート






 1





 友達、仲間、家族、先輩、後輩。


 ずっと憧れてた。


 ずっと欲しかった。


 でもこればっかりはお金で手に入らない。

 

 僕がいくらお金を稼いだところで買えはしない。


 僕以外誰も『いない』世界。


 僕以外誰も『いなくなった』世界。


 『孤独』が嫌だから『拒絶』されて。


 『拒絶』が嫌だから『孤独』になって。


 僕は独り、いつも独り。


 泣きたくても泣けない。


 逃げ道はない。


 拒絶と孤独に毒された『心』は、僕を奥へと引きずり込む。


 



 それじゃあ行こうか。




 楽園に。


















 2











 聖、博麗、九商会との会合を終えた翌日、地霊殿には珍しく客人が来ていた。


 「はーなび、約束通りデートしに来たよ」


 早朝から地霊殿の扉の前で煩く喚くこの男、人里一の商会の会長である九千雪だ。


 広い地霊殿の居間までその声は届き、さとりと花火は顔を見合わせた。


 「そんな約束もしてたな」


 「そんな約束もしてましたね」


 言うまでもなく二人共、完全に失念していた。


 まだ皆が寝静まっている早朝だというのに周囲の事を考えずに大声を上げ続ける千雪に焦りを感じた花火はすぐさま玄関へ走り出す。


 「はーな…。花火、おはよう」


 「ああ、おはよう。早かったな」


 心底嬉しそうにしている千雪を見ると失念していたなど口には出せない。


 千雪を饗す準備が整っていなのだ。


 花火としてはそこらへんの雑草でも食わせればいいと思っている節もあるのだが、さとりが最低限の礼儀は守れとそれを止めた。


 さとり曰く、どんな気に食わない人間でも妖怪でも最低限の礼儀を払わなければその人間や妖怪と自らも同等だ、ということだ。


 さとりは最後に『どんな変態でもです』とつけているのを聞いた花火としてはそれこそ礼儀がなっていないんじゃないかと思ったが言わないことにした。


 「悪いがこんなに早朝から来るとは思わなくてな。まだ饗す準備が整っていないんだ」


 花火は即席で考えた言い訳を千雪に言う。


 「いいんだよ、僕は花火と過ごせればそれでいいから。気にしないで」


 千雪が人懐っこそうな可愛らしい笑を花火に向ける。


 (こんな変態に良心を抉られる日が来るなんてな)


 その千雪の純粋な笑顔に少しばかりの罪悪感を覚える花火。

 そんなこともいざ知らずに嬉しそうに花火を見つめる千雪。

 

 「それなら入れ、取り敢えず茶でも出すから」

 

 「それじゃあお邪魔します」


 千雪を連れて廊下を歩く。


 何故か横にピッタリくっついて来て歩きづらい。


 「ほら、入れ」


 「おおー、広いね。いいね、好きだよ」


 居間に入った途端に口々に感想を述べまくる千雪を苦笑しながら見守る。


 そしてソファーに目を向けるとお茶の準備をしたさとりが丁度帰ってきたところだった。


 「千雪、取り敢えず座れよ」


 「花火の隣ね」


 「はいはい」


 さとりとは対面のソファーに花火に続いて千雪も腰を下ろす。


 中性的な可愛らしい顔を綻ばせながら紅茶を啜っている。


 「それで、デートって何するんだよ?普通外でするもんじゃないのか?」


 外界の知識だが花火の知っているデートとは外出して娯楽施設などを共に回るイメージが強い。


 「知らないの?最近は人里で自宅デートが流行ってるんだよ」


 「知らなかったのですか?」


 千雪に続いてさとりも知っていると明言する。


 花火はそういう知識には疎いつもりはなかったのだが先ず、他者との関わりが仕事か同居人しか無い花火が知るはずもない。

 むしろ何故さとりが知っているのか疑問に思う。


 「僕は花火と話ができればそれでいいから」


 


 そこからは次々と千雪が持ち前のマシンガントークを炸裂し、花火とさとりは苦笑いしつつ相槌を打つというデートとは言えない内容で終わった。

















かなり短いです。すいません。



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