轟蟲
蟲は色々居る。
鈴虫
天道虫
甲虫
コオロギ
セミ
ガ
蝿
カメムシ…
でも、この話の蟲は全然違う。
姿かたちは似ている。
特徴は全く違う。
習慣も違う。
行動も違う。
全て違う。
この蟲は…音で人を殺す。
「今日も疲れた…」
疲れ足を引きずって自宅へと帰還したサラリーマン。
シャツ類をハンガーに引っ掛け、夕食を取りに行く。
誰も居ない部屋で一人で食事を取る。
妻は仕事で、子供達はすっかり寝入っている。
時間は9時過ぎ―
少し遅すぎたか。
そう思いながら食事を取る。
しばらくして、外で何かが聞こえた。
不思議に思い、窓を開けてみる。
何も居ない―
聞こえたのは鈴虫の鳴き声だった。
「何だ…」
しかし彼は気づかなかった。
既にこの時部屋には"轟蟲"が入っていた。
そして、自分のイスについたとき。
ガギャ…ギ・ギ・ギ・ギギギギギギギ
嫌な音が耳を通った。
「…?」
最初は気にするほどでもなかった。
しかし、しだいに音は大きく、嫌になっていった。
ゴギャ…ガギャゴギギギギギ
「う…」
耳を押さえた。
それでも音は聞こえてくる。
ギギギギギギギギギギギギギギギギ…
「う、ううう…」
耐え切れなくなってしまいそうな表情だった。
音は止まない。
ギギギ…ギィヤァァァァァァ!
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
サラリーマンの男はそのまま倒れてしまった。
悲鳴を聞いた妻が駆け寄り、病院へと連れて行った。
死因は、脳破壊だと言う。
しかし、外部からの攻撃や傷は無かったと言う。
そして、その夜。
妻は一人で泣いていた。
子供達は気の毒そうに母親を見ていた。
まだ幼く、5歳前後の兄弟。
すると、ふいに窓から何か聞こえた。
開けてみても、何も無い。
そして、悪魔は入り込んできた。
ギギギキ…
「!?」
母親も同じく驚く。
しかし、父同類、気に止めなかった。
ガギャガギャ…ガゴゴゴゴゴギギ
音は大きくなっていく。
金属と金属のこすれあうような音だった。
「い、痛い…」
母親は頭を抑え、耳も押さえた。
「イヤ…イヤァ!」
ギギギ…ギィヤァァァ!
「キャアアアアアアアアア!」
母親もまた、同じ症状で死亡してしまった。
子供はそれを見て、ショック死してしまった。
貴方は大丈夫ですか?
外から蟲の声が聞こえませんか?
もしかしたらそれは、轟蟲かも知れませんよ…
ありがとうございました。