主人公と妖達
拝啓 父上さま
私がアナタに何かしたのでしょうか?
いくら幼いころから疎遠であったとしても、このような仕打ちはあんまりだと思いました。
アレ?作文!?
あ…ご紹介が遅れました、私 十六夜 雪と申します。
幼い頃に母が亡くなり、父の浩介と2人暮らしをしていました。
ですが私の父という方は自由奔放な人類学者でして。
幼い私をよく置き去りにし、世界各国を放浪するという生活をしておりました。
私はそのせいか、幼少の頃から狭いアパートに1人で暮らし。
飢えないために料理をおぼえ。
病気にならないために洗濯をおぼえ。
10歳の頃にはそこらの主婦の方にも負けない程の腕前になっておりました。
父は有名な人類学者で著者もたくさんあり、生活には困らないぐらいの貯えがあったので。
私は同世代の方々とは少しだけ変わってはおりましたが、スクスクと育っていきました。
そして私の20歳の誕生日になる1ヶ月に父 浩介が突然の急死という訃報が届きました。
家には年に一度帰れば良い。
そんな父でしたが、やはり身内が亡くなり天涯孤独になるのは私にもショックだったようで。
父の葬儀などすべて上の空で喪主をつとめていたらしく。
気がつくと父の弁護士と名乗る、迫力のある金髪美人な外国のかたが遺言書を持って私の前ににこやかに座っておりました。
『雪がこれを読んでるって事は、俺は死んじまってるんだろうな!ま、しょーがないよな!俺の全財産をお前に遺したから!好きに使ってくれ!あとはエリーに任せてあるから!んじゃ、達者でな! 浩介』
……遺言書というので、流石にきちんとしていると思った私がバカでした。
やはり父は父なのですね
私は読みおわった遺言書を綺麗にたたみ封筒にもどしました
「…浩介が自慢するだけあるわねぇ」
私が目の前に座っている金髪美人を仰ぎ見ると
金髪美人は思ったよりも近くに寄ってきてました
あれ?卓袱台を挟んでましたよね?
なぜか金髪美人との距離が私の顔から数センチほどしか離れておりません
「あの?申し訳ありませんが、近くないですか?」
金髪美人は一層微笑んで
「私はエリザベート、エリーと呼んでほしいわ。雪」
金髪美人さんの微笑みは破壊力抜群です
私の思考回路はショート寸前です
「えっと…エリザベートさ「エリーよ」…エリーさん」
迫力に負けました
「私は十六夜 浩介の全財産を…いえ、浩介の全財産の“管理”の説明と貴女の守護をたのまれたの」