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二章 17

なんとストレートな。

しかし、遠回しにしてしまい聞き出すチャンスを失うよりは、こっちの方がいいか。

それに、河原先輩は、幽霊騒動なんて信じていなさそうだった。

高峰先輩が怪我をしたのも悪ふざけの延長と思っているようだ。その先輩を前に幽霊騒動について訪ねでも、きっとはぐらかされる。

タイミング的には何気にバッチリじゃないの。

その証拠に、初対面というハンデを乗り越え、聞き出すことに成功した。

あまり面白くなさげに語り出す。


「丁度その噂が広まり始めた頃だ。部活終わりの部室で話題に上がって、新人戦も終わった息抜きにって肝試しをする流れになったんだよ」







「高峰、彼女と映画見やがったんだぜ」


「あ、それは処刑だわ」


「なんでだよ!」


「何観たの?エロ?」


「ちげーよ。『屍鬼弐縞』っつうホラー。前から観たいって言ってたし。ただ、気持ち悪かった」


「あぁあれね。確かに気持ち悪い。あ、だから前みんなで誘った時一人だけ拒否ったのね」


「こいつの刑罰は後にして、そういや最近幽霊がでるとか言ってたっけ」


「それ知ってる。だから警備員とか強制下校とかやってんでしょ。面倒だよなぁ」


「あ、刑罰はこいつ一人肝試しで!」


「ふざけんな、と言いたいところだが、深夜の校舎、面白そうだな」


「お、乗り気ですな。んじゃ早速本日刑の執行を」


「でも確かに深夜の校舎。合宿以来だし、面白そうだよな」


「あの開放感と面妖な雰囲気……の中を全力疾走!」


「ばーか、見つかるっつうの」


「あれ、なんかみんなで肝試しの流れに」


「ならお前は来なくてもいいぞ?」


「やだん仲間外れは!」


「んじゃ、一旦解散で来れるやつは十時にグラウンド工務室に集合な」


「あそこの柵、雑草に隠れてっけど抜け穴あんだよな」


「いくらセキュリティあげてもアナログはカバーできねーってな」


「警備員いるって話、どうする?」


「捕まる前に逃げりゃいいさ。仮にも若者なんだぜ?おっさんには負けねえって」


「はははっ、そりゃそうだ」


結局集まったのは俺を含めて5人……、あ、これ守らすなよ?で、その抜け穴から校内に侵入したんだ。全員幽霊なんて信じてた訳じゃねーし、肝試しっつっても実際は深夜の学校に忍び込みたかっただけだしな。

三年抜けて、新人戦も終わってちと頭のネジが変になってたんだよ。



「うわ、マジでくれー!」


「うっせぇ。警備員にばれんだろう」


「ラーララララー!」


「馬鹿マジやめろって!」


「てかくらーい。明かりもっと付けようぜ」


「やだ。バレる」


「もう声でばれるって!」


「なら少し黙れ!」



夜中って、妙なハイテンションになるじゃん?んで、懐中電灯片手に生物室まで行った訳よ。ま、流石にすぐ下に職員室あったりしたから少し静にな。

ま、なんも無かったけど。

暗い生物室っつうのは、結構気味悪くてな。流石に馬鹿騒ぎする気にもなれず、肝試しも一応は終わったわけだ。



その帰りだ。アイツを見たのは。



職員室の近くを避けるように、三階まで遠回りして帰る事にしたんだが、丁度、そう、階段のU字ターンの折り返し場所に、いやがった。

最初は月明かりで輪郭だけしか見えなかった。気付いた一人が懐中電灯持ってるやつに「なんかいる」って小声で伝えた。

すると、こっちに気がついたのか、階段を駆け足で上がって行った。ますます怪しいってけとで、全員ハイテンションで後を追いかけようと身を乗り出し、明かりを前方に向けた。




血まみれの古い鎧を身にまとったバケモンが俺を見下ろしていた。








「それに驚いた俺は、慌てて、んで階段から落ちてこの有様よ。しかもインフルかかるわ両腕こんな有様だわで踏んだり蹴ったり。あ、インフルはもう治ったから大丈夫」


語り終わると、深いため息。余程絞られたのだろう。あまり同情は出来ないけど。

話を聞いた限り、やはりは関係ありそうだ。5人全員がその幽霊を見たらしい。


「噂の発端になった出来事とか、知りませんか?」


「そういや、前に教師が一人階段から落ちたとか言ってたな。学年違うから誰かまではしらねーけど」


「門脇先生の事?」


カーテンの向こうから声がした。捲ると河原先輩が飲み物を両手に抱えていた。

あのおばちゃん袋くれないんだもん、と不満を口にしながら渡された紅茶を、礼をいいながら受け取った。


「まーたお化けの事?ただの見間違いでしょうに。ごめんね、妄言に付き合わせちゃって」


言葉は更に辛辣さを強め、高峰先輩に突き刺さる。うずくまる様に屈む高峰先輩のフォローをするものの、心配かけた罰と一刀両断。

擁護の仕様ありませんよ。


「それより、門脇先生とは?」


夢麻のそれより、という接続詞で止め。少年、これも青春だ。


「最近見ないんだよね、門脇先生。確か、階段から落ちて足折ったらしいけど、それ以来かな?」


「そんな先生いたか?」


「学年違うからね。橘さん達の学年の先生のはずよ」


ラッキーは連鎖する。

手がかりゼロからよくもまぁここまで掴めたもんだよ。

今日は大量。帰りにケーキでもって買ってしまおう。

幸運がまだ続くように。



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