二章 11
朝は辛い。
いや、レム睡眠からの目覚めってのもあるんだけどね、違うんですよ。
男性の身体では到底経験する事のない、そう、女性特有のアレですよ。アレがやってきてくれたんですよ。
二回目となる高校生活も一、二週間ほど経過した朝、それはいきなりやってきた。
腹部、とは少し違う、今まで感じたことのない奥底からやってくる不快感。目覚めは最悪だった。
「生理ですか?貴方には初めての経験ですね。薬でも飲みますか?」
「いやや。あんたが性別上は女性ってのを再認識したよ。何でもいいから頂戴」
「生理用品避けていたあなたが悪いんですよ。思春期の男子ですか?」
一応思春期って言えば思春期なんですよ、なんて減らず口を呑み込んで渡された錠剤を口に含む。
生理用品を避けていたのは確かだ。後悔してもしかたがない。生理用品ってのは、男の身としては仕切りが高すぎなんだよね。女性の聖域、神具の様に思ってたし。
これを使うってことは、もう自分は男じゃない。女なんだ、と認めてしまう気がして。
最後の最後に残っていた男の尊厳を棄てる、ような。
「ははは…、これで、名実ともに女性の仲間入りかぁ…」
「生理痛で滅入ってる分際で何言ってやがるんですか」
「お願い。人生初の生理痛という未知の苦しみを体験している真っ最中なんで、少しは優しい言葉を、かけてよ」
「かけてるじゃないですか。それとも辛辣な罵声の方がよろしかったですか?マゾ」
「マゾ付け加えないで。とりあえず、がんばってみますよ…で、その手に持ってる物を、どうするのかしら?」
「わかりきった事を聞いてるひまがあったら―――脱げ」
暴れる女性を無理やり押さえつけ、服を脱がそうとする同性という光景が数分の間、繰り広げられました。
実演してあげましょうか、なんていう羞恥プレイに発展仕掛けたのを止めたりしてたら、何がなにやら判らなくなってきたのでこちらが折れた。
ナプキンなだけ、よかったと納得しながら付け方などを習った。
トイレに行って、付ける、それだげのことなのに涙が出かけました。
「どうしたの橘さん、顔色悪いよ?」
「ちょっと、大人の階段を登ってきただけだから…」
「?そうそう!そういえば、あの話聞いた?」
朝の一件から大分楽になりはしたけど、まだまだ体調はいいとは言えない。まさかこれほどのものとは…。侮りが足し、生理痛。
と、そんな絶賛絶不調である中、聞こえてきたのは新しい情報。幽霊騒動に関するものだった。
「今日先生が一人欠席してるらしいんだけど、なんでも幽霊に襲われたらしいよ?」