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二章 8

ところが、首を振られた。

コップに新しくお茶を入れ終わると、一回視線を合わせ私を誘導するようにその人物の方を向いた。



副部長の河原先輩だった。




「幽霊騒動について聞きたい?確かに彼氏が『落ち武者をみたぁ!』とか言って泣きついてきたけど、本当に見たのかどうか?見間違いだと思うけど」



「彼氏さんの話ですか?!落ち武者なんて、今時珍しいですね。もう風化したのかと思ってましたよ。先輩に内緒で合コンにでも行ってバレそうになったから苦し紛れに言ったんじゃないですか?」


「みっちゃん、それは考えすぎだよ。合コンなんて、いくら秘密裏にやっても足なんて簡単に残るもん。でも、落ち武者はないですよね〜。今時お化け屋敷でも見かけませんよ」



落ち武者が既に時代に取り残されていた事に衝撃を覚えた。いや、元から時代には取り残されてるんだけどね。

それよりも、合コンがバレまくりという方が驚きだ。言われてみれば、高校生の合コンなんて、所詮は小さな範囲での出来事。集まる伝手だって短いのだからやろうと思えばすぐばれる。大体合コン好きな人は交友関係無駄に広いし。

落ち武者という単語に反応したのは、その単語を発した河原先輩。そういえば、と最近彼氏とデートした時のことを思い出した。



「そういえば、あいつと久々に映画観に行ったの。その映画に落ち武者も出てたわね」



「あ、それって最近公開延長が決まった『屍鬼弐縞』ですか?結構怖いって評判ですよね。」


「そう。好評みたいだったから観に行ったんだけど、あいつ始まるやいなやすぐに寝ちゃってね。丁度起きたところのシーンにビックリして大声出しちゃってるの。私の方が驚いたわよ。そう、それで、その驚いてたシーンって言うのが血まみれに所々腐敗して変色した落ち武者の迫ってくるシーンだったのよ。しかも、アップで」



「あぁ、あそこですね。確かにあそこも怖かったんですけど、個人的には一番は主人公とはぐれた親友が再会するシーン。初めは親友の早苗の視点で進んでいくんですけど、奈八子を見つけて駆けていって、奈八子もそれに気付いた瞬間視点が奈八子に反転。早苗がゾンビになっていたっていうシーン。あの追いかけてくる早苗は、本当にトラウマになりますよ」



本当に怖かったのだろう。言ってる彩香だけでなく河原先輩も鳥肌が立っている。

『屍鬼弐縞』というのは、最近公開され人気のサスペンスホラームービーのことであり、完成度は高く、海外の映画祭ても恐怖と悲鳴、そして喝采をあびた。私は、観たことがない。ホラー系やサスペンス系の映画は、ちょっと苦手だ。心臓が持たない。そんな苦手なものが二つ合わさったのだから、効果は二乗三乗では、すまないかなぁ。



余程トラウマなシーンだったのか、今日まだ話す前の物静かな美少女に戻っている彩香、他数名。少し、暗いです空気。



流石に耐えきれなくなり、副部長がパンッと手を叩いて話題の軌道修正を試みる。



「橘さんは、どんな映画観るの?」



「映画ですか?直接行って観たりは、あんまりないですね」



ない、というよりも高校生時代は見に行けなかった、と言った方が正しい。近くに、身近に、気軽に行ける距離内に映画館などがなかったからだ。学生の少ないお小遣いでは無理できない。大した発展もしていないド田舎地域では、無理な事よ。初めて観に行ったのが大学に入ってからだしね。

田舎ものの誰もがこういう経験をしてる、とは言えないが私はしている。故に首都圏とかには憧れるんだよね。



「なら、今から見に行く?映画。遅くなるけどギリギリ間に合うし」



「駅から、近いしね。どうします?」



「みっちゃん賛成!ジュース少なくなってるし」



「さっちゃん賛成!お菓子もうないし!」



「頃合いは、まぁいいか。で、観るとして何を観るんだ?」








「「『屍鬼弐縞』」」






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