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二章 4

「とにかく、その噂が立ってからかな。他でも幽霊目撃証言があったりしたんだよ」



「そうなんだ。二人とも部活は?」



「あやめは文芸部だけど、私は帰宅部。よく顔見に行くけどね。あそこの粗茶がおいしいんだよね〜。こう、苦くて、渋くて、濃くて、ドロっとしてなくて」



「お茶を、集りに来てるだけ。後は、漫画読んでる、うるさくて、邪魔。おかし、ボリボリ、ぎゃはは、うふふ」



「う、うるさくなんてしてないじゃん!それに、小説とかも読んでます。橘さんにいきなり変なイメージ持たせようとしないで」



お二人でお楽しみの所にバイブレーションの感覚。短いからメールかな、と携帯を開いてみるとやっぱりメールだ。



宛先ネーム、夢麻。



こんな近距離にいるなら直接聞くとかすればいいのに。そうすれば、知り合いも増えて万々歳じゃない?

そう疑問を持ちつつ、メールを開いてみる。



『幽霊話詳細多』



あれ、なにこの漢字オンリー。漢字マニアか何かですかあんたは!幽霊話まではいいとしても、詳細多ってなに?多ってなに?詳細をもっと聞き出せってか?そうならそうと打ちゃいいでしょうが!



『自分で聞けばいいでしょ。仲に入るキッカケにもなるじゃん』



送信してから気付いたけど、メール内容まで女の子だよ、私。

ちょっと前までバリバリビンビンの男子だったのにさ。順応力高ぇよ、私。ぁ、軽くあのバカやろうにいじられたんだっけ?ひどいよね〜。

ほんと、ひどいよねぇ…。

送信してからまだ一分と経たずに返信。二人には悪いと思いつつ確認。



『Zzz…』



寝てないよね!

メール送ってる時点で寝てないよね。夢麻はバレていないと思っているのか、机にふっつけて寝ているように見える。

アナタは私のサポート役じゃなかったんですか?


自惚れるな、と見下して言っておられる彼女が頭の中で再生された。まだ知り合って一週間も経ってないのにここまで彼女のパーソナリティが私の中で確立したのね。



「そのおばけ騒動で最初に見た人ってわかる?」



「あ〜、実はね。噂が一人歩きしたりして、第一発見者ってのはあやふやになってるんだよ。先生達も変にこれ以上広まらせたくないらしいし」



「数人、欠席してる人はいる。体調不良っていうけど、幽霊を、見たからって噂」



「そうそう。そういえば、家のクラスにもいるんだよね」



思い出したように後ろの入り口付近を指差す。今は昼休み中で友達同士机をくっつけたり借りたりしているため、少しごちゃごちゃしている。

なんでも最後尾、廊下側から二番目の場所に座るクラスメート『鳴海隆』が数日前から欠席しているらしい。インフルエンザにかかったため、との説明らしいが噂では肝試しをして見てしまったから…とか言われてる。


「肝試しをして、警備員に見つかった、は本当みたい。先輩の彼氏も一緒だった、みたいで。ただ、何も見れなかった、って言ってた。インフルエンザも本当みたいだし」



季節はずれのインフルエンザ、ねぇ。特別変という訳でもってないし、運が悪かった程度かな。

話だと、実際に幽霊みた人は特定されてないみたいだから、おそらくは口を噤んでいるんでしょう。噂が一人歩きして大きく成長した感じかな。

腑に落ちない点は、その幽霊は見る人によって多種多彩である点。夢麻の話だっと、カタスは一度『遊着』すると、その形を保ったままのはず。なら、誰かのイタズラの可能性も…。



まずは、もっと情報が必要かな。聞き込みと視察。夜中は、さすがに危険かも知んないから、取りあえずは保留。



と、視界を広げると二人のお弁当。小さな入れ物に形よく入っているおかず。お喋りと箸を均等に動かせているのだから、男子から見たら不思議でしかたかない。




「二人は、お弁当手作りなの?」



「ん?私は基本お母さんだよ。偶に頑張って作ろうとはするんだけど……長続きしなくってね」



「彼氏、出来ると作り始めて、別れると、終わる、よね」



「あらこの子なに言ってるのかしら〜あっ!」



「他人のおかず、とらない」



「いいじゃない。あやめの玉子焼き美味しいんだもん。橘さんも食べてみる?」



「私の、おかず」



先端に刺さった食べかけの玉子焼きが私の目の前に出される。

折角の好意だし、断るのは野暮よね。うん、折角食べてた玉子焼きをわざわざ私のために中断してくれたんだもん。そうだよね。何も疚しい事なんて無いものね。

そう、これは出来たばかりの友達、うん、同性の友達からのスキンシップ。そう、スキンシップなんだよ。

だから後ろめたいこともないし、むしろ普通。一般的。そう、日常的に行われるよくある些細な出来事さ。



それでも、誰に向けてでもなく心の中でごめんなさい、と一言入れて、食べかけの玉子焼きにかぶりついた。


私があやめ手作りの玉子焼きの味を確かめるのは、次の日の昼休みとなる。

この時の味は、残念ながらなのか味わう感覚が飛んでしまっていた。


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