二章 2
「さっきはありがとう」
本当に危なかった。転校初日一発目で大恥をかかされる所だったよ。このいきなりの窮地を救ってくれたのが、隣に座る竹原燐さんである。
授業の終わりを告げるチャイムがなった。久しぶりの高校生生活は戸惑いと焦りとピンチの三連コンボという非常に泣きたくなるものだった。いや、泣かないけどね。その代わりと言っては何だが隣に座る救世主と話すキッカケが出来たのはラッキーだったよ。
しかし、教室入った時から気になってたけど、ここ女子のレベル高くないですか?
今時の女子高生はバケモノかよ。いや、本来の意味のバケモノじゃなくて、可愛さが郡を抜いてるってニュアンスのバケモノね。
隣の娘も可愛しさ。軽く化粧をしてはいるだろうけど、元男の子な私にはしゃっぱりわっかりませんよ。
さてさて、隣に座る竹原燐さんは「困ったときはお互い様」とはにかみながら微笑んだ。少しだけ首を傾ける女の子角度だ。ヤバイ、かわいい。
自分が実は年下好きの属性を持っているかも知れないという危機感を感じさせられる程のかわいさだ。
「教科書間違えていたみたいで本当に危なかったよ。ほら、数B」
「本当だ。同じ数学なのにね。わざわざ分けなくてもいいよね」
数学の教科書の違いを話題にするのも些かどうかと思う。他に何を話せばいいのか解んないけどさ。
こうして、私の第二の高校生活が始まった。女の子で、だけど。
高校生活とは、やってるときは気がつきにくいものだけど、だいぶハードである。特に、自由度の高い大学生活を体験してしまうと、相乗効果で本当に辛い。
そうして、昼休みになる頃にはもうダウングデンとなってました。何度睡魔に負けそうになったことか。
頭しか使ってないのにおなか減ったし。糖分でも足りてないのかなぁ。
「橘さん、良かったら一緒に食べない?」
そう声をかけてきてくれたのは、隣のあのノートを貸してくれた救世主。
断る理由はないし、かわいい子と一緒に昼食なんておつりが来る程だ。勿論二つ返事で了解。と、その前に昼食を買ってこないといけない。朝は色々あって作ってこなかったし。時間なかったし。
その子に売店の場所を聞いてすぐに向かった。
教室を出た所で夢麻の事を思い出してしまった。当然、昼食など持ってきてはいないだろう。
仕方がない。ついでに買っておくか。