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一章 20

「先ほどの例は、森羅万象に存在する無意識のエスが表出した自由意識を吸収し具現化。では、自由意識が『怨み』『怒り』『妬み』といった感情であった場合、吸収したカタスはどうなると思います?」



「えぇっと…、具現化するんだから…、怨み君、怒り君、妬み君が生まれます…とか?」



「妄想と現実の区別ができないくらいの知能でありやしたか。失礼しました」



哀れんでくれるなよ!言った本人が一番恥ずかしいんだよ!

そんな私の声は聞こえるわけもなく、呆れられたまま説明が再開された。




「吸収された感情がカタスに貯まると、本来ならば具現化が起こります。しかし、感情は貴方の言った例の様には具現化できません。所詮、感情という情報でしかないからです。ですから、カタスは一定量の情報を吸収すると、今度は既に存在している個体に寄生します。動物、植物、勿論人間にも」



昔、パラサイトというアメリカの映画をテレビのロードショーで見たことがある。丁度、祖父の家に遊びに行っていた時だった。祖父の家に泊まるときは、私たちは居間に布団を敷いて寝てるんだけど、父親とセットになる。当然、いい大人が9時に寝るわけもない。当時の私は9時寝が当たり前だったのでいい迷惑だった。

その時、まだ寝ない父親が、母の弟と酒を飲みながら見ていたのが、パラサイトだった。

ストーリーは単純で、地球外生命体が人に寄生しながら逃げ回る、というありきたりなものだ。私としては、早く寝たかったのだけど、テレビの光が眩しく仕方がなしに見ていたのだが、これがとてもグロテスクだった。

特殊メイクやら小細工やらをふんだんに使い、CG処理のない時代でも十分なリアリティだ。

目を瞑っても音が聞こえ、耳を塞げば寝れず、寝ようとしても気になってしまう。まさしくトラウマと呼べる出来事。

特に、寄生した地球外生命体が人の口の中から出てくるシーンは、思い出補正も加わって今なおトラウマになっている。


一瞬でも、そのシーンが再生されてしまった。

一気に、もとからあまりないやる気が抜けていく。



「…その場合、どうすんの?」


「寄生された存在をどうにかします。感情が暴走してしまっている状態ですので、その暴走をなんとかして止めてください。それで、カタスも消滅します」



「どうにか、ねぇ。話し合いとか殴り合いとか?」



「何気にアタリです。お悩み相談みたいにちゃちゃっと解決してください」




私はお悩み相談なんてされたことないです。

しかし、それでもしていかなければいけない。私が元の体に戻るために。自分を慰めていて悲しくなってきた。


説明は以上で終了のようで、さも疲れていない筈なのに肩がドッと重くなるのを感じた。

夢麻はというと、またいつの間にか手元にあったお茶を片手に随分とリラックスしている。家主よりも快適そうだ。

ともかく、今日が疲れたのは事実。なので少し早いけど寝ることにした。丁度、正志がたまに泊まる時に使用している布団がもう一式あるので助かる。



そろそろ寝るけど、どうする?とお茶でまったりと自分の空間を構築する夢麻に聞いた。というか、寝るのかどうかも怪しい。寝ないでも72時間フル稼働!みたいなキャッチコピーが付いていても不思議じゃない。


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