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一章 16

カラオケ店から出る頃には、もう喉からはガラガラ声が掠れながら出てきていた。但し、私限定。


あまり歌ってなかった正志はいいとして、なんでこの子は平気なの? 私と同じくらい歌ってたよね? あなたの喉はオリハルコン製ですかっての。

もうため息すら濁点が付いて聴こえる。



そうそう。カラオケ店から出た辺りで気がついたことがって。隣にあるコンビニでスポーツ飲料を手に持ちのど飴の選考に頭を悩ませていた時にパッと気が付いた。


この子、夢麻はどうやって帰る?


あの語創みたいに壁の中にぬるりとか、気を探って瞬間移動とか、両手を組んでドロンと消えたりとか?

そもそも何処に帰るの。あの語創の家って何処にある?

地球上にはなくってさぁ、とか平気でいいそうだよ。火星人ってか。ならタコイカウネウネ星人みたいな姿でいなさい!

あれこれ考えても、その斜め70度をいくのはコーラからゲップへと続く方程式くらい確実なんで、聞いてみた。




「そういえば、君は何処に帰るの?」



と聞いてみると。



「今日からまずあなたのアパートに泊まり込み。これからよろしく」



と、さも当たり前のようにいってくれた。

うん、そっか。なら帰ろうか。

そんな様に受け流せたら……いや、それはそれでダメそうだ。

新発売だよ、と手書き冠満載のPOPに惹かれて選んだのど飴は、微妙だった。

納豆味なんて、こんなものだよね。喉には染みてきたからいいんだけど、口臭は気になるなぁ。



ま、いっか。このガラガラ声はあまり出したくないし。痛いし、キリキリするし、何より疲れた。

今日一日で、なんとまぁ濃厚で突拍子のない、イカれた怪奇現象を体験したんだろうか。





最も、今日がこれから始まる怪奇現象のオンパレードのプロローグだなんて、ガラガラ声でまいってた私には想像もつかなかった。


いや嘘、ごめん。なんとなくそんな気がしてたんだけど気がつかないフリをしてただけです。

改めて、女のカンの的中率には驚かされるよ。






「正志、近くのカネタで下ろして。夕飯買ってくから。どする?食ってく?」



「いや、遠慮する。俺も疲れたし、今日は早く寝たい…」



カネタとは、今住んでる地域を拠点とするスーパーマーケットのこと。評価としては、野菜は安いが肉は普通。後なかなか惣菜は半額にならない、してくれない、粘ってくる。閉店二時間前ですら、2割引とかが普通な貧乏学生にはちょっと優しくないスーパー。

その分野菜が安かったりするからおあいこみたいなもんだけどね。



私と彼女を降ろすと正志はそのままUターンで家路についた。余程疲れていたんだね。


主に気疲れが。




「それじゃ、夕飯だけど何かリクエストある?」


「リクエスト?」


「そう。まぁ惣菜買うか、野菜炒めか、あんまり手間かかんないやつね」


「特にない。といいますか、よくわからないので料理の名前を、と訊ねられても困ります。一応、いきなりずかずがと他人宅に居座るわけですから、リクエストだなんて烏滸がましい、ふてぶてしい要求なんて、3日くらいは我慢しますから」


「いや、3日って…。はぁ、もういいよ。簡単に惣菜でも…」



しかしながら、さすがはカネタ。50円引きがチラホラとあるだけで殆ど元値だよ。

自分の財布と大会議を開きながら、慎重に選ばなくては。下手に見栄をはって500円クラスを選択するのは利口じゃない。

だって二つで野口さん。更にオプションも加われば二枚目突入じゃん。

だからといって、夢麻と割勘ってのも気が引ける。女の子だしさ。




あ、私も女の子か。



それでもやっぱり、できないよね〜。なんか悪いし。

お金持ってなさそうだからというのが大体の理由ですけどね。




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