表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男なのに《聖女》に選ばれました~最強支援で剣姫たちを覚醒させ、世界を救います~  作者: 仁科異邦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/16

聖剣姫、現れる

セラとの実地検証任務が始まって三日目。

正直に言えば――胃が痛い。


「……なんだ、落ち着きがないな」

馬に揺られながら、セラが淡々と指摘してくる。

「そりゃ、隣に"その場で止める"とか言う人がいれば緊張もしますよ」


「合理的な判断だからな」

否定しないのか。

北方の魔物多発地帯へ向かう道中、セラは終始寡黙だった。

だが、戦闘になれば話は別だ。

「支援を」

短い一言。 それだけで、僕はスキルを展開する。

《祝福付与》《身体能力強化》《集中力向上》

光を纏ったセラは、まさに剣姫だった。

無駄のない動き、的確な判断。

強化の相乗効果で、その剣はまるで魔物を断ち切る閃光だ。

戦闘後、彼女は静かに剣を納めた。


「……やはり、本物だな」

「まだ疑ってたんですか?」

「今も疑っている。ただし――力は否定できない」

褒めてるのか微妙なラインだ。



その日の夕方。 僕たちはとある街道沿いの町に立ち寄った。

目的は補給と、もう一つ。

「ここで合流する」

セラがそう告げた。

「合流?」

「追加の同行者だ」

……まだ増えるの?


嫌な予感しかしない。

宿の食堂に入ると、奥の席に人影があった。

席から立ち上がり、こちらへ歩いてくる。


白銀の長髪。 王国の紋章を刻んだ制服は、丁寧に手入れされていた。

年は……僕より少し下だろうか。

「お待ちしていました、セラ・フォルティス殿」

声は凛として、しかし柔らかい。

深々とお辞儀をして、それから僕の方を向いた。

青い目が、まっすぐにこちらを見る。

「……あなたが、テイル・カトレアさんですね」

「え、あ、はい。そうです」


「第三騎士団見習い所属、エルフィア・ロッテと申します。どうぞよろしくお願いします」

また深々とお辞儀。

礼儀正しい。正しすぎる。

セラが横から補足する。

「追加の同行者だ。王家の血筋を引く見習い騎士。《聖剣》のスキルを持つ」

聖剣。


「……聞いたことある気がする」

「本来、特定の勇者にしか宿らないとされていたスキルだ。だがこいつは例外的に持っている。ただし――」


「うまく、扱えていないんです」

エルフィアが静かに続けた。

「何度試しても、力が安定しない。《聖剣》は顕現するのに、すぐに消えてしまう。……それで、噂を聞いたんです。聖女のスキルが、他者の力を引き出すと」


彼女の目は、真剣だった。

「あなたの支援で、私の剣が目覚めるかもしれないと。確かめさせてもらえませんか」

セラが腕を組む。


「王国からの要請だ。断れない」

断れないのか。

「……わかりました」

そう答えた瞬間、エルフィアが顔を輝かせた。

「ありがとうございます!」

笑顔が眩しすぎる。



エルフィアは、見た目通り……いや、見た目以上に真面目だった。

「テイルさん、聖女スキルの発動に集中力は要りますか?」

「え、まあ、そこそこ」

「食事はきちんと取れていますか? 支援系のスキルは術者の体調に左右されると聞きました」


「ちゃんと食べてます」

「睡眠は?」

「足りてます」

「では夜の見張りは私が多めに引き受けます」

「いや、それは悪い——」


「聖女の体調管理は護衛の義務です」

有無を言わせない笑顔で言い切られた。

セラが小さく咳払いをする。

「ふざけるなよ、エルフィア。見張りは交代制だ」

「でも——」


「俺が言ったことが聞こえなかったか」

「……はい。失礼しました」

しゅん、とエルフィアが肩を落とす。

セラ、意外と面倒見いいな。

その夜。 町外れで魔物の反応が確認された。

「二人同時に支援できるか」

セラが問う。

「……やってみます」

「できなければ意味がない。エルフィアの《聖剣》が安定して扱えるか確かめる、最初の機会だ」

エルフィアが剣を握り直す。 少し、手が震えていた。


「テイルさん」

「うん」

「……怖いです。また失敗したら、と思うと」

正直な言葉だった。


「大丈夫です」

「え?」

「僕もはじめてのことばかりなんで。一緒に失敗しましょう」

エルフィアが目を瞬かせた。

「——はい」

少し笑ってから、剣を前に構えた。

――やるしかない。


《全体強化》《祝福拡張》《聖剣覚醒補助》

光が、二人を包む。

「……っ!」

エルフィアが息を呑む。


剣が光った。今まで見たことのない、白銀の輝き。《聖剣》が、安定して顕現していた。

「——動ける」

セラが前に出る。

「行くぞ」

二つの剣が、夜を裂いた。


連携ではなく、それぞれの全力。 だが不思議と、二人の動きが噛み合っていた。

戦闘は、数分で終わった。

エルフィアが剣を下ろして、僕を見た。

目に、涙が浮かんでいた。


「……消えない」

「え?」

「《聖剣》が、消えないんです。ずっと、ちゃんとここにある」

彼女は自分の手のひらを見て、それからまた僕を見た。


「テイルさんがいてくれれば——私は、誰でも守れる気がします」

セラが静かに言う。

「……力は確かだ」

彼女は僕の方を向いた。一言だけ。


「‥悪くない」

セラにしては、最大限の評価だと思う。

男の聖女。 異端で、危険で、理解不能な存在。

だが——


「これからよろしくお願いします、テイルさん」

エルフィアが深々と頭を下げた。

「こちらこそ」

そう返しながら、ふと思う。


剣士になりたかった。 なのに、僕の旅には剣姫が増えていく一方だ。

……まあ、なるようになるか。

こうして旅の一行は三人になった。

この旅は、まだまだ始まったばかりである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ