第25話:そして、日常が始まる
あれから、一ヶ月が過ぎた。
第7ブロックの空は、まるで何事もなかったかのように青く澄み渡っている。
地上では復旧作業が続き、街は少しずつ、だが着実に元の姿を取り戻しつつあった。
僕は、時空間物理学部門の施設にある屋上庭園のベンチに座り、その光景をぼんやりと眺めていた。
胸には、真新しいセキュリティID。
あの日以来、僕の職場はSPトレンドシュア社から、この世界の真実を管理する場所へと変わった。
時々、田中君や鈴木さんとメッセージのやり取りをする。
二人はあの後、会社を辞め、カウンセリングを受けながらも、別のIT企業で元気にやっていると笑っていた。
『リーダーも、大変でしたね』と気遣ってくれる彼らに、僕は本当のことは何も言えない。
(……綺麗だ。だけど、時々、分からなくなるんだ)
復興していく街の風景が、ふと、あの日のサーバーフロアに横たわっていた、鉄の棺桶の山と重なる。
腕の中で意識を失ったリュナの温もりと、自分の指示で死んでいった兵士たちの、無数の亡骸。
あの日、僕は世界を救った英雄なのか。
それとも、仲間を犠牲にした、ただの人殺しなのか。
その答えは、まだ見つからないまま、鉛のように重く、僕の胸の奥に沈んでいる。
「愁也さん、お待たせしました」
声に振り返ると、リュナが紙コップを二つ持って、こちらに微笑みかけていた。
彼女が着ているのは、もうあの冒険服ではない。
こちらの世界で選んだ、ごく普通のワンピースだ。
「これ、どうぞ。ここの自販機で買える、甘いやつです」
「……ありがとう」
受け取ったのは、僕が時々飲んでいたミルクコーヒーだった。
彼女もすっかり、この世界の日常に馴染んでいる。
「正式な配属、おめでとうございます」
「全然めでたくないよ。前の仕事より、ずっと大変そうだ」
僕が軽口を叩くと、リュナはくすくすと笑った。
その笑い声は、一ヶ月前には考えられなかったほど、自然な響きを持っていた。
「でも、それが愁也さんの新しいお仕事なんでしょう?
私の保護と、この『魔法』のシステム解析。
私にしか使えないこの力を、どうにかして他の人でも使えるようにする研究だって聞きました。
……まあ、まだ全然、成果は出てないみたいですけど」
そう、それが僕に与えられた新しい日常だ。
彼女という存在と、世界を揺るがしかねない「魔法」の秘密を守り、解析する。
それは、かつての僕が想像もしなかった、途方もない責任だった。
「リュナさんは、本当に良かったの? こっちに残るって決めて」
僕は、ずっと聞きたかったことを口にした。
彼女は、僕の隣に静かに座ると、熱いコーヒーをふーふーと冷ましながら、まっすぐに前を見つめた。
「故郷に、私の居場所がないわけじゃないんです。両親も、友達もいます。
でも……逃げ続けた結果、この世界の人たちを巻き込んでしまった。もう、誰かが傷つくのを見るのは嫌なんです。だから、今は……そうですね、ちょっとだけ、こっちの世界に留学しに来てる、みたいな気分です」
彼女は、寂しそうに、でもどこか吹っ切れたように、そう言って微笑んだ。
彼女は自分の意志で、この世界に留まることを選んだのだ。
僕たちは、しばらく無言で、復興していく街を眺めていた。
敵は撃退された。
世界の接続は、ひとまず断ち切られた。
だが、根本的な解決には至っていない。
いつか来るかもしれない、
さらなる脅威に備えなければならない。
そして、僕たちはまだ、いつか彼女が故郷に帰れる日を諦めてはいなかった。
「さて、と」
僕はコーヒーを飲み干し、立ち上がった。
「そろそろ戻ろうか。今日も、魔法の解析が待ってる」
僕は、少し意地悪く付け加えた。
「リュナさんにも、歴代魔法少女の杖で魔法を使ってもらわないとね」
げんなりした顔で、リュナは言った。
「五十本以上ありますよね……。この世界の人たち、物語を作りすぎじゃないですかね?」
「まあね。どうしても続けられなかった時期を除けば、ほぼ毎年新しいのが作られてる、超長寿シリーズだから」
僕が肩をすくめると、リュナは呆れたように一つため息をつき、そして、やっぱり楽しそうに笑った。
「はいはい。分かりました!」
激動の一ヶ月は終わった。
そして、僕と彼女の、新しい日常が今、静かに始まろうとしていた。
【事件から一ヶ月】第7ブロックの魔法少女って何だったの? 6スレ目
1: 名無しの市民さん
公式発表は「外部テロリストによる大規模な生物兵器テロ」で確定。
SPトレンドシュア社は、最初の被害者ってことになってる。
だが、あの中継映像……どう見ても魔法少女だった件について語ろうぜ。
前スレ:[link]
...
148: 名無しの市民さん
……あの子のコスプレ、いまだに謎なんだよな。
衣装は『エルダー・クロニクル』の賢者リディア。
杖は『魔法少女ミラクル・ラパン』。
この組み合わせ、どんなオタクに聞いても「解釈違い」って言われる。あまりにもチグハグすぎる。
152: 名無しの市民さん
>>148 だろ?
しかもあのリディアの衣装、ガチ勢の特注品か、数年前に出たシリアルNo.付きの公式レプリカのどっちかだぞ。俺、レプリカ持ってるけど、ちゃんと黒檀の『賢者の杖』がセットだった。なんでラパンの杖なんだよ…
159: 名無しの市民さん
>>152 ってことは、賢者の杖も持ってたけど、戦闘中に壊れたから、予備のラパン杖を使ったとか?
163: 名無しの市民さん
>>159 逆じゃね? ラパン杖がメインウェポンで、リディアのコスプレはただの趣味。たまたまその格好で事件に巻き込まれただけ。
170: 名無しの市民さん
>>159 それに近いw ラボの連中が最初の実験で本物の方をぶっ壊したって話だぞwww そんで慌てて予備の玩具使ったとかwww
175: 名無しの市民さん
>>170 また知ったかぶりか。ソース出せよソースを。
181: 名無しの市民さん
>>170 「○○って話だぞ」←ソースは俺
188: 名無しの市民さん
まあ、>>159の戦闘中破損説が一番ありそうだな。
...
223: 名無しの市民さん
そういや、トラックに乗ってたっていう警備隊はどうなったんだ?
周りは精鋭の軍人なのに、一人だけ警備隊の装備だったの、あれはなんだ?
240: 名無しの市民さん
>>223 SP社の生き残り社員だよ。最初の事件の当事者で、ビル内部の案内役として軍に協力してた。今は機密保持でどっかに保護されてる。
245: 名無しの市民さん
>>240 ソースは?
248: 名無しの市民さん
>>245 又聞きの又聞き。信じるなよ。
...
301: 名無しの市民さん
そもそもSPトレンドシュア社自体が、ただのIT企業じゃないぞ。あれ、時空物理学部門のダミー会社だろ。世界シミュレーターってのも、ただのゲームサーバーじゃなくて、もっとヤバいもんを「観測」するための機械だって噂。
304: 名無しの市民さん
>>301 出たよ陰謀論w 中二病乙。お前みたいなのがいるから、真実が埋もれるんだよ。現実を見ろ。
315: 名無しの市民さん
>>301 ヤバすぎてクビになった元研究員が酒場で愚痴ってたとかそんなレベルだろ。
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381: 名無しの市民さん
つーか、お前ら分かってないな。動力源はバッテリーじゃねえよ。「想い」だよ。俺たちの「ラパンを愛する想い」があの杖に力を与えたんだよ。一種の集団的無意識、タルパみたいなもんだ。
385: 名無しの市民さん
>>381 オカルト板に帰れ。
386: 名無しの市民さん
>>381 ファンの想いで動くなら、もっと売れてるロボットアニメの武器使った方が効率いいだろjk
399: 名無しの市民さん
>>381 キモすぎワロタ
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451: 名無しの市民さん
てかテロリストの目的も謎だよな。内部にいたダチの話だと、あいつら初日に必要に何かを探してたらしい。なんかでかい化け物がビル突きぶって出てきたときもその化け物が、誰かを追いかけてたって聞いたぞ
455: 名無しの市民さん
>>451 映画の観すぎw 普通に考えて無差別テロだろ。
...
502: 名無しの市民さん
結局、あの子は今どうしてるんだろうな。
508: 名無しの市民さん
>>502 英雄として表彰……されてないのが答えだろ。間違いなく、軍かどっかの施設で「研究対象」として軟禁されてる。
515: 名無しの市民さん
>>508 うわ……闇深すぎ……
521: 名無しの市民さん
>>508 やめろ、夢がなくなるだろ!
...
655: 名無しの市民さん
まあ、何だっていいさ。
街は復興してるし、平和が戻ってきた。
俺たちにとっては、あの子が魔法少女だろうが軍の兵器だろうが、街を救ってくれたヒーローであることに変わりはない。
...
989: 名無しの市民さん
結局、あの子は可愛かった。それが全てだ。
994: 名無しの市民さん
>>989 それな。
1000: 名無しの市民さん
1000なら魔法少女、俺の嫁。
とりあえず、なろうとarcadiaで14年前はエタったけども、今回は何とか…ひと段落ですね。
読み専になっていてすごく腕がさびていたことを実感します。
前後関係が途中でどんどんずれていくし、理由って書いていたっけとかですね。




