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僕はクラスメイト三人と共に


かんかん照りの昼過ぎ、母さんに言いつけられた買い物をしに、錆びついた自転車を押して坂を登る。



開発されたニュータウンという謳い文句でも、周りは山に囲まれている町だ。

少し中心地から離れれば、道はやたら長くなり、坂はやたら急になる。



ゆらゆら、陽炎が揺れているような、熱く熱されたアスファルトを恨む。


ゼハー、地面に汗を落としながら歩いていると、坂の向こうから親子が現れた。



明るいワンピースとつばひろの帽子を被った女の人と、ぴょんぴょんスキップするように歩いている小さな女の子。


女の子は幼稚園生くらいで、なにやら楽しそうに歌いながらアイスを手に歩いている。




良いなー、僕もアイス食べたい。クーラーガンガンの部屋で。


多分坂向こうの店で買ったんだろうな。僕もアイス食べてから帰ろうかな。



そんなことを考えながらノロノロと自転車を押し、遮蔽物のない灼熱の道路を歩く。



ミーンミンミン、ミンミン。

鳴きわめく蝉の声と、微かに聞こえる女の子の声。



暑さから自然と目は焼けた道路ばかりを見てしまうが、別に挨拶しなければならないこともない。


汗だらけだしこのまますれ違おうと足を進めれば、




ウサギのように髪を結い上げた女の子と、少し遅れて歩く女の人が僕とすれ違った。




「────」





白いワンピースは薄汚れ、腕が力なく揺れている。



明らかに、異様だった。


女の人の腕は──普通の人の腕の、二倍は長さがあった。それに、肌が木乃伊のようにカラカラに乾涸びている。




「それでね、それでねっ、さっちゃんつみきあそびしてたの、そしたらねこさんがこっちにおいでよっていってくれたからあゆみちゃんが───」



それに、女の子は親に話しかけているのではなく。


楽しそうに、歌うように、次々に言葉を発し、けれどそれに返事を求める様子はまるでなくて。





「…………きいてる?」





ふいに、ぐりんと。


女の子が、僕の方を向いた(・・・・・・・)




「っ、あ、あぁああッッッ!!?」



思わず喉から悲鳴が漏れる。

女の子の頸が、関節を無視した動きで僕を向いたから。




僕は彼女を直視しないよう、全力で走り、坂を駆け上がった。


頂上まで来ると、錆びた音を上げる自転車に跨り、買い物なんて知るかとばかりに目的地を無視して、下り坂を全力で下る。



耳元で風が唸り、全身にかいた汗を冷やしていく中後ろを振り返ると。


そこに親子の姿はなくて、それだけが救いだった。





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