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至上の無名光術師の苦難  作者: 八指犬
23/23

23章 泥濘前の破断

余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。

また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。

 1節 繰り返しの要請

 

 翌朝、ユッミルは事務所に向かう。依頼内容が決まり切らないそうだが依頼の地区は分かったそうなのでユッミルはその地区を偵察がてら散策する。昼前には密かに月の塔に侵入して調査するがナーレらしき人物は見当たらない。昼過ぎ、昼食の裏で食べるがナーレは居ない。ナーレはそもそも産機が近く、休むだろう少し仕事を手伝うと宿舎に向かう。

 「ミューレさん、どうしました?」

 「お話が有ります」

 「私は仮眠室に用事があります」

 「奇遇ですね。私もそこであなたと話そうとしていた所です。来ると思っていました」

 「ナーレさんの居場所を知ってるのですか?」

 「ええ、そこに居ますよ。前来た時も実は居たとか?」

 「さて、どうでしょう。たまたま会わなかっただけでしょう」

 「まあ良いです。話は聞きますよ」

 「ユッミルさん、残念ですけど火の側室よりナーレさんがお気に入りの様ですね」

 「かもしれませんね。エッヒネ様は都合でお断りしただけで除きますが」

 「ナーレさんは月の塔が近いここの方が居やすいのでは?」

 「子供ができて落ち着くまでは使者の任務は頼みません」

 「その後はどうです?」

「今の家でも遠くは無い」

 「ですがナーレさんがそうしたいならどうします?」

 「それなら構いません」

 「ですがナーレさんは言いにくいでしょうね」

 「分かりました。前向きに検討します」

 「ではナーレさんに会いに行きましょうか。今の内容、聞こえたかもしれませんけど」

 「問題ありませんね。要求が上がるかもしれませんが」

 ユッミルは奥の部屋に向かう。

 「ナーレさん、しばらく隣の部屋で待っていて下さい」

 「大した話は嫌なのですが」

 ナーレは横の部屋に行く。

 「では話しますか」

 「あの、僕ってそんなにそう言うのに弱そうに見えます?」

 「いえ、逃げの言い訳にしそうなので分かりやすい意思表示です」

 「その気はないと言いましたよね?脱がせておいてしない不義理男とでも?」

 「まさか、確認したい事があるのです。ここの運営の話ですが後継者は時間が掛かりますが子供はどうでしょう?」

 「そう来ますか」

 「はい、実際に数十日程度私が動きが鈍っても問題は無い。むしろ後継者の方が問題です」

 「言い分は分かりますが生まれた子供の意思も問題です」

 「ユッミル様の意向なら無理強いはしません。しかし、子供がそうしたいなら問題は無いですよね?」

 「理屈はそうですがあまり気は進みません」

 「子供の世話なら問題は無いです。ユッミル様の側室や私の側近がいれば賄えます。マッラもいますしナーレさんも前向きでしょう。私も交代で世話に参加します。業務に支障が出ない程度ですが」

 「ネメッカ様の許可等を得ないと。いえ、ミューレさんに側室の中でも低い地位を与えてしまうのでいずれ不満が溜まってこの店の運営が崩壊しかねない」

 「失礼ですね。ですがそうですよね」

 「分かってくれて幸いです」

 「はい、結局、私が女として魅力が無いから低い地位は決定的。悲しい現実ですね」

 「私の側室は順番もあります。それに他の人との可能性を潰してまでは不要です」

 「他の人ですか?本当に可能性があると思ってます?」

 「忙しいので高いとは思っていませんが」

 「そうでしょうね。ですからそれは気にしなくて良い。それに業務が止まると言っても大きな支障は無い」

 「ありますよ」

 「ですが他の人とくっついても業務に支障は出ますしそれどころかここ辞退をやめる可能性もある。だとすれば早めに囲って逃げられなくすればいい。しかも相手も乗り気なのに。そうであるにも関わらず頑なにしないという事は私に他の人の芽が無いと知っているからですよね?まあ良いですよ」

 「ですから他の人とくっついたらそれは止めませんよ、駄目でしょう」

 「ですが私はあなたとしたいと言ってるのです。意思を尊重と言うなら相手頂きたい。それをしないのはどうせ誰とも無いからずっと働かせておけばいいという事ですよね。良いのですよ」

 「ふう、分かりました。正直に言いますとあなたは頭が良いのですがそういう女の人は裏切ると怖いのです。しかも悪気なく裏切る可能性だってある。ですから困るのですがどっちにしろ恨まれるのでしたら、良いです。やって恨まれます。あなたも言った通り、子供ができたらお互い逃げられませんよ」

 「ようやく理解できた様で助かります。ではせっかく私が脱いでるのですから早速しましょう」

 「逃げませんが一つだけお願いがあります。エッヒネさんにばれない様にその辺り上手くやって下さいね」

 「もしできたら隠せ…そういう事ですか」

 しばらくしてユッミルはナーレのいる隣の部屋に行く。

 「ナーレ、ここで産むの?」

 「できれば、ミューレさんに勧めて頂いたので」

 「分かりました。そうなると他に先に控えてる方も居ますからあまり会えませんよ?」

 「そうでしたね。考えておきます」

 「直前に移動はできませんからね」

 「はい」

 ユッミルは家に帰る。ナーレの発見を報告する。

 「やはりこの子の出産は大所帯で報告しましょう。イーサとフェノも呼びますよ」

 「私も多分、動ける。ゆっくりになると思うけど」

 「レヒーハさん、申し訳ないですけど当日、回復をお願いします」

 「もちろんです」

 夕食はファッリーユとトキホを膝に乗せてテーファ母子とネメッカ母子を両脇にして食事する。お風呂はテーファと二人の子供と入る。

 「ユッミル君、そろそろこの子の名前、お願いできるかしら?」

 「そうですね。どうしましょうか」

 「難しい?」

 「えっと、リーシキはどうでしょう」

 「リーシキ?そうしますね」

 「ではそうしましょう」

 ユッミルはチェーハとネメッカと寝る。

 翌朝、ユッミルは何かの感触と引っ張りで目を覚ます。

 「ねえ、起きないの?ああ、起きたわね。仲良くしましょうよ」

 「ああ、駄目です。勝手に脱ぐ女は嫌ですよね?」

 「ネメッカ様ですか。相変わらず良い体ですね」

 「寝ぼけてるわね。どうせ寝ぼけるなら何処かを間違って掴めばいいのに」

 「申し訳ないですが別の女性に抱かれてるので無理ですね。それにしてもチェーハはもうすぐなのに元気ですね」

 「寝れば大丈夫ですよ。それより寝起きの男性に迫るなんてはしたないですよね?」

 「そうですね。朝食が食べたいです」

 「ユッミル、確かに我慢できない女だけど今更ね。もう挨拶と思って好きに触ってあしらえばいい」

 「ユッミルさん、私も今はこれですけどこういう女はいらないです。無視しませんか?」

 「いえ、その必要はありません。ネメッカ様、子供の教育に悪いので塔で二人の時に願います」

 「そう言われたら引き下がるけど良いの?あなたのその太ってる人とはしないというルールだと子供居ない子とする機会が増えて子供がどんどん増えると思うけど」

 「私の意向も大事ですがネメッカ様はどうなのです?」

 「一人目は仕方ないけど二人目は簡単に産ませないで欲しいし三人目は絞って欲しい。四人目は私の子が出来るまで待って欲しい。でも基本的にはユッミル次第よ」

 「二人目はリュッサとテーファさんですね。メシャも近い」

 「そうね。ユッミル、上手くやってるのね」

 「ええ、シウさんが飽きてくれて良かったですよ」

 「私はそう簡単に…けどユッミルを困らせたらダメだしネメッカが産めなくなるまでは大人しくしてるから頑張ろうね」

 「ユッミルは私が脱落しても逃げられないみたいですよ?」

 「その頃にはこんな大所帯では無くなってますよ」

 ユッミルは朝食後に店に向かう。事務所で業務内容を確認し、街で調査をする。大きな成果は無く昼過ぎに店に戻る。

 「火に染まり始めましたね」

 「確実に染める為に今日か明日でも良いですが泊まってくれませんか?」

 「ところで今回の一件、団に報告しても良いですか?」

 「ネメッカ様は私如きに嫉妬はしないでしょう」

 「それはそうですがイーサさんには別です。ちゃんと服を脱いで脅した事を言って下さい」

 「仕方ないですね。明日辺りに伺って許可を得てもう一度しましょう」

 「前回ので駄目なら良い機会ですし諦めません?ちゃんとしましたしあれでダメなら次も駄目ですよ」

 「私が女として死んでると?」

 「そうは思いませんが3回もして駄目ならミューレさんが可哀想です」

 「ユッミルさん、あんな手を使ってまで口説いた私にユッミルさん向けの恥は今更です。理由にはなりません」

 「分かりましたが明日とか具体的な約束はできません」

 「それで良いです」

 ユッミルはマッラ母子とエコ母子と遊ぶ。やはり這っている。

 「火の子達は活発ですね。やはりあの家だと限界ですね」

 「分からないけど子供が多いと見張って抱き上げてるとかじゃないかしら?」

 「そうかもしれませんね。ただ、長女は立派に歩いてますが」

 「随分と早いですね。うちの子は数歩歩くのがやっと」

 「ええ、それ位で良いと思います。長女は一つ上なので」

 「そうなのですか。ネメッカ様の長子よりも早いのね」

 「ただ、長女に関してはネミークより先である事を無用に口外する気はありません」

 「心配は無用だと思うけど良いわ」

 「では帰りますね。夜まで居ると嫌な予感がしますので」

 「あら?私が守ってあげても良いわよ?」

 「では今度ここに泊まらないといけなくなった時にお願いします」

 ユッミルは塔に寄って家に戻る。イーサ曰く光の団でチェーハの次は自分の可能性が高いからチェーハの事が済んで数日程度でもう一度来るように言われる。

 「ユッミル、明日の朝の指揮所はどうしましょうか?」

 「良いですよ」

 「私はユッミル君の方が居て欲しいけど」

 「リーシキの世話と指揮所だとユッミルは指揮所ね。そもそもここに居たら私もそうだけど大した用も無いのについユッミルに子供を餌に甘えてしまう。指揮所に言ってもらった方が良いわ」

 「ネメッカ様、行きますからその位に」

 「そうね」

 夕食はテーファとネメッカを参考にオーネと赤子の世話をする。机の角にテーファとネメッカ、ネメッカの横にシャーユ、ユッミル、オーネの順に座っている。ネメッカの膝にはネミーク、ユッミルの膝にはファッリーユ、シャーユの膝にはトキホが座っている。ユッミルはネメッカとシャーユとトキホを気にしつつ、生まれたばかりの赤子の世話をする。

 「大変だな」

 「すいませんがフーニャさんに付き合う余裕はありません。ファーちゃん、偉いね」

 「ユッミルも良い子」

 「そろそろ食べる?」

 「まだダメってママが言ってた」

 「うん、パパよりママの言う事を聞こうね」

 「パパ?」

 「ユッミルがパパだよ」

 「ユッミルはおとーだよ」

 「えっ、あっ。おとーだね。うん、おとーだ」

 「ママはママなの?」

 「うん、ママ」

 「ママの好きな人はパパだと思うよ」

 「パパって誰?」

 「気にしなくて良い」

 「うー?ママってユッミル以外に好きな人いるの?ウワキ?」

 「浮気してるのはおとーだね」

 「ウワキしてもファーがいれば安心だって」

 「ファーちゃん」

 「何?」

 「そこの人は知ってる?」

 「チョージョ、強い、ファーがんばう」

 「そうじゃなくてネメッカ様」

 「ネメさん?おとーを困らせるひと」

 「良く知ってる。偉いね」

 ユッミルは優しくファッリーユの頭を撫でる。

 「パパ、シャーは困る人じゃない?」

 「まさか。いや、シャーは困る人じゃないよ。トキホを見てくれてありがとう」

 「トーちゃん、良い子良い子」

 「シャーユは偉すぎる。大丈夫か」

 「だーじょうぶだよ?どうしたの?」

 「ううん、パパって何かを分かってくれたら言う事無いけど」

 「むー?うー。パパはママを抱っこする人。もっとして欲しいって言ってた」

 「そうだね。ネメッカ一味がいな…」

 「ユッミル」

 「パパはシャーユも抱っこするけどね」

 「シャーはもう良い。ママ、抱っこして」

 「シャーちゃん、甘えて良いからね」

 「うーん?シャーはパパ好きだよ」

 「パパも好きだよ」

 ユッミルはファッリーユとベーニュとさっさと風呂に入る。ユッミルはレヒーハ母子とリュッサ母子を両隣にターヒョやメシャーナの近くで寝る。

 ユッミルの耳に朧気に誰かが服を脱いでる音が聞こえてくる。

 「ネメ…シウ?いや…」

 ユッミルは赤子を起こさない様に消え入る様な声で呟く。

 「ユッミル君、良いかな?」

 テーファは膝をついて耳元で囁く。この家は布団が常に多めに用意してあり、基本的に空きはある。子供が泣き出すと少し離れた布団で宥める等は日常茶飯事でその音はエルネを中心に光の術師の誰かが止める。夜中の世話担当はリュッサやエルネが多い。ユッミルは静かにテーファと皆の並びから外れた布団の所に行く。少し離れた所にオーネはいるが比較的人の居ない所で座る。

 「脱がせて始めたかったのですが」

 「うん、私は上手くないね」

 「私は良いですけど生まれたての息子から目を離して良いのですか?」

 「良くは無いけどしたいから」

 テーファはユッミルを抱き込む。

 「分かりましたけど脱ぎますから」

 「いい。本当はユッミル君、いつも空いてるよね?」

 「テーファさんにさせられたら…風呂の分の時間は確保しますからね」

 ユッミルとテーファは一頻り触れ合うと一緒に風呂に入る。しばらくするとリュッサ母子やメシャーナ母子にベーニュやオーネ母子にシウ母子がやってくる。

 「風呂、そんなにうるさかったですか?」

 「ええ、何か起きてしまったわ」

 「一緒に入って良いですよね?テーファさんだけずるいです」

 「シャーユを入れてあげて」

 「メシャ、シャーちゃんは求めてない」

 「入るよね?」

 「はいうー」

 「短時間は悪くないと思いますよ」

 「ユンルクはとりあえず構いません。ただ、風邪とか引かせない様にリュッサさんは駄目です」

 ユンルクはさっと入って上がる。

 「シャーユも同じで良いわよ」

 「やめておこう」

 「えっ?」

 「私はどうです?」

 「シウさん共々、構いませんが長くは入れないですし誘惑して指揮所に遅れたら所属団に注意してもらいます」

 「テーファは良いの?」

 「そろそろ上がりますよね?」

 「そうする。ユッミルの服、取ってくるね」

 テーファは三段重ねの箱からユッミルの服を出す。ベーニュはいつの間にか脱いでいる。

 「風呂は時間切れですけど無防備なので少し抱いておきますね」

 「そんな事をしてお預けは酷いですよ」

 「指揮所ですから」

 ユッミルは指揮所に向かう。リュッサも付いて来てフェノに送られてきたユーカも付いてくる。更に水の幹部枠はミーハであり、指揮所の下で合流する。ユッミルが指揮所に着くと一瞬幹部でもないのに高い魔力を感じる女っぽい術師に気づく。もう一人の幹部枠は見知らぬ月の男性であった。

 ミーハが何故かサーナの話をするのでユッミルは不可解だったが適当に返事をする。サーナも順調に立てる様になって会話も出来る様になったらしい。

 任を終えるとユーカを塔に送る事になったがリュッサもミーハもそのままついてくる。ミーハがいる関係上塔の内部には入らず家に向かう。

 「サーナがいるのだけど」

 「ムヒューエに送ってもらっただけだよ」

 「サーナも大変ですね」

 「月の塔より少し遠いだけだし大した距離じゃない」

 「で、だとすれば尚不思議ですが何故指揮所でサーナの話をしたのです?あそこはああいう話をする場所じゃないでしょう」

 「牽制よ。よその団の女がユッミルに近づかないようにね」

 「それなら構いませんが」

 「けどユッミルのせいじゃない事は気にしなくて良いわ」

 「さて、サーナちゃんの成長を確認する為に話してきますね」

 翌日、ユッミルは早朝から探偵業務をこなす。朝食を店で食べると店近辺を見回る。

 「防犯面が気になります?ナーレさんがいるからですか?」

 「そこまででは無いですよ。それよりもいっそテーファさんを置いてしまう可能性を考えています。ここはやはり月の塔に近いですから」

 「ただ、自慢では無いですが私の取り巻きの火の術師が見回りをしてますし月の術師にも協力頂いてます。その辺りが不足した時は氷の術師さんに夜勤をお願いしています。心配が過ぎますよ。もちろん、ユッミル様が泊まれば一安心ですが。見回りの仕事はユッミル様への通報だけになりますし」

 「そこは心配していません。魔族はどうです?」

 「北西の工事の進捗は上々です。この工事は光の塔への西からの襲来から守る事にも繋がります。この店の西は月の塔ですから。そして、北は少し遠いですがあなたの家ですね。手前は東寄りに冒険者の宿ですね。北東は森ですね。ここが問題なので木の団と情報交換してます。ユッミル様の店なので円滑に進みました。森の反対側から東は水の領分ですね。南東は木の塔ですね。少し遠いですが。この辺りは地味に術師の監視が効いています。火の術師も居ない訳では無い。南は無性の街ですが、手薄ながら火の術師も居ますし正直言って無性の街に気づかれずに入る事は可能ですが魔族に動きがあった事を察知する前に入るのは例の工事でより困難になったと思います。無性の街首脳部にはもっと感謝して欲しいものです」

 「私とか言ってますがミューレさん自身の為も大きいのでは?」

 「否定はしませんが私に近い子達はできる限りと言うのもあります。ユッミル様はご存じないでしょうがその点でマッラの常駐は心強い」

 「確かに優秀ですが」

 「施設を燃やさずに躊躇なく処理できるのは心強いですよ。シウには近づかれたくないですね」

 「外に出せば大丈夫でしょう」

 「ええ、シウなんて外で見張りをさせておけば良い。実際、光術師の目があれば防衛範囲は広い」

 「街が燃えますよ」

 「路地の石畳や壁の石積みが溶ける程度であれば魔族を仕留めてくれる方が有難い」

 「ですが理想は草原での活躍でしょう」

 「草原での活躍はあなたの面制圧やシェンハ様の敵のみを止める一方通行防御には敵いません。リッネ様の範囲支配も中々ですがあれは正面防御ですね」

 「では何を?」

 「集会所の傍の北の大通りに真っ直ぐ火を撃ち込むのが最高ですね。そこは魔族襲来時はどっちにしろ補修するのでシウが壊しても問題無い」

 「壊すのはシウさんだけでは無いですよね?」

 「シウの術は密度が高くて爆発も起きるから壊れるの」

 「格が違いますか?」

 「ええ、森の木に使うと中途半端な貫通力で燃え上がる。普通の術師はそうはならない。まして路地の石畳を溶かすのは無理。攻撃範囲の狭さがシウの弱みだけどね」

 ユッミルは帰宅する。チェーハとターヒョはあまり元気が無い。やはりレヒーハでは回復量が足りない様だ。少し魔石を投入する。ユッミルはシャーユを預かってテーファ母子やフーニャ母子と過ごす。

 「おとー、てー」

 「ん?」

 ファッリーユはユッミルの手を抱く。

 「ママのまねー」

 「ママはー、これおとー以外にはしないよね?」

 「もちろん、当たり前だよ。ユッミル君、酷い。そんなに心配なら連れ回せばいい。ファーちゃんもおとー以外にはしたらダメだよ」

 「うー?」

 「てーはおとーだけ」

 「ままーも?」

 「うん、ママも」

 「そーする」

 ユッミルは夕食後、テーファ母子と風呂に入るのでファッリーユの服を脱がせていく。

 「テーファさん?入らない?気が変わりました?」

 「ユッミル君が脱がせて」

 「ええ、それは構いませんけど」

 「ユッミル君、私、触っても怒らないよ?」

 「分かってはいますけど」

 「ありがとう。脱いでる方が抱き合うのに良いよ?」

 「分かりましたから今は入りましょう」

 「そうね。ファーおいで」

 「ファーも、おとーだくしめる」

 「おいで」

 ユッミルはその日はベーニュと寝る。

 翌朝、ユッミルはシャーネとシャーユを両脇にしてファッリーユを膝に乗せて朝食にする。トキホはシャーユの膝に座っている。食後はリュッサ母子、フーニャ母子を加えて話をしていく。ユッミルは昼食後に調査に向かう。進展はあったが大きな成果は無く、夕方頃に塔に向かう。主導部屋ではイーサが休んでいる。

 「どうですか?」

 「問題はありません。元気ですよ」

 「光の塔の側室は見事に太ってますね」

 「そうかもしれませんね」

 「そういう事なのでその中でも一段と太ってるイーサさんをカノールと見守る事にしましたが大丈夫ですか?」

 「他の子も見てあげて下さい」

 「もちろん、それもしますが基本はあなたですよ」

 「お気になさらず」

 「やはり私には興味が無いという事ですか?隣に居ても嬉しくないと?」

 「そんな事は無いですが」

 「カノールを連れてきますね。少し遊んでからですが」

 ユッミルはイーサと遅めの夕食をとる。主宰部屋で別の子を風呂に入れるのを手伝うと以降は主導部屋でイーサに添い寝する。

翌日、子供と遊び、仕事を少ししてとリュッサの第二子とユーカ母子と帰宅する。

 「明日はまた狩りですが」

 「私、復帰するわ」

 「ええ、お願いします。今回はネメッカ様にお守りと術の手本をお願いします」

 「ユッミルが前衛なのね」

 「はい、フェノも呼びますが本来、手本としてはネメッカ様の方が相応しい。ズードをお願いします。今回は近接戦力が不足していますが近接戦力が十分確保できれば私がフェノと後衛に回って手本になりますから」

 「ユッミル、悪いわね。光の団に近接戦をできる子が少ないから。ユッミルに抜けられたら光はきついわね」

 「抜けませんよ。それに抜けるとしてもネメッカ様には止められません」

 「そうよね。ユッミルは私の事、大して思って無いわよね」

 「いえいえ、ネメッカ様は魅力的ですがそれとは関係無く団には居ますよ。ただ、それを上回る事情はどうしようもないです。もうネメッカ様は過度に気を遣わなくて良いですよ」

 「ユッミル、もう三人目がいるのよ?あなたが嫌でもこの胸からは逃げられないの。離婚して退団しないとこの胸はやってくる。私、ユッミルの事は好きだし光の主宰としても必要なの。私から離す事は無いわね」

 「分かりましたから今は離して下さい」

 「私も連れて行くのよね?」

 「その予定ですが無理なら構いませんよ」

 「じゃあ褒美として今日は私と風呂ね」

 「そうですね。最近は子供ばかりでしたから良いですよ」

 「ありがとう。嬉しいわ」

 「それは良かったです」

 ユッミルはネメッカとオーネ、テーファ、リュッサの赤子の世話を母親とする。

 「カッサやトキホもまだまだ小さいですけどね」

 「けどもう自分で動いてますよ」

 「ここ十日程で三人というのは駄目ですよね。ネメッカ様、夫はしっかり躾けないと駄目ですよ」

 「私もこんなお腹をしてますし説得力が無いので無理ですね」

 「そう言えば塔の人はほぼ膨れてましたので今なら居ても子供は増えませんね」

 「ごめんなさい。私の側近の教育がなってないせいで。でもそれは良いかもしれないわ。私もユッミルを誘わない様に戻らない事も増やすわ」

 「あの、明日は狩りに行きますが近い事は近いのでしばらくは塔に泊まらないかもしれませんのでネメッカ様にお願いしたいです」

 「はあ、ユッミルに膨れ腹を見られない様にと言い聞かせて我慢します」

 翌日、ユッミルはフェノ、シャーネ、ベーニュ、フーニャ、テーファ母子、リュッサ母子、ネメッカ、ズードと森に向かう。ユッミルとテーファにフェノの連携で弱らせてネメッカの攻撃で混乱させる。リュッサも少し術を使う。そうして二匹を狩る。慣れてきたユッミルは手早く生血も確保する。さっと昼食を食べるとほぼ一匹分の獣と生血を持って店に向かう。店が忙しそうなので手伝う事になる。

 「ユッミル様、今日はこちらで泊まってはどうです?ずっと放置ではナーレさんも可哀想ですよ」

 「そう思うなら昼過ぎに言って欲しかったですね」

 「それにエコさん達の息子も放っておいたら可哀想ですよ。一緒に寝てあげたらどうです?」

 「目的は何ですか?」

 「さて、どうでしょう。そんなものはありませんが有ったとしても事前に言うのはつまらないですよ」

 「なら泊まりません」

 「私の相手をして欲しいだけですよ。一緒にお風呂に入ってそれでもその気にならないなら諦めますから」

 「マッラさんも一緒なら良いですよ」

 「もちろん、エコもですよ」

 ユッミルは宿舎に向かい、ナーレを見舞う。元気だが腹は膨れているのであまり動きたくはなさそうだ。エコの息子とマッラ母子と触れ合っていると働きに来ていたエルネに声を掛けられる。

 「ユッミルさん、今日は泊まりですか?」

 「そうですね」

 「ではご一緒しても?」

 「私は構いませんが」

 「塔の方は大丈夫ですよ。そもそも元々は家に行く予定でしたし」

 「そういう事ですか」

 ユッミルはマッラの息子を抱く。

 「あの、この子の名前は?」

 「ユッミルさんが決めるので待ってますよ」

 「えっ。一年間、名前無しですか?自分で言うのもあれですが催促するか、その夫は捨てるべきでは?」

 「ユッミルさんは面白いね。気にしないよ」

 「名前ですか。ユーシはどうですか?」

 「ああ、良いと思う。ユッミルさんの名付けを拒む気は無かったけど良い名前で良かったわ」

 「それは良かったです。名付けはまだ残ってますけどね。しかもナーレ以外にも生まれそうなのが数名。男の子の名付けはもう手一杯です」

 「大変ですね」

 「私のせいですから仕方ないですよ」

 ユッミルはマッラ母子、エコ母子やエルネと共に服を脱いで風呂に向かう。風呂場に入ると女性とぶつかりそうになる。

 「ああ、ユッミル様。えっと、お見苦しいものを申し訳ない」

 「何処でそんな?あれ?」

 術師の女性はさっさと上がる。ユッミル一行以外には一人しかいない。ユッミルは子供と触れ合う。ゼフロを膝に乗せて話をしてみる。

 そうしていると三人の女性が入ってくる。ユッミルは上がる事も考えたがそうなっても宿舎で何かをされるだけだと考えて迎え撃つ事にする。

 「ユッミル様、初めまして」

 「なっ、あー。マッラ?」

 二人の女性はユッミルの膝に座ったゼフロに構わず、両脇に寄ってくる。

 「ユッミルさん、羨ましい」

 「どういう意味ですか?」

 「可愛い子ですしね」

 「ん?それはそ…いえいえ、そういう問題ではない」

 「苦労しましたよ。良さげな子を誘うのは」

 「ミューレさん、あなたの仕込みですか」

 「そうね。だとしたらやめるのかしら?片方は月の子で飛び抜けて優秀ではないけど前衛希望よ」

 「どうしてそれを」

 「まあヒレーネさんを狩りに誘ったからね」

 「そうですね。フェノは忙しい」

 「文字通り赤子が手放せないらしいですからね、ユッミル様」

 「確かに魅力的ですが」

 「それで火の方はユッミルさんが好きそうな子でこの話に積極的な子を頑張って探したわ」

 「ユッミルさん、ゼフロは預かりますよ」

 「エコさん、そっち側ですか?」

 「いえ、ゼフロが危ないなら預かるというだけですね」

 「そうですね。それで乗り気と言いますけど後でするのですか?」

 「はい、私は構いませんよ。むしろ今日がダメなら撤収と言うお約束です」

 エコはゼフロと風呂から出る。ミューレはユッミルの正面に回り込んでいる。

 「ああ、ミューレさんは引っ込むという事ですね」

 「ユッミルさんが許可を出すならしたいのですが許可をくれるのですか?」

 「許可を出したらこの二人とは破談ですか?」

 「まさか、二人優先です」

 「エルネ、もう良いよ」

 「分かりました」

 エルネも風呂から上がる。

 「ミューレさん、良いのですか?そろそろ我慢の限界でして手を出しますよ?それもミューレさんより扱いは上に感じるかもしれません」

 「分かってますよ。どっちにしろナーレさんの扱いは目の当たりにしますし」

 ユッミルは二人と触れ合う。マッラは興味深そうに見守っている。ミューレは力を抜いて見ない様にしている。

 「ただ、前衛の方は家に居てくれないとあまり意味が無いですね」

 「月の側は許可が出てますよ。リッネ様は自分をもっと頻繁に呼んで欲しそうでしたが」

 「あの人は自分の忙しさの自覚が無いのですかね?」

 「光の側には狩りの面での必要性から手を貸した事を強調しておきます」

 「もう観念しますよ。特に月の子は火に染まらない為にお願いします」

 「火に染まる?環境が整えばターヒョさんはこちらに来るでしょう。光の女性を一人でも置けば同数です」

 「十分火が多いですよ」

 「それなら氷に適任がいますよ」

 「どんな人ですか?」

 「シェンハ様ですね」

 「あんな猛獣は無理ですよ」

 「シェンハ様に子犬の様に可愛らしい振る舞いなら迎え入れると伝えて良いですか?」

 「それだともうシェンハ様では無いですね」

 「ユッミルさん、私は無視ですか?」

 「ああ、つい。この人も含めて気の強い女性は黙ってると好き放題ですから」

 「ネメッカ様もですか?」

 「少しはありますがミューレさん程では無いですね」

 「はあ今回はその子に譲って引きます」

 「あなた、何も譲ってませんからね?」

 「分かってますよ」

 「はい、ユッミルさん行きますよ。でもミューレさん、この施設、せっかく風呂場で仲良くなれても宿舎が遠いので一度服着ないといけないのが駄目ですね」

 「それはそうでしょう。店と裏の調理場が最優先ですし」

 「風呂場近くに宿舎を増設…」

 「ミューレさん?」

 「ああ、ごめんなさい。今回はとりあえず一度着てもらって」

 ミューレ共々四人は宿舎に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2節 成長の兆し

 

「私達は寝てますね」

エコにエルネにナーレにマッラも少し距離はあるが同じ部屋で寝る。

 「はい。もしする気が失せたなら今日は構いませんよ?二人共無理なら仕方ないですね」

 「ミューレさんに話を聞いてる私が逃がす訳ないでしょう」

 「そうですか。仕方ないですね」

 「私も元々その気でしたし」

 「ミューレさん、腕を見て十分なら家に連れて行っても良いのですね?」

 「私としてはここで働く三つの団の側室を二人ずつ確保できれば構わないわ。月はとりあえずナーレさんとして次はまた別で確保するわ。ただ、その子にもある程度はここで働いてもらうけど優先はあなたの狩りね。けど寒季は譲ってもらうわよ」

 「そういう事ですか。構いませんよ。ですが本人の意思は知りません」

 「それはもちろんです」

「お待たせして申し訳ないです。もう既にご存知かと思いますが十人以上と子供を作り、子供は二十人前後居ます。一緒に寝た女性は二十人近くになっていまして家にも毎晩五人以上の側室が居ます。毎晩するのも無謀なので普通に寝る時にもお世話になってますのでまずはその感じからお願いします」

 「どういう?こういう事ですか。ユッミル様から女性が離れる事は無さそうですね」

 「はい、なかなか気が休まりませんが何人かとはこうしていると落ち着きます」

 「私はどうです?」

 「悪くは無いですがして頂けるという事ですからそうはいきませんね」

 ミューレはマッラの息子の世話を買って出る。

 「そろそろ私の出番かしら?」

 「それはそうですけど折角いい感じなのでこのまま寝させてくれません?」

 「私は貧相な女かしら?今日無理なら難しいかもしれないわね」

 「貧相と思ってる女はそんな脅しはしませんよ。ただ、あなたみたいな女性を軽く手を付けるだけ付けて断るのもそれはそれで気分は良いですが」

 「ミューレさんの側近をやってると気を張ってしまうのだけど優しくしてくれますか?」

 「ではまず、お名前を教えてくれますか?」

 「そうでしたね。名乗ってませんでした。コッテですね」

 「じゃあコッテ、早速お願いしますね」

 「そうお膳立てしたのは私だし分かってるのだけど私の時より乗り気ね」

 「今後は分かりませんよ。扱いが改善する人もいますし」

 「けど少し頑固でしょ?」

 「ええ、まあ。ですけどそれが無いとあの家は崩壊しかねませんし悪いとも言えません」

 「思ったより丁寧ですね。ユッミルさん」

 「それは良かったです。私としては無闇に側室を増やす気は無いので雑に扱う気は無いですよ」

 「回数が望めないのは分かってるので毎回、しっかり相手して下さいね」

 ユッミルはコッテを抱いて眠る。

 「おはようございます。昨日は名乗って無かった気もしますので改めましてスーリと言います。宜しくお願いします」

 「はい。早速森に行きましょうか。私は人を集めますのでスーリさんはゆっくり森の入り口で待っていて下さい」

 ユッミルやスーリにコッテにミューレはマッラ母子やエコ母子共々朝食を共にする。ユッミルは先に食べ終えると家に向かう。

 「急遽、前衛の人員を試す事になったので後衛が欲しい。ベーニュもお願いしたい」

 「今日、夜寝てくれるなら構わないですよ」

 「私は体をそれなりに触ってご褒美をやったから来いと言えば行くよ」

 「シャーネ、それは嫌がらせ?」

 「やったら分かるよ」

 「はあ、触ってやったのだから来るよね?」

 「もちろんですが服の上からですか?今回は我慢しますけど」

 「シャーネ、良い子だから僕はシャーネの体を触るのではなく抱くのが好きって事にして下さいね」

 「それは良いわよ」

 「後はテーファさんですね。今回は子供は連れて行きません」

 「私はいらないのか?」

 「居なくても構いませんが」

 「私は対価なしで同行させてもらうよ。もう息子もいる家族だしな」

 「ありがとうございます」

 ユッミル一行は森に向かう。スーリと合流し、狩りをしてみる。メシャーナやフェノ程の動きは無い。ヒレーネやユッホ程の武術も無い。それでもベーニュの支援下で狩る事は十分に可能らしい。月術を使って合理的な戦闘をしている。ただ、一撃の威力が低く、一体には逃げられてしまう。一体だけ狩る事に成功した。ただ、血は少し飛び散ってしまい、生血は回収できず、皮と肉を家に持ち帰る事にした。

 「どうでしたか?」

 「ええ、当面は参加頂きたいですね」

 「大丈夫ですか?あまり良い腕とは言えませんが。ユッミル様の側室の優秀さに比べれば私はまだまだです」

 「少なくとも最近はミューレさんが言っていた通り前衛が欲しかったのでこの腕で十分ですよ」

 「そもそもあまりに優秀だと他の勢力が放っておかないでしょう」

 「リッネ様はユッミル様と組みたがってると思いますが」

 「ですがあの人は忙しく予定が合わない事も多い。ここに泊める訳にもいかないのでね」

 「そうですね。ですがユッホ様も居ますしヒレーネさんもある程度は可能ですよね?」

 「あの二人は頼む事もありますよ。ただ、ヒレーネさんに頼もうとすると店に寄る必要もありますし居ない場合もありますからできない日も多い」

 「分かりました。私は幹部では無いので暇ですし」

 「とにかくお互い頑張りましょう。強くなってくれればいいので。慣れたらある程度は上達しそうですし」

 「ユッミル、ご飯よ」

 ユッミルはテーファ母子とリュッサ母子、を両脇、膝にファッリーユと昼食を取る。食後はファッリーユやシャーユにフーニャ母子、テーファ母子にモティアと遊ぶ。

 「ユッミル君、ちょっといい?」

 「テーファさん、どうしました?」

 「リーシキを一度光の方で預かって欲しくて。そろそろ家に帰ろうかと」

 「そうですか。数日位は休むのも良いですよね」

 「それでユッミル君、送ってくれると嬉しいのだけど。ファーちゃんも明日連れて来てくれる方が良いかなと」

 「そうですね。構いませんよ。リュッサさんにお願いしましょうか」

 「ええ」

 ユッミルはリーシキを光の塔に送る。家に戻るとリュッサにファッリーユとトキホを預ける。

 「ではテーファさん、行きましょうか。寂しいですけど仕方ないですね」

 「ユッミル君、行こうか」

 「テーファさん、どうしました?」

 「歩きにくいですか?」

 「いえ、驚いただけで。テーファさんは可愛くて目立つのでやんわり隠しますから気をつけて下さい。少し抱き寄せたりもしますよ」

 「ユッミル君、こんな事してる女は黙って抱き寄せて大丈夫だよ」

 「体勢が崩れたりとか」

 「それも支えてね。やり方は任せるわ」

 ユッミルとテーファは何事も無くテーファの家に着く。

 「夕食、まだ食べれるよね?肉もくれたし何か作ろうか?」

 「それは大丈夫ですよ」

 テーファはお湯を沸かす。

 「帰りたいの?」

 テーファはユッミルの傍に寄って来て抱き寄せる。

 「そういう訳では無くテーファさんが休みたいと言っていたので僕もさっさと帰ろうと」

 「まだそう思ってるの?」

 「側室だからと言って気を」

 テーファはユッミルを自分の胸にしっかり抱き込む。

 「ユッミル君、何も言わずにしたい様にしてくれて良いのよ?」

 ユッミルはテーファに体を預ける。

 「だったら風呂位は付き合ってもらいます」

 「もちろん。良かった」

 二人はしばらく触れ合って一緒に風呂の用意をする。

 「じゃあユッミル君が脱がせてね。それでしたくなったらせっかく用意してきたお風呂だけど先に寝ようね」

 「お風呂も一緒に入りたいので我慢しますよ」

 ユッミルはテーファの服を脱がす。テーファと服を脱ぐとその密着したまま風呂で触れ合う。

 「ユッミル君、遠慮はいらないよ」

 「そこまで遠慮してるつもりは無いですけど」

 「ああ、そっちなのね。逃がさないつもりね。でもユッミル君こそ逃げないで欲しいな」

 しばらくして風呂から出るとテーファは布をさっさと持ってきてユッミルを軽く拭く。

 「自分で拭きますから」

 「ユッミル君、今、服を着ようとしたら私、嫌だけどユッミル君の相手は二度としないからね」

 テーファは手際よく自分の体を軽く拭くとユッミルを布団の方へ促す。

 「子供をネメッカ様達に押し付けて悪い親ですね」

 「ユッミル君、可愛いね」

 テーファはユッミルを押し倒す。

 「任せて良いのですか?」

 「ユッミル君も積極的になってくれると嬉しいのだけど」

 「そうですけどこうしたのですからある程度は責任取って下さいよ」

 「もちろん」

 「ファーちゃんのママ、珍しかったね」

 「ママ?寂しそうだけど頑張ってたよ」

 「そうだね」

 「テーファさんはここまでしなくても良いのですが何か我慢させてましたか?」

 「やっぱりみんないると遠慮するし大半の子は私と違って普通の側室だし。ユッミル君、皆と同じ側室なら私はいらないよ」

 「そういうつもりは無いですが確かにあそこに、その、いるとそういう感じに、なって」

 「ユッミル君、弱くて可愛い」

 「今度はテーファさんが可愛くなる番ですよ」

 二人は激しく触れ合って疲れて眠っていく。

 「ユッミル君、朝食できてるよ」

 テーファは寝ぼけたユッミルの口に朝食を運んでいく。

 「ありがとおー、昨日は良かったけどちょっと疲れちゃったね。良かったけどね」

 「そう?私は元気だけど。ユッミル君がこの後、帰っちゃうのは残念だけどね」

 「えっと、用事はあるけどさっさと済ませてファーちゃんを迎えに行って夜もせめてご飯位は、どうですかね?」

 「泊まってくれないの?」

 「それはちょっと。近い人がいますので」

 「残念だけど仕方ないね」

 ユッミルは朝食後も少しテーファと触れ合うと無性の街を見回る。ただ、成果は無く昼過ぎに家に向かう。軽く昼食を食べるとファッリーユを連れて行く。

 「ユッミル、帰るよね?」

 「まあその予定だけど毎日ここに泊まるのは無理だよ」

 「そうなのだけど少し心配なだけ」

 「テーファさんは悪人じゃないでしょ?」

 「そうだね。少し寂しかっただけ」

 「なら側室が多い男はやめた方が良いね」

 「分かったから早く戻って来てね」

 ユッミルは今度こそテーファの家に向かう。家に行くとファッリーユを中心にいつも通り話していく。夕食を終える。

 「帰ります。あまり行きたくは無いですけど」

 「分かってるよ、気にしてない」

 「その、できればほんの少しで良いので行く前に抱いてくれませんか?」

 「服脱いだ方が良い?」

 「テーファさん、冗談はやめて下さい」

 「今日位、行かなくてもいいと思うけど」

 「ですけどファーちゃんはもう帰ってきてしまいましたよ」

 「ファーちゃん居たら駄目なの?」

 「そういうつもりはありませんが今日、泊まったら明日もこうやって引き留められて帰れなくなっちゃいますよ」

 「分かったわ。落ち着いたらちゃんと来てね」

 ユッミルは家に戻るとレヒーハ母子とフーニャ母子と色々話す。カッサは話せる言葉が増えている。しばらくしてシャーネとベーニュと風呂に入る。ユッミルはベーニュとそのまま寝る。夜明け前にユッミルが目を覚ますと反対側にオーネの顔がある。少し当たっている感触からして服は着ていなそうだ。ただ、寝ている。ユッミルは起きて服を着てオーネの様子を気にしながら起きてきたシャーユと朝食を食べる。

 「パパ、どしたの?」

 「シャーはゆっくり大きくなればいいからね」

 「シャー、もう歩けるよ。ダメ?」

 「良いよ。パパの事は気にしなくて良いからね」

 「ふろはいるー。順番まだー?」

 「ママはなんて?」

 「ママは一緒に入ってたらシャーの事、気に入るって」

 「そっか。シャーちゃん、おいで。良い子だね」

 ユッミルはメシャーナの様子を見る。体調が良いわけでは無さそうなので追及は見送る事にした。他の女性陣や赤子も起きて来たのでユッミルはオーネの上に跨って起こす。

 「起きましたか?」

 「ああ、ユッミルさん。あれ?服?あっと、しまった」

 「どういう事ですか?」

 「ユッミルさんに起きたらしてもらおうと添い寝したら寝てしまって」

 「そういう事ですか。段取りが悪いですよ。今度誘いますから今日はさっさと服を着て下さい」

 「そうします」

 「ユッミルさん?」

 「ベーニュさん、起きましたか。ですけどどうしました?」

 「私がシウさんと寝た日に明け方、もう片方の隣で裸で寝てたらどうします?」

 「一度抱いて起きなければ起こさずに起きますね」

 「オーネにも?」

 「オーネさんは抱きませんね、静かに寝かせます」

 「その後は?」

 「もしかしたらその日の夜は誘うかもしれませんね」

 「それだけ?」

 「ぐっすり寝てる女性に手を出し始めたらこの生活は終わりますよ」

 「いや、裸でわざわざ隣よ?」

 「場合によっては起こしますしその反応次第ではついしてしまうかもしれません」

 「その、せめて何か言ってくれないの?」

 「ん?どう声を掛けるか?でも起きてくれないと声は掛けられませんしね」

 「起こせばいいじゃない」

 「寝てるのに悪いですし」

 「オーネは起こしてなかった?」

 「そうでしたね。朝遅かったですし」

 「私も裸で朝遅くまで寝てたけど」

 「それは昨日、しましたし負担を掛けておいて起きろとは言えませんよ」

 「ネメッカ様の気持ちが分かったわ。良い子ね、ユッミルさん」

 「何をするんですか?」

 「何でもないわ」

 「どういう?」

 「じゃあ私も起きるわ」

 ユッミルはシャーユやカッサの世話をする。ターヒョとチェーハの腹はかなり膨れている。

 「今日は僕で良いの?」

 「はい、次回以降はチェーハさんが産むまでネメッカ様が担当しますが」

 「では行ってきます」

 「待って」

 「ベーニュさん?」

 「私も担当だから」

 「ああ、行きますか」

 「はい、私が相手しますからこれ以上側室を増やそうとしないで下さいね」

 「そういうつもりはありませんよ」

 「離れないで下さいね」

 「それ位は構いませんよ」

 二人は指揮所へ向かう。途中でソヨッハに声を掛けられる。

 「今日は私もです」

 「幹部の知り合いが増えたね」

 「ユッミルさんのせいで幹部の敷居が下がってるわね」

 「あなたも人材不足なら匹敵する力はありますしソヨッハは元々若い割に実力者でしたし」

 「ありがとうございます」

 「実力者を側室に据えて子作りすると噂のユッミル様だけどね?」

 「あの、子供に簡単に手は出せませんよ」

 「シャーネちゃんとは作ってる様に見えるけど」

 「あそこまで強固な意思なら拒めませんよ。良いから行きますよ」

 三人は指揮所に着く。

 「どうですか?」

 「少し待って下さい。微妙ですけど指揮所正面は少し前線が活発ですね。昨日の状況を見てはいないので何とも言えませんが」

 「隊列を整えてるとか?」

 「隊列と言うより前後の入れ替えですかね?詳しくは分かりません」

 ユッミルはソヨッハと話し込む。

 「あの、今日は泊まります。レヒーハさんの支援が必要だと聞いたので」

 「そうなの?人が増えるのは歓迎よ。昨日だった私は今日は無いしね」

 「ソヨッハ、術は有難いけどゆっくりしていってね」

 「手伝えることがあれば遠慮なく言って下さい」

 三人はユッミルの家に向かう。ソヨッハは早速チェーハ達に回復術を使うが特に消耗している様子は無い。ユッミルはシャーユを膝に乗せてベーニュとシウ母子を両脇に夕食を済ませる。

 「話がしたいので一緒で良いですか?」

 ソヨッハはリュッサとユンルクとユッミルと風呂に入って色々話す。途中でユンルクと次男を交代する。風呂から出ても話は続き、ソヨッハと寝る。翌朝、ソヨッハはもう一度チェーハやレヒーハにメシャーナ等に回復術を掛けて木の塔に帰っていく。

 ユッミルはシャーユ、カッサ、ユンルクの世話をしつつ、チェーハに声を掛けていく。早めの昼を食べて調査と店の様子見に行ってミューレとも話す。さっさと帰宅して三人の世話を再開するが基本的にはチェーハを見守っている。夕食の少し前にオーネが子供連れてやって来て遊ばせつつ世話を手伝う。

 夕食はオーネ母子とメシャーナ母子と食べ、ベーニュとシャーユとレヒーハ母子と風呂に入り、メシャーナ母子とリュッサ母子を両脇に眠る。

 翌日、チェーハは朝から度々断続的に苦しそうにしている。レヒーハは術を掛けるがそこまでの効果は無い。夕方頃にはターヒョも少し呻くがこちらはすぐに収まる。心配しつつもシウ母子やユンルクと風呂に入る。ユンルクを抱きながらリュッサ母子とオーネ母子を両脇にチェーハの事を気にしつつ軽く寝る。そのまま寝てしまい、早朝にチェーハの声で目を覚ます。急いで朝食を食べるが先に動きがあったのはターヒョの方でレヒーハと踏ん張りを見守る。シャーユが起きて来たので抱き込む。シャーユは大人しいとはいえ朝食を食べさせてやるべきか悩んでいると出てくる。

 「男の子ですね」

 「良かったわ」

 ターヒョはユッミルの手を握ると眠っていく。レヒーハと服と布団を整える。赤子を抱いたままシャーユを机に誘導する。

 「ああ、服持ってきますね」

 この家には最早当然の様に産着が常備されている。シャーユに朝食を与えつつ着せていく。女性陣が子供を連れて起きてくる。赤子をマティッセに任せてチェーハを見舞う。昼前に一段と苦しさを増すがまだ力むには至らない。心配しながらもフーニャ母子やユンルクと昼食を食べる。昼過ぎ、チェーハは踏ん張り始める。ユッミルが曖昧に手を触るとチェーハはユッミルの手を握る。しばらくして比較的すんなり出てくる。

 「もう大丈夫ですよ」

 やはりユッミルが取り上げる。

 「女の子ですかね」

 ユッミルはフーニャから産着を受け取って着せる。

 「名前、どうするの?」

 「急がなくて良いですよ」

 「そうですね」

 「それより少ししんどいので横になって赤子の様子を見させて下さい。ユッミルさんもあまり寝れていないと思いますし」

 ユッミルはチェーハ母子と横になる。

 翌日は光の塔に報告に向かう。するとネメッカもトキホを連れて家に付いてくる。

 「私の側近の子供も世話してくれるのですね」

 「ええ、少なくとも有望な光術師候補ですし」

 「そういう事ですか」

 「いえ、本当は様子見ですよ。それにユッミル様からすれば自分の子供ですし母親間の協力は喜ばしいでしょ?」

 「それはそうですが」

 「深い意味は無いです。ユッミルの家が大変そうなので手伝うだけです」

 「ありがたいですね」

 「そう思うなら腕でも組んでくれません?」

 「トキホがいますし遠慮します」

 「トキホはユッミルが抱くべきですね。それでユッミルを抱きます。」

 「この道は人が少ないので構いませんよ」

 家に帰るとユッミルはトキホとシャーユとユンルクを世話していく。ネメッカとチェーハは赤子をユッミルの目の前で世話する。オーネ母子とリュッサ母子は斜め後ろを陣取る。左右にはベーニュとシャーネが陣取っている。しばらくするとユッミルはトキホを抱きながらシャーユとユンルクを歩かせる。そうしているとシウ母子やフーニャ母子も参加してくる。シャーユとユンルク程ではないが母親にゆっくりついていくのは少しなら可能らしい。ミリットとヌーグの頭を撫でる。

 「恥ずかしいな」

 「撫でてるのはヌーグですけど」

 「違うよ。母親と並ぶ子供を利用して私の下半身を至近距離で眺めているではないか」

 「確かに見ようと思えば見れますが自分の息子程は重要では無い」

 「そうだな。すまない。だが私も君に相手をされないとそう見られてると思いたくなる」

 「そう言われると困りますね。ヌーグ、パパの方においで」

 「おー?いくー」

 ヌーグはユッミルに頭突きする。ユッミルはヌーグの手を引いて後ろに回らせるとフーニャを抱く。

 「すまないな。気を遣わせて」

 「効果のある気遣いになったのなら良かったですけど」

 「ああ、効果はある」

 「次は私の番ね」

 「代わりに胸を揉んでいいなら考えます」

 「良いわよ。けど私は胸を惜しんだ事は無いのだけど」

 「では遠慮なく。ミリット、ママもらうね。良い感触ですね」

 「ありがとう。私のを触るのは珍しいわね」

 「どうしたシウ?もうやめてって?良いって言ったよな?これ位我慢しろ」

 「ユッミル、掴んでるの腰になってるわよ?」

 「申し訳ない。シウさんを触ってたら想像が」

 「ユッミルは想像じゃなくて実物を触れる立場にいるのにおかしいわね」

 「実物のシウさんは僕に好き放題される前に逃げますから」

 「やっても無いのに?」

 「そうですね。想像は想像で好きなのかもしれません。手間を掛けませんし」

 「その想像の内容、聞かせてくれれば再現しても良いわよ?」

 「遠慮します」

 「まあ良いわ。それよりユッミル、少し体が凝ってるからほぐして欲しいのだけど」

 「それは構いませんがユンルクやシャーユもいますし」

 「レヒーハさん、お願いできます?」

 「構いませんよ」

 ユッミルはトキホを隣に座る。

 「シウさん?」

 「体をほぐすのに服は邪魔でしょ。そもそも脱いで襲われて困る相手もいないし」

 「まあそれはそうですが」

 「ユッミル、好きに触って良いのよ?体を好きにほぐして。取って欲しい姿勢があれば従うわ」

 「最初はうつ伏せですね」

 「ユッミル、お互いすっきりしましょうね」

 「シウさんにみっともない所がばれて関係が終わればそれも一種のすっきりですね。しかし、ネメッカ様もいる状況は困るのですが。他にもいますし」

 「服を着ろと?」

 「いえ、しますよ」

 「そこから、なのね。正直ね」

 「ええ、気が変わったらいつでもどうぞ」

 「ユッミルはユッミルだし大丈夫よ」

 「だと良いのですがあまり凝ってませんね。そろそろ仰向けに願いますか」

 「ユッミルが自分でした方が良いと思うけど」

 「良いのですか?では。あれ?中々動きませんね」

 「ユッミル、そんな所を掴まれたらみっともない反応、やっ」

 「演技でも乗りそうなのでやり過ぎない方が良いですよ」

 「演技では無く、普段の、が我慢してるだけ。我慢しないと、みっともないのは私も同じ。でも今回は少し駄目そうね」

 「まだまだ余裕に見えますが。そろそろ行きますよ」

 「ちょっと、どうしてそっちなのよ」

 「ああ、そうでしたね」

 「随分、優しいのね」

 「これは好みですね。シウさん、あまり顔は見ないで下さいね」

 「それなら後ろからすればいいのに」

 「それはその、それだと微妙に違いますし。分かった上で受け入れてくれると良いですし」

 「ところで最初の日の事は覚えているの?」

 「ある程度は覚えてますけど少し曖昧ですね」

 「この程度ならあの日以下ね。問題無いわ」

 「そうですね。あの日はみっともなくシウさんに魅了されてましたね」

 「そうよ。この程度は大した事は無いわ。良い子ね、ユッミルは」

 しばらくしてネメッカも脱いでやってくる。

 「次は私ね」

 「遠慮します。その腹はそれはそれで愛らしいですが。それとも腹がへこんだ後だと本格的に襲われるから困るという事ですか?」

 「そうね、そんな事は無いわ。ん?抱いてはくれるのね」

 「脱いだ意味は無いですよ。シャーネ、何か勘違いしてるようだけど君の服は薄いから着てても無駄だよ。そんなに脱ぐ事を演出したいならもっと厚手の服を着た方が良い」

 「また指図。けど従うわね。ユッミル様には逆らえない」

 「ネメッカ様、そろそろ服を着て下さいね」

 ユッミルはシャーネを抱く。

 「良いの?」

 「それよりシャーネ、服を脱ぐ意味はありそう?」

 「ユッミル、服を着てる時の方が積極的だけどそんな事で脱ぐのはやめない、と言いたいけどそれが続くなら大人しく着るしかないわね」

 「そんな事は意識していませんけどね」

 ユッミルはやはりトキホを膝に乗せてシャーユとリュッサ母子を両脇に昼食を食べる。ただ、リュッサは反対側のユンルクの世話に忙しそうだ。

 昼食後はやはりユンルク、トキホ、シャーユと触れ合う。ネメッカとフーニャ母子も加わる。

 「あまり様子を見れませんでしたが塔はどうですか?」

 「イーサが近いけど三日は大丈夫ね。明日朝の指揮所は私が行くわ」

 「本人が言うなら大丈夫ですね。ただ、色々言いましたけど三人目は控えるべきですね。もう人任せを疑っていたりはしないのですけど」

 「ユッミル、私としてはイーサが最早、あなた側である事を懸念している位なのだけど」

 「そこまで利害の一致は見えませんが」

 「夫と上司が対立すれば陰ながら夫を応援するでしょう」

 「対立しませんよ」

 「そうですね。私もユッミルには逆らえません」

 「まあ表立ってはそうしてくれてますよね」

 「そう思いたくないなら良いですよ」

 ユッミルは引き続いてトキホやシャーユの世話をする。しばらくすると膝の上のトキホをユッミルの横に座らせて自分がユッミルの膝の上に寝る。

 「ネメッカ様?」

 「何か問題ですか?」

 「トキホの世話をしてたのですが」

 「トキホなら私が抱くので昼寝させましょう」

 「シャーユも居ますし」

 「ユッミル、私はあなたに逆らえないので言う事を聞きますけど良いですか?」

 「この事はネメッカ様が悪い。逆らえないって言うのは理不尽な要求を受け入れさせられる事ですよ」

 「なら断りますから理不尽な要求をお願いします」

 「どういう事ですか?」

 「私が全ての要求を受け入れたらユッミルには逆らえない事になりますからユッミルは私に要求を一つでも拒否させれば逆らわれた事になってあなたの言う通りになりますよ」

 「それはそうですが私はネメッカ様が好きなのでそういう要求はできません」

 「ああ、私は逆らわれてしまいましたね」

 「そうですね。ネメッカ様を虐げる駄目な男です」

 「いえいえ、ユッミルは魅力的なので仕方ありません。それに比べて粗野な私には体しかないので存分に使って下さい」

 「何を言ってるのですか?ああ、自分で。やはり操られてるのはこちら。」

 「仕方ありません。これでしっかり握ってくれれば許します」

 「分かりましたけどこの関係を仕切ってるのはネメッカ様だと思います。僕は要求をする事すら許されていないだけです」

 「まだ言うのですか?」

 「はい、ネメッカ様には切り札有りますし」

 「私だってユッミルを思い通りにはできません。もっと触れ合いたいですが鬱陶しいと思われるので自重しています」

 「これは触れ合う為の餌ですか」

 「こんなので釣れるなら安いですね」

 「普通に抱きますよ」

 ユッミルはネメッカ母子とレヒーハ母子を両脇に膝にユンルクを乗せて夕食を食べる。

「トキホ、元気?」

「げんきー」

「パパとママ、どっちが好き?」

「ママすきー。パパあそぶー」

「上手いな」

「トキホ、パパと遊ぶのは私の仕事よ」

「ママ、いくら払わないといけないの?」

「えっと、どういう事?」

「パパと遊ぶのは仕事だよね?分かってたけど」

「ああ、そういう。パパと遊ぶのは仕事では無いね。ごめんね」

「ママ、気を遣ってくれてありがとう」

「ユッミル、それ以上言うと後で襲うわよ?」

「分かりましたよ、冗談です」

「なら良いわ」

シャーネやシャーユにフーニャ母子と風呂に入るとネメッカを抱いて寝る。

 翌日はまた調査に出かけて店に寄って手伝う。ユッミルは帰宅して昼食を食べるとネメッカと触れ合う。

 「ネメッカ、ユッミルを独占しないで」

 「どうしました?シャーネさん」

 「ユッミル、こっちに来て」

 「そうだね。そうするよ」

 「しばらくしたらレヒーハと交代ね」

 「それは構わないけど」

 「ごめんなさい。ユッミルが我慢してたのは女性が多いから誰かに偏らない為だったのね。知らずに不満に思っててごめんなさい」

 「それはそうだけど目に入るから考えてしまうだけだよ」

 「それに比べてネメッカはユッミルを独占しようとする身勝手な女」

 「悪いのはネメッカ様に言いくるめられた僕だから」

 ユッミルはトキホを膝に乗せてレヒーハ母子とシウ母子を両脇に食事をする。一頻り食べ終えるとミリットを撫でる。

 「ミリット、パパはどう?」

 「どー?」

 「ユッミル、流石にそんな言い草は困るわよ。ミリット、パパに何して欲しい?」

 「ママと遊ぶ」

 「そっか、じゃあパパと一緒に向こう行こうね」

 「ママとミリットが遊びたいだけなのでは?」

 シウはミリットをユッミルに渡す。

 「ネメッカさん、ユッミルの胸元をあなたの子に独占させるのは程々に願いますね」

 「そうですね。ですがユッミルの意思が第一ですよ」

 「そうですね。ここはミリットを抱きますのでトキホは一度お願いします」

 ユッミルはミリットを抱いて話しかける。しばらくするとヌーグも抱く。ユッミルはネメッカと風呂に入り、トキホやカッサにユンルクにシャーユを世話する。妊婦の近くでネメッカ母子とシウ母子を両脇にしてユンルクを抱いて寝る。

 翌朝、ネメッカはユッミルが起きる前に指揮所に向かった様なのでユンルクにトキホ、シャーユの世話をマティッセとしていく。ただ、三人共ユッミルにくっつく。しばらくするとシャーユは遠慮してマティッセと遊ぶ。

 昼過ぎ、ネメッカが戻ってくる。

 「ユッミル、明日はどうするの?」

 「流石に一度塔にも行きますよ。色々寄ってからですが」

 「でしたら私は直接塔に戻って待ってますね」

 「ネメッカ様、私も戻ります。この子に掛かりきりでユンルクは人任せ。何より私が寝てたり、休んでいると二人分この家に面倒を掛けますし」

 「分かったわ」

 「それでユンルクを歩かせるのですがそれだと時間が掛かるので迎えをお願いしたいのですが」

 「ユッミル、駄目なの?」

 「構いませんがせっかくユンルクを歩かせるならその方が良いですよ」

 「だったら用事を終えて迎えに行けば良い」

 「あまり急ぎたくないのですが。それに帰れ…分かりましたよ」

 ユッミルはシャーユとシャーネにターヒョ母子と風呂に入る。シャーユは器用にユッミルの肩に乗ってシャーネと遊ぶ様になっている。ユッミルはシャーユを振り落とさない様にターヒョの息子を気に掛けている。しばらくするとターヒョは息子をレヒーハに預ける。

 「別に長風呂なんてしなくて良いでしょう」

 「シャーユちゃんが羨ましいわ。無制限にユッミルにくっついて」

 「いえいえ、シャーユちゃんは他の子も母親にも譲ってる良い子ですよ」

 「そうね、待ってればユッミルから来てくれるしね」

 「ターヒョさんはそろそろシェンハ様に子供まで産まされたと報告すべきですよ」

 「そんな事をして何になるのよ。真に受けてシェンハ様が怒って氷との関係悪化は困るでしょ。実際にはそうじゃなくて私にもしろって言ってくるわよ。だから素直に探りを入れて誘惑してたら引けなくなって産んでしまったと言うしかないわ」

 「結局、ターヒョさんは役立たずな訳ですね」

 「そうね。ユッミルとこれからも暮らしたくなってしまったもの。それにはさっきみたいな嘘は付けない」

 「ターヒョさん、この家にはシウさんやベーニュさんみたいな僕を襲わせるのが上手な方やレヒーハさんやリュッサさんの様に子育てを上手く一緒にやってくれる人もいます。シャーネやメシャーナの様に可愛がってあげたくなる子もいますしそれに比べると厳しいです」

 「ベーニュやメシャーナはともかく狩りをする際には私はかなり役立つと思うけど。それにあの事もあるし。当面は店にという話だけどシウさんと違って気を遣わないでしょ?」

 「ターヒョさんがそれで良いなら構いませんが」

 「もちろん、いずれは二人目をお願いするけど」

 「すぐには無理ですよ」

 「分かってるわ」

 ユッミルはシャーネを張り付けてからネメッカ母子とレヒーハ母子と寝る。

 「ユッミル、レヒーハさんとやるついでで良いから私でも遊んでくれないかしら?妻の教育にはお前はここでは二番手以下だぞと言う約束を実行すべきだと思う。特に腹を膨らしたお前に序で以外の価値は無いと知らしめたほうが良いわよ」

 「そう言われるとやりにくいですよ。それにレヒーハさんも…」

 「構いませんよ。むしろ子育て要員として使われてるだけという不満がある位ですし」

 「そんな事を言い出せば女体要員として使う事になりますよ?」

 「そうですね。どっちもそういう約束ですから構わないのですが片方だけだと女体としての価値が低いと言われて」

 「カッサ、少しどいててね。レヒーハさんは分かってませんね。そこが良さでもありますが。ああ、ネメッカ様は要望通りついでに脱がせますね。トキホは自分で避難させて下さい。ネメッカ様の腹はやはり出来上がってますね。ああ、ネメッカ様は邪魔しない程度に寄って来て下さいね」

 「ユッミル、側室でも一緒に居たいわ」

 「はいはい、そんな事はしませんけど」

 ユッミルはレヒーハをしっかり抱いている。

 「どうしてずらすの?」

 「こんなに気分が良いのを短時間で終わらせたくないですね。レヒーハさんはメシャーナとは違う意味で抱き心地が良い」

 「体が柔らかければ男でも良さそうですね」

 「それは無いですね」

 「急にひゃ、きょまります。カッサが」

 「レヒーハさんは十分に魅力的です。カッサの為にも程々にしましょう。ネメッカ、少し寄れ」

 「はい、ユッミル様」

 ユッミルはレヒーハを抱きながら片手でネメッカを引き寄せる。ネメッカは寄り掛かる。しばらくするとユッミルは寝る。ユッミルはいつの間にかネメッカの方に傾いて下半身が腹を滑り降り、トキホにぶつかる。トキホは起きるとユッミルの腰に寄り掛かって寝直す。ネメッカはユッミルを抱き返して寝ながら口を重ねる。

 深夜、誰かが子供を抱いてユッミルに近づくと子供を背中にそっと乗せる。子供はユッミルの髪や耳をいじる。程なくユッミルは目を覚ます。赤子が背中に乗っているので慎重に宥めようとしていると女性が赤子を抱き上げる。

 「誰?しかも着てない?」

 「一緒に寝て下さい」

 「ん?オーネか」

 ユッミルはゆっくりネメッカやトキホから抜け出る。オーネは赤子を座らせていてユッミルに抱き付く。

 「今日こそお相手頂けませんか」

 「赤子は?」

 「それはユッミル様がご了承頂けるなら横で寝かせます」

 ユッミルはモティアをオーネが普段寝て居る隅に運ぶ。少し離れてオーネが待ち構えているので浅く抱きつつ体を触っていく。

 「二人目、大丈夫なの?」

 「はい、もう決めました」

 「ゆっくり行くけど待っててね」

 

 

 

 

 

3節 適応

 

 翌朝、ユッミルが目を覚ますと明らかに一人分以上の女体にくっつかれている。

 「起きなさい、ユッミル」

 「またシウさんですか。ってネメッカ様も。シャーネも良さそうだね。ベーニュさんにレヒーハですか」

 「私の体、覚えたのですね」

 「いえいえ、お腹ですよ」

 「ネメッカ様、昨日はああいう扱いをしましたがあなたの体は本来は我慢するのがしんどいのでやめて下さい」

 「太ってるから大丈夫ですよ」

 「その程度なら落ちてません。もしかして五人がかりで攻めて動揺させて好き放題操る気ですか?」

 「またオーネさんと優しく寝たみたいね」

 「今度は誰から?」

 「誰からも何も寝てましたよ。私を放って」

 「レヒーハさん、そういう男に浮気後に女体で誘惑するのはやめた方が良いですよ。それだと反省しません」

 「いえ、ユッミルさんの場合は浮気じゃないですし他の子に行くのを止められないので引き寄せます」

 「ネメッカ様、お許し下さい」

 ユッミルはネメッカに抱き付いて甘える。

 「最初から素直にすればいいのに」

 「やっと落ち着きましたけどまたみっともない姿を」

 「またそれですか。けどユッミル、朝の私達はみっともなくないのですか?こんな姿で男を安く誘惑して」

 「ですが誘惑は成功しましたし」

 「ユッミルも私を静める事に成功しましたよ」

 「そうかもしれませんが恥ずかしい事に変わりはありません」

 「私もですよ」

 「ならしないで下さい」

 「ユッミルとの関係の方が大事です」

 「もっといい方法がある筈ですしオーネと寝るのは単にオーネが夜中に一人で他に誰も居ないから迷わずに行ってしまうと言うだけですよ。そもそもネメッカ様は向こうでは弄んでますし」

 「はあ、そのよく分からない嘘は。向こうでは私が一方的に誘惑してユッミルが乗り気になった時を逃さない様にしないといけないじゃないですか」

 「そんな男は捨ててしまって下さい」

 「それ以外が好きなの。絶対に捨てないわ」

 「ネメッカ様、照れますからやめて下さい。ずるいです」

 「私だって隠して誘惑できるならしたいですがもう丸出しなのでできませんよ。服を脱いでると全て見られてる。来てくれたら安心してしまう。私をまともにしたいなら離婚して下さい」

 「えっと、子供三人ですよね?ですから好きである事を隠しても相手はしますよ?嫌いだと言われたら困りますが」

 「その、余裕を崩したいのでこうするしかないです」

 「ですがさっきそれ以外で崩れましたよ?」

 「さっきのは脱ぐより恥ずかしい気もするから簡単にはできないわ」

 「それだとネメッカ様のせっかくの美しい体は僕のおもちゃですよ。言い方は悪いですが」

 「ユッミル、いい加減にしてね。ユッミル以外に私の体を使わせるのは無いわ」

 「あなた自身が使いますよね?」

 「そうだけどそれは常にそうだし空いてる時も多いからユッミルが使えば良い。それとも怪我する程の何かをするの?」

 「しませんよ」

 「他にしたい時は脱がないわ。もちろん、ユッミルが要求するなら用事を放り出して脱ぐのも無しじゃないけど」

 「飽きてしまうかもしれませんよ。少しは出し惜しんだ方が良いです」

 「私は飽きないから一方的に幸せになるわ。そうなったらごめんなさい」

 「構いませんよ」

 「じゃあ問題無いわね?」

 「ネメッカ様が僕の欲を満たさなくなるので他の女性に向かうだけですね」

 「そうね。やはり側室の多いユッミルは強いわね」

 「それは否定しませんがネメッカ様に飽きたら結局負けなので他にもいますよと言ってネメッカ様を抑えてるだけですけど」

 「私を操ってるのは認めるのね?」

 「側室を認めるのが悪いですよ。ただ、本来は弱いのでそうしてくれないとネメッカ様に乗っ取られますからイーサさんは正しいですね。多すぎるだけで」

 「私、水の人達の言う様に強くないのに。側室とか関係無くシウさんの様に男を動かすなんて無理」

 「ネメッカ様?」

 「私も弱いのよ。弱い同士素直に仲良くしましょう。強いなら追い掛けて抱いたりしないわ」

 「分かってますよ」

 「じゃあ他の女に襲われる前に服を着て下さいね」

 「ネメッカ様、自分だけ?」

 「そうね。ユッミルが抱いてくれたから収まったわ。シウさんはユッミルに抱かれても収まらないの?」

 「収まりませんよね?それだとまるで都合のいい女ですし」

 ユッミルはシウを抱く。

 「朝からは筋違いですね。着ますよ」

 「私は今回も一揉みで満足よ」

 シャーネとシウは服を着る。

 「自分から抱き付いてくれたら触りたくなりますし口が欲しいかも。二人同時なら嬉しいかもしれません」

 二人は口を重ねると服を着ていく。

 「ネメッカ様は?」

 「急がなくて良いの?私に服を着せる暇は無いと思うけど」

 「そうですね。けど僕が出かけたら服を着て塔に向かって下さいね」

 「当たり前です。ユッミルが見ても居ないのに風呂や着替え以外で脱ぐ理由は無いです」

 ユッミルは急いで朝食を食べ、家を出ると街の様子を少し調査すると店に向かう。ナーレの様子を見るが少し余裕がある様だ。ミューレは引き留めようとするが約束を盾に出る。リュッサ母子と合流するとテーファの家に向かう。

 「押しかけた上に他の女性が一緒で申し訳ない」

 「わざわざ子供?ああ、塔に行くのね。という事は泊まりは無し」

 「テーファ、昼からだけどもうこういうつもりだから少し面倒かもしれないけど付き合って」

 「うん、面倒だけど良いよ」

 「嬉しそうに見えるけど」

 「面倒だけどそう見えるならそうすればいい」

 「それはそうだけど」

 ユッミルはテーファの服を脱がせて抱き付きながら自分も脱ぐ。

 「私は?」

 「嫌なら構わないですがお付き合い頂けると」

 「そっか、その方がユッミル君も飽きないよね」

 「そういうつもりではないですよ?」

 「分かってるよ。リュッサさん、こっちが二人だしユッミル君で遊ぼうか」

 「そうですね。私達が手を出せばユッミルさんは虐められて恥ずかしい事になるだけなので罪を私達が被ればユッミルさんはきっと気にしません」

 「その、どういう事?心の準備が」

 ユッミルは二人に抱き付かれる。挟まれて襲われる。

 「どう?」

 「十分ですよ、落ち着く為に抱かせて下さい。急に押しかけて昼間なのに」

 「ユッミル君は違うの?」

 「テーファさんを少し困らせてからお昼を軽く食べて塔に向かおうかと」

 「ユッミル君がたくさん子供いるのに脱がされたら困ると思う女性は居ないよ」

 「そうですけど」

 ユッミルはユンルクを抱えて塔に向かう。リュッサはユッミルに寄っていく。塔に着くとユッミルはイーサを見舞う。ベッドの上に座っているが疲れは見える。実際、隣にカノールは居ない。

 「僕は子供の世話しかできないのですから主宰部屋に子供、主導部屋は妊婦だと思いますよ」

 「私も含めてその妊婦がユッミル様に世話をして欲しいからですね」

 「役に立ちませんよ?」

 「いえ、居て欲しいです」

 「それなら構いませんが子供の様子も見たいので時折抜けますが」

 「ええ、直前以外は付きっ切りでなくても良いです」

 「ではそうしますがどうでも良い妊婦さんの時は主導部屋でお願いしますね」

 「ユッミル、そんな事を言っても私が我慢できないなら主宰部屋に襲いに行きますので覚悟して下さい」

 「はい、大丈夫ですよ」

 ユッミルはイーサとネメッカとゆっくり話をする。ユッミルはトキホを抱えながら雑務をこなす。イーサは夕食の卓に付いている。チェーハ母子もいる。

 「チェーハ?居ないと思ったらこんな所に」

 「はい、ユッミル様にしかできない事も私ならある程度補えるのでイーサさんと少し協力する事にしました」

 「はあ、ユッミル陣営は骨抜きという事ですね」

 「ユッミルさん、そう言うつもりでは無いですよ」

 「うん、分かってる。骨抜きにされてるのは僕だしね」

 「ユッミル様、私にその様な意図はありません。問題があるなら言ってくれれば」

 「増えすぎた子供を減らすなんて私も嫌です。方法を考えたくも無い。ユーカさんより後の人を受け付けた時点でもうイーサさんの勝ち逃げなのですよ」

 「確かにそうかもしれませんがユッミル様に過度な負担を掛ける気はありません」

 「それでは駄目なのですよ。トキホや特にユンルクは別として他の子供はこのまま行くと母親が好きと言ってるだけのよく分からない自称父親の男ですよ?嬉しくないですね」

 「ネミークは認識してます」

 「ですが父として認めたい相手かは別です。ネミークは長男ですし何とかしますが他の子はどうでしょうね?」

 「今は無理ですが成長すれば集団で遊べますよ」

 「それで問題無いと思います?」

 「そう言われると困りますが言い出せばきりがありません」

 「そうですね。ですが私が負荷を背負わない等と言う話は無いと分かりましたか?」

 「それは分かっています。そうですね、ユッミル様は私の出産後一季の間は脱がずに相手をして下さい。ユッミル様が脱がなければ子供はできません。私は責任を取って子供無しでユッミル様に一季付き合います。もちろん、その上で他の側室にも手を出さないと決めれば従いますし一季分が過ぎてもユッミル様が望むなら継続します」

 「しばらくネメッカ様以外とはしないのでその期間が明けてから一季分ですけど構いませんか?」

 「ユッミル様が望むなら拒みません」

 「脱がないのはユッミルだけなのですか?」

 「そうなりますね」

 「なら私も十日程それにします」

 「あの、ネメッカ様は言わなくてもしてる気がしますがネメッカ様の服装には注文を付ける事はありませんよ」

 「ですが抱きには来ないですよ?誘ってるのに」

 「風呂の為に脱いだり、鬱陶しいから脱いでるのかもしれません」

 「風呂ならすぐ入りますし鬱陶しい等と言う理由で夫の前で脱いでおきながら抱き付かれて責めたりしません。練習しましょう。今から脱ぎます」

 ユッミルはネメッカを抱き寄せる。

 「はい、分かりましたから。服の上からでも良い触り心地ですね」

 「分かれば良いです。嫌な時なんて無いと思いますがちゃんと言いますから好きにして下さいね」

 「ところでユッミルは今日はどうするの?」

 「ええ、イーサさんが主宰部屋ですからね。ネメッカ様に付き添ってもらいましょうか」

 「最近は一人で寝て見回りに来てもらっていましたがユッミル様がいるなら誰かとは一緒に寝た方が良さそうですね」

 「そういう事なのでユッミルさん、一緒に寝ましょうね」

 「分かったよ。ただ、風呂はネメッカ様と入るよ。リュッサも子供を連れて来てね。最近、家では子供を途中で交代して子供の入浴時間を半分以下にして大人が長く入れる様にしているのでその方法を取りましょう。それには大人が三人いるのでね」

 「ユッミルの家、まあそうなりますね。こちらの場合は湯船に入る女性を一人にして他が外から補助と言う形を取ってます。当番制で他の方は一人で入ってます」

 「こちらの家も一人で入る方は居ますけど少ないですね」

 ユッミル達は主宰部屋に戻る。早速、ユッミルとネメッカとネミークで入る。トキホは一時的にイーサが見る。程なくリュッサも戻ってくる。しばらくしてネミークとトキホをリュッサが入れ替える。ネメッカはトキホと上がってリュッサがユンルクと入ってくる。ユッミルはユンルクを抱く。

 「リュッサさん、あの子と風呂に入りながら名前を決めます。考え事をするので落とさない様に近くで支えて下さい」

 「分かりました」

 しばらくしてネメッカはユンルクと赤子を入れ替える。

 「ユッミル、本当に小さい赤子ですからあまり長居はダメですよ」

 「分かってます。ダメそうなら言って下さい」

 「もちろん」

 しばらくしてユッミルは風呂から上がるが赤子に服を着せた後も抱いている。

 「決めました。ヨータにします」

 「そうですか。少し女の子っぽいですが」

 「えっと、そうなのですか?」

 「よくある名前ではないので気がしただけですよ」

 「なら良いのですが」

 ユッミルはユンルクを連れて主導部屋に行く。母親二人とチェーハ母子に五人程の子供がいる。

 「ユッミルさん、宿舎に引き渡す前に少し遊んであげてくれます?」

 「ああ、構いませんよ」

 ユッミルは子供と遊ぶと宿舎に送るのを手伝う。ユッミルはチェーハ母子とユンルクと寝る。

 早朝、チェーハに起こされる。

 「準備できてるのでしませんか?私もユッミルさんに脱がせて欲しいです」

 「今日はただ抱くではダメですか?」

 「それでも構いませんよ」

 しばらくするとチェーハの娘を抱いて食堂に連れて行って朝食にする。途中で慌ててネメッカはトキホを連れてくる。

 「ユッミル、おはよう」

 「イーサさんから目を離して大丈夫ですか?」

 「イーサは子供では無いです」

 「ネミークは?」

 「まだ寝てます」

 「放って来てはダメでしょう」

 「リュッサも居ますしネミークは良い子ですから勝手に出歩きません」

 「ネメッカ様が居れば出歩かないでしょうけど」

 「分かりましたよ。ユッミルとの朝食は諦めます。急いで帰ってきて下さいね」

 ユッミルはイーサを見舞うと息子一人とチェーハ母子にフェノを連れて家に向かう。家の女性陣に狩りの準備を伝えると店に向かう。スーリを連れて戻る。シャーネにフーニャにベーニュとオーネ母子、ターヒョも付いてくる。二体狩って生血も収集して家に帰る。ユッミルも手早くエコに生血を引き渡す。

 「それでスーリさん、同居頂けますか?」

 「構いませんよ」

 「シャーネ、来て。その、こういう感じを周りでしてしまいますし抱き合ったりもします」

 「分かっています。私も側室ですし構いません。程々には願いたいですけど」

 「分かっています。そもそも女性の数が多いので一人に負担は掛かりません」

 「それもそうですね」

 「とりあえず子供の世話をしてますので見て気が向いたら手伝って下さい」

 ユッミルはシャーユとレヒーハ母子、シャーネ、フーニャ母子と話をする。しばらくしスーリも参加する。

 「えっと、それでなのですが実は光の塔に出産が近い側室がいまして今から塔に行きます。数日、家を空けますがよろしくお願いします」

 「えっと、あちらの寝てる方は大丈夫なのですか?」

 「いえ、その、塔の方の方が先ですね」

 「分かるのですか?」

 「おそらくですが。向こうが中々生まれなければ戻りますよ」

 「そういうものですか」

 「心配ありませんよ。ユッミルさんは二日しか差が無い時も両方立ち会いましたから」

 「そうですか、ではお気をつけていってらっしゃい」

 「はい、行ってきます」

 ユッミルはフェノとチェーハ母子と息子一人を連れて塔に戻る。

 「遅い。まさかしてきたとか?」

 「してませんよ。子供を世話していただけです。けど今夜辺りこっちの子とするかもしれませんね」

 「それは構いませんが私も混ぜて下さい」

 「えっと、そうですね。そう言うのも良いかもしれません」

 ユッミルは主導部屋を空ける様に頼む。息子一人の世話を続ける。ネメッカはトキホを抱く。ネミークは一人で座っている。チェーハ母子とフェノも含めて夕食を食べる。

 「皆さん、子供が居て羨ましいですね」

 「子育ては大変だぞ。まあ手伝ってもらってて言う事でもないが」

 「そうですけどそこまで気にはならないと思いますよ」

 「フェノさん、子供は中々離れてくれないわ。ユッミルが離れてくれないとかだったら大歓迎だけど乳が欲しいとかずっと甘えてくる。可愛いのだけど疲れもするわ」

 「そうですね。乳を与えられない父親には用が無いのですよね」

 「けど用がある私の世話はちゃんとしないわよね?どういう事?」

 「してますしあなたは我慢できるでしょう」

 「ふーん、我慢してると分かってるなら良いわ」

 ユッミルは主導部屋にケーシャ母子を呼び寄せる。ユッミルはケーシャ母子と風呂に入る。途中でノシャフスとネミークを入れ替える。

 「じゃあそろそろ入るわね」

 「どうぞ」

 ネメッカとケーシャが入れ替わる。

 「どうしたの?」

 「ネメッカ様もまた太ったなあと思いまして」

 「そうね。だから次に産んだ後は少しでも長く太ってない体を維持する為に間を少し開けるわね」

 「ありがとうございます。他の方も流石に間隔を広げますのでご安心下さい」

 しばらくするとケーシャに手伝わせてネミークとトキホを入れ替える。もうしばらくするとチェーハ母子が入ってくる。

 「この子も抱いて下さい」

 「ああ、そうだね。ネメッカ様?」

 「ユッミルが最後まで抱いてケーシャちゃんに引き渡して」

 「ネメッカ様、まだ入るのですか?」

 「様、ユッミルは私を様と呼んでも言う事を聞かず、目の前で私の部屋なのに側室と触れ合うのかしら?」

 「トキホ、ママを貸してね」

 ユッミルはケーシャにトキホを引き渡す。

 「来なさい」

 「ネメッカ、言ったのですから相手してもらいますよ」

 「えっと、風呂を出ます?」

 「出ませんよ」

 「はあ、期待させないで下さい」

 「それでチェーハさんに手は出さないので赤子を抱いて良いですか?」

 「それは今日の話?」

 「今日の入浴中の話ですね」

 「とりあえず抱くのは構わないわ」

 ユッミルは赤子を抱く。

 「ネメッカさん、あなたは今、太ってますし我慢して下さい。そもそもどうするかを決めるのはユッミルさんです」

 「ユッミル、私の目の前で抱くの?」

 「今はこの子抱いてますしね。それでネメッカ様は風呂を出た後、どうするのですか?そこのベッドで私は寝ますが抱いてくれないのですか?それでチェーハさんが反対側から抱いたら邪魔するのですか?」

 「ユッミルが手を出さないなら構わないわ。ユッミルが気まぐれでその気にならない限り、私達から一方的に抱くわ。ユッミルは私ほどこの関係に執着していないし」

 「ネメッカ様が構ってくれなくなれば執着し始めるかもしれませんよ。人間と言うのは勝手ですから」

 「いえ、そうですね。ユッミルを好きでいる方が好きですし。丁度いいですからユッミルは服を着て下さいね」

 「それは構いませんがネメッカ様は?」

 「着ないですよ?着せたいなら弱点を攻めて着たくなる様にすればいい」

 「もしチェーハも脱いだら太ってないチェーハが有利ですが?」

 「いえいえ、そんな事は無いですよ」

 風呂から出てユッミルが服を着るとネメッカはユッミルをベッドに押し倒す。チェーハも反対側に寝てユッミルを抱く。

 「ダメですね。一方的にネメッカ様に求められている感じになってネメッカ様を雑に扱ってしまいそうです」

 「雑に体に触っていいのよ?」

 「触りたいのは今日は髪ですね」

 「ありがとう。けどやはり太ってるのはダメなのね」

 「そう言うつもりでは無いですが」

 「ユッミルさん、私もいます」

 「今日はできないけど良い?」

 「私は構いません」

 翌朝、ユッミルが目を覚ますと両側からしっかり抱かれている。

 「襲ってしまいますよ、二人共」

 「ユッミル、私は寝てる時に脱がせてくれても構いませんよ。今日はもう脱いでますけどね」

 「もうやってますよ。ネメッカ様は警戒心が無いですし」

 「そうでしたね」

 「ユッミルさん、私ともしないのですか?」

 「主宰部屋が空きませんし邪魔が入らない場所は中々」

 「残念です」

 「それよりも娘の名前を決めたいのですが」

 「お願いします」

 「もう決めていたのですが昨日はあなた方に押されてばかりでして。ニーフェはどうでしょう」

 「良いですよ。ニーフェ、良かったね」

 「ところでネメッカ様、やはり今後はイーサさん以外も名付けが出てくるのですか?」

 「そうですね。イーサもある程度確保できたのでユッミル様が塔以外でたくさんの子供を作っていないのであれば光の塔の人間は次の私の子まで待つ。少なくとも私は仕掛けないと言ってましたよ」

 「ですが数十日か百日は行かない程度ですよね?」

 「いえ、私にできた事を確認してからですからユッミルが私をお人形の様に扱う期間が伸びれば百日は超えます」

 「あまり忠誠心を謳われると浮気を疑いたくなりますね」

 「ならずっと私を監視すれば良いですよ。ずっと傍に居てくれるなら大歓迎ですね」

 「そんな鬱陶しい男はむしろ浮気されますのでしませんよ」

 「ユッミルは密かに監視もできますしできませんよ。ずっと監視してれば私の恥ずかしい弱点を知れるかもしれませんよ?」

 「それ、弱点が無い人が言う事ですよ」

 ユッミルは昼食後にチェーハ母子を連れて調査に向かう。内容を赤子が同行可能な仕事にしてゆっくり調査する。チェーハを先に塔に帰還させると店でナーレを見舞う。塔に帰ると夕食にする。チェーハと風呂に入り、ニーフェやカノール等の数人の息子を順に風呂に入れる。ケーシャ母子とチェーハ母子を両脇に寝る。

 翌日、早めの昼食を食べるとチェーハ母子とケーシャと指揮所に向かう。ニーフェは途中から上手く寝る様に仕向ける。ユッミルは帰宅するとネメッカに甘えて二人でさっさと風呂に入って寝る。

 翌朝、ユッミルは慌てて服を着る。ネメッカは一瞬、不満げだがいつの間にかネミークを抱いてトキホを連れたユッミルと機嫌よく話しながら朝食を食べていく。

 「少し散歩してきます」

 ユッミルは一組の母子とカノールを連れて森に向かう。フェノにもう一人息子を抱かせて同行させる。一匹だけ狩って塔に獣肉を持ち帰る。帰宅すると昼食後にはやはり五人の息子と一人の娘を世話する主導部屋で手伝う。その日の夜はチェーハが出かけるのでニーフェを預かる。カノールとニーフェを両脇にして寝る。少し離れてリュッサ母子も寝ている。

 翌朝、チェーハが帰宅するとユッミルに抱き付いて眠っていく。昼食後、イーサが少し苦しんでいる。やがて収まる。

 「ユッミルさん、立ち会う気なのであれば今日の夕食以降は明日まで居て下さい。そろそろですし」

 外は少し小雨だったが程なくやむ。ユッミルはチェーハ母子やネメッカ母子と夕食を食べる。

 「ユッミルさん、すぐとは言ってません。大丈夫ですから隣の部屋に居て下さい。むしろ今日は早く寝て下さい」

 特に何も無く翌朝を迎える。ユッミルが子供と遊んでいると昼前にイーサが産みそうな様で駆け付ける。

 「ユッミルさん、昼食を先にどうぞ。少し掛かりそうなので」

 「気遣いは無用。夕方まで出ないのですか?」

 「そうならないとは思いますが無いとは言えません」

 「待ちますよ」

 イーサの心配をよそに昼過ぎには出てくる。

 「元気な女の子ですね」

 「ユッミルの娘は全員最初にユッミルに裸を見られる訳ですね」

 「ネメッカ様はどうなのですか?」

 「私は運よく最近はユッミル以外の男には見られていないので、ああ、ユッミルの息子以外の男には見られていないですよ。この感じの体を知ってるのはユッミルだけですね」

 「お腹が出たり、へこんだり、私も新しい体を見てますよ」

 「ユッミルが誘惑に勝てばずっとへこんだままですよ」

 「勝って良いのですか?」

 「冗談ですよ。困ります」

 「娘達は後から嫌になるので本当に余計な事は言わないで下さいね」

 「ユッミル、娘達が成長する頃には私に嫌われる気なのですか?」

 「そう言われましても長く好きになってもらうのは難しいですがその気がある訳では無いですよ」

 「母親が触られたがってる相手を嫌になりますかね?」

 「ネメッカ様?その時までこの感じでいる気ですか?」

 「嫌ですか?」

 「嫌とは言いませんが子供の教育の為にお断りする機会が増えるのでいずれ私如きに断られる事に嫌気が差してしなくなるのでは?」

 ネメッカは食堂に向かう。ユッミルもトキホを抱いて付いていく

 「そうですね。そうなると思います。ただ、ユッミル、そうならなくても文句は無しですよ?ユッミルに甘えるのは最後までやめられないかもしれませんから覚悟して下さい」

 「それなら言わせてもらいますが子供がいなくなったら私こそ急に甘え始めるかもしれませんよ?それで急にネメッカ様が冷めたら若いチェーハとかに相手をしてもらう事になりますからね」

 「若い方が良いのですか?」

 「ネメッカ様が冷たくなったらですけど」

 「それよりユッミルはいつ様と呼ぶのをやめるのですか?」

 「何か問題でも?」

 「ええ、あります。ネミークが私達の関係を誤解します」

 「どう誤解するのですか?」

 「ユッミルが私に逆らえないとかですね」

 「正しい現実ですね」

 「その、するかどうかを決めてるのはほぼユッミルでしょ。ユッミルにしたいって言われたら断れません。けど私は断られた事があります」

 「いえいえ、そもそもネメッカ様が断っていないだけで断っても離婚なんてしませんよ」

 「それは分かってますけど。とにかくネメッカと呼ぶべきです」

 「何か違和感が…ああ、ユッミルは私に心を許していないから他人行儀なのですね」

 「それは違います。ネメッカ様は魅力的ですよ。そんなあなたが優しくしてくれてる感謝でどうしても下手に出てしまいます」

 「あら?それは嬉しいけど。その割には言う事を聞いてくれないわね?誘いを断ってくるじゃないの」

 「それはネメッカ様の過度の気遣いを遠慮しているだけですよ」

 ネメッカは食堂の卓に着く。

「私がしたいと言ってるのよ?」

 「どうしてですか?」

 「気分よ、気分。ユッミルが好きなの。」

 「断られたら不快なのですか?」

 「うーん、そうじゃないけど不安ね」

 「最近もですか?」

 「慣れたわね。けど次を狙うからユッミルには迷惑を掛けるわよ?」

 「気にしませんよ」

 「様呼び、やめないのね?」

 「しばらくは」

 ネメッカは先に昼食を終えるとネミークを置いてイーサの様子を見に戻る。ネミークとトキホはユッミルが世話する。しばらくしてリュッサ母子がやってくる。

 「ユンルク、階段…」

 「いえ、ユーカに抱いてもらいました。そもそも塔の階段を上り下りされると厄介なのでなるべく学ばせない方針ですよ」

 「大丈夫ですか?」

 「ええ、ですがいずれは学ぶのでユッミル様の判断で教えるのは構いません。ネメッカ様を筆頭にユッミルさんの教育方針に文句を言う人はいないと思いますよ」

 「そんな独善的な人間では無いですよ」

 「分かってますよ。けど男一人に女多数ですしユッミル様に文句を付けるのは全員一致の時だけですね」

 「そうですよ。女の人は四人で全員一致みたいな顔して要求してきますし結局、こちらに決定権なんて無いのですよ」

 「私は立場が弱いのでユッミル様の味方ですよ」

 「それはありがたいですね」

 翌朝、ユッミルは指揮所に向かう。チェーハは久々に壮年の女性として同行し、ユッミルの側近を演じる。

 「君も魔族領の様子を見てくれ。普段から見てる私とは違う見方ができるかもしれない」

 「分かりました」

 二人は任を終える。

 「どうだった?」

 「普段を知らないのですが大小様々な回転が見えましたね」

 「回転?えっと、少し考えさせて」

 土の塔の近くを抜けた辺りでチェーハは速度を緩める。

 「どうします?」

 「どうとは?」

 「家ですか?」

 「いえ、塔ですね。あなたを家に送る訳にはいかないです」

 「そうですね」

 二人は塔に帰還する。ユッミルはトキホとニーフェを回収して主宰部屋に戻る。

 「ユッミルさん、脱がせてくれて良いですよ?」

 「夕方には一度家に帰りますよ」

 「それでもお願いします」

 ユッミルはチェーハを脱がせる。二人はしばらく触れ合う。

 「ネメッカ様は出産後すぐは僕の方は脱がないと言っていましたがどうします?」

 「しばらくはネメッカ様を抜かさずにネメッカ様が女として枯れてから追い抜きますよ」

 「そんな競争は困りますよ」

 ユッミルは夕方前にチェーハと家に戻る。シャーユと手を繋いで夕食に向かう。シャーネも横にいる。

 「マティッセさん、たまには話してくれませんか?」

 「そんなに遠慮しなくても構いませんよ」

 ユッミルはシャーユを膝に乗せてシャーネとマティッセを両脇に夕食を食べる。ユッミルはシウと風呂に入る。シャーユ、ミリット、ターヒョの息子を順にシウと世話していく。その後、シウとレヒーハ母子が入れ替わってユッミルはカッサを連れて先に上がる。

カッサに加えてヌーグを寝かせつつ静かにスーリとフーニャと話をする。奥からメシャーナ、シャーユ、スーリ、カッサ、ユッミル、ヌーグ、フーニャと並んでいる。布団は8人分が三列並んでいるし予備も十人分ほど重ねてある。

北側に当たる最奥には出産の近い女性が並ぶ事が多い。かつてはオーネやメシャーナの指定席だったがオーネは三列目の南側の扉から遠い西の最も奥をセチューカと取り合う事が多い。ただ、セチューカも近い様で最近は北側に寝ており、南側はオーネが独占している。

ユッミルは出産が近い子が多い時期は枕を北側にして妊婦を気に掛ける。南側はオーネが独占する端っこを除いてレヒーハやマティッセにリュッサ等が母親が忙しい子達を纏めて世話している。ユッミルは子供の世話が忙しい時は南に枕を向け、何人かを引き受ける。真ん中の列の側室もユッミルに合わせる事が多いがシウやレヒーハはユッミルと役割分担して逆向きの枕で寝る事も多い。フーニャやターヒョはユッミルより先に奥で向きを気にせず寝てしまう事が多い。

ただ、ユッミルが南側で寝ていた場合は夜中に起きたオーネやチェーハ等が枕元に誘いに来る事もある。ユッミルが南側に移動して服を散乱させているとレヒーハやシウが怒る事が多い。深夜に暗闇で脱いだものだが朝起きると露骨な痕跡になってしまうからだ。エコやターヒョにリュッサは空いてると言う理由で南側を使う事も多いがユッミルが夜に横に転がり込む事も多い。反応は様々なのでエコには手控えている。

 この日も深夜に起きてしまった為、シャーユの世話をするマティッセにシャーユを挟んで横に寝る。ユッミルはマティッセの反応を探る気らしい。ユッミルが目を覚ますと抱いていたシャーユがそのままにもう一方の横にはカッサがいる。上にはチェーハが乗っている。枕元には母親に仕向けられたヌーグがいる。シャーネも座っている。

 ユッミルはニーフェを抱いてシャーネにカッサを抱かせてフーニャ母子と朝食に向かう。

 朝食後、ユッミルはチェーハ母子やレヒーハ母子にシャーユやシャーネと遊んでいる。しばらくすると扉を叩く音がする。

 「ムヒューエさん?どうしました?」

 「ミーハの第二子が生まれました。生まれ自体は少し前ですが準備が整ったので明日以降面会をお願いするとの事です」

 「行くのは構いませんが扱いはどうなります?」

 「おそらく光だろうとの事で扱いはそちらに任せるしいずれはそちらに引き取ってもらうが当面はそちらが赤子の世話で大変に見えるのでしばらくこちらで預かるという感じですね」

 「そうですね。流石、ラーハ様、敵に回さなければ気遣いが出来ますね」

 「明日以降三日程は待っているので気兼ねなく、それ以降なら事前に、十日以上来れないなら理由が知りたいとの事」

 「ネメッカ様と一緒が良いと?」

 「いえ、イーサさんの体調を気に掛けてネメッカ様側の同席は不要との事ですね。それで火の団以外の側室を二人まで同席させていいとの事です。月とか木の子育ての主力から色々聞いて戻す時期を判断したいらしいです」

 「光の団からはむしろ参加するなと?」

 「いえいえ、フェノさんは来る前提ですね。もう長女では無いのでネメッカ様の方の予定と合せるよりさっさと済ませたいのだと思います。ですがユッミル様との接触はしたい様でして」

 「分かりました。明日行きますよ。シャーネもですよね?」

 「はい、その方が良いと思います」

 ユッミルはその後、テーファを家に連れて帰る。

 翌日、リーシキを家に残してテーファ母子とレヒーハ母子とフェノを連れて水の塔に向かう。ユッミルはサーナと弟、ファッリーユ、カッサをテーファとミーハと世話をする。ラーハはレヒーハに家の事情を問う。ユッミルも時折会話に入る。

 「それで最近の魔族領はどう?」

 「分かりませんね。私はやはり新参ですし」

 「ただ、私達に至っては見えない所が多い。何が役に立つか分からないし気になった所、情報交換しないかしら?」

 「何か懸念でも?」

 「それはありますよ。あなたの言う中級魔族が前線に増えたと言う話は気になるのは当たり前です」

 「それに関して過去は?」

 「中級魔族は基本的に草原で戦って術師に被害をもたらす。森や泉にはあまり出ず正面から来る程度しか分かってません。ですから順当に行くと草原で戦闘が起こりそう位しか分かりませんね」

 「下級魔族は中級魔族に押しのけられて特に大きく前に出る動きは無いですが」

 「はい、それはこちらも森の方ですが確認しています。数を減らしたくないのかもしれません。総合的に見るとリッネさん達を返り討ちにしようとしているとも見れますが最近はリッネさんがそこまで活発では無い。こうした事情から向こうの狙いはきっちりは掴めていません」

 「そうですか」

 「それで名前は決まりましたか?」

 「えっと、少し待って下さいね。所で男の子ですか?」

 「そうだよ。ユッミル」

 「うーん、ではタツヌで構いませんか」

 「ありがとう。名付けも大変ね」

 「いえいえ」

 「私は戻るわ。子供達がキリの良い所で引き上げなさい」

 ラーハは応接室から出る。ユッミルはタツヌに声を掛けてから帰る。

 「ユッミル、抱っこでも良いよ?」

 「ああ、シャーネ。勘違いしてるけどユッミルさんの言う事は聞かないとダメよ。別に塔には来なくて良いけど水の子供が出るまでは寝る時は張り付けね。約束を破ってる様なら水に所属してもらうわよ」

 「はい」

 ユッミルは帰宅する。シャーネはいつの間にか服を脱いで抱きついてくる。

 「ユッミル、あれは演技だから。ラーハ様にはユッミルに体で遊ばれたくないって思わせたいの」

 「分かったから服を着て」

 「せっかく脱いだしユッミルは分かったって口だけで言うし」

 「シャーネの言う通りにしていると他の女性の評価が下がる気がしますが」

 「どうして?」

 「小さな子に恥ずかしい姿をさせて敏感な所も触ってるし」

 「そうしないと子供扱いですし」

 「もう子供扱いはしないよ?」

 「信用してません」

 「えっ、信用されてない子とはこういう触れ合いはできないね」

 「じゃあ勝手に脱いでくっつきます。大人と認める様に」

 「分かったからこれまで通りね。けどやはり服は着てね」

 「シウさん」

 「えっ」

 「ユッミルさんのやってる事で評価が落ちますか?」

 「落ちるわね。私以外に気が向いてる訳だし」

 「そうじゃなくて女性の扱いが悪いと思うかです」

 「それは無いわね。私も好きでそういう事をやらせてるし」

 「ほらっ。シウさんもああ言ってるよ」

 「シウさんはそうかもしれませんしメシャーナやベーニュさんも気にしないとは思いますが」

 「そうね。気にする女はいると思うけどそれってユッミルがそこまで好きじゃない人よ。それにそこまで人を好きになった事が無いと思う」

 「シャーネ」

 「レヒーハですらもうこっち側よ。あっち側を気にしても仕方ないわ」

 「シャーネちゃん、あっち側の人をこっちに引き込むには警戒させたらいけないよ?」

 「えー、またそうやって私を支配しようとする」

 「服脱いで体を支配させてると心も支配されるかもしれないよ?」

 「その支配は良いの」

 「いや、支配では無いよ」

 「でも大体は言う事聞くからたまには良いでしょ」

 「本当にたまにだよ?」

 「うん」

 ユッミルは夕食後、フーニャ母子やシャーユにファッリーユと風呂に入る。

 翌日、昼前にエコが息子を連れてやってくる。

 「珍しいですね」

 「ええ、明日も休みます」

 「ゼフロの世話は任せて休んでて下さい」

 ユッミルはゼフロを連れてレヒーハ母子やシャーユの所に戻る。

 「それでですがターヒョさんはいつ戻れるのですか?」

 「えっ、私?」

 「そうですよ。例のソースの材料を持ってくるのはユッミル様だけでもできますし厨房に入ってくれないと困ります」

 「もう少し休もうと思ったけど分かったわ」

 「エコさん、一度二日入って数日休んでから本格復帰ではダメですか?」

 「そうですね。ミューレさんに聞いてみれば良いと思います。今日は店を休業にしたのでターヒョさんは明日からお願いします」

 「店が休業?申し訳ない。それでナーレさんは大丈夫ですか?」

 「ええ、ミューレさんは意地でもあそこで産ませる気ですから世話役はしっかり用意してますね」

 「テーファさんと言い、何故か月の人は扱いが悪くなってしまう」

 「そうですね。昨日は一緒に寝てくれましたけど」

 「スーリさんも帰ってしまいましたし」

 「ああ、それならメシャちゃんが産むまで狩りは行かないと思うと言ったら帰ったわね」

 「まあ仕方ないですね」

 「ユッミル、私も甘えるわね」

 「この二人相手だと分が悪いな」

 「あの、あくまで子供と話したいだけですからね」

 「だが今は一人喋れる娘が来ているとはいえ、ユン坊はいないし話せるのは長女君とシウと私の長男だけだろう」

 「それでも増えましたよ。それに生まれたての子も重要ですよ。レヒーハさんの働きぶりには感謝です。カッサのママは偉いね」

 「ママ、好きー?」

 「そうだね。ですから私の相手は当面免除してあげようかと思う位」

 「ユッミル殿、そんな事を言うと誰も子供の世話をしなくなるぞ」

 「そうね。子供の相手を労うならマッサージを願いたいわね」

 「そうですね。子供は公平に世話しましょう。ご褒美の為に頑張るのは良くないです」

 「あら、残念」

 ユッミルはファッリーユとシャーユを両脇にしてニーフェを膝に置いて夕食を食べる。チェーハは仕事であり、三人の娘をユッミルが世話する事になる。

 「ユッミルはやはり女を引き寄せるのね」

 「シャーネ。今は母親が世話をしてるとは言え男の方が多い。ゼフロ、ミリット、ヌーグにターヒョの所、女はこの三人にカッサ。四対四?いや、テーファさんの所のリーシキで五人」

 「けど一時期に比べたら女の子が増えたよね。ユッミル、祈ったの?」

 「そんな事はしていないよ」

 「けどトキホちゃんが来たらやはり同数」

 「ユッミル、オーネの所のモティアを忘れてるからやはり同数よ」

 「そうでした。トキホが生まれた辺りから男女は同数になって最近は女の子が多い。ですかね?」

 「そんなに差は無いわね。ユンルクちゃんとか光の男の子がいないと差は小さいわね」

 「けど確かに母親より娘の方が可愛いかも。嫌われたくないし怪我もさせたくないからできないけど抱き締めたいですね」

 「やはり娘が良いの?」

 「ユンルクやネミークには期待してますよ」

 「ねえ、私は可愛くないの?それでも良いけどなら大人扱いね」

 「シャーネ、大人は気持ち丸出しはダメだよ。

 「良いわ、今回は引き下がる」

 「ああ、でもシャーユちゃんは強いから怪我はし無さそう」

 「レヒーハさん、万が一がありますから」

 「ユッミル、シャーユちゃんを抱けない理由、無くないかしら?」

「シャーちゃん、パパ嫌いだよね?」

 「すきー、遊んで」

 「くっつかれるのは嫌だよね?」

 「パパ、嫌な事しないよ」

 「ユッミル、観念しなさい」

 ユッミルはシャーユを強く抱く。シャーユも返してくる。

 「シャーちゃん、強い」

 「別に問題は無いでしょ?」

 「ですが怪我が怖いのでシャーちゃん以外にはしません」

 ユッミルはテーファとレヒーハと三人娘にカッサとリーシキを順に風呂に入れる。ユッミルは三人娘とテーファ母子とフーニャ母子と寝る。

 翌朝、ターヒョは出かけてチェーハが帰ってくる。ユッミルはターヒョの息子とカッサを預かる。ファッリーユとシャーユと遊びつつ、メシャーナやセテューカを気にしている。一方、チェーハ母子やテーファ母子にオーネ母子は生まれたての子供の世話の情報を共有している。テーファは二人目であり、レヒーハと共に色々と教えている。ユッミルの事はフーニャとエコが子供を連れて手伝っている。

昼食はチェーハが娘とユッミルの膝に陣取る。ファッリーユがいたずらを仕掛ける一方でシャーユはユッミルを手伝う。昼からチェーハとオーネは眠ってしまい、五人娘になってしまう。ユッミルはニーフェとモティアを集中的に世話をする。カッサとシャーユは大人しいがファッリーユは頭突き等のちょっかいを出してくる。

 「テーファさん、ファーちゃんの攻略法とか無いですか?」

 「頭突きを頭突きで返すと良いですよ」

 「えっ。まあやってみます」

 しばらくしてファッリーユが再び頭突きをするのでその上から頭をくっつける。するとファッリーユは頭を抱き寄せて頬ずりする。その後、顔は近いままファッリーユはユッミルを見つめている。

 「まさか」

 ユッミルはファッリーユを抱き寄せて頬ずりする。

 「あーがと」

 「テーファさん、普通子供が狙うのは頬ですよね?」

 「うーん、ユッミルが口元にされてるから覚えたとか?」

 「流石にこの返礼は要求しないですね。良い子は撫でよう。偉いね」

 ファッリーユはもう一度下唇に口をぶつける。

 「褒めすぎは良くないですね。ファーちゃん、そろそろママと遊んだら?」

 「ママ、連れて来る」

 シャーユは近づいて来るが膝には赤子がいる。

 「シャー、元気?」

 「うーん?遊ぶ」

 「シウさん、助けて下さい」

 「その子達の母親を起こしなさいよ」

 ユッミルはニーフェをシャーユに預ける。モティアを抱く様子を見せる。

 「ユッミル、確かにシャーユちゃんが少しでも世話してくれたらありがたくはあるけど」

 シャーユはニーフェを抱く。

 「シャーユはお姉さんだね」

 「ねーさん?」

 「小さな子を助けてあげてね」

 「たすけて?」

 「とりあえずはママの真似で良いよ」

 「分かった」

 「ユッミル、知らないわよ」

 その日も相変わらず数人の子供を順に風呂で世話をする。ただ、メシャーナの調子が良くないので風呂から出た後、シャーユと共に見守る。

 「シャーユ、大丈夫だからパパと寝てなさい」

 「パパがいたいからいっしょ」

 「メシャ、今は自分の事を心配した方が良いよ」

 「せっかくユッミルが家にいるのにこの子はゆっくりお話しして寝ればいいのに」

 「メシャ、僕が気になるだけだから」

 翌朝、メシャーナは息子を産む。朝食後にすんなりと生まれてそのままユッミルに抱かれている。エコはそれを見届けると息子と店に向かう。メシャーナはすっかり元気を取り戻してシャーユを抱きかかえている。

 「ママ、歩くよ」

 「ダメ、パパは忙しいの。ほらっ。高いよ」

 「パパの方が高いよ」

 「シャーユ、高さが分かるの?」

 「おそらのほうでしょ?」

 「そうだね」

 「それで名前はムティラで良いかな?」

 「女の子みたいね」

 「そうですね。コトマはどうかな?」

 「そうね。それで良いわ。あっさりした名前が増えたわね」

 「そろそろ女性が考えてくれませんかね」

 

 

 

 

 

 

 

 4節 溢れ

 

 その日の夕方、ターヒョが帰宅する。ターヒョは息子とモティアの世話をする。メシャーナは軽くシャーユの世話もこなしており、ユッミルはファッリーユと座っている。当然、見かねたテーファがやってくる。そのまま夕食はテーファ母子とフーニャ母子を両脇で食べる。膝にはファッリーユが座っている。ターヒョとレヒーハは実子とモティアを世話していく。ユッミルはシウと子供を風呂に入れる。モティア、ファッリーユ、ミリットの順で体の汚れを拭きつつ、話しかけてもいく。ユッミルはファッリーユを横に寝かせ、テーファを抱いて寝る。

翌日はセテューカを気にしつつもナーレを見舞いに行く。明らかに近いが家に帰らせる事はできず光の塔に寄って昼過ぎに帰宅する。

 「ん?ナーレ君は一緒じゃないのか?」

 「ええ、向こうで産むそうです」

 「君は泊まらないのか?」

 「泊まったら側室が増えますが構いませんか?」

 「そういう事か」

 「はい、そういう事なので明日も見舞いに行きますがその前に狩りに行きます。スーリさん、お願いできますか?」

 「もちろんです」

 「ああ、私は息子を連れて行くわ。それでユッミルと材料を届けた足で店に泊まるわ。ナーレも見ておくわね」

 「はい、お願いします」

 「それでユッミルは誰を抱くのかね?」

 「ミリットとカッサは母親側で今、家にいる光属性はチェーハの所のニーフェを除けばヌーグ位ですね。リーシキ君の属性はちょっと分からない。ニーフェが光ってのも親から考えたらって話ですし。もちろん、シャーユは光ですけどね」

 「ヌーグを抱いてくれるのか?」

 「そうですね。リュッサさんは当面向こうですし」

 「しかし、そうなると団に引き入れる事ができるユッミルの子供を未だに抱えてないのはもしや土だけか?」

 「火と水は複数確保。月もファーちゃんにキッシャノさんの子も月な気がします。ユッホさんの子もおそらく木ですね。氷は未確定ですけどモティアちゃんは氷の気もします。土はコトマ君が可能性がある気もしますがメシャーナは団の側室では無いですからね。フーニャさんの二子目に期待ですね」

 「私の子が団に行きたがるかね?」

 「私は知りませんし無理に入れるべきとも思いませんよ。ただ、ユッホさんの所は息子さんも優秀ですしそのママは格好良いので木の団に入りそうですけどね」

 「私もそれなりに優秀だと思うが」

 「そうですけどパパもママもペラペラ余計な事を話してママの趣味が読書ですよ?それで属性が光なら中々難しい」

 「確かに私の術を教える事はできない事になるしな」

 「ただ、光は見せますよ。本人がそうしたいと思うかもしれませんし」

 「もちろんだ、できるに越した事はない」

 ユッミルはフーニャとテーファと風呂に入り、子供を二人ずつ三組の計6人、二人の子の他にミリット、モティア、ニーフェを世話する。ユッミルは昼間に母親が寝てしまうモティアや仕事の多いニーフェの世話の機会が増える。シャーユは母親が世話する様に戻ったがファッリーユもユッミルが世話する機会が多い。テーファとユッミルで三人娘とリーシキを世話する、それにレヒーハ母子が加わるという形が増えている。

もちろん、シウ母子やフーニャ母子も気まぐれにやってくるしユッミルも三人娘の二人辺りを母親かレヒーハに預けて一人を抱く状態ならミリットやヌーグの方に行くがユッミルはニーフェとモティアの世話に追われている。

 翌日は予定通り、ユッミルはヌーグを抱いて森に向かう。テーファはリーシキを抱え、ターヒョも息子を抱えている。スーリとメシャーナが前衛でターヒョとユッミル、テーファがバランスを取り、オーネ、シャーネ、フーニャが後方から支援する体制だ。

 「ちょっと、ユッミル。どうして遊撃の筈の三人が全員子供を抱えてるのよ」

 「シャーネ、静かに」

 「後衛の三人は腕力不足だから子供を抱えていないだけ。動くのは前衛二人の仕事です」

 「それはそうだけどユッミルとターヒョは自衛してテーファを守って私達三人は子供を抱えてないからって自衛しろって事?」

 「そんな気はありませんが僕に体を捧げる様にしがみつけば守りますよ」

 「ユッミル、そんな事を言うと今からしがみつくわよ。服も脱ごうかしら?」

 「一応、あなた達は獣から遠い場所に居てるのですが」

 「分かってるわよ」

 ユッミルはターヒョ、テーファと子供に術を見せながらスーリの狩りを支援する。メシャーナには周辺の獣を牽制させる。

 「我々は不要の様だな」

 「私は別に構いません。少し眠いですし」

 「子供連れてると奥に行けないから出番が無いのは仕方ないわね」

 「フーニャさん、抜き打ち試験です。行きますよ。メシャ、戻ってこい」

 「ああ、ユッミルが狩るのね。分かったわ」

 フーニャは若干遅れたがきっちり狩る。ユッミルもぎりぎりに雷撃を撃つ。シャーネが倒れる。

 「まさか」

 ユッミルはヌーグに怪我をさせない様に急ぐ。近づくとシャーネは服を脱ごうとしている。

 「ユッミル、私、抱かれながら死ぬわ」

 「シャーネ、脱ぐなら置いていく、訳にはいかないけど張り付けも服を脱がせるの面倒だしずっと着せようかな?」

 「分かったわよ。けど驚きはしたからくっつく位は良いでしょ」

 「仕方ない」

 ユッミルがターヒョ母子と生血を店に送り届けてナーレを見舞って家に帰るとリュッサとベーニュが帰っている。

 「ユッミルさん、久しぶりです」

 リュッサは珍しく抱き付いてくる。

 「ああ、お帰り。大丈夫?」

 「ええ、向こうは私とケーシャさん以外は次の子が近い人が多くてネメッカ様やエルネは動けてますけどそろそろ休むかもしれないからその前に家で休んでこいと」

 「ユンルクも向こうですか?ですがこちらも手が欲しい位なのですよ。聞き分けの良いユンルクちゃんに手伝って欲しい位ですよ」

 「ユッミル様がユンルクと過ごしたいなら連れて来ても良いとは思いますが。確かに私もユンルクの世話はそこまで苦労しませんし。ただ、抱くのは少ししんどいですね」

 ユッミルはユンルクに加えてソヨッハを連れて来る。

 「ありがとうございます。皆さん、疲れが溜まってますので。後、肉を狩ったばかりなので好きなだけ食べて下さい」

 ユッミルはユンルクが食べたそうなのでレヒーハと相談して細かく切って煮込み時間を伸ばして食べさせてみる。ユンルクは不思議そうに食べていく。ソヨッハはセチューカやレヒーハにリュッサやチェーハを回復する。外では小雨が降ってくる。夕食後、ユッミルはユンルクとシャーユを両手に歩いてみる。外も歩ける可能性も感じたが雨で雨季である事を思い出し、当面は無理そうだと溜息をつく。

 翌日は調査後にやはり店に向かう。ちなみに調査自体は今回で一段落してチェーハに引き継ぐ事になっている。

 「ナーレさん、どうですか?」

 「少し疲れてますね」

 「家なら木の術師がいますので多少はましだと思いますよ」

 「ユッミルさんは居てくれないのですか?」

 「家に母親が忙しい子供が増えてきたので長居はできませんね。ですが今日は少し居ます。少し昼食を食べたら戻ってきますね」

 ユッミルはエコ母子とターヒョ母子と昼食を取る。店の近況について報告を受ける。

 「つまり、宅配で体力勝負がしたいから木の術師が欲しいと?」

 「月にはそういう人材がいますが火にはあまりいません。温め役は必要です」

 「流石にそんな事の為に木に側室を下さいとは言えませんよ。ミューレさん自身が木と交渉すればいい」

 「ただ、宅配の人員だけでは無くて休息時もね。そうなると側室の方がありがたいらしいわ」

 「ですがレヒーハさんでは無理ですよ」

 「そうですね」

 「そもそも家にも欲しい位ですしそんな木の術師を数人引き抜くなんてシーリュノ様を怒らせてしまいます。木の術師をここの常連にして割引でもして交渉すればいい」

 「機会があればで大丈夫ですから」

 「聞いてたのですね。良いですけど」

 「ええ、それにそうなれば妊婦も安心していられる」

 「やはり狙いはそこですか。困った人です」

 ユッミルは食後にナーレの所へ息子と戻る。夕方、二人の息子をコッテに預けて家に帰る。チェーハ母子とリュッサ母子を両脇にユンルクを抱えて食べる。シャーユとファッリーユは母親の隣だが椅子を一つ使っている。

 「子供用の椅子がそろそろ有った方が良いですね」

 「そうですね。この様子だと五つ位用意しても足り無さそうですがそれ以上だと今度は机が小さすぎそうなのでその辺りもどうにかした方が良さそうですね」

 「もちろん、夕食を二組以上に分ければ良いですし今も全員では食べてないですが子供達が成長したら寝床も足りないでしょう」

 「ユッミル、水の方針としてはユッミル以外の大人の男との同居はダメだから私もそれは同じ。私の息子なら良いけどそれにしても一方的に私の息子だけってのは筋違いだし私との同居場所には子供以外の男はダメね。ユッミルの強い息子に襲われたら困るわ」

 「シャーネが僕の息子と付き合うのは問題無いよ」

 「ユッミル、しないわよ?」

 「それでも良いですけどご勝手に」

 「ね、皆もここに息子を住ませない方が良いと分かったでしょ?」

 「そうね。いずれは学校か団ね。元々そのつもりだったけど」

 「ユッミルさん、この家で他の男とはさせません。ユッミル様が引き合わせてもお断りします」

 「そっか、息子が君らをと言うのもあり得るのか。私がとりなす事はしないけどね」

 「私も有り得ませんがその場合でもここには住みません。むしろユッミル様に追い出されないか心配ですね」

 「分かりましたから何とかします。でも僕もファーちゃんに迫られたら断る術はないですね。迫る事は無いでしょうけど」

 「うん、任せるわ」

 「ん?うん」

 ユッミルはファッリーユとユンルクを連れて一度寝床に向かう。シャーネとシウが風呂の用意をしている。

 「ユッミルさん、良いですか?」

 「ああ、マティ。どうしたの?」

 「その、今夜なのですが」

 「もう夜ですね」

 「はい、風呂の後、お相手願いますか?」

 「えっ、私は構いませんけど」

 「その、私としては側室の義務を果たすという意味なのですが、ユッミル様も信頼には足るので」

 「ありがとうございます。丁寧にお相手しますね」

 「その事なのですが扱いは他の方と同じで構いません。ちゃんと脱ぎますから好きに触って下さい」

 「分かりましたよ。何かあれば言って下さい。風呂はどうします?」

 「ご一緒します。その、ユッミルさんが脱がせても構いません」

 「ではそうします。子供の世話は?」

 「それはいつも通りに」

 ユッミルはマティッセの服を脱がせる。風呂ではユンルクやファッリーユ等二人ずつ二組の子供の世話をする。風呂から出るとユッミルはマティッセを抱きながら寝床に向かう。

 「では行きますよ」

 「ええ、是非お願いします」

 「良かったです。それにしてもどういう心変わりですか?」

 「土の団の子供がいない様なのでそういう状況で少々の理由で断るのはこの話をお受けする上で違うと」

 「それだけだと何か悪いですね。それとも団から何か?」

 「そう言う訳では無いですね。少なくともユッミルさんの事を理解してきたからだと思います。ただ、上手くは言えません」

 「そうですね。慣れてきたら変わりますよね。良かったです」

 翌朝、マティッセに抱かれているが起こさない様に辛うじて抜け出す。服を着ようとするとファッリーユが取っていく。ユッミルは姿を消してさっさと奪い返そうとするがセテューカとぶつかる。

 「あら?これは久々にやりたいという事かしら?」

 「流石に出産直前の女性は遠慮します。随分、元気ですね」

 「たくさん寝てれば元気ですよ」

 「申し訳ないですが今は服を着ますから」

 ユッミルは新しい服を着ようとも考えたがまた姿を消してさっさと服を取り返す。ファッリーユは闇雲に手探りして頭突きをする。ユッミルは尻もちをつく。

 「ファーちゃん、痛い」

 「ああ、いた。あそぼー」

 ファッリーユは抱き付く。

 「ファーちゃん、何をしてるの?」

 「頭突きで飛ばされてしまって。元気ですね」

 「ファー、ダメでしょ」

 「少し腹が痛いですがそれ以上にこの家で不用意に脱いだまま行動したくは無いので悪戯の方をどうにかして下さい」

 「大丈夫?」

 「はい、って何を」

 「これを傷つけたら重罪だよね。皆のだし。だからユッミルは未遂でも母親の私に罰を与えるべきだと思うの」

 「大丈夫です。テーファさん」

「ついつい、危ないから服を着よっか」

 「そんな事はしなくて良いです」

 ユッミルは服を着る。

 「うーん、張り付けかなあ」

 「ダメよ。それだと私に罰が与えられない。ユッミルに丸裸で抱かれて部屋を一周させる」

 「あなたは良いかもしれませんが妊婦は持てませんしテーファさんとかも難しい。もう良いでしょう」

 「張り付けてくすぐりかな」

 「シャーネ、もしかして別れさせる気?僕が意地悪に見えるよ」

 「でも罰だし」

 「それに僕も嬉しくない」

 「だから罰よ」

 「分かった。次の食事を服を脱がされて食べるで良い。僕が触るよ」

 「私、それなら悪い事しようかな」

 「わざと悪い事をした場合は膝に乗せて全身を悲鳴を上げるまで揉む。怖いよね?」

 「分かったから。わざとはしないわ。ユッミルから嫌われるっていうかなり重い刑をくらいそうだし」

 「じゃあ脱がせて。朝ごはんを食べるよ」

 「分かりました」

 ユッミルはテーファを脱がせる。

 「確かにこれは重罰ですね。狙われてる相手の前で脱がざる得ないのですから」

 「朝食食べようか。その気なら食べた後も良いからね」

 ユッミルは反対の隣にファッリーユを座らせる。

 「ファーちゃん、服取ったらダメ」

 「パパも皆の脱がしてぅ」

 「大人は良い。子供はダメ」

 「ファーだけが脱がされるの?」

 「というか脱がすという言葉…いや、ファーが嫌なら脱がさないよ?」

 「うー、嫌じゃない。脱がせて」

 「風呂の時ね」

 「ママ、脱いでる。ファーも」

 「風呂以外で脱ぐのは大人だけ」

 「分かった」

 朝食を終えるとテーファを後ろから抱く。

 「罰になってるのかしら?」

 「なってますよ。テーファさんの体は今、僕にとって格安ですから」

 「お、重すぎるわ。嘘でもそんな事言わないで」

 「今だけ…」

 テーファはユッミルを胸の谷間に押し込む。ユッミルの鼻は圧迫されて鼻血が出る。ユッミルは興奮を仄めかして誤魔化す。テーファに服を着せる。ユッミルは店に向かう。ナーレを見舞うとエコ母子を家の近くまで送り、塔に向かう。イーサが元気に働いており、人が減る雨季に向けてケーシャを休ませたいという事でケーシャ母子を連れて帰る。リュッサ母子が交代で戻る事になったがユンルクは家に残して欲しいそうなので快諾する。

 昼過ぎに家に帰るとケーシャ母子とメシャーナ母子と昼食を食べる。レヒーハ母子やオーネ母子にマティッセ、リュッサ母子は既に昼食を終えており、食事の分散がいよいよ既定路線になっている。シウ母子やフーニャ母子、シャーネにエコ母子、テーファ母子は同席しており、基本的にはユッミルと食べる事にはなっている。あくまで別組があぶれただけという体面は保たれている。

 夕食はリュッサ母子とレヒーハ母子を両脇にユンルクを抱えて食べる。ユッミルはユンルクと熱心に話す。

 「ユンルクはこちらで預かりたいのですが」

 「それは構いませんが」

 「向こうは階段があって危険なのですがこちらにはありません。こちらに足りないのは子供を座らせる大人の膝なのです。ユンルクやシャーユは自分で歩けるので抱かなくて良い。特に負担は大きくないのでそこは気にしなくて良いですよ」

 「そうですね。それにユッミルさんはユンルクを気に入ってるみたいですし任せれば安心ですね」

 「公平に扱いたいのですがね」

 「私は構いませんからね」

 「そうですね」

 ユッミルはエコとベーニュと三人三組の九人の子供を風呂に入れる。ユッミルはマティッセとシウ母子を両脇にファッリーユを抱いて寝る。

 翌朝、リュッサ母子を塔に送る。何人か妊婦が居たので見舞いつつ、子供に声を掛ける。店に向かおうとするとネメッカがテーファの家に向かうらしく送り届ける。留守番のエルネ母子とも少し話すと店に向かう。ナーレはいよいよ近いらしい。ただ、少しは間がありそうだったので帰宅する。

 ユッミル達が夕食を終えた頃、ムヒューエがミーハ母子を連れてやって来る。レミーカにソヨッハもやって来る。

 「魔族の襲撃ですか」

 「ああ、対処したのは土の団だ。報告しろと言われている」

 「私もユッミルさんに必要とあらば協力しろという事で来ました」

 「無駄足だけど丁度良いし泊まるわね」

 「私もそうしよう」

 「三人は厳しいですが」

 「今日は流石にしなくて良いと言われている」

 「それは良かった」

 「レミーカさんはいつ戻るのですか?」

 「しばらく待機だ。ユッミルさんには少し見回りを願いたいと思っている」

 「それもそうですね。ソヨッハ、シャーネ、ケーシャさん、シウもお願いします」

 「火事でも起こすの?」

 「魔族が居れば路地を焦がす程度なら構いません」

 ユッミルはカッサを抱いてレミーカとムヒューエや側室と子供を連れて見回る。

 「子連れで呑気ね」

 「いえいえ、場合によっては外でも僕と居る方が安全ですよ」

 「それはそうだけど」

 ユッミルは歪曲視野を頻繁に使い、集会所の南付近や冒険者の宿の西半、光の塔下東側に異常は無い。一度撤収する。

 「この後、どうします?」

 「何かあれば術師協会や集会所が色々鳴らすから。それよりも全員が同時に寝る等と言う失態を侵さないよういっそ人を選んで先に寝かせるべきだろう。ただ、流石のこの大所帯、既に夜型の人間がいるとは」

 「とりあえず数人、寝かせてきます」

 ユッミルはメシャーナ母子とレヒーハ母子を寝かせる。ミーハに風呂を入らせる。

 「それで土の団がそこまで見回りに出ていないようですが」

 「追撃に出たのだ。数人の重傷者が出て相手は中級魔族だったので深くは追わないがある程度は追うという事だ」

 「どうですかね、少し難しい様な。しかし、撤退ですか」

 「ああ、町は障害物が多く攻撃魔法は効果的では無い。魔族が本気なら街を壊すでしょう。過去はそうでした」

 「私も寝る」

 ムヒューエも眠っていく。

 「問題は最大戦力であるユッミルさんを寝させるかですね」

 「今のうちに寝かせるのも手ね。何も起こらないとは思うけど。少なくともユッミルを待たせておく理由は無いわ」

 「分かりました。テーファさん、ベーニュ、チェーハ、任せるよ。シウさんも寝ますよ」

 ユッミルはエコ母子とシウ母子を両脇に寝る。

 「ユッミル」

 「早く」

 「どいて」

 「シャーネさんねえ、まあ良いわ」

 「ちょっと、誰?」

 「ユッミルさんは流石ね」

 「シャーネか、何故着る?良いけど」

 「ユッミルは呑気ね。今回は起こしたかっただけ」

 「そうか、何かあった?」

 「魔族の襲撃ね。かなりやられてるわ。ユッミルがいるからか近所に被害は無いわ。もちろん、ユッミル無しでは動けないから多分だけど」

 「動きますか?少なくとも単独で見回りはしますけど。フェノと連絡は必要。塔や店も気になりますし」

 「私は行くわ。ユッミルにくっついててもやられたら仕方ないわよ」

 「シャーネ、僕はリッネじゃない。姿を消して逃げる事も含めての強さだよ」

 「私の姿も消してくれないの?」

 「仕方ないですね。僕が単独で動かないならベーニュさんもお願いしたいのですが。ソヨッハにケーシャ、フーニャさん、メシャーナもスーリさんもお願いします」

 「私ですか?」

 「はい、魔族と遭遇した場合に妨害しながら撤収して私に押し付けてくれて構いません」

 「分かりました」

 「ではシウさん、任せましたよ」

 「あの、私を忘れないで頂けますか?」

 「私は子供の世話ですか?」

 「そうですね。レミーカさんは連れて行きますよ。エコさんは判断を任せます」

 「では行きます」

 「子供、連れてはいけませんよ?」

 「分かっています」

 「メシャ、君はシャーユを連れて行け。後、ヌーグとファッリーユは僕が預かる。メシャ、シャーユがいるのだから勝手な行動は慎む様に」

 「ユッミル、相手は魔族よ。ユッミルと言えど油断はダメよ」

 「ファーちゃんを守る位は可能」

 「それに街は惨状かもしれないわよ?見せて良いの?」

 「それは悩ましいですがやはり悪戯っ子のファーちゃんは手元に置いておきたい」

 「ユッミル君、止めないけど悪戯っ子は外の方が危険よ」

 「いざとなれば寝かせます」

 「良いわ、任せる」

 扉を叩く音がする。

 「意外と遅かったね。ムヒューエ、マティ、大丈夫だよ。開けて」

 「ユッミルさん、無事でしたか。いや、そうですよね。ここにはシウさんに氷や水の中堅、今はソヨッハさんですか」

 「ピュッチェか。これから外で討伐に協力するつもりだが」

 「では出ましょう。状況は深刻ですがそこまで複雑ではないので」

 ユッミルは外に出て集会所の方に向かう。

 「何故、最早防衛線がこんな所に?」

 ユッミルは見覚えのある後ろ姿を見つける。

 「ユッミルさん、どうします?」

 「フェノとの合流にはあそこを通るしかない。行きます」

 「あら?ユッミル、子供まで連れて事態の深刻さを分かっているの?」

 「あなたこそ目立つ場所に居て魔族に狩られたいのですか?」

 「そうねえ、突っ込んできてくれれば楽なのだけど」

 「先に行っていいですか?」

 「もちろん、あなたの攻撃に抗う自信は無いわね」

 「シェンハ様、余計な事を言わなくて良いです」

 「具体的な話をして欲しいって?」

 「行きますから」

 「できれば死角の路地を掃討してくれると助かるのだけど」

 「フーニャさん、少しこの子と一緒にシェンハ様の話相手をしてて下さい。シェンハ様、息子を殺したら色々な話、無くなりますからね」

 「そんなに脅さなくても大丈夫よ」

 ユッミルはフーニャ母子を置いて路地を探る。怪我人を庇って魔族を追い払おうとする冒険者を見かけたので魔族を退治する。

 「大通りまで護衛しますから大通りに出たら南に駆け込んで下さい。集会所近辺は安全ですから」

 その後、路地で瀕死の引退組と思しき男女数名を見つける。ソヨッハが回復すると反応したのは一人であり、レミーカが集会所に急いで運ぶ。ただ、周辺に魔族は居ない。ユッミルは歪曲視野で敵を探る。

 「シェンハ様、二つの路地を片付けましたので防衛線を路地一つ分上げて大丈夫だと思います。火の団の側は比較的被害は少ないですがそれでも両側に哨戒させた方が良いとは思いますが」

 シェンハが前に出ると魔族が襲ってくる。シェンハ支援の下、ユッミルの班がさっさと撃退する。ユッミルは歪曲視野を使って魔族を探してシェンハの防衛線の前に出る。ピュッチェやレミーカ、スーリ等近接系の術師がユッミルを囲いつつ向かってくる魔族を撃退する。ユッミルとシェンハの中間ではケーシャの目でフーニャが遠距離攻撃で魔族を減らしつつケーシャはユッミルとシェンハの連絡を支援している。

 「ユッミル様、ここです」

 ユッミルはフェノの声を聞きつける。フェノは戦っている。剣で切りに行っているが魔族に避けられている。徐々に魔族を傍にいる重傷者から引き剥がしてはいるが予断は許さない。ユッミルは少し近づくと雷撃を打ち込む。魔族は一掃される。フェノは重傷者二人を抱えてユッミルの方へ向かう。

 「もう一人、お願いします」

 ユッミルは慌てて駆け寄る。ソヨッハに遠方から軽く回復させると回収してさっさと大通りに戻り、レミーカに引き渡して術師協会の大柄めの職員に引き渡す。シェンハもじりじり防衛線を引き上げている。

 さらに魔族相手に奮戦する冒険者を助ける。数名の冒険者は怪我をしているが自力でユッミル達の誘導で大通りから集会所に向かう。

 「さて、土の方も問題だがここに長居するのはどうだろうか」

 「ユッミル、しんどいとは思うけど指揮所の下の路地もお願いできないかしら?」

 「そもそも指揮所の担当…深夜でしたね」

 ユッミルが指揮所の路地の魔族の残党を掃討していると土の主宰の一団と遭遇する。

 「珍しいですね」

 「普段は塔を守りますが今回はほぼ総出なので。指揮所はお任せ下さい。そろそろ土の主力が戻りますので南をお願いします。暗闇の中の掃討は私ではできませんでしたから助かりました。平時からもう少し協力すべきでしたね」

 「大丈夫なら南に向かいますが」

 「ポッフェ、ユッミルさんを手伝いなさい。代わりと言ってはなのですが持続系の光射を魔石にお願いできます?」

 「分かりました」

 ユッミルは中級魔石に術を込める。土の主宰は一度試して満足する。ユッミルはポッフェと合流する。シェンハに南へ向かう事を報告するとフーニャ母子やケーシャを預かる事を願い出たので了承する。ユッミルは水の塔の方向で水術師の把握しない魔族をいくつか狩る。その後、南に転じて木の塔の近くに着くとシーリュノと遭遇し、ユッホを増援として受け入れる。木の塔付近は被害が少ないらしい。店の方に向かうがそこも全く無事だそうだ。ミューレや火の術師にターヒョも外にいる。ユッミルはレミーカを店の防衛に預けてターヒョを引き入れる。

 「ひとまず安心ですね。後は光の塔ですね」

 「まだ行ってないの?」

 「土の塔と光の塔の間はある程度狩りましたし遠目からですが月や木の来援は見えましたから」

 「確かに月の術師が光の方へ向かっていくのは見たけど」

 「ネメッカ様は下級魔族では殺せません。本当に危ないなら助けを呼びに来ますよ」

 ユッミル達は光の塔へ向かう。途中でリッネに会う。

 「良かった」

 「流石余裕ですね。それでどうです?」

 「月の地区に被害はほぼ無い。光では被害が出たが魔族自体は撃退済みだ」

 「被害?」

 「詳しくはまだ聞いていない。心配だろうが魔族狩りに協力してくれないか?敵の主力を狩る」

 「仕方ないですね」

 リッネは大きく迂回して森の奥の背後から攻めかかる。ユッミル達が撤退する魔族を横から狩る。森には下級魔石が散乱し、魔族は撤収する。中級魔石も少し混じっている。ユッミルは中級魔石のついでに下級魔石を回収する。7個のうち2個をリッネに引き渡すと南下して塔に向かう。塔に近づいた所でレミーカと出くわす。

 「どうした?」

 「ナーレさんが産みそうだと伝えて欲しいと」

 「そうですか。フェノ、ポッフェさんを土の塔に送ってくれ。ターヒョとレミーカも同行してくれ。ターヒョは南の状況をシェンハ様に報告。他は家に送ります」

 「私には指示をくれないのか?」

 「私の地位はあなたより低い。ですがネメッカ様と会ってくれると助かります」

 「そうだな」

 ユッミルは嫌がるシャーネやメシャーナ母子やスーリにミーハを家に置く。ユッミルはレヒーハ母子とソヨッハにピュッチェ、シウ母子、チェーハ母子と店に向かう。ピュッチェは木への報告の為に別れる。木の団は既に店の南東のかなり近くまで巡回しており、特に危険は無いらしい。

 ユッミルは辛うじてナーレの出産に間に合う。子供を取り上げてナーレに返した所で眠気に襲われて眠ってしまう。翌日の昼前まで寝てしまう。起きるとシーリュノに抱かれている。疲れは無い。指揮所の担当は光だったので昼食を急いでシーリュノと指揮所に向かう。指揮所の壁や床には血飛沫が所々にある。

 「全員が死んだ訳では無いわ。けど怪我人は多い」

 「いえ、今は上に上がります」

 上階は辛うじて血の感じは無い。やはり今回の指揮所は幹部枠以外の人数が少ない。しかもその幹部枠はシーリュノの付き添いのソヨッハとターヒョである。

 「氷は大丈夫ですか?」

 「被害が無いってのは無いわ。現に本来の予定の子は怪我よ。シェンハ様は無傷だしフーニャさんもケーシャさんも子供と共々家に帰ったわ」

 「ええ、木も数名怪我。後、行方が分からない子が五人程ね。亡くなったのを確認したのは二人」

 「そうですか。それなのに」

 「木の怪我はね。本当は八人。五人はユッミルさんが助けてくれた子ね。他にもユッミルの来援に感謝してる子もいた。だからこんなのは全く足りないの。例え、深夜の戦闘でユッミルさんが有利だったという理由であっても感謝はしている」

 「それは良かったです」

 指揮所から降りるとユーカ母子とチェーハ母子が迎えに来ている。シーリュノとソヨッハも付いて来たのでターヒョも流れで塔についていく事になる。

 


読了ありがとうございました。次章は三月中旬の予定です。三月から後ろにも前にも外れる事は無いと思います。その次は五月上旬の予定ですが基本的には未定です。

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