表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
至上の無名光術師の苦難  作者: 八指犬
18/23

18章 寒季の理想

余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。

また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。

 1節 脆い布石

 

 「イーサさん、ネメッカ様はまだですよね?」

 「十日以内には生まれると思いますよ」

 「十日もここに居座る程暇では無いのですが」

 「正妻の妊娠に対して冷淡ですね」

 「ネメッカ様に言いつけますか?ですがネメッカ様のお墨付きで他で寝るように仕向けましたよね?」

 「分かりましたよ。とりあえず明日は無いので今日は一旦お帰り頂いて構いません」

 「そうします。このままだと隣の部屋に入りきらない子供が生まれそうなので。イーサさん、この団の財政状況、分かってますよね?」

 「この団の女性程は財政を圧迫しないと思いますよ」

 「数が増えれば話は変わるでしょう」

 「大丈夫ですよ」

 ユッミルは昼前に帰宅する。

 「改めましてベーニュと申します。既に正式な婚姻は済ませていますがこの度は名ばかりでは無く仲睦まじくして頂ければと思います」

 「こちらこそよろしくお願いします。多忙でしたので中々こちらから声を掛けられずに申し訳ない。今回もネメッカ様の妊娠が近いとはいえ数日もお待たせして重ね重ね申し訳ない」

 「いえいえ、いきなり愛に溢れた扱いというのも無謀ですからまずはこういう事からですよ」

 ベーニュはユッミルを軽く抱く。

 「そうですね。シウさん等は出会っていきなりでしたけど普通は急がなくて良いですよね」

 「そうね、ユッミル様。どうせ私はそういう女なのだからどんどん使って構わないのよ」

 「忙しいだけですよ」

 「ああ、多いですよね。女性」

 家にはメシャーナ、シウ、ミーハ、ムヒューエ、オーネ、レヒーハ、フーニャがいる。

 「とりあえず昼食でも食べましょうか」

 「そうですね」

 レヒーハが料理を作っていく。ユッミルは手伝う。

 「私も手伝いましょうか?」

 「ありがとうございます」

 ユッミルは相変わらずメシャーナとシャーユの世話をしている。昼食を終える。

 「少し時間が空いたので狩りに行こうと思います。店からターヒョさんを呼びに行くのでオーネさんも一緒に。後はフーニャさん、何か私の狩りに同行したい土術師のポッフェさんと言う方がいるので呼びに行ってくれますか?」

 「仕方ないね。夜に優しくしてくれるなら構わない」

 「仕方ないですね」

 ユッミルはメシャーナ母子とオーネを連れて店に向かう。ターヒョは呆れつつもさっさと付いてくる。たまたま店に居たヒレーネとナーレも付いてくる。集会所近くでフーニャが連れてきたポッフェとレミーカとミーハにたまたま会ったピュッチェも合流する。ユッミルはシャーユを抱いて森に向かう。もちろん、シャーユは周りからは隠している。

 「娘さんですよね?大丈夫なんですか?」

 「ああ、私が抱いておきますから。流石にこの剣が必要な危険な場所には今日は行きませんよ」

 「流石ですね。ですがユッミル様は魔族を狩るとも聞きますし驚く事も無いですね」

 「一人で狩れるのは下級だけですよ。しかも囲まれない外側だけです」

 「それでも十分ですよ」

 「いえいえ、それより今回はポッフェさんやベーニュさんの実力が見たいので初撃は交互に願います。まずはポッフェさん、お願いします。他の方はそれを合図にお願いします。フーニャさんは傍に居て構わないので大人しくしてて下さい」

 「それは褒められてると受け取っておくよ」

 「ええ。メシャ、見つけたら逃げ道を塞いで誘導してくれ。無理はしなくて良いけどね。ピュッチェさんもお願いします」

 「分かったけどいつ動けばいいの?」

 「任せるよ」

 獣が出現する。ポッフェは獣の進行方向の地面の凹凸を操作する。獣は横転する。ベーニュは獣の頭部を氷結させる。ミーハの水射を利用して頭部を全面的に凍らせる。ユッミルは雷射を打ち込む。

 「ユッミルさん、切り落としますか?」

 「どうします?ターヒョさん?」

 「綺麗に切れるなら構わないしまあ良いわよ」

 ヒレーネは切り掛かる。ターヒョはそのまま獣を凍らせる。

 「ああ、これは過剰戦力になってきましたね」

 「私、いりませんね」

 「私も不要ですね」

 「そういう意味では無いですよ」

 「ですが帰りますか。ポッフェさん、もう十分ですので今日は解散します。この後は店の為と家の食料としての解体をするだけですので。ミーハとフーニャにピュッチェでポッフェさんとヒレーネさんと先に帰ってて下さい」

 「まあ良いわ。先に戻るわ」

 「レミーカさんにメシャは一応、周囲を警戒。ナーレは一緒に居よう」

 ターヒョは生血を回収して店に向かう。ユッミルはメシャーナと肉を家に運ぶ。

 帰宅するとユッミルはナーレやベーニュと話をして過ごす。

 「さて、夕食ですね」

 「流石にそろそろレヒーハには休んでもらいたいので僕が作りますよ」

 「はい、手伝います」

 夕食を終えてしばらくすると店からターヒョにケーシャ母子とチェーハとリュッサが帰宅する。

 「赤ちゃん、本当にこの家には多いですね。ところでこの子は誰の子なんですか?」

 「ユッミル様の子供ですよ」

 「それは分かっていますよ」

 「私ですね。それにおそらくですが二人目もいます」

 「なっ、いえやはりそうですか」

 「驚き過ぎだ。今、ここに居る女性でユッミルに何もされていないのはそこで寝てるオーネ君位だろう」

 「そうですね。噂通り」

 「フーニャさん、いずれ発覚する気もするので言っておきますがそれは間違いですよ」

 「なっ。ユッミル、君は」

 「ターヒョさんより先にご相手頂きました。本来はベーニュさんもターヒョさんより先でしたが申し訳ないですがターヒョ様ともしています」

 「あのターヒョとも?やはり噂通り。私も恙なく差し出すのでお手柔らかに願います」

 「あの、ターヒョさんにはしつこく願い出られたのですが」

 「えっ?」

 「本人曰くシェンハ様の為の毒見らしいですが」

 「ああ、シェンハ様がユッミル様には積極的だったんですがそういう事ですか」

 「いえ、違います」

 「何故、ユッミル様が否定するんですか?」

 「シェンハ様は私を連れて遠出したいのですよ。単独夜営は困難ですが森の奥でかつ夜営で就寝者がいる状況で撃退できる人材は限られます」

 「だから私はユッミルさんに遊ばれる可能性を警告した。そうすると心配無いどころか多少は良いとか言われたので私が確かめに同居してやらせに来た」

 「どうだったんですか?」

 「別に問題は無かったがシェンハ様に見合う程の魅力は無い」

 「否定はしませんよ」

 「謙虚なんですね、ですが私に遠慮は不要ですよ」

 「えっと、頑張ります」

 「まあこの程度で怖気づく人材はここに来ないわよね」

 「あなたには皆負けますよ」

 ユッミルはフーニャ母子とミーハと風呂に入る。その後、チェーハとリュッサ母子とも入る。

 「セテューカさん、どうします?」

 「出番ですね、お願いします」

 ユッミルはセテューカと軽く触れ合う。ユッミルは早めに切り上げる。

 「私の出番では無いのね」

 「シウさんとやってしまうと後が続きません」

 「上手い逃げね」

 ユッミルは頃合いを見て風呂から出ようとするベーニュに声を掛ける。

 「少し急ですがお相手頂けますか?」

 「なるほどこうして増えるんですね」

 「気分が乗らないなら気軽にお断り頂いてもまた誘いますので」

 「お気軽にお受けしますね」

 ベーニュはユッミルを布団に誘い込む。

 「お上手ですね」

 「そうなのですか?普通ですよ」

 ベーニュは満足したらしくそのまま眠る。ユッミルはしばらくして目を覚ます。服を着ようと取りに行こうとする。

 「ユッミルか?」

 「この声はムヒューエさん?」

 「そうだ」

 ユッミルはムヒューエに近づく。

 「どうしました?」

 「いずれ話そうとはしていた話だが…」

 「構いませんよ」

 「ユッミル、水の団も三人目の側室投入の機会を伺っている。おそらく、ここで私とやってしまえばそういう流れが出来上がる」

 「三人目は結婚式通りですか?」

 「それが最有力だが避ける事も可能だろう。しかし、その場合には後から可能かは分からない」

 「そうですね」

 「私が授かれば確認時点で次の話が舞い込む。どうするか考えておいてくれ。もちろん、ここでせずに三人目を避ける手もあるがあまりに遅いと結果が同じになる可能性もある」

 「分かりました。今からお相手できますか?確実性を増す為に少し激しくなりますが」

 「ネメッカ様、宜しいのですか?かなり近いですよ」

 「あなたのせいですよ」

 「私はユッミル様を飽きさせない為に体の交流ばかりでは無く赤子や子供と遊ぶ機会まで用意したんですよ。まあ赤子は用意した訳では無いですがこの環境に文句は無い筈です」

 「まあ私は私と遊べないから飽きたとか私に負荷を掛けたくないから出たと好意的に考える余地が大いにあるので気にしませんよ」

 「申し訳ない。ただ、これ以上は無駄なのでやめておきます」

 「いえ、疲れたが問題は無い。おやすみなさい」

 「ええ、おやすみなさい」

 ユッミルはナーレを軽く抱いてそのまま寝直す。

 「ユッミルさん、おはようございます」

 「ナーレ、おはよう。ついついここで寝てしまった」

 「私もついついつられてしまいました」

 「私の所にそんな恰好で転がり込んだら危ないからできないわよね」

 「そうですね」

 「で、安全なここに来ないのは何なのかね?」

 「子供だと思うよ。私の事もシャーユが出来て以来抱く回数減ったし。前はしてくれてたのに」

 「メシャ、間違ってはいないけどそれだけでは無いからね」

 「ユッミルさん、服を着ないなら私がお相手しますけど?」

 「そうですね。店に行かないといけないので起きます」

 ユッミルはリュッサ、チェーハ、ナーレ、ターヒョ、ケーシャ母子と店に向かう。昼食を食べて昼間の店の様子を見守ると光の塔に向かう。

 「調子はどうですか?」

 「少し眠い位ですよ。まだ少し掛かりそうですね」

 「分かりました」

 ユッミルは黙って横に居る。しばらくするとイーサがやってくる。

 「少し早いですが夕食にしましょうか」

 「ユッミル、少し疲れてるので一応、支えて下さい」

 ユッミルはネメッカに肩を貸す。

 「はあ、ユッミルは大人になって私と密着しても何も感じないんですね」

 「病人だからですよ」

 「だと良いですが」

 ユッミルは最早恒例の様にいつも通り5組程度の母子と夕食を食べる。

 「いつも隣はイーサさんですが特権ですか?」

 「ユッミル様が指名するなら代わりますよ?」

 「それよりカノールはどうですか?」

 「そうですね、話しかけてくれて良いんですよ?」

 「カノール?」

 「ユッミー、よくできたね」

 「こんな感じですね」

 「カノール、お腹は」

 「ママ、まだー」

 「まあママは分かります…ネメッカ様、ネミークとカノールを入れ替えて話しかけてみませんか?」

 「ユッミル、趣味が悪いですよ」

 ユッミルはカノールを抱き上げる。ネメッカはネミークをユッミルの膝に乗せる。ユッミルはカノールをネメッカに引き渡し、ネミークをイーサに引き渡す。

 「カノール、飲む?」

 「ノー?」

 「ネメッカ様、しばらく待ちましょう」

 「イー、飲むー」

 「ネミークはママは認識してるようですね」

 「ユッミル様の事自体は二人共認識してますよ」

 「まあ私が常にいないのが悪いのですがネミークの中でパパはイーサさんなのではと心配になります」

 「ですがネミークは私には自分からくっついてはきませんよ。今もユッミル様が渡したから来ただけですし」

 「というかネメッカ様が私の事をユッミル、ユッミルと呼ぶのが原因ですね。メシャーナにはシャーユの前ではパパと呼ばせた方が良いかもしれない」

 「それはそうですがママの一番好きな人があなたという認識はあると思いますよ。確かめる手段は無いですが」

 「ええ、けどシャーユには微かに父親扱いを感じるので確かめる事は必ずしも必要ないかと」

 「どう感じるんですか?そうですね、メシャーナ以外の女性が居ても寄って来てくれるとか会話ですかね?ネミークとの会話はまだ脈略が無い」

 「なら今はどうやっても分からないという事でしょう?焦っても仕方ないですよ」

 「焦ってはいませんが」

 ネミークはユッミルの方に手を伸ばす。

 「ほら」

 「イーサさん、何かしました?」

 「何ができると言うのですか?」

 「そうですね、ネミークは優秀ですね」

 ユッミルはネミークを抱き寄せる。

 「ママ、好き」

 ネミークとカノールはそう口走る。

 「そっか、そっか。ありがとう」

 「ユッミル様の心配なんて可愛いものですよ」

 「カノールはまだ赤子ですから意味も分かってないかもですよ」

 「そうなんでしょうけど少し悲しいですね」

 「そうですね、申し訳ない。ネメッカ様、カノールをイーサさんに」

 「カノールも息子にしましょうかね?ユッミルの息子には違いないですし」

 「ネメッカ様。そもそも本当の意味であなたを母親と認識したとは思いませんよ」

 「分かってますよ」

 イーサはネメッカからカノールを引き取る。夕食を終えてネミークやカノールと触れ合っていると別の女性も寄ってくる。

 「どうしました?」

 「あの、私の名前、憶えてます?」

 「ユーカさん、ですよね?」

 「そうです、ありがとうございます。ではこの子の名前は?」

 「確か、ズードと名付けたかと。合ってますか?」

 「一応、忘れてはいないのですね。たまにはこの子とも遊んで下さい」

 「ズードだけ遊んでいないという事は無いですよ?」

 「そうでしたね。親子三人でお願いします」

 「今日はネメッカ様も静かに休みたいでしょうし構いませんよね?」

 「駄目なら止めてますよ」

 「それでどうしますか?」

 「主宰部屋では駄目ですか?」

 「そうですね」

 ユッミル達は主宰部屋に向かう。

 「ズード」

 「ウーゴ?」

 「ズード、ユッミルさんよ」

 「ユミーウ」

 「えっと、どうしましょう?」

 「とりあえず抱いてて下さい」

 ユーカはズードを引き渡すと軽くユッミルに寄り掛かる。

 「ユーカさん、休んでて良いんですよ?」

 「ユッミル様、私達は7人で7人の面倒を見てます。ネメッカ様や特にイーサさんの子を含めれば9人ですから3人の世話とは言え、起きてる時間の半分は休めてます。寝てないなんて事もありません。ユッミル様こそ後は休んで構いません。ズードと寝てくれて全く良いです」

 「ユーカさん、あなたも寝るんですか?」

 「それでも構いませんし一緒にお風呂でも好きに言って下さい」

 「でしたらしたい事があるので先に寝てて下さい。ズードの世話はやっておきます」

 ユッミルはユーカが寝ると音を遮ってズードとの会話を試みる。

 「ユッミル」

 「ユミーウ」

 「ユミーウ、パパ」

 「パパー」

 ズードを抱いて食堂からミルクを調達する。部屋に戻るとミルクをちらつかせるが反応は鈍い。

 「やはり大人の会話、けど寝かせたばかりだし」

 ユッミルはユーカの幻術と会話してみる。

 「パパ、ズードは良い子だよ。ミルクもしっかり飲むし」

 「そっか、ズードは元気なんだね」

 「ズード、良い子だね」

 「くっ、続かない」

 しばらく抱いているとミルクの方に手を伸ばすので与えると飲んでいく。満足した辺りでミルクを返しに食堂へ向かう。ユッミルは慎重にズードを風呂に入れるとズードをユーカの横に寝かせてユーカを抱きながらズードと手を繋いで寝る。

 翌朝、ユッミルが目を覚ますとユーカに抱かれているらしい。

 「起きたんですね」

 「えっと」

 「昨日、抱くだけ抱いて何もしなかった訳ですね」

 「何かしたかもしれませんよ」

 「まあ良いですよ、別に毎回何かして欲しい訳では無いですから。けどユッミル様は何かしたければ遠慮はいりませんよ」

 「ええ、それは良いのですがいつまでこの体勢を?」

 「嫌ならやめますけど?」

 「嫌ではありませんけどズードを放置し過ぎるのはどうかと思うのですが」

 「まだ寝てますし大丈夫ですよ」

 「起きたら戻りますからね」

 「ズードは良く寝ますからね」

 しばらくしてユーカはズードを抱き上げて立ち上がる。

 「もっとしておきましょうか?」

 「行きますよ」

 ユッミルは食堂に向かう。ユッミルはリュッサ母子とユーカ母子を両脇に朝食の卓に着く。イーサはカノール含めて両膝に赤子を乗せている。

 「ネミークはどうしました?」

 「ネメッカ様にはそろそろいついるかはっきりしないユッミル様以外の付き添いを付ける事にしたのでその子が世話してくれてます」

 「今日からは少なくともここに泊まりますよ。イーサさんの第二子にはそんな待遇はしませんけどね」

 「構いませんよ。私なんてネメッカ様の先回りをしない程度に繰り返し使えば良いんです。私もユッミル様に良い待遇は出来ていないから気にずる必要も無いですし」

 「イーサさんには仕事をして頂きたいだけですよ」

 「それは分かっていますよ」

 ユッミルが主導部屋の向かいの授乳室と化す会議室に行くと四組の母子と二人の赤子がいる。

 「今日は多いですね」

 「そうですか?寒季の盛りは全員泊まり込む予定なので前倒しで休みを取ってもらってますけどね」

 「無理は駄目ですよ」

 リュッサとユーカは自分の子の他にもう一人の世話を引き受ける。他の母親はユッミルに近づく。ユッミルは赤子を撫でたり、話しかけていく。ユッミルは昼前に店に寄る。

 「あっ」

 「ユッミル、会えて嬉しいわよ」

 「ユッミル、こんにちは」

 「あの、普通に食事ですよね?」

 「そのつもりだったけど気が変わったよ」

 「奇遇ね、私もよ」

 ユッミルはシェンハに抱え込まれながらリッネと店の裏の食堂に向かう。

 「ユッミル、申し訳ない。私の単独行動は君がいらないという意味では無い。誤解を招いてすまない」

 「いえ、こちらこそあなたに甘えてしまって」

 「気にしなくて良いのよ。こいつは所詮独断専行。私はユッミルと相談して動くわ」

 「何処がですか?」

 「細かい事は勝手に動くわよ。けど大事な事はか弱い私単独では動けないからユッミルに頼るしかないでしょ」

 「か弱くは無いでしょう」

 「あなたは私が弱い事、知ってるでしょ?」

 「私とてユッミル殿がいなければ中級魔族は狩れない。君と大して変わらないよ」

 「ユッミル、どっちが弱いの?」

 「それで言えばシェンハさんですけど」

 「そう言う訳だからユッミルは基本私と行動するわね」

 「シェンハ様、そんな事を決めたりはしませんよ」

 「けどユッミル、これの機嫌を損ねたら殺されまではしないけど怪我するわよ。けど私が怒っても止められるわよね?」

 「それはそうですが」

 「ユッミル殿は私に首輪でもつけない限り、安心できないと?」

 「そんな事は無いですよ。とにかく用事があるなら内容は検討します。協力できる事はしますよ」

 「やはりユッミル殿には公式に塔の往来を願いたい。その後に会食を重ねてじっくり話がしたい」

 「往来に関しては私の一存では決められません」

 「そんな事は無いと思うが。君の意向ならネメッカは拒まないと思うよ」

 「そうね、夜営も許可は下りると思うわ」

 「許可は下りてもネメッカ様の機嫌を損ねたら困ります」

 「ふーん。それは私が君の一番手の女の座を奪わないと駄目という事かしら?」

 「無理ですよ。そもそも世間で言われる程はシェンハ様が女性として魅力的だとは思いませんし。そういう人との交流って世間体的に最悪なんですよね」

 「ユッミル、帰る」

 シェンハは足早に去る。

 「良かったのか?」

 「半分は本音ですよ。シェンハ様とは異性としてよりも人として魅力的なのですが世間でそっちで持て囃されてるせいで本人が気づいていないから仕方ありませんよ。あなたは性別を封じているので知りませんけどね」

 「異性としては魅力的ではないだろうけど能力はあるし目指している所も近いと思うから協力したいだけだがね、私は」

 「あなたとの本格協力は時期尚早ですよ。ただ、話自体は構わないのですけどね」

 「塔の往来は?」

 「こちらの塔が忙しないのでしばらくは望ましくない」

 「赤子か?」

 「まあそうですね」

 「だが今後も増えるのではないか?」

 「その点は施設として赤子の世話をする場所をどうするか。なのですよ」

 「まあいい。待つよ」

 リッネも帰っていく。

 「ユッミル、私が謝ろうか?」

 「やめて下さい。せっかく失言したのに台無しですよ。全く思ってない訳でも無いですし」

 「けどシェンハ様は女として魅力的よりもそっちの方が嬉しいと思いますよ」

 「ターヒョさんは私とシェンハ様を離したいのでは無かったのですか?」

 「分かりましたよ」

 ユッミルは光の塔へ戻る。

 「昼食は済ませたんですね。外で」

 「イーサさん、そういう事はネメッカ様が聞くべきでは?」

 「私はユッミルが忙しいと理解していますしそれにやはりそれどころでは無いですね」

 「起きて大丈夫ですか?」

 「ええ、そろそろ一度起きてある程度は食べないと」

 「そうですか、ご一緒しますよ」

 ユッミルは二度目の昼食を食べていく。食事を終えるとネメッカを支えて歩いていたが途中で背負って連れていく。

 「ありがとう」

 「いえ」

 「それで次の子ですがおそらく女の子です」

 「そうですか。ネメッカ様に似てさぞかし可愛いのでしょうね」

 「だと良いですね。私としてはユッミル並みの術の素養を期待しますが」

 「ネミークの素養は十分ですよ。私と同程度が簡単に生まれたら私は不要ですし光の団は乗っ取られますね」

 「ユッミルに似ていれば私に優しいですからそんな事はしませんよ」

 「そうですね。けどまあ難しいですよ。それこそリッネ様との子でない限り」

 「狙ってるんですか?」

 「まさか、そんな手に負えないかもしれない子供、産みたくないですよ」

 「そっちですか。私は程々の実力なので丁度良かった訳ですね」

 「それはあなたを拒否しなかった理由であって…そもそもネメッカ様がそのそれを使って強引に」

 「冗談ですよ。で、シェンハさんはどうなんですか?」

 「もちろん、リッネ様程では無いですが」

 「良いですよ、リュッサさん」

 「少しユッミル様にお話が」

 「分かったけど」

 ユッミルは主導部屋や主宰部屋のある四階の廊下に出る。

 「あの、リッネ様がおいでです」

 「ん?どういう事?」

 「ネメッカ様のお見舞いだそうでユッミル様を呼んでおられます」

 「分かりましたよ」

 ユッミルは応接室に向かう。

 「リッネ様、先程会った気がするのですが?」

 「一度塔には帰ったよ、ナーレは連れ帰らせてもらったが」

 「ああ、そう言えば見ませんでしたね」

 「すいません。ユッミル様への用事があるとの事でしたので」

 「ナーレは悪くないから気にしないで」

 「それで私を追い返すのか?ネメッカに会いに来たのだが。君は主宰なのだから別の団の主導と会見する権利はあるし主導との会見を取り次ぐのも何らおかしくは無い。ここで私と密議だけして帰るのは一向に構わないが」

 「分かりましたよ」

 「では剣は置いていこう。これで君の方が強い」

 「まさか」

 「ならやってみればいい」

 「遠慮します」

 「剣を置いた後に体をまさぐると良い」

 「分かりましたから行きますよ」

 ユッミルはリッネを連れて階段を上がる。

 「リッネ様、歩きにくいです。というか本当にやめて下さい。私の側室でもしませんよ」

 「私も無礼なのだから君も好きにすると良い」

 「側室もいますから遠慮します。ナーレは大丈夫ですがこんな事をやる主導は駄目でしょう」

 「ならば是非君が私を信用したと行動で示して欲しいものだ」

 「少なくともこういう行為をしている限りは無理ですね」

 「だがユッミル、形上とは言え私は結婚式で側室の席に座っていた。君には私の体を好きに扱う権利があると言えなくもない」

 「あなたは側室などと言う器用な事は無理でしょう。遠慮します」

 「くっ、反論できないね。ここは退くとしよう」

 リッネは体を離す。主導部屋ではリッネはお見舞いの品として果物を渡す。

 「二人目の子供ですね、おめでとうございます、ネメッカ様」

 「いえいえ、あと少しですが頑張ります」

 「無理なさらぬよう」

 「ええ」

 「それにしても羨ましいですね。そろそろ性別を隠すのはやめてユッミル様かネメッカ様にお相手してもらいたいですね」

 「あなたが男だとすればきっちりお断りしますけどね。お世辞や冗談でも受けませんよ。ねえ、ユッミル?」

 「えっと、ネメッカ様と別れれば話は変わりますけど僕から離れる気は無いですから」

 「ユッミルは結局、私もシェンハも断るんだね」

 「まあシェンハさんは余程の巡り会わせでないと断るどころか向こうにもその気は微塵も起きなかったでしょうね。リッネ様の場合は先に会っていたら分かりませんね」

 「ユッミル、それはどういう意味ですか?」

 「リッネ様は全く駄目な女性では無いので女性に疎い昔の私であれば満足したでしょうね。まあリッネ様が女性であればですが。もちろん、シウさんであっても同じです。ネメッカ様の様な方に先に出会えた私は幸運でしたよ」

 「ユッミルは口が上手いですね。まあ騙されておきますけど」

 「ははは、可能性を完全に消されてしまいましたね」

 「リッネ様は誰彼構わず相手を見ずに魅力的な振る舞いをするのですか?」

 「どうした?」

 「相手次第で振る舞いは変わるでしょう。相思相愛の相手にこそ魅力的な振る舞いをするのですからそれを私は見れません。リッネ様が男性であっても女性であってもそういう相手にはきっとネメッカ様に劣らない振る舞いをなさる事でしょう。ですがそれを私に向けられても困ります。リッネ様はこういう事は察しが悪いですね」

 「君こそ流石、多数の側室を抱える身、嫌われない口車が上手の様だ。私も騙されておくとしよう」

 

 

 

 

 

 

 2節 予定通りの臨時会議

 

 リッネが帰ろうとするとネメッカの表情が険しくなる。

 「ここは帰るべきかもしれないが私が見ておくからユッミルは人を呼んで来てくれ」

 「そうですね」

 ユッミルはイーサを呼ぶ。ナーレとリュッサも入ってくる。しばらくしてユーカがネミークを連れてくる。

 「ネミークは僕が抱くからカノールやズードも連れておいで」

 「分かりました」

 「ユッミル、私が女だとしたら君に抱かれていないのは君に好かれる為にかなりの障害だと思うのだが」

 「えっと?」

 「ここに居る女性は私以外抱いてるのだろう?そして、赤子は君の子供。私が好かれないのは必然だ」

 「あなたとの深い関係は色々と警戒されますからそれで良いのですよ。それに嫌ってはいません」

 ユーカはカノールとズードの手を引いて部屋に戻ってくる。ユッミルはネミークを抱きながらネメッカの手を握る。

 「子供を産んだ妻三人か、全く勝てる気がしないね。しかもすでにナーレとも懇意だそうではないか。私だけ駄目な理由が知りたいね」

 「あなたは女性では無いですよ」

 「もし女性ならどうする?」

 「それでも困るので無いですね」

 「そうだった、正妻の前でやったのは失敗だね」

 「関係ありません。本当に勘弁して下さい」

 「分かったよ、だが頻繁に話す位は構わないだろう?」

 「ですがお互い忙しいですし仕方ないですよ」

 「やはり君と親しくなるには夜に会える関係しかなくないか?」

 「ああ、でもシェンハ様は店で頻繁に会いましたよ」

 「けど結果はああだ」

 「とにかくそれでお願いします」

 しばらくして赤子が出て来たので取り上げる。生まれたのは女の子であった。

 「元気そうだな」

 「ええ、ネメッカ様の長女ですから光の団の次期主導の有力候補ですね」

 「ユッミル様、別に光の主導は女性である必要は無いですよ。あなたもネミークも可能です」

 「分かっていますよ。ですがその方が丸く収まります」

 「そうかもしれませんね。むしろあなたの後継者が見つけるのは難しそうです」

 「そんな事はありません。基本的には私の子供も含めて優秀な術師を据えればいい。結果的になってしまっては仕方ないですが世襲は駄目ですよ」

 「ですがユッミル様のお子様が有力候補になるのは避けられません」

 「ええ、外からはともかく私はなるべく後継者決定に関知しませんよ」

 「それは無理でしょうけどそういう事にしておきます」

 「ユッミル殿、おめでとう。私はそろそろ帰るがナーレの事もあるし途中まで送ってくれないか?」

 「イーサさん、どうしましょう?」

 「ナーレさんを送り届けた後に塔にお戻り頂けるなら何の問題もありません」

 「それは構いませんが僕が居ても何の役にも立ちませんよ?」

 「娘にしっかり覚えてもらわないと」

 「今も抱いてはいますけどまあ十分では無いですね。ですがそれは諦めた方が良いのでは?」

 「ユッミル様、ネミーク様は認識してると思いますよ」

 「だと良いですが」

 ユッミルはナーレを家に送り届けつつシウやメシャにネメッカの出産を報告する。

 「言い忘れてたけど私、第二子まだなのだけど」

 「まさか」

 「うん、まだよ。催促するのも変な話だけどやはり勝手に思い込んでたわね」

 「ユッミル、これで第二子はネメッカが一番乗りだね」

 「そうだね。とりあえず報告に来ただけだから戻るね」

 ユッミルはさっさと光の塔に戻る。

 「可愛いですけど僕には似てませんね。僕の子か怪しいですね」

 「並んでみて下さい。いえ、横に抱き上げれば良いですね。そんなに心配ならずっと隣で私の体を監視してくれて良いんですよ?」

 「そういう意味では無いですよ」

 「それに面影はありますよ」

 「全く似てないとは思ってませんし僕に似ても仕方ないですよね」

 「何ですか、それは。ユッミルに似れば私は嬉しいですよ」

 「さて、ネメッカ様はお休み下さい。ユッミル様はこの子の世話をお願いします」

 「まあ構わないですが」

 ユッミルは赤子を主宰部屋に連れていく。イーサは静かに座っている。しばらくして赤子は眠っていく。

 「イーサさん、最近の団はどうですか?」

 「特に変わった事は無いですよ」

 「そうですか」

 ユッミルはしばらく赤子を見ている。

 「夕食にしましょうか」

 「ああ、そうですね」

 「ユッミル様、ゆっくり来てくれて良いですよ。ネメッカ様は私が呼びますから」

 イーサは主導部屋の前まで赤子の様子を見て主導部屋にゆっくり静かに入る。階段を降りていると赤子が起きる。いつの間にか食堂の一席に揺りかごらしきものが置かれている。イーサは赤子を取り上げると揺りかごに乗せる。ユッミルとネメッカは揺りかごを挟んで座る。ユッミル達は赤子を気にしながらゆっくり食事をする。

 「ユッミル、もう少し優しくですけど撫でたりして良いんですよ。指先でも良いですから」

 ユッミルは赤子の小さな手に指を差し出して少し触ってみる。手は動かないが目には反応がある。ユッミルは赤子の目の前で少し指を動かす。ただ、基本的には静かに見守る。

 食事を終えると宿舎に浅い桶が用意されている。

「ユッミル様、お願いします」

濡れてもよさそうな布を渡されたのでユッミルが体を拭いていく。その後、乾いた布で体を拭いて主宰部屋に戻る。イーサに促されてイーサと風呂に入る。赤子は布団に寝かせている。ユッミルはイーサに抱かれつつも赤子を気にしている。しばらくするとネメッカが入って来てまた風呂に入ってくる。ユッミルは赤子を理由に早めに上がる。

 「やはり寝顔は可愛いですね」

 「そうですね」

 「ただ、旅行には連れていけないですね」

 「元々、その予定は無いでしょう」

 「ですがネミーク達が成長すれば家族での休暇も取りますよ」

 「そうですね」

 「後、言うまでもないですが今日は一緒に寝ますよね?」

 「ネミークはいませんが?」

 「そうでした。イーサ、連れてきて下さい」

 しばらくしてイーサはカノールを括り付けてネミークを抱いてくる。

 「私は邪魔ですか?」

 「たまには早めに布団で寝て下さい」

 「分かりました」

 イーサは主導部屋に行く。しばらくして四人の親子は眠りにつく。

 「ユッミル様、おはようございます」

 「えっと、どうしました?」

 「本日は会議の開催が決定しましたので協会に行きますが構いませんよね?」

 「急ですね。ネメッカ様の出産…」

 「ええ、ネメッカ様も出席ですよ」

 「用件を伺っても?」

 「行けば分かりますよ。定例会議の様なものです」

 「リッネ様の発言を恐れて開催が滞っていたのに急にですか」

 「あの、遅れますのでお願いします」

 「欠席で構いませんよね?」

 「困ります。というか欠席なさった場合、困った決定が下るかもしれませんよ?」

 「やはり私関連なんですね?」

 「そうですね。ですから来て下さらないと困ります」

 ユッミルは部屋を出て主導部屋に行く。娘はおらずネミークを抱きつつも髪は整っており、出かける気の様だ。

 「ネメッカ様は知ってたんですか?」

 「会議の事は聞いてませんけどいずれ協議になる事は予想できましたね。今回の問題の存在は知っていましたから」

 「問題とは?」

 「行けば分かると思います。それにもう分かってますよね?」

 「何となくですが困りますよ」

 「私としてはユッミル様の側室勢力で光の地位が落ちる提案は拒みますから」

 「やはりそれ絡みなんですね」

 「ですからいずれにしても来て下さい」

 三人は朝食を済ませると会議に出かける。

 「リッネ様、おはようございます」

 「ああ、おはよう」

 「会議の内容は知ってるんですか?」

 「ああ、だが月としては君個人との対話を優先しているから形式上の決定であっても相談によっては対応するから心配しなくて良い」

 「ユッミル、おはよう」

 「シェンハ様ですか、おはようございます」

 「ねえ、主導をやめるから仲良く狩りをしてくれるないかしら?」

 「いや、お断りですが何故、今?」

 「シェンハ様、もうすぐ会議ですから」

 「ん?」

 クルードが指揮所で居ないが残りは揃っており、会議は予定通り始まる。滞っていた定例の確認をさっさと終える。

 「では本題に入りましょう。光の団にはユッミル様の雑務係の団毎の枠を5に増やして頂きたい」

 ラーハが口火を切る。

 「理由をお伺いしても?」

 「結婚式の側室は三人でしたがいくつかの団はユッミル様の辞退にも拘わらず実質的に4人以上の側室を送り込んでいる団もあります。であれば全ての団に正式に多めの枠の5を認めるべきです」

 「その様な団は無いですよ」

 「月の団や火の団ですね」

 「月の団は確かに結婚式に出席していない方を一人、受け入れましたが結婚式の出席者の一人はリッネ様ですよ」

 「狩りに同行するのも名目上は雑務ですから4人を超えているでしょう?」

 「そういう事ですか。でしたら水も構いませんよ」

 「そういう曖昧は良くありません。大規模化して夜営が可能になればユッミル様を襲う女も出かねません」

 「それは禁止すればいいだけでしょう」

 「それはユッミル様に悪いです」

 「えっと、まさか狩りに同行する人も五の枠内にしないといけないのですか?」

 「そうですね」

 「馬鹿げています。つまり、ここにもネメッカ様以外で狩り等を共にした人はいますが全員側室ですか?」

 「そういう扱いですが何か問題でも?」

 「本人にそのつもりが無いのにそういう扱いは不平があるでしょう」

 「本人がいるのですから不満があれば言ってもらえばいい」

 「私は結婚式に側室として出席したのですから今更不満は無いですしユッミル様がその事実を盾に部屋に泊めろと要求すれば受け付けますよ」

 「シーリュノ様は冗談がお上手ですね」

 「冗談だと思うならこの場で抱いてくれてもいいんですよ?」

 「嫌なら断りますが私が受けた場合、どうするんですか?」

 「結婚式の結果に反する気はありません」

 「言うまでもないが私も同じ。君の側室と言う立場の名目に異論も不満も無い」

 「ありがとうございます」

 「で、ユッミルは私を側室扱いにしてくれるのかしら?」

 「シェンハ様、そんなあまりにも実態から乖離した名目は困ります」

 「けどそうしないとユッミルと組めないならそうするしかないわよね?」

 「それはそうですが」

 「氷はまだ五枠を使っていないので問題は無いでしょう。そういう話は後で願えますか」

 「ユッミル様、私がその扱いを問題視しないのは分かっていますよね?」

 「はい。ただ、火はそれでも五枠を超えないという事ですか?」

 「どうでしょう?例えばユッミル様が私を口説いても五枠のままですが別の火の女性を誘って狩りに出かけた場合は火の団が悪い訳では無いのですが」

 「枠が6に増えるだけです」

 「困りますよ」

 「そもそも今回の会議は全ての団を平等に扱う為のもの。ユッミル様への確認も含めてですが」

 「やはり主導や主宰を勘定に含めるのは困ります」

 「まあ水としてはまだまだ枠を余らせてますし根本的に無理強いはしませんから土さえ異論が無ければそれは良い気もしますが」

 「そうですね。我々もそこまでして枠を増やす気はありません」

 「私は反対。ユッミル、はっきりしなさい」

 「こちらとしてはシェンハ様と行けなくても構わないので…」

 「なら枠を使い切っていなければ側室扱いという事で良いだろう」

 「リッネ様」

 「そうしましょう」

 「ユッミル、諦めて」

 「それで疑問なのですがシェンハ様、主導は別枠なのでもう狩りへの同行に制約は無い訳ですが何の益で側室扱いを求めるのですか?」

 「ユッミルと寝る権利ね」

 「そんな権利は無…ありますが」

 「まあ私は横で話がしたいだけだけどユッミルがその気になったら仕方ないわよね」

 「その話は後にしましょう。しかし、五枠ですか。しかし、そうなると三十人ですから家には入りませんしそこまで相手をするのは現実的では無いです。こちらの身にもなって欲しいです。それに相手をできない女性にも問題です」

 「ユッミル様、でしたら狩りのみの枠を設けるのはどうでしょう?」

 「そういう事ですか、イーサさん。仕方ありません。二枠を狩りにしましょう。」

 「どうですか?」

 「木としては構わないわね」

 「土も構わないですよ」

 「水も異論はないのだけどユッミル様が先程家が狭いと言っていたわね?」

 「そうですね。子供も増えてますし」

 「それも平等にしましょう。残り三枠のうち、一人は出産前後は塔で過ごして普段もユッミル様の家には泊まらない。逆に一人は家に常駐してお子様の世話や料理をする枠。もう一人は狩りに同伴させても塔に居させても一緒に寝ても良い自由枠。この三枠を割り当てましょう」

 「そうですね。五人は多い気もしますが留守番枠は居た方が良いかもしれません」

 「その枠は誰が決めるの?」

 「僕に決まっているでしょう。相談は受け付けますがあなたが常駐するのは困ります」

 「まあ良いわ」

 「塔の枠は2でも構いませんけどね」

 「ユッミル、心配しなくてもそうなる時はそうなるから」

 「ネメッカ様?」

 「では異論がない様なら五枠の相談をしましょうか。ユッミル様、順に決めて下さい」

 「分かりましたが水は留守番枠をどちらにするかですよね?」

 「聞いていないのですか?」

 「今、決めるのですか?」

 「私はそれでも構いません」

 「分かりました。ミーハさんは狩りに行って欲しいので自由枠ですね。ムヒューエさんは塔の枠。次の子には留守番枠を願いましょうか」

 「構いませんよ。いつでもムヒューエを狩りの枠にして塔の枠を選んでも構いませんよ」

 「そちらですか。まあ良いです。次は土ですかね」

 「はい」

 「レミーカさんは実態としては留守番枠なので。フーニャさんは自由枠でないと困ります。もう子供ができてしまいましたのでですから。特に相談は」

 「ポッフェを狩りの枠は駄目という事ですか?」

 「ああ、そうでしたね」

 「後、留守番枠の趣旨はユッミル様の家の雑務ですから当たらないのでは?」

 「知ってるんですね」

 「はい。そうなると留守番枠の派遣が必要な様ですね。失礼しました、検討します」

 「その、急がなくて良いですから。光の女性もいますし」

 「はい。急いでユッミル様の迷惑になる人材を用意したりはしませんから大丈夫ですよ」

 「次は火ですね。形式上は塔に子供を預けるエコさんが塔の枠なんですが自由枠並に色々してもらってますね。留守番枠はシウさんですね、けど時折狩りにも出てもらってますし」

 「ユッミル様、塔の枠は私でも良いんですよ?まあ誰の子か分からない子供がいますけど私としては歓迎です」

 「それは魅力的な提案ですが今答えるのは難しいですね。それはさておき火の場合は考えてみれば子供を三人となしてしまった訳ですから相対的な状況を考えればマッラさんが塔、エコさんが留守番、シウ様が自由ですね。何も迷う必要は無い」

 「はあ、良いですよ。それで一応、私が狩りの枠に入りますね」

 「儂は男だから入る権利が無くて残念じゃな。エッヒネは引退して団をやめたら制約は無いがの」

 「そうしたい気もしますがその頃には流石に側室と呼ぶには魅力の無い枯れた女ですから流石にそんな事は頼めませんよ」

 「その、次は氷ですが」

 「私が塔の枠よね?ユッミルの気分次第で家に呼びつけて私で遊ぶのよね?」

 「遊ばれたいのですか?」

 「やってみないとね」

 「あなたは狩りの枠ですよ。オーネが留守番枠でターヒョが自由…ベーニュさんも留守番…」

 「ターヒョが塔の枠で良いわ。連絡係として塔にそこそこ来てもらってるし。ベーニュの実力は普通だから狩りにも行けるわよ」

 「そうでしたね」

 「次は木ですか。レヒーハが留守番枠、ユッホが塔の枠、ピュッチェが狩りの枠ですね」

 「自由枠は私でどうかしら?」

 「名目かつ暫定で良いなら構いませんよ」

 「まあ狩りの枠ね」

 「はい。お願いします」

 「最後は月ですか。ナーレが留守番枠、テーファさんが自由枠、キッシャノが塔の枠、ヒレーネが狩りの枠でしょうか」

 「私がもう一枠の狩りだな」

 「分かりました」

 「決まった様ですね。その上で言うまでもない事ですが狩りの枠の人だからと言って子供を作ってはいけない等とは言っていませんよ。ただ、ユッミル様の家の事を考えて塔か各自の世話になりますがとは言え余りに多いと塔の枠を増やしての対応になりますけどね」

 「分かってますよ」

 ユッミルは疲れてネメッカに寄り掛かりながら歩く。イーサはフェノを呼び寄せる。ユッミルは途中でフェノに背負われて先に塔に戻る。

 「ちょっとイーサ、せっかくユッミルが甘えてきたのに」

 「一応、あなたは産後すぐなのです」

 「それはそうですが」

 「それに産後すぐのあなたに介抱させて塔まで歩かせたユッミル様の評判はどうなると思っているんですか?」

 「仕方ないですね」

 しばらくしてネメッカも塔に戻る。ユッミルは若干落ち着いたがネメッカに甘えていく。

 「ユッミル、大丈夫ですか?」

 「ええ、ですがネミークより私の世話をして欲しいです」

 「あの会議は不満ですか?」

 「もちろんです。木と月とこの光の関係で十分です。他はミーハとシウとフーニャとオーネで十分です」

 「そうなのですね。私はユッミルが毎日甘えてきても嬉しいですよ。忙しい時の日中ずっとは困りますけど」

 「ネメッカ、好き」

 「分かってますよ」

 「どうせ一瞬ですよ」

 「イーサ、それは言わないで」

 ユッミルはしばらくネメッカに甘えていく。

 「ネメッカ様」

 「待って、様はいらないわよ」

 「いえいえ」

 「戻ったのね」

 「少し疲れていましたがネメッカ様のお蔭で良くなりました。纏わりついて申し訳ない」

 「別に甘えるのは良いというか甘やかしたいというか謝られるのは困るわ」

 「ありがとうございます」

 「あの、夫婦なのだからそれについてありがとうはおかしいでしょう」

 「そうかもしれません。とにかくネメッカ様と過ごせて良かったです」

 「あの、別れ話でも切り出されてるのですか?」

 「ネメッカ様が私の言い分を否定するからですよ」

 「まあ良いです。夕食の時間ですかね」

 「はい、夕食後は一度家に帰ります」

 「ユッミル、離しませんよ」

 「ネメッカ様、嬉しいですがそんな事をしなくても逃げませんよ。ただ、全く家に帰らないと言う訳にもいきません」

 「なら付いていきますけど構いませんね?」

 「もちろんです。ネミークを連れて来ても構いませんよ」

 「ネメッカ様、この子とユッミル様の予定…」

 「分かっています」

 「旅行の事をお忘れなきよう」

 「分かっています」

 ユッミルとネメッカにネミークと生まれたての女児は家に向かう。女児は重装備で防寒している。

 「少し寒いですね。あまりこの子を塔の外に出すべきでなかったのでは?」

 「ええ、今後は昼間にしましょう。少し急ぎます」

 ネミークも寒そうでネメッカにしっかりくっついている。四人は足早に家に向かう。

 「お帰り、ユッミル」

 「ただいま、メシャ」

 「ああ、ネメッカさんも一緒なのね」

 「うん。ああ、サーナと親もいるのか。大丈夫なの?」

 「うん、次の寒季までは全然、その後は様子見って事らしいわ」

 「忘れてた、ユッミルおかえり」

 メシャーナはユッミルの頬に口を軽く当てる。

 「メシャ?」

 「夫婦だし」

 「ネメッカが来たのが嫌なのか?」

 「少しね。けどネメッカは二人に増えた子供の世話で忙しいだろうし関係無い」

 「そろそろ夕食で良いと思うけど」

 「シウさん、私は少なめで」

 「うん、作るのは私では無いけどね」

 「それでミーハは聞いたみたいだけど今日会議があって側室の役割分担の明確化という話になったのだけど全ての団横並びの結果として各団が空いた枠を埋めるという形で人が増えるかもしれません」

 「ユッミル、分かりにくいですよ」

 「えっと、家で留守番する人が全ての団一枠できたのでこの家に六人が常駐すると言う話になってしまいました。連絡係とは別の一枠ですね」

 「そういう事ね。もしかして火は私?」

 「狩りには行かない枠なので迷いますが」

 「六人は多いから二人は店番枠にすればいい」

 「それはそうですが…」

 「シウさん、違いますよ。今回の会議は各団平等を目指すもの。家ならユッミルと一夜を共にできますからその点でも平等でないといけません」

 「そうですね。店に泊まる回数を考えると一人が妥当ですね」

 「そうね。氷は増えたけど水や木は少ない」

 「とにかく来ますけど僕の要望では無いですからね?」

 「ああ、そういう事ね。そんな風には考えてないわよ」

 「そうですよ。多少多くても番が回ってくれば気にしません。今日は2番で構いませんよ」

 「あなた、私がどれだけ待たされたと思っているの?少しは遠慮しなさいよ」

 「ターヒョさん、あなたはユッミル様に好意的では無かったでしょう。そこを見抜かれたんですよ。あなたの責任です。ユッミル様のせいではないと思います」

 「そもそもターヒョさんが来てからシェンハ様がどんどん積極的になった気もするんですよね。シェンハ様は負けず嫌いですから対抗意識を燃え上がらせてしまったのでしょう。少しは反省して下さい。今日の会議でも口説かれてしまいました。シェンハ様はとりあえず落ち着かせて下さい」

 「仕方ないでしょ。あなたの事、女を毎日適当に取り替えて遊ぶ男と思ってたらむしろ誘われてて昼間は昼間で普通だったし。ううん、親切で狩りも慣れてて夜の相手をしてくれない以外は居心地が良かったから段々あなたの悪口から説得力が無くなったのかもしれない」

 「申し訳ないです。言い過ぎました。ただ、ターヒョさんは単純な伝言に徹して下さい」

 「そうするわ。失敗は失敗、しばらく大人しくする」

 「できましたよ」

 ネメッカとネミーク以外は卓に着く。ユッミルは赤子を抱く。横にはメシャーナがいてシャーユは両親の片膝に乗る。メシャーナは少量の食事をゆっくり食べる。ユッミルも二度目の夕食なので軽く食べる。

 「風呂は私ですね」

 「後は私とサーナね」

 「ネメッカ様?」

 「ユッミルと入りたいのはやまやまですが今日はこの子を入れない方が良さそうなので」

 「ネミークは?」

 「私が入れます」

 「それでも構いませんが」

 「深い意味はありません。ただ、無理に来たので遠慮してるだけですよ。できれば寝る時に抱いて欲しいですけど。今回はかなり太ってしまったので体型がある程度戻る三日程は少し待って欲しいとかいうだけですよ」

 「そういう事ですか。そこまで気にはなりませんが戻った方が良いですしね」

 ユッミルはセテューカとミーハ母子と風呂に入る。

 風呂から出るとメシャーナが寄ってくる。

 「そろそろして欲しい」

 「本当にいいのかな?」

 「もちろん」

 ユッミルはメシャーナを後ろから抱き込むと光魔法を消す。

 「ネメッカ様、風呂の周りお願いします」

 「分かったわ」

 「メシャ、良いのか?」

 「私は寝てるユッミルの服を勝手に脱がせてやったんだし気にしなくて良い」

 「じゃあ行くよ。無理なら言ってね」

 「平気だよ」

 「平気みたいだね。だったら」

 「おー、うんうん」

 「メシャ、喜んでない?」

 「そうだけど」

 「何かおかしい?」

 「おかしくないよ。早くしようよ」

 「恥ずかしくないの?」

 「服脱がせ忘れてるよ?」

 「そうだね」

 「少し恥ずかしいかも」

 「やめる?」

 「早くして」

 「どうしたの?」

 「こっちから襲いたくなってきてる」

 「じゃあ行くよ」

 「うんうん」

 「喜んでない?」

 「何か悪い?」

 「さっさとしようか」

 「イーサ様、あなたは昼にしっかりやってくれてますし夜の子供の世話はしなくて良いですよ」

 「少し寝れないだけよ」

 「もう終わり?」

 「そうだね」

 「お返しになったのかな?ユッミル、他の人にはもう少し激しい気もするけど」

 「メシャ、そうかもしれないけど普通に寝る時に強く抱いてるのはメシャだからね」

 「だったら後ろから抱いてもらえば?」

 「シウさん」

 「そっか、次はそうしてもらう」

 「うん」

 「ユッミル、次ってのは明日とか明後日であって二人目が生まれてからじゃないからね」

 「分かったからさっさと服を着てシャーユの所に戻って」

 「うん、そうする」

 メシャーナはユッミルの真上で服を着ていく。

 「子供だな」

 「では次は私で良いですか?」

 「本気だったのですか。連日は少々。ただ、他に居なければ構わないですが」

 「もういると思うけど私でも良い?」

 「そうだね。他にはいないなら同時で良いかな?嫌ならミーハが先にするけど」

 「ミーハさん、一緒で良いですか?」

 「良いの?」

 「はい」

 ユッミルはミーハを外しに行く。

 「どうせなら三人はどうかしら?」

 「シウさん、三人纏めての側室の中になりますが構わないのですか?」

 「どうしたんですか?」

 「いえ、ネメッカ様我慢できたのかなと」

 「ネメッカ様はそこまででは無いでしょう」

 「いえ、あの家にユッミル様が戻るのは久々なので何人の女性がユッミル様に群がるかと思うと」

 「私も一度その中に行ってみたいですね」

 「あなたは遠慮しそうですからやめておきなさい。光の塔なら大丈夫ですから」

 「ですがたまにはユッミル様の家に行ってみたいとは思いますよ」

 「それは好きにしなさい」

 「もちろんです」

 「ユッミル、歩きたくない。このまま寝たい位だし抱いたまま連れて行って」

 「そうだね」

 「私はやり逃げですか?」

 「尽き果ててますしこれ以上付き合わないで済む様に非難した方が良いですよ。シウさんは余裕あるので抱き枕になってもらいます」

 「あら?私もそれなりに責められたのよ?」

 「とりあえずミーハを世話してきます」

 ユッミルはミーハを縛ると一度軽く抱いて布団に戻る。

 「シウさんは逃げませんよね」

 「そうね。まだ余裕だし」

 「でもそう言われると崩したくなりますね」

 「やるの?」

 「冗談ですよ。余裕の無い姿を見せたら出て行きたくさせてしまうかもしれませんし」

 翌朝、ユッミルが起きるとシウに抱かれている。

 「ありがとうございます。ただ、残念ですが起きないといけません」

 「残念ね」

 ユッミルはターヒョとケーシャと店に向かう。昼前にナーレが戻ってくる。ユッミルは昼過ぎにエコを家に帰らせて休ませる事にした。入れ替わる様にチェーハが帰ってくるが少し痣がある。

 「大丈夫か」

 「はい、最近はユッミル様のお蔭でありませんでしたが本来はこうですから」

 「申し訳ない。ただ、もう私同伴の借金返済交渉以外で行かないのも手ですよ。そこまでして探る必要のある情報はありません」

 「いえ、それもありますが母と弟の様子が気になりますから」

 「人質なのですか、少し配慮が足りませんでした」

 「いえ、表向きは出入りは自由ですが会いに行こうとすれば待ち伏せた彼らと会います。こっそり入る事は出来なくもないですがドアの向こうの母親の動きは隠せない。悪い時には扉の前に居ます。それにこの程度の私の傷はどうでも良いです」

 「少し考えます」

 夕方、珍しい客が現れる。

 「ユッミル様、お客様ですよ」

 「この時間、シェンハ様やリッネ様は無い。誰だ?」

 「見覚えはある気もするのですが何処かの団の幹部ですかね?」

 「ナーレ、まあ行くよ」

 ユッミルは店に向かう。

 「えっ。どうしたんですか?」

 「家に向かう気だったがもしやこっちかと思って寄ってみただけだよ」

 「そうですか。ここのメニューは独特なので良ければ裏で普通の品も食べられますが」

 「うん、ならそうさせてもらう」

 「ただ、家に帰っても食事する可能性もあるのでここでは軽めですけどね」

 ユッミルはユッホの息子、ノウォックを抱いてみる。

 「家にいる子達と違って掛け声みたいなのが多いですね」

 「ユッミルさんは私より子供か?」

 「食事中は流石に駄目でしょう」

 「そうだけどね」

 軽い食事を終えるとノウォックをしっかり抱いて家に帰る。

 「レヒーハさんは近いみたいですね。フーニャさん、お願いします」

 「今日も私には回ってこないのか?不公平だな」

 「したいなら構いませんよ。ですがそれまでは見てて下さい。どうします?」

 「勝手にすればいい」

 「でしたらオーネさんでも誘いますかね」

 「ユッミル、私は?」

 「ユッホさんはこちらとしてはお願いしたいです。今話してるのはその後ですね」

 「一晩、一人だと回らないのですよ。普通に休む日も欲しいですし。けど希望者は居ないみたいですしそうしましょうか」

 「ちょっと待って下さい」

 「チェーハ、駄目だよ」

 「そうですね。けどお風呂位は一緒でお願いします」

 「君、初めましてだね。私は木の術師のユッホ。先程はユッミルさんに気を取られてしまっていたが治してみるよ」

 ユッホは術を使う。

 「痛みはかなり取れました」

 「痣も薄くなってはいるね。ありがとう」

 「ええ、けどユッミルとの激しい絡みは今日はやめておくといい」

 「そうですね。卑しい痣の残る体が好みと言う変な人でも無いですし今日は遠慮します」

 ユッミルはユッホ母子とチェーハと風呂に入る。

 「それにしても寒くなってきましたね」

 「そうだね。うちも例年通りこの時期は早めに切り上げている。もちろん、寒季の盛りの数日は休みだ。」

 「数日ですか。大変ですね」

 「しかし、今年はレヒーハの看病という事で数日多めに休む様にシーリュノ様が計らってくれた。明日は一度帰るがその翌日の夜には戻るよ。五日程ここにいる。」

 「ただ、旅行に行くので途中…」

 「ああ、せめて一日か二日は君がいなくてもここの手伝いをしようと思ってね。君がいないとここも手薄だろう。レヒーハも心配だし」

 「まあリュッサを寒季の盛りには常駐させるので心配は無いのですが心強いですよ」

 「ねえ、旅行は私も駄目?」

 「それはそうだろう。君はネメッカの娘じゃない。その娘すら連れて行かないみたいだしね」

 「いつか私とも二人でね」

 「忙しいから期待しないでくれ」

 「正直ですね」

 「そうですね」

 ユッミルはユッホを抱きながら布団に向かう。

 

 

 

 

 

 3節 長期休暇

 

 「ユッミル、私には優しいのね。他の人にもこうなの?」

 「皆同じは無いですね。ユッホさんは抱いてるだけで幸せなので激しくする気は無いですよ」

 「そうやって丸め込む気?」

 「信じてくれないならどうしようもないですね」

 「じゃあノウォックを連れてくるわね」

 ユッホはケーシャに声を掛けてノウォックを抱いて戻ってくる。

 「寒くないんですか、ついでに服を着ましょうよ」

 「もう遅い。寒さはこうやって何とかすればいい」

 「そうですね。けど後数日もすれば流石にこれでは無理でしょうし今のうちですね」

 ユッミルは店に出向く。

 「おはようございます、店長」

 「ミューレさん、どうしました?」

 「明日は盛りの前の最後の営業日ですので終業後はそのまま打ち上げですから参加をお願いします」

 「あの、明日は帰る際に寒く無い様に営業時間を早めに終えると言う話でしょう」

 「もちろん、帰る子もいるでしょう。ですが宴会もします。そのまま一緒に風呂に入って寝ますよ」

 「ミューレさんはそれで良いかもしれませんが他の子は男なんていう警戒対象がいる宴会や風呂は嫌でしょう」

 「はい?あなたが嫌いでここに務める人は先に帰りますよ。あなた参加の前提でする事になってます」

 「はいはい、分かりましたよ。ですけど私はうっかりものなので今日は光の塔に泊まるのですがネメッカ様に上手く引き留められたら来れないかもしれませんね」

 「なるほど」

 「どうしました?それなら仕方ないですよね?」

 「ところでユッミル様は何処かの団の主宰が面会を求めてくれば受けますよね?」

 「それはそうでしょうね」

 「その主宰さんも誘いましょうか」

 「良いのですか?私がその主宰様と寝てしまえばそれを隠し立てするのは中々厳しいでしょう」

 「不要ですね」

 「ミューレ様は酷いですね。美しい女性を前に我慢しろと」

 「したいのであれば主宰様は帰ったという事にして姿を隠して連れ込めばいい」

 「いえ、しない様に耐えますよ」

 「明日の昼過ぎに使者を送りますのでその時に店に居れば主宰様は普通に盛りの前の挨拶に光の塔に出向くだけになります。居なければあなたを連れてこさせて宴会にも参加してもらいます」

 「分かりましたよ。いえ、了承せずともやりますよね?こんな人、側室にはできませんよ」

 「私だって側室になれば従順ですよ」

 「口が滑りました。火の団の為にあなたは迎え入れられません」

 「卑怯ですね」

 ユッミルはターヒョに早昼を頼んで光の塔でネメッカを辞退させて指揮所に向かう。少し早いので集会所を見て回る。寒季で人は少ないが氷の術師は減っていない。探偵事務所は既に寒季休暇であり、レミーカに会う。ディユもいる。

 「久々だね。ディユ君」

 「はい、ユッミル様久しぶりです」

 「最近はどう?獣の数は回復してますが冒険者が少ない。中々組めませんね」

 「そうか、レミーカはどう思う?」

 「最近は直接見てはいませんが団内で強引に組む事例が多く奥に行けていませんね。若い光術師は増えてますが」

 「ユッミル様は指揮所ですか?」

 「ええ、良く知ってるね」

 「はい、シェンハ様は光の担当時間を気にしてますから交代の時にネメッカ様だとあなたは強い癖に店ばっかりと不満そうでしたよ」

 しばらく三人で話した後、指揮所に向かう。交代先はエッヒネであった。

 「ご苦労様です」

 「いえ、寒季は忙しそうですね。ですが後回しでも良いのでシェヒユスに会いに来て下さいね。昼間が忙しいなら泊まりでも構いませんよ」

 「はは、ネメッカ様が居なければ是非お受けしたいのですがね」

 「ではまた」

 「はいまた」

 「冗談とは言えあの方に誘われるとは」

 「冗談ねえ、けどエッヒネ様の子供、可能性あるのよね」

 「まあユッミルの側に拒む理由無いと思うしな」

 「ネメッカに隠し通す自信が無いだけだろ」

 「そっか、まあネメッカの方が若いしそっちを怒らせてまではないか」

 「ユッミル様、こんにちは」

 「ナーレか」

 「はい、ユッミル様なら担当して良いとの事でしたので」

 「ユッミル、今年も冬だけの女として来たわよ」

 「申し訳ないですが声に出さないで下さい」

 「けどまああれだけ側室がいて団側がその気になれば指揮所でも誰かしらの側室といる事になるのね」

 「しかも私は幹部名目では無いからまだいる可能性もあるのね」

 「まさか」

 「あっ」

 「なっ」

 「ユッミル様。可能性あるとは聞いていましたが良かったです」

 ポッフェはユッミルの肩越しに寄り掛かる。

 「ポッフェさん、指揮所ですし戦闘枠ですよ」

 「まあそうだけど嫌いとか嫌とかは言ってないし夜営の際に誘ったら分からないよ?」

 「そういう趣味はありません」

 「そう言って油断させてかな?まあ良いけどとにかく側室は側室よ」

 「違います」

 「なっ、知ってはいたが」

 「ああ、あいつの場合街をうろついてるだけでいつの間にか二人位の側室に」

 「しかも普通に魅力的だぞ」

 「ああ、一人は普通に優しそうな長身めのスタイルの良い子」

 「エッヒネ様には負けるけどな」

 「だがもう一人はまあまあ大きい。顔も好きなやつは好きだろう」

 「もう一人は顔は見えなかったが少し小さくて遠慮がちな仕草が可愛い。しかもあいつにだけ懐いてる風なのが更に羨ましい」

 「ユッミル様、こんにちは。私もユッミル様の傍に居ますね」

 「リュッサ?いつの間に」

 「ネメッカ様が寒い中、一人はと夕方頃に出て行くよう言われてましたが待てなくなりましたね」

 「四人目、ここはそういう場所じゃないぞ」

 「リュッサさん、いえ、他の方も近いです。ああ、ナーレは良いよ。マッラは温めてくれてるだけだよね」

 「火力をあげたくなりましたが我慢します」

 ユッミルはナーレ以外を無視しながら覆い隠すように仕事を遂行する。任を終えて指揮所から降りるとミーハ母子とエコ母子にイーサ母子がいる。

 「お帰りなさい、ユッミル様」

 「ユッミル、帰るわよ」

 「あの、塔に帰る予定なのですが」

 「レヒーハさんの妊娠を見届けて下さいとの伝言です」

 「イーサさんにしては珍しいですね」

 「ネメッカ様が焦る理由は無いですから。それに帰った頃には塔の子ですから」

 「分かりました」

 エコとマッラにじんわり温められながら三人の赤子がいる大所帯は家路に着く。

 「ユッミル、お疲れ様」

 「ああ、メシャにリュッサもありがとう。皆もありがとう」

 家に入るとチェーハ、メシャーナ母子、リュッサ母子、シウ母子、フーニャ母子、ムヒューエ母子、ベーニュ、ターヒョに出迎えられる。レヒーハとオーネ、ノウォックも寝ている。

 「いえいえ、早速食事にしましょう」

 「はい、シェンハ様やリッネ様にミューレが居なくて良かったです」

 ユッミルはメシャーナを抱き寄せる。

 「それは言えという事かしら?」

 「シウ様がやめたいなら致し方ないですね」

 「強気ね。まあ良いわ」

 「チェーハ、リュッサ。横は二人にお願いするね」

 「もちろんですよ」

 ユッミルはメシャーナ母子を膝に乗せて側近を両脇に食事を始める。

 「シャーユはともかく他の子にはあまり好かれてないなあ。最近は母親の機嫌を損ねてるからかなあ」

 「だったら今日の風呂はユッミルに懐いてる子と入れば?」

 「懐いてない子と入るべきでは?」

 「けど生まれたばかりのまだ名前も無い子とかは意味が無いし」

 「どうしますかね?」

 「だったらユッミルが少し離れた所に立って先にユッミルに触った子と入ればいい」

 「まあ赤子を運動させるのは悪くないですね」

 結果的にユンルクがユッミルの服の裾を最初に掴む。ヌーグとサーナはあまり動かずミリットとカノールとの三つ巴を制する。ユッミルはユンルクを抱き上げる。ミリットの頭を撫でつつシウに引き渡す。イーサはさっさと息子を回収する。

 「まあ我が息子ながら怠慢。人の事は言えないが」

 「少し酔ってる気もするので溺れない様に気をつけないと」

 ユッミルはユンルクを風呂の前で脱がしていく。

 「あなたは私がしましょうか?」

 「ええ、そうですね」

 その後、ユッミルはリュッサを脱がせていく。チェーハはユッミルが溺れないよう姿を隠して見張るが特に問題は無く風呂を出る。

 「どうします?」

 「マッラさん?どうかしました?」

 「そう言えば私って側室の座を下ろされたんでしたっけ?」

 「あっ。うーん、火の団って人手空いてます?赤子、世話できそうですか?エコさんもかもしれませんし」

 「大丈夫だと思いますよ。私が主に世話をしてますし」

 「であればこそ心配ですけど」

 「無理なら言わないですよ」

 「そうですか」

 ユッミルはしばらくすると服を着てチェーハを呼び寄せて抱いて寝る。

 「ユッミル様、そういうのは私を脱がせてからにして下さい」

 「用も無いのにくっつくなって事?」

 「そうは言いませんけど」

 「ユッミルさん、あまり遅いと困りますよ」

 「分かってますよ」

 ユッミル達は朝食を済ませる。

 「フーニャさん、そこに生みそうな人がいるのを忘れないで下さいね」

 「はあ、君も人任せになってきたね。残念だよ」

 「気を付けますよ」

 ユッミルはナーレ、ターヒョ、エコ母子、チェーハ、リュッサと店に向かう。途中でテーファの家に寄るが留守の様で一度店に向かう。店の近くでユッミルはチェーハと別れて月の塔に向かう。

 「リッネ様ですか?」

 「いえ、テーファさんを」

 「はい」

 ユッミルはしばらく待つ。

 「どうしたの?」

 「今日は店なんですけど一緒に居て欲しくて」

 「良いよ、少し待っててね」

 ユッミルはしばらく待つ。

 「じゃあ行こうか」

 ユッミルはテーファに寄り掛かって歩いていく。

 「ミューレさん、おはようございます」

 「おはよう、ユッミルさん。」

 「来ましたからね」

 「宴会には誰を呼びましょうか?私はどうやらユッミル様に数々の非礼を働いた様ですから一緒に風呂に入る際に押し倒されても文句は言えません」

 「しませんよ」

 「もちろん、それでも不満ならエッヒネを差し出す事も可能です」

 「いりません。来ても体を触るだけで帰ります」

 「呼んでも良いと?」

 「そうですね。呼んでくれないならあなたの体で遊びます」

 「呼びますけど失敗したら風呂では覚悟してます」

 ユッミルは営業時間中はテーファに甘えている。チェーハも横に居る。最終日なのでリッネが訪ねてくる。ユッミルも挨拶を交わす。ただ、寒季の盛りが近く客足はほぼなく予定通り早めに営業を終える。ターヒョは客が少ないので店を閉める前から宴会の料理を作っており、程なく料理も揃う。ユッミルはミューレとテーファを両脇に置く。

 「ユッミル様、座ったままですとそこの料理ばかりですよ」

 「ミューレさん、足を挟み込むのやめてくれませんか?」

 「ついユッミル様を取り込みたくて」

 ユッミルはテーファと別の卓にも向かう。チェーハがすかさずもう片方の横に陣取る。

 「それにしても多いですね」

 「ですが飲んでる子も多いですしね」

 「チェーハは駄目だよ」

 「分かってますよ」

 ユッミルもテーファも少し飲んでいる。

 「ユッミルさん、一緒に食べましょう」

 「ナーレ?飲み過ぎてない?」

 「大丈夫ですよ。さあ一緒に」

 「あれ?エコさんは?」

 「厨房じゃないですか?」

 「そうらしいですね。ですがこの状況で風呂はまずい気もしますが」

 ユッミルは厨房に向かう。

 「どうしたの?」

 「ターヒョさん、この後の風呂なんですが」

 「私も入るけど何?」

 「いえ、その酔ってる人達をどうしようかなと」

 「そっか、そこまでの量は用意してないけど酔うには十分ね。けど酔った子を宿舎に連れ込めば、ねえ」

 「これ以上母親を増やすとかそんな地獄の提案はやめて下さい。それでなくておまだ増えるんですからきっと」

 「でもテーファをここに連れて来たのはそういう目的よね?」

 「まさか、テーファさんはそんな事しなくても相手をしてくれます」

 ターヒョは酔い覚ましの汁物を提供する。皆の酔いが幾分ましになった所でユッミルはミューレを風呂に誘う。何人かは食堂に残るが半分以上は風呂に向かう。ユッミルの真後ろにはナーレが陣取っている。正面は守る様にチェーハがいる。ケーシャとリュッサにエコとターヒョは赤子二人を連れてやってくる。ユッミルは二人の赤子の方を向く。その時、ユッミルにテーファが抱きかかる。ただ、テーファはそのまま倒れ掛かるのでユッミルは倒れながら受け止める。

 「テーファさん?」

 ユッミルはテーファを上に乗せて抱く体勢になる。

 「テーファさん、寝てません?」

 「そうかもしれませんね」

 「起こした方が良さそうですね。ユッミルさん、手伝って下さい」

 「少し待って下さい」

 しばらくして床に座らせるが起きる気配は無い。

 「布団に運びますか」

 「その前に洗ってあげた方が良いですよ、ユッミルさん」

 「リュッサ、何を言って。ああ、君がするんだね」

 「ユッミルさんですよ」

 「駄目でしょ。君も寝てる間にそんな事されたくは無いでしょう」

 「そんな事は無いですね。今度してくれて構いません。それに軽く洗うだけですよ。私もお願いします。好きに触って下さい、全身隅まで」

 「私もお願いします。汚れ、溜まってると思いますし」

 「チェーハは体、大丈夫?」

 「そうですね。光術師ですし。けどユッミル様が興味を示す場所は隠しません」

 「そうだね、隠すのは傷だけで良い。顔の傷は浅くて良かった」

 「ナーレも」

 「時間が無いので自分でお願いします」

 「分かった」

 「私はやってくれるわよね?」

 「ええ、急いでやりますよ」

 ユッミルは側室の面々とミューレで洗い場の一角を占拠する。エコとケーシャとナーレが赤子を洗う。ユッミルはテーファを洗っていく。

 「軽くじゃなかったんですか?」

 「ごめんなさい。テーファさん」

 その後、ユッミルはリュッサとミューレとチェーハを洗っていく。

 「何か触られ損ですね。当番で仕方なく掃除してるみたいに雑でした」

 「まあ側室では無いですしね」

 「私はそこまででは無かったけどリュッサとかテーファ程は魅力が無いのね」

 「いや、チェーハが楽しそうだったしこっちもそのまま早くやってしまっただけだよ。リュッサ、どうしたの?」

 「今度は寝てる時にお願いします」

 「どういう事?」

 「触られてる時の感触がもう駄目です。寝てる時なら大丈夫です」

 「もしかして近づかない方が良い?」

 「そこまでは言いませんが今は他の側室優先が良いかもしれません」

 ユッミルはエコの息子を抱きながらチェーハとナーレを横にして浴槽に入る。いつの間にかミューレに後ろを取られ、ミューレの膝に座る。正面には火や月の女性術師が並ぶ。ユッミルは術師と店の話を軽くしていく。時折ナーレやチェーハを抱き寄せる。

 「私の息子を貞操帯みたいに扱うのはやめて下さい」

 「申し訳ない。ですが可愛らしいですね」

 「まあ良いです」

 ユッミルは洗い場で寝かせていたテーファに脱衣所で服を着せて背負う。途中で目を覚ます。

 「ユッミル君、寝たみたいね。ごめんね」

 「いえ、全く」

 「洗ってくれたの?」

 「はい、その全て」

 「ああ、起きてる時と違って親切だね」

 「そうですよ、かなり興奮して洗ってましたね」

 「リュッサさん、やめて下さい。いえ、テーファさん申し訳ないです」

 「ユッミル君、本当なのね。何それ?」

 「ごめんなさい。テーファさんの体も好きだから」

 「違う、ユッミルさんは起きてる私の体に飽きたのに寝てる私の体には興味あるのね。それって私の中身に魅力が無いって事?」

 「そんな事は無いですよ。テーファさんは可愛らしいですし」

 「なら明日の昼、やろうよ。良いよね?今は眠いから」

 「本当ですか?良いですよ」

 「ちょっとまた太ってるけどちゃんとしてもらうから」

 「太った?ああ、二人目ですか?きっと二人目はネメッカ様の次の二番手ですよ。いや、リュッサが二番手かも。けど三人目はテーファさんが二番手になりますよ」

 「ユッミル、私にはそういう配慮は無いの?」

 「無いよ、けどチェーハは自分から来てくれるし。配慮して欲しかったら待つの?」

 「ユッミル、ずるい」

 「そうだね」

 宿舎に戻るとテーファは眠っていく。

 「ユッミル、分かってると思うけど私も二人目いるの。少し太ってきたけどそこまでじゃない。太る前にしておかないかしら?」

 「そうですね、あなたとは中々時間が合いませんし」

 しばらくしてターヒョが戻ってくる。

 「ユッミルは本当に毎晩やってるわね」

 「邪魔、しないで下さい」

 「もちろんよ」

 「ですがもう充分楽しみましたね」

 「このまま、寝たいです」

 翌朝は昨日の残りをターヒョがアレンジしていく。昼前までだらだらと食っていく。昼前になると従業員は帰り始める。ユッミル達も昼頃に帰路に着く。いよいよ昼頃でも寒い。エコが少し暖めるが寒いので家路を急ぐ。テーファも宣言通り付いてくる。ターヒョはミューレ達残留組と料理の後処理をやって氷の塔に一度戻るらしい。

 「ユッミルさん、お帰りなさい」

 「ユッミル、お帰り。シャーも」

 「おかーり、ユッミウ」

 「良い子ね」

 「ミリットも」

 「うー?」

 「シャーユ、ただいま」

 「たーま?」

 「ところで私の子を放り出して外泊ですか」

 「すいません。ミューレさんに脅されまして」

 「どういう事ですか?」

 「ミューレさんは店の開店に恩があって逆らえません」

 「そうですか。仕方ないですね」

 「ユッミル君、約束。忘れてないよね?」

 「えっと、少し子供達の世話をしてからでお願いします」

 ユッミルはノウォック、ファッリーユ、ユンルクを撫でたりしていく。

 「あら?うるさい母親の点数を子供と遊んで稼ぐのかしら?」

 「リュッサさんはうるさくないですよ。それにあなたもうるさいですし。本当はあまり構えないエコさんの息子と触れ合いたいですがエコさんの邪魔はしたくない。深い意味は無いですよ」

 「ふーん、でもまあミーハはうるさくないしね」

 ユッミルはしばらくするとファッリーユをリュッサに任せる。

 「テーファさん、前は気まぐれで変な事を口走った上に忙しくて放っておく形になって申し訳ない」

 「分かったから遊ぼうよ」

 「ユッミル、夜は私とも遊んでくれるよね?」

 「怒ってるんですよね?」

 「それだけならここには来ない。昨日の夜から居るからね」

 「分かりました」

 「ユッミル君」

 「はい」

 ファッリーユ、ノウォック、ミリット、ユンルク、ヌーグ、サーナ、ゼフロはユッホやシウにリュッサ等の母親とベーニュやナーレと遊んでいる。

 「ユッミル君、もういいよ。飽きたってのが気まぐれなのは分かったから」

 「うん、三日に一度みたいだと飽きるという話だから」

 「もう分かったよ」

 「ユッミルさん、私ともそれ位して下さい」

 「チェーハ、なら十日に一回になるけど構わないか?」

 「考えておきます」

 ユッミルは少し休むと夕食の卓に着く。ユッホは隣に座って少し寄り掛かっている。

 「ユッホさん、怒ってないんですか?」

 「今は忘れる様にしてますので思い出させないで下さい」

 「すいません」

 「ええ、けど私にも落ち度があったのは分かってますからまだ来てますよ」

 「はい、お風呂はそろそろ入ってあげたい赤子がいるので先に入って待ってますね」

 ユッミルはフーニャ母子とナーレと風呂に入ると軽く体を拭いてナーレの手を引いてそのまま布団に入る。

 「どうしました?」

 「寝ると大問題なので話し相手をお願いします。私が寝たら起こして下さいね」

 「口で起こしても良いですか?」

 「それは構いませんがそれだと起きませんよ」

 「ナーレさんが寝たらくすぐりますね」

 「裸の女の子をくすぐるなんてやらしいですね」

 「ですから寝ないで下さいね」

 「だったら先に時々触って下さい。そしたら寝ませんから」

 「ええ、それで。でも時々ですからね」

 ユッミルとナーレはゆったり話しながら触れ合っている。

 「ユッミル、用意できたわよ」

 ナーレは離れる。ユッホはユッミルの顔の近くを跨ぐ。

 「ユッホさん、そこまでしなくても…もう、良いですか?」

 「えっ。待って」

 ユッミルは立ち上がってユッホに覆い被さる。

 「はあ、ユッミルは七人も八人も子供がいるのに」

 「あんたも人の事言えないでしょ。私は普通に優しいユッミルを待つから変な事にはならない」

 「そうですね、ユッミルさんは普段はあんな強引では無いですね。ユッホさんが悪いんでしょう」

 「うん、ネメッカにも言葉巧みに誘われたって言ってた」

 「それはあなた向けの方便よ。騙されちゃ駄目」

 「シウさん、まだそう思ってたんですか?あの人はネメッカ様が誘っても強制入団を恐れて躊躇したらしいですよ。まあネメッカ様が強制はしないと言ったら乗ってしまったらしいですけど。ネメッカ様は私を憐れんで相手して入団してくれたと言ってますし」

 「まあ光の団はあれだけどね」

 「そうよ、ネメッカは一見男寄せ付けないしユッミルはそういう女に興味は持たないよ。シェンハの事も指折りの強者としか思って無かったし。ネメッカはユッミルをわざわざ探し出して」

 「そうそう、ユッミル様が逃げる前にしがみついてユッミル様を困らせて会談に持ち込んだのですよ」

 「執念ね、ネメッカに私が勝てない筈だわ」

 「シウさん、執念はきっかけに過ぎませんよ。あなたと違って私の話を聞いて意思を尊重してくれました。あの体等諸々ですから強引にも可能だったでしょうに。丁寧に説得されたので折れたのですよ。シウさんはシウさんで魅力的ですが妻としてはネメッカ様が上手です。まあ側室と言う立場を弁えて控えてるのかもしれませんが」

 「さて、どうかしら?それよりもう終わったの?」

 「ユッホさんが自然に無防備だったので一気にしてしまっただけです。あの人は自分が肉体的に強いせいか無防備なのです。もう寝かせてきました。」

 「あら?そう言えばもう服を着てるのね」

 「冬ですからユッホにも着せたついでに着ました。さて、可愛いサーナの世話でもしますかね」

 ユッミルは一人ずつ眠っていく子供を見届けてから最後まで起きていたファッリーユを挟んでテーファと寝る。オーネが起きて来てシウは寝ていないが他は眠っていく。夜中にユッミルは目を覚ますが背中にメシャーナ母子がいて寝直す。

 翌朝、テーファはファッリーユを抱えて慌てて部屋の隅に向かう。

 「油断した」

 「やはりシャーユが有望なのか」

 「サーナも少ないよ。数日に一回すればああはならない」

 「うちのミリットは十日持つわね」

 「ああ、知ってますよ」

 「その反応、酷いわね」

 「シウさんの息子が雑魚なんて絶対無いですよ。シウさんを怒らせて息子に殺されないか心配ですよ」

 「えっと、私を他の男に売りつけるの?」

 「何の話ですか?」

 「私が怒るってそういう酷い事をする気なのかなと」

 「しませんよ」

 「なら大丈夫よ」

 「そうとは限りませんよ。私の息子はそこまで食べないので五日持ちます」

 「そうですか。どうなのでしょうね」

 「私もそこまで食べないから息子の倍は持つわね。ユッミル、見たいならそれ位、一緒に居れば良い」

 「遠慮します。無理ですし」

 「私は二日ですけどユッミル様に責められたらどうしようもないです」

 「私は三日は持つけど娘は駄目みたいで。ユッミル君、ごめんね」

 「謝る必要は無いですよ。それにリュッサは光を使えるでしょ。だから見てしまうのはレヒーハさんですね。」

 「ユッミル、私の光は真正面から堂々と奪って良いんですよ」

 「そんなじっとは見ませんよ。というかチェーハの場合、シウさん以上にしなくて良いですよね?」

 「ユッミルが要求するならします」

 「要らないです。でも気が変わればね」

 しばらくするとレヒーハが起きてくる。

 「そろそろですか?」

 「はい」

 レヒーハは立ち上がって部屋の隅に向かう。

 「テーファ、胸貸して」

 ユッミルは思いっきりテーファの胸に顔を埋める。

 「もういいよ」

 レヒーハは戻ってくる。

 「けど今回はそうしてもねえ」

 「それにユッミルがその気になれば私達なんていつでもしたい様にさせられるし」

 「ミーハ、そんな認識なら塔に帰った方が良いよ」

 「ごめんなさい、気にせず好きにして下さい」

 「もう良いですよ」

 「あの、ユッホさん、ユッミルさん、そろそろなのでよろしくお願いします」

 レヒーハは昼食を食べると昼寝をする。ユッミルは子供達と遊びながらレヒーハを気にしている。

 「ユッミルさん、寝てて下さい。夜遅くかもしれないので」

 「そうですね」

 ユッミルは何人かの子供と昼寝をする。ユッホ母子等若干名は早めの夕食を食べる。他はユッミルが起きた頃に少しだけ遅めの夕食にする。ユッホ母子やオーネは寝ている。ユッミルはシウ母子とチェーハとさっさと風呂に入り、レヒーハの近くに待機する。しばらくして子供の大半が眠り、親も数名は寝ていく。シウ母子はまだ寝ていない。ユンルクとシャーユは寝たがメシャーナとリュッサは起きている。

 「ユッホさんどうします?」

 「まだ良いよ。メシャも寝てていい」

 「まだ眠くないし遅く寝る日も多いよ。まあユッミルが横で寝てくれるなら寝るけど」

 「分かった」

 「私には寝ろと言わないのね」

 「あなたは指図する年ではないでしょう」

 「言う事を聞かない年寄りと?」

 「もうそれで良いです、静かにして下さい」

 シウとメシャーナはユッミルを抱いて遊んでいく。

 「シウさん、メシャーナの真似はやめて下さい」

 「大人しい私は嫌なの?」

 「僕の足を巻き取るのはやめて下さい」

 「狭いから仕方ないのよ」

 「シウさん、僕はレヒーハに寄ってきますからどいて下さい」

 「あらっ。やはり子供には勝てないのかしら?」

 「一回きり位我慢して下さい」

 ユッミルはメシャーナにも声を掛けてレヒーハの枕元に向かう。リュッサはユッホを起こす。しばらくしてレヒーハは子供を産む。女児らしい。ユッミルは知っていたらしい。

 「やはり女の子ですね」

 「ユッミルは同居する女子の性別をそんなに目で確認したいのね」

 「シウさん、そんな風に考えるなら残念ですけどこの家に居ない方が良いですよ」

 「知ってるわよ。私は本来、ユッミル様が遊びやすいように足を広…」

 「もう良いですから」

 ユッミルは女児に産着を着せると静かにレヒーハとの間に寝かせる。

 「おっと、もうそんなに眠くないです」

 レヒーハは膝に赤子を乗せる。

 「レヒーハさん、寒くないですか?」

 「ええ、大丈夫ですよ。ユッミル様はおかしな人ですね。さっき散々見てますし普段も風呂で身を寄せ合っているのに気になるのですか?」

 「そうですね。ちらちら見えたり、見えなかったりすると気になりますね」

 「じゃあそのままにします」

 「レヒーハさん」

 「いえいえ、子供には素肌の方が良いでしょう」

 「ただ、少ししたらエコ…」

 エコやターヒョにオーネ等が産声で起きてくる。

 「ああ、ユッミル感あるわね」

 「何ですか、それは」

 「おめでとうございます」

 「ありがとう、オーネ」

 「というか男女共ユッミルみたいなのが量産されるのね」

 「あなたもいずれ共犯者ですよ」

 翌朝、ユッミルはレヒーハに重ね重ね釈明した上で光の塔に向かう。

 「おはよう。今日は寒いけど旅行の準備をするわよ」

 「ネミークは?」

 「朝食はまだなの?」

 「いえ」

 「なら荷物の用意ね」

 「服ですよね?」

 「ええ、私は買ったわよ」

 「わざわざ?」

 「光の主導用衣装よ、これは」

 「ああ、部屋着は部屋着ですよね」

 「僕はここのだけだと少し足りないですから」

 「大丈夫よ、リュッサに頼んで向こうも含めてユッミルの服は回収したわ。一部は先に向こうに送る事もできるし」

 「まあ構いませんが」

 「一応、今から選ぶわよ。期限は今日の午後ね」

 「来なかったら適当に選ぶ気だったんですね」

 「そうね」

 服を選んで纏めるとフェノが下に運んでいく。

 「三泊もするんですか?いや、二泊三日か。」

 「五泊六日だけど」

 「えっ?そんなにですか?」

 「嫌なの?」

 「そうではなく塔を空ける時間ですよ」

 「言いたい事は分かるけどあなたが居なければ私は休めなかったという事?」

 「まあフェノは優秀ですしね」

 「もちろん、代わりに前日の午後は指揮所に行ってきますね。一回分はエッヒネに交代してもらったので戻って来てからは二日連続もあります」

 「まあそれは構いませんが。ですが逆にそれだと荷物が足りない気も…」

 「いえ、現地には当地用の服装が無料で借りられますからユッミルも何日かはそれで過ごすと良いですよ」

 「ネメッカ様、そういう説明は仕組…用意した私がしますから」

 「ですがイーサさん、六日はやりすぎですね。やる事が無くなりますよ」

 「いえいえ、到着日と帰宅日はゆったりしてもらうという事ですから実質は四日です」

 「それにしても長いと思いますが」

 「文句は終わってから受け付けますよ。来年もあります」

 「イーサ、二人きりは今年まででしょ」

 「来年はともかくそれ以降はまだ未定ですよ」

 ユッミル達は昼食を終える。

 「一度帰って良いですか?」

 「六日留守にすると言う話ならリュッサから家には伝言させますから心配はありません」

 「テーファさんはもう知ってるんですか?」

 「もちろんよ。次はリュッサ達と4人でも良いわね」

 「イーサさん、弾かれてますよ?」

 「実務上、私とネメッカ様は同時に抜けられません」

 「イーサさんとネメッカ様で旅行は可能ですよね、私が留守番すれば」

 「ユッミル様、それに何の意味が?」

 「そうでしたね」

 「それより私の当日の服はユッミルが選んでくれませんか?今から買いに行きましょうよ」

 「えっ。肌寒い中、団を私物化する夫婦として買い物は嫌ですね」

 「はあ、私はカエに変装しますからその恋人としてならどうです?」

 「それなら全く構いません」

 ユッミルはルカロに近い変身でカエと出かける。カエは腕をゆったり抱き込みながら体をユッミルに預ける。

 「随分と器用ですね」

 「ユッミルがちゃんと受け入れてくれるからできるんですよ。けどまあ恥ずかしがってくれてもそれはそれですけど」

 「流石に術を使ってると意識は分散しますよ」

 店に着く。

 「どれが良いかなあ?」

 「少し待ってね」

 「良さそうなの教えてね。着てみれば良いし」

 「えっ?」

 「良いから選んで」

 「ではこれで」

 「下だけ?」

 「ああ、部屋では上は着なくて良いって事?やらしいけど良いわよ、あなたなら」

 「分かりましたよ、上も選びます」

 「何か怒ってる?丁寧な話し方だけど」

 「そんな事ないよ、カエ。君はネメッカよりも可愛い顔をしているから何でも似合うよ」

 「じゃあ着てくるね」

 「上」

 カエは試着室に入っていく。ユッミルが試着室の前に来て覗くと従来の主導時の服が転がってネメッカはユッミルの渡した下を履こうとしている。

 「ネメッカ様、脱ぐ必要は無いでしょう」

 「履けないでしょ、現物」

 「上を渡しますね」

 「面倒なので入って下さい。あなた、どうかしら?」

 「うん、良いと思うよ。これはどうかな?」

 ユッミルは試着室の前に幻を残して入っていく。

 「ネメッカ様、早く上を着て下さい。ってどうして幻影を解くんですか?」

 「そうしないと似合ってるか分からない、さっきユッミルが言ったんですよ」

 「解くのは顔だけで良いでしょ?」

 「今更ユッミル相手に隠しても仕方ないですよ。それか恥ずかしがる初々しい私が見たいのですか?けどまああの出会いからしてその期待は困ります」

 「分かりましたから。まあ悪くは無いですが。やはり一着ずつ真剣に選ぶので待ってて下さい」

 ユッミルはしばらく悩んで着せた上下をそのまま選んで買う事にして帰路に着く。

 「ユッミルはこういうのが良いんですね」

 「かもしれませんね。付き合いも長くなってきたんですからそろそろこちらの趣味にも合わせてもらいたいですから丁度いいです」

 「ああ、横から手を入れて揉みたかったんですね。言ってくれれば主導衣装にも導入しても良かったのに」

 「それは違います。行先が少し暖かいと聞いたので」

 「でもまあ揉める事には変わりないですし良いですよ。それにユッミルなら体も見れますね。まあそういう服で見てくれても良いんですけど見たいならいつでも正面から脱がせ…そうでした。主導衣装は人前ですから。けど一応、ユッミルにあなただけのって分かってもらいたいので普段は隠したいですから」

 「前にも言いましたが主導衣装は薄いので服の上からでも触ればネメッカ様を感じる事は出来ます」

 「またそれですか。直の方が良いでしょう」

 「まあ好きにしますよ。どっちも良いですから」

 夕食はネミークも娘と食べる。

 「忘れてましたが娘の名前はどうしました?」

 「ユッミルが決めるのを待ってますが」

 「でしたら今付けます。この子の様子はどうですか?」

 「私には似てませんね。積極性は高くないですし」

 「トキホでどうでしょう?」

 「相変わらず不思議な響きですね。悪くも無いので構わないですが」

 「そうですか、ネメッカ様は何か」

 「いえ、トキホに決まりですね。いえ、後は本人次第です。トキホ、飲みますか」

 「それは飲むでしょう」

 「でしたら別のを考えるんですか?」

 「そうですね。トキホにしましょう」

 ユッミルはトキホとネミークとネメッカで風呂に入る。風呂から出るとトキホにさっさと服を着せて自分も服を着る。ユッミルもさっさと服を着る。そうしているとユッミルはベッドに引き込まれてネメッカに抱き付かれている。

 翌朝、トキホとネミークはいなくなっていてネメッカはしっかりユッミルを抱いている。

 「ネメッカ様、名残惜しいですが朝食の時間です。ネメッカ様がそうしたいなら朝食後もこうしますから」

 二人は朝食を終えると子供を放ってベッドで抱き合っていく。ただ、しばらくすると指揮所なので早昼を食べる。ネメッカは指揮所に向かう。ユッミルはネミークとトキホと数名の赤子の世話をしている。

 「イーサさん、ネミークを連れて指揮所下に行っても構いませんか?」

 「えっと、ユッミル様の姿でないなら。ネミークも隠してですよ」

 ユッミルは大通りをネミークを抱いて歩く。敵はいないのでネミークには術の幻を見せてみる。ネメッカが戻る前にさっさと引き上げる。

 「明日朝、出発なので今日は体を求められても困りますが今日だけですからね。絶対に間違えないで下さい。旅行中、全く相手にしてくれないなら見苦しいと言われようが襲いますから覚悟して下さい、あなたの言う美しいネメッカ様は崩れ去ります」

 「分かってますよ」

 ネメッカは宣言通り、四人で風呂に入るがさっさと上がると服を着る。ただ、トキホとネミークは背中を抱かせてユッミルをしっかり抱く。翌朝、二人はお互いの選んだ服に着替える。

 「ユッミル、襲いたくなるので早く着て下さい」

 「分かってますよ、真似しないで下さい」

 「ユッミル、真似ではありません。あなたは望んでも無いのに抱き付く女と結婚したのですか?」

 「そうは言いませんが。それよりネメッカ様も」

 「分かっていますよ」

 ユッミルとネメッカとイーサは南西の郊外に少し歩く。そこには馬車がいる。

 「ユッミル様、あれですよ」

 「そう言えばこういうのはあまり見かけませんね」

 「ええ、珍しいですよ」

 「冒険者と言うか庶民はあまり使わないのでは?」

 「はい、今回は術師協会公認の七つの団の一つの主導夫婦としてそういう休暇でございますから」

 「えっと」

 「後の詳しい説明は馬車中でネメッカ様にお聞き下さい」

 「えっと」

 ユッミルはネメッカに優しく連れられて馬車に乗り込む。

 「ネメッカ様、今回の宿はどの程度の額なんですか?」

 「そうですね。宿泊と料理で13万アークですね。一泊二日だと4万だそうですからお得ですね」

 「その金は何処から?」

 「ミューレ様が4万等、イーサが10万を調達して残りは私達の給与からの天引きですね。まあ私達の給与は多少嵩増ししたので私達の負担は一万程度ですね」

 「そういう事ですか。あえてミューレ様に拠出させれば後からは止められない」

 「ああ、キャンセル料も直前だと8万なのでそちらがメインですね。あなたがレヒーハさんを見守って塔に来た時点で5万近くなのでその時点で無駄ですよ」

 「まあ良いですよ。起きてしまったのは仕方ないですから素直に休みます」

 「ええ、名目上は主導である私の休暇ですが実際にはあなたの為ですから」

 「それは感謝してます。本来は塔に張り付いてるあなたに休暇が必要なのに」

 「そうですよ。ですから少々高い休暇でも正当です。あなたに至っては旅費以上の恩恵を分かりやすく与えてくれていますよ。それより無用にネメッカであると認識されない為に髪を結んで髪飾りまでつけてみましたがどうですか?」

 「言うまでもないでしょう」

 「いつもは言ってくれますがやはり主導衣装の方が好みなのですか?」

 「今は横に並んでますからよく見えないだけですよ」

 「歪曲視野で私の体の全てを見る事が出来るあなたが何を寝言を言っているんですか?」

 「歪曲視野は全体像が見にくいですから。その代わりに触っても良いですか?」

 「まあ良いですけど。って手を握る?意外と悪くないですね」

 しばらくすると片側に砂漠らしき景色が見えて程なく到着する。ホテルは三階建てで客室は二階と三階。部屋によってグレードが違う。三階の南西の角は一面の砂漠が見える最も広い部屋で最高グレードだが人気はそれほどない。西側の部屋は基本砂漠の眺望で次のグレードである。南は砂漠が片側にあるが正面は南のオアシスであり、砂漠と反対側には疎らな市街地が見える。ただ、それはユッミルの歪曲視野故であって日除けの様なもので見にくくされている。この方向はセテューカの家出先がある様な流れ者も多い地域である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 4節 主導様の出遅れた新婚旅行

 

 「ユッミル、食べませんか?この辺りの果物らしいですよ」

 そう言われたユッミルがネメッカの方を見ると色とりどりのとまではいかないが数色のフルーツが切って盛られている。

 「色が多いですね。ですが皮には差は」

 「ええ、この果物は緑で栄養を蓄えてその時期は苦く、徐々に甘酸っぱく色も橙になっていきます。そして、栄養が溜まると黄になってその時期に収穫しますが橙もおいしいのですよ。黄の後は種に栄養を移して赤になっていくらしいですがそれが好きと言う人もいましてと言ってましたよ。ユッミルが外の景色を見てるうちに。ちなみに赤はあっさりした味だそうですね。そう言えばこの前、リッネ様が持ってきてましたね」

 「ん?塩気がありませんね。保存でしょうか」

 「かもしれません。皮も甘酢漬けで食べて良いそうですよ」

 「そうですか。それで今日の予定は?」

 「料理ですね」

 ユッミル達は昼食として麺入りの汁物を食べる。簡素ではあったが良いダシを使っている上に雑味が無いという仄かに上質を感じさせる料理ではあった。昼食は4通りから選ぶものでネメッカは揚げ物を選んでおり、少しずつ交換した所、ユッミルは味付けの塩が優秀だと感じた

 部屋に戻ると先程の果物が補充されている。ちなみに夕食は部屋に運ばれてくるらしい。

 「ユッミル、どうです今日の私の姿は?」

 「いつもながら美しいですね」

 「服を着ても着なくても変わらないならもう脱いでユッミルにくっ付いて服の代わりになってもらいますよ」

 「私はそういうのも良いとは思いますが私の見立てなので自信は無いです」

 「ユッミルにとって可愛く見えるならそれで良いですよ」

 「そうですね。僕が選ぶと美しいと言うより可愛いになってしまいます」

 「それで良いんですよ」

 ネメッカはユッミルの膝に乗って甘えていく。ユッミルはしんどくなって寝転がる。ちなみに床は草を編んだ敷物が敷かれており、密かにこの宿の満足度を高めているらしい。ユッミルは肩にどっしり胸を乗せられて相変わらずの柔らかさに安心を感じつつネメッカを抱き返す。吹き抜ける暖かい風で眠っていく。この時期に寒くない風も宿の人気の一因だ。ちなみに夜はそこそこ寒いので窓は閉める様に言われるし閉めていなければ確認に来て客が寝ていれば閉めるらしい。ユッミルは浅い眠りの中、戸を叩く音を聞く。肩が柔らかいもので一度押し込まれた後に離れていく。

 ユッミルが起き上がると料理が運ばれてくる。ネメッカは正面に居る。料理は大鍋に魚や肉に野菜等である。肉は好きな時に入れろという事らしい。料理の説明中にやんわりしっかり湯に通すよう言われる。野菜はもう入れて水は張っている。火を入れるか確認があって入れていく。従業員は説明と準備を終えると早々に去る。

 「食べましょうか」

 「そうですね」

 ネメッカは当然の様に横にやってくる。

 「おいしいですよね」

 「ネメッカ様は口…」

 「いっそカエでも良いので様はやめてくれませんか?」

 「ネメッカ様、隣に可愛らしい女性がいるのはそれはそれで良いのですが食べにくく無いですか?」

 「そんなに急いで食べる必要は無いでしょ」

 「それはそうですが」

 「というかユッミルはどうして私の体を好き勝手しないのですか。胸が千切れたら困りますが私は額縁に飾られた絵では無いです」

 「ネメッカ様は甘いですね。おいしい料理も永遠ではありません。ある程度食べてからにしましょう」

 「丸め込まれた気もしますが私も最初は料理を楽しみます」

 ユッミルはネメッカが後から寄って来ても手は止まらずネメッカにいらないかを確認して食べ切っていく。

 「結局、私の体と食事を同時に味わってはくれませんね」

 「この料理は両手が塞がりますからね。けどネメッカ様、頑張ってくっ付いてきてくれた感触は味わいましたよ」

 「そうですね、そんな気もしてきましたし良しとします」

 ユッミルとネメッカは少し酒を飲んでいく。しばらくして鍋が片づけられまたもや果物が供給される。ユッミルがまたかと言いかけると袖の下から容器を持ってきて白い液体が注がれる。

 「こちらをつけて食べるとさらにおいしいですので是非どうぞ。その甘い牛乳だけを食べるのは体に良くないのでご遠慮下さいね」

 そう言って従業員は去っていく。ユッミルはその頃に酔いが回る。ネメッカは半ば諦めてユッミルに寄っていくがユッミルは片手で果物を食べながらネメッカを胸に肩に腰にと場所を変えながら抱き寄せる。ネメッカの口にも果物を運ぶ。

 「自分で食べますから」

 ネメッカも距離を詰めてユッミルの腰を抱き寄せて顔同士を近づける。その後はネメッカがユッミルの口の甘乳を舐めとってユッミルはネメッカの誘導で突っ込んだ服の中でネメッカの体を触っていく。

 「また来ますのでお気になさらず。ですが就寝時間前には一度中断頂ければ幸いでございます」

 「少しお待ち下さい。大丈夫ですから」

 ユッミルはネメッカを立たせて抱き寄せる。ネメッカの上の服はユッミルが脱がせてしまったので幻影をつけてユッミルが手でも隠す。従業員は窓を閉めて料理を片づけると去っていく。

 「ネメッカ様、寝ますか。起きて服を着ないなら胸を一晩中揉みますよ」

 「良いですよ」

 「お…」

 「いえ、良くないですね。はあ、せっかくユッミルが脱がせてくれたのに。下は脱がせてくれませんでしたし無邪気に押し倒して潜ってくれれば良かったのに」

 「したくはありますが旅先でする事では無いでしょう」

 「そうですね。まずは風呂で酔いを醒ましましょう。お互い、寝ない様にユッミルは私の胸を揉むんですよ。揉まないと死にますからね。イーサはいないんですから」

 「そうですね」

 二人は水に溺れる事なく風呂を終える。

 「ユッミル、普段からそれでも良いんですよ。むしろ今は何も無いのにやりすぎです」

 「申し訳ない」

 「いえ、やりすぎでは無いのでした。普段がやらなすぎです」

 「さて、寝ますけど今日はしませんよね?」

 「ユッミルが望むならそれでも構いませんがそうでないなら服を着て欲しいです」

 ユッミル達は服を着る。二人は早速一枚の縦長の大きな布に袖等の切れ込みが入ったこの地区の衣装を着ていく。

 「この衣装は色々手を突っ込めますし捲り上げも可能ですから楽しみにしてて下さい」

 「ネメッカ様の胸を千切ってしまうかもしれませんね」

 「止めますから気にしないで下さい」

 ネメッカはユッミルを連れ出し事前に調べたらしく円滑に少し小高い所に連れていく。そこには他にも似た様な服装の恋人や夫婦がいる。そして、彼らは手を繋いだり、腕を組んだりしながらも熱心に砂漠の方を見ている。ただ、砂漠はかなり暗い。

 「ここは願いが叶う砂塵が舞うと言う場所ですよ」

 「えっと」

 ユッミルがよく見ると砂漠は凸凹で穴も多い。

 「この砂漠には少し光る砂が混じっててそれが舞うのを見ながら願うと叶って幸せになれるそうです」

 「付き合いますよ」

 「願いはしっかりして下さいね。私との遊びは言えばいいだけですから願ってはいけませんよ」

 「分かりました」

 しばらく身を寄せ合って待つが砂は舞い上がらない。

 「まあ明日以降もありますしもうちょっと待って駄目なら寒いですし帰りましょう。明日もありますし」

 しばらくして二人は宿に帰る。ネメッカが明日が早いと促すのでさっさと寝る。朝食は二通りから選ぶ形式でさっさと済ませる。それを終えると従業員の指示で少しロビーで待つ。しばらくすると従業員の案内で男女別の小さな個室に入る様に促される。そこのに着替える様に言われる。ユッミルは股が分かれた下と前開きの袖付の服を着る。

 「遅いですよ、ユッミル」

 ネメッカはユッミルに抱きつく。

 「まあ良いのですが。何をして…」

 「いつも通りですよ」

 「何ですか?凄い格好ですね。よく抱き付けますね」

 ネメッカに限らず女性は胸も下も少し細い布を巻いているだけである。

 「ユッミル、あなたもう二人も子供を産みつけて散々直に触ってもいるのに少し動じてるのかしら?」

 「明るい所じゃないからですよ」

 「触るのに明るいかは関係ないですよね?」

 「驚いただけでもう慣れましたよ」

 ユッミルはネメッカを後ろから抱き寄せる。しばらくして案内役の従業員が声を掛けて砂漠の方に向かう。そこには浅い長方形の穴が8つほどある。この穴にはかなり柔らかい砂が敷かれており、寝るだけでもかなり気持ちが良いがここで寝ながら体をほぐされるとかなり健康らしい。

 「ユッミルは私の体を触りたいですよね?…ですが従業員に頼むと追加料金ですよ」

 「分かりましたよ」

 「好きに触って良いですからね」

 「二人きりではないので遠慮します」

 ユッミルはネメッカを揉んでいく。ネメッカの凝りが多そうな所は強めに行く。

 「まあ疲れは取れましたけどもっと深く」

 ユッミルがふと目をやるとネメッカの体の跡が砂に残っている。ユッミルは少し踏んで分かりにくくすると自分が寝る。

 「お願いします」

 ネメッカはユッミルの背中に体を預ける。

 「ネメッカ、怠慢だぞ」

 「ええ、良いじゃないですか」

 ネメッカは胸から膝までしっかりユッミルに体を預ける。

 「他はしてないぞ」

 「他は経験不足なんですよ」

 「経験豊富な老夫婦はこんな事しません」

 「詭弁ですね。今日のユッミルは私の体に揺さぶられて頭悪くなってますね。任せて下さい」

 「ネメッカ、沈んだらどうする?」

 「分かりました。先に足からにしますね」

 ネメッカは腰まで揉んでいく。胸は確信犯的に足にぶつけられていく。それを終えるとネメッカは前に回り込む。

 「沈むのが怖いなら私の腰を絶対に離さないで下さいね」

 「ネメッカ様、丸出しと言うか」

 「あの、ユッミル。改めて言うまでもない事ですが私達は夫婦ですし子供もいます。少し汚いかもしれませんが風呂から出る際等当たる、見えるは当たり前です。一々嫌がられても困ります。こうして顔に当たる事もあります」

 「やめて下さい」

 「嫌です。我慢して下さい」

 「ネメッカ様、お願いですから」

 揉み終える。

 「ユッミル、大丈夫ですか?暑いですからね」

 「ネメッカ様、あなたの体が平気になったら子供はもうできないかもしれませんよ」

 「嫌がるふりと言い直せばいいのですか?それにしても砂がかなりついてしまいました。払ってくれますか?」

 「小間使いですか?」

 「あなたが体を押し付けたせいですからお願いしたいのですが自分でやると布を落としそうなので」

 「分かりましたよ。こっちに来て下さい」

 ユッミルは自分を陰にしてネメッカの胸を服をずらしながら払う。

 「そうですね。一度足を洗います。時間はあるのでその後は一度休みましょうか」

 二人は休憩する。他の組も座って休むのもいれば軽く触れ合うのもいる。従業員が声を掛けて昼食を食べる。ユッミルも手足を洗って昼食にする。昼食後もしばらく全組、砂場で触れ合いや揉み解しを楽しむ。

 「では最後はここですよ。分かってますよね?布を濡らしたらあなたを裏切ってしまいますし」

 「分かりましたよ。座って下さい」

 ユッミルは敢えて表情を緩めながら拭いていく。

 「こんな事でユッミルが喜ぶなら嬉しいですよ」

 「そうですね。あまりこういう機会は無いですし」

 「それはどういう?」

 「内緒ですよ」

 従業員が声を掛けて水で洗う様に言われる。ネメッカ達も軽く洗い直す。他の組の女性は布がしっかり濡れて布が体に張り付いてシルエットがはっきりしていく。薄ら透けてもいる。ユッミルは横目に見てネメッカやテーファが良い体をしている事を改めて確認する。

 「行きますよ、ユッミル」

 ユッミル達は今日は食堂で夕食を食べる。部屋に帰ると引き戸式の窓を閉める。部屋は薄暗くなる。

 「先にお風呂ですけどこういう状況なのですからお願いしますね」

 「ネメッカ様はこういう行為が誘惑として効果的だと考えすぎでは?」

 「酷いですね。触れ合いを期待してるだけですよ、私の旦那さんは普段私を仕事先に放り出して他の女と遊んでる訳ですし」

 ユッミルはネメッカの服を脱がせる。

 「ああ、今日はきちんと寝る用を持って来たんでした」

 「えっ」

 「ユッミルは自分で脱げますよね?まあやって欲しいなら着たままで居て下さい」

 ネメッカは鞄の中を探っている。

 「背中を丸めてたらメシャと変わらないね」

 ネメッカは無邪気な笑顔で異質な黒の布を持ってきて無造作に置く。

 「さあ入りますよ」

 「何ですか?あれは」

 「服ですよ、寝る用の。お話は入ってからです」

 「で、あれは?」

「イーサに勧められましたね。無性では男を喜ばせる為にああいうのを使う女もいると」

 「どう思うんです、あれ?」

 「簡単に脱がせられそうですね」

 「それ以前に隠れてません」

 「ああ、でもユッミルは見慣れてますから意味は無いでしょう」

 「そうですね。けど恥ずかしそうなネメッカ様を見てみたいですね」

 「無理ですね。ユッミルに抱いて欲しいので」

 「それは構いませんがああいうのはいりません。ああいうのは一緒に風呂に入る程の仲だと駄目ですね」

 「はあそうですか」

 風呂から上がると服には目もくれずさっさとベッドに寝る。ユッミルもベッドに向かう。

 「ユッミル、早くして待てない」

 「なんて体勢を。恥ずかしくないのですか?」

 「たまにはあっさりも良いかと思ってですね。けど一度手中に収めたらしばらく逃がしませんけどね」

 「あっさりでは無いと思いますがどうせ演技するなら遠慮がちなネメッカ様が見たいです」

 「無理ですね。私的にユッミルにそう見られたくない」

 「えっと、あの待ち方は良いんですか?」

 「もちろん、私にもああいう日はあります。ユッミルと違って我慢しますけど」

 「分かりましたよ。それにしても意外と久々ですね」

 「イーサさん、悩み事ですか?」

 「いえいえ、お二人が心配なだけですよ」

 「初日は気にしていなかったですしそろそろ寂しいとか?」

 「あの宿は色々予定を用意してるので今日は心配な行事があるんですよ」

 「でももう夜ですよ?ああ、ああいう所は夜も楽しめるんですね。羨ましい」

 「ええ、空は綺麗ですし砂漠なので殺風景という人もいますが視界は良好です」

 「ネメッカ様、さっきの話で言えばたまにはネメッカ様が襲って下さいよ。恥ずかしがりますから頑張って下さい」

 「ユッミル、その手は何ですか?」

 「恥ずかしがり屋なので」

 「あなたの方が力あるんですから」

 「そこは非力を演じます」

 「ユッミル、良いですか?」

 「大丈夫ですよ、ネメッカ」

 「ああ、そうです」

 ネメッカは一気に覆い被さる。

 「ネメッカ様。体を張るのはやめて下さい」

 「ユッミル、演技はどうしたんですか?」

 「ネメッカ、その、良いよ。好きにして。立ってるの、しんどくない?」

 「大丈夫よ、じゃあ行くわね」

 「何を?」

 「そこは心配してませんよ」

 「なら良いと思いますけど」

 「いえまあ難しい事では無い筈なので杞憂だとは思いますけどね」

 「ネメッカ様?今のは」

 「残念でしたね、ユッミル。私もあなたと同じどころかよりやらしい女なんですよ」

 「やはり話が見えませんが普段から心配し過ぎですよ。その配慮に助けられる事も多いですが」

 「今回は自覚があります。それ以外は平穏ですから」

 「そうですね。赤子がここまで増えてまた生まれそうですが特に問題は起きてません」

 「ネメッカ様は狡猾ですね」

 「私は、その、一方的に攻められた、だけですよ」

 「分かってて誘いましたよね?」

 「どうでしょう?先程の攻めてきたユッミルに何か問題でも?」

 「それはその。ネメッカ様の体ばかり見てたと言いますか」

 「私もユッミルと触れ合いたいですよ」

 「それに顔も体目当てみたいな酷い有様でしたでしょうし」

 「そうですね。やっと男らしい姿を見れました」

 「やはりですか。恥ずかしい姿を。実に見苦しい事でしょう。だから我慢してたんですよ」

 「そんな事は無いですよ。それに私もですし」

 「そこもずるいですね。この胸に目が行って」

 「少し暗いのでそこまで見えてませんよ」

 「嘘はいりません」

 「けどユッミル、私のあの時は恥ずかしくなかったのですか?」

 「あの時?」

 「シェンハ様の前でしがみついたりとか色々しましたよ。夢中でしたので気にしませんでしたが」

 「まあそれはそうですが」

 「それにもう少し攻めて口にも来てくれれば私も恥ずかしい顔になるのでしっかり見てて下さいね」

 ユッミルはネメッカの言い分に従ってネメッカと触れ合う。

 「ネメッカ様はずるいです。確かに表情は崩れてますがそれでも魅力的です」

 「それは良かったですがやはり恥ずかしいですね。ですが私もユッミルの先程の表情も含めて好きですよ。それになにより頑固なユッミルを狙い通りにした結果ですからね」

 「やはり良い様に操られていたのですね」

 「けどユッミルなんて私に頼むだけで好きな服装、させてますよ?私はそれでも良いのですがもうこの姿以上が無いのでユッミルに飽きられたら札がありません。私にも余裕なんてないですよ」

 「その、世間では評判が高い訳ですし引く手あまたですよ」

 「はあ、ユッミルでないと意味が無いのですよ」

 「ネメッカ様…」

 「そうです。私はあなたに呼び方すら強制できない弱い立場です。ユッミルは余裕そうなので崩したくもなりますよ」

 「余裕なんて無いですよ」

 「ですが私の体を好き放題してるのはユッミルの方です。少し抵抗して攻略させた方が良いとも思いましたけどそれだとユッミルは諦めるかもしれませんし。ずるいのはユッミルの方ですよ。それに今や引く手あまたなのはユッミルです。もう子供まで設けた女性が何人もいますし。私はユッミル一筋を訴えたので他の人からは相手にされないでしょう。ユッミル、飽きてしまっても側室の立場までは奪わないで下さいね」

 「ごめんなさい。そんな心配は無いですから。心配のしすぎですよ」

 「ユッミルは優しいですね。ちょっと欲深い遊びでも要求すればいいのに」

 「欲深い遊びはまたお見苦しい感じになりますから」

 「では欲深くない遊びにしましょう。私は水術師になります。欲深くないので実際には縛りませんけどね。ユッミルは私に見られたくないならそう言う姿勢ですればいい。私は動きません」

 「それなら良いです。行きますよ。ネメッカ、多少は止めないと」

 「その」

 「好き放題やってしまいますよ。動けないのですよね?」

 「やりす」

 「やめませんよ。一度終えてから苦情は受け付けます」

 「まだ大丈夫ですよ」

 「その割には声が小さい」

 「見ない」

 「もう十分ですかね」

 「まだ」

 「体の反応はそうは見えませんが」

 「それはそうですけど」

 「あれ?寝た?起きないとあなたの体をこうやって弄り回して満足して別れますよ。もう解きましたよ。ネメッカ様?いえ、ネメッカ?上手な寝息ですが。寝たならこうしましょう」

 ユッミルも寝る。朝起きるとユッミルの手はそのままの位置でネメッカの体に括られている。

 「何ですか、これは?まあネメッカ様がそれで良いなら良いですけど」

 「じゃあユッミルで遊びますね」

 ネメッカはユッミルの指先で自分の体を触らせる。

 「朝食が食べたいですが良いですよ」

 「けどユッミル、可愛らしい顔ですね。ユッミル、私に弱点を教えたら駄目ですよ」

 「ネメッカ様は意地悪です」

 「そう、要求はそれです。様を付けずに私に愛を囁けば解放します」

 「ネメッカ様以外との暮らしは考えていませんがそれでは駄目なのですか?」

 「ユッミルは聞き分けが、ひゃっ、悪いですね」

 「自分でやってやめて下さい」

 「ユッミル、私も所詮は些末な女です。ユッミルは勝手に下に行こうとしますがいい加げえんにしちぇ下さひ」

 「とりあえず僕の手を使うのはやめて下さい。話ができません」

 「指図ですか?やはり本当は自分の方が優位なのを知ってますよね?」

 「ネメッカ、こんなやらしい男ですが末永く」

 「ユッミル」

 「えっ。お前みたいな下劣な女がこんな恵まれた男と結婚まで…みたいな言葉が良いのですか?」

 「分かりました、対等でお願いします」

 「ネメッカ、僕からは離れないから末永くよろしくね」

 ネメッカは手を握る様に押さえながら黙って紐をゆっくり順に解いていく。二人は朝食に向かう。

 「今日の予定は?」

 「昼間は何もありませんが。夕方遅くから宴会の間で色々見る予定になっていますよ。夕食を食べながらですから少し長いですけどね」

 朝食を終えると二人は今度は服を着て少し会話を交えながら触れ合う。昼食から戻ると寝転がりながら子供の事を中心にゆっくり会話を楽しむ。夕方遅く宴会場に向かうと五組程の家族がいる。二組は一人子供を連れている。ちなみにこの宿の料金体系は大人二人が標準で一人になってもそこまで額は下がらない。そして、子供は大人一人当たり一人までは格安だがそれより多い子供は大人より少し安いとはいえ十分な追加料金となる。子供が五人か大人が三人になると二部屋目の扱いで額が倍近くになるとも書いてあり、要するにたくさんの子供では来るなという事らしい。ユッミルは宴会場に向かう受付でそれを見てネメッカに三人目が生まれる可能性が高い来年以降にここは無いと感じた。そもそもこの宿のサービス内容からして基本は子連れ向けでは無い。次の旅行は子供かテーファ達を連れて行かないとシウ達の理解は得られないとの考えもユッミルに過っていた。

 料理は先に用意されていて演劇等の演目の順番等の説明を従業員がしながら各人は料理を自分の机に置いていく。演目中も料理を取りに行くのは自由だが暗いのでこぼしやすいものは控えて欲しいし言えば従業員が代行してくれるらしい。ユッミルから言わせれば演目は平凡だったが料理の質が高いと感じた。演劇の後は宿側の挨拶の後、大道芸が披露されていく。大道芸にありがちな観客参加は形式上問われたが従業員がこなしていく。この後は少し大掛かりな準備をして何かと思えばこの街の観光地を小型模型で案内していく。大掛かりと言うよりは模型を壊さない為に慎重に運んでいた様だ。最後は夜空を会場に投影していくものでユッミルは感心や複雑な感情を覚える。

 「あれはやはり光ですか」

 「ええ、優秀ですね」

 「欲しい人材ですね」

 「いえ、それは間違いですよ」

 「そうなんですか?」

 「この術は魔石ありきです。あなた、人間がこの全てを一度で意識して動かせると思います?」

 「ですから凄いですよね?」

 「ええ、私達にも無理ですがあの人にも無理です。あれは複数の魔石に織り込んでは合成した結果です。凄くはありますが実戦向きでは無いですよ。あの小生意気なチェーハさんは悔しいですが私以上の実力者ですがあの人は実戦としてはリュッサ並でしょう」

 「そうか、そうですよね。魔石はありますね。無性でも管理して良いのですか?術師協会から許可を取れば可能です。収入源の一つですね、協会の」

 ユッミルは演目後も別に料理が引き上げられる事は無いので子連れの一組が早々に引き揚げた以外はユッミル達も含めて結構食べていく。ユッミルは部屋に戻るとさっさと眠ってしまう。ネメッカもしばらくユッミルを眺めていたが抱き付いて眠っていく。翌朝は従業員の扉を叩く音で目覚める。ゆっくり朝食を食べるのであれば少々急ぐように言われた。起きて着替えるとそのまま朝食に向かう。

 「今日はどうするのですか?」

 「はい、昨日案内にあった街の観光ですね。宿から少し遠いので宿側が馬車を用意します。私達だけでは無いので時間がある程度決まってますので起こしに来たという事ですね」

 「そうですか。ですがまあ大丈夫そうですね」

 ユッミルは朝食を終えると従業員に声を掛けられ馬車に案内される。と言っても宿の建物の横手の探せばすぐ見つかる場所だったが。そこには二台の馬車がある。一台の馬車は既に人がいるらしくもう一台の馬車に乗ろうとする。ただ、こちらにも恋人か夫婦はいる。

 「ユッミル、どうしたのですか?」

 「いえ、先客がいますから静かに願います」

 「うるさいぞ、さっさと乗れ」

 「えっ、すいません」

 「あなた、お願いですからそう言う言葉は控えて下さい。すいません、楽しい旅の最中ですから会話位は気にしませんよ」

 「すまないな、遠慮なんてしてもたもたされたくないものでな」

 「あなた、そもそも出発まで十分時間はあるでしょう。それにあなたみたいなのに対して遠慮するのは仕方ないでしょ」

 「いえ、もう分かりましたから」

 「ユッミル、私が心配なら膝に乗っても良いのですよ?」

 「そこまではしてません」

 「それであなた達は恋人?」

 「そうですね」

 「ユッミル、二人の子持ちでしょ、まさかこの人を狙ってるんですか?」

 「ほう」

 「違いますよ」

 「違うんですか?」

 「えっ」

 「あなたがあまり無骨ならそうなるかもしれませんね」

 「悪かったと言ってるだろ」

 「あなた達も恋人?」

 「いえ、夫婦ですが子供はいませんよ」

 「ですよね。うちも全員生まれたばかりですから連れては来れませんね。でもまあ成長したらしたで手が掛かりそうですからこういう所には子供出来ちゃうと簡単には来れ無さそうですね」

 「あら?まだまだ産みそうな感じですか?」

 「そこは深く聞かないで下さい。私次第では無いですし」

 「ユッミル、嘘は駄目ですよ、嘘は」

 「それでは出発します」

 馬車は動き始める。

「嘘ではないでしょう。あなたが嫌と言えば作れませんし」

 「私もあなたの意思を重視しますよ」

 「あー、嫁さん、好きになっちまったのか」

 「えっ、こっちもですよ」

 「ああ、こっちは俺の方が先にやられちまったんだよ。ずるいよなー」

 「そうなんです。いつも好きにすればいいって言ってくるんです」

 「よく分かりませんが悪い所があるなら教えて下さい」

 「でもまあ君の所のは嘘でも下手に出るから良いだろ。こっちは一見大人しいが言う事は遠慮なく全て言う」

 「けど言ってくれるだけ良いですよ。探すのに苦労します」

 「その、それはそうですけど自分でも分かってない事も多いですし」

 「ユッミル、贅沢な悩みはありますが心配は無用ですよ」

 ネメッカはユッミルを抱き寄せる。

 「しっかし、仲良さそうで良いよな。こっちには無いし誘っても断られる事のが多い」

 「あなたは準備が無いのですよ」

 「えっと、その、贅沢なのですけどそれはそれで良いと思いますね。この人は甘いので断らないのです。それはそれでありがたいのですがその準備が良いのか悪いのか分からなくなるので」

 「旦那さんよ、それはそうだがあまり基準が厳しくても良いのか悪いのか分からないと思わないか?」

 「それはそうですね。でも」

 「いや、厳しい」

 「そうね、けどこの旅は良かったしそこまで厳しくなくなると思うからその話はやめなさい」

 「良かったですね」

 「ああ」

 「それはそうと旅はどうなんです?」

 「ええ、順調ですよ。今日もですが明日も楽しみですね」

 「そう言えば明日は何をするんですか?」

 「明日になれば分かりますよ。明日は他の組とではないのでゆっくり楽しみましょう」

 ユッミル達はまず美術館に入る。そこは土や砂のオブジェと絵が飾られている。印象としてはオブジェが強いが質が高く点数も多いのは絵の方であり、どちらが主なのか分かりにくい感じである。

 「良い絵ですけど自然が多いですね。人はあまり描かれませんね」

 「人ですか?あなたは私を綺麗と言ってくれますし世間にもそういう評価はありますが私を絵にしようなんて人は居ないでしょうね。その程度ですよ。自然の方が美しいです」

 「ですが自然は遠いですし大きすぎます。ネメッカ様の方が良いです」

 「そうですか。ありがとう、こういう絵を見た後の感想としては嬉しいですね」

 ネメッカはユッミルを胸に抱き込む。

 昼食は熱い麺類の店だったが氷の魔石で涼しい店内であり、満足度は高い。昼からは散策しながら土産購入と言う趣旨の時間であり、従業員が少なくとも店の外には待機するという事らしい。荷物も頼めば運んでくれて帰りの馬車で運ぶのは最早前提という事らしい。それまでの保管も宿側がしてくれるそうだ。もちろん、宿に持ち帰る事も可能である。

 「お土産ですか。私は手持ちは一万ちょっとしかないですよ。イーサさんが食事は全て込みで行事も予約制と言うので」

 「大丈夫ですよ。イーサにお土産予算、4万もらってますから」

 「4万?随分多額ですね」

 「あなた、何人抱えてるのですか?それに各団にも団員にもあるんですよ」

 「そうですね。夫婦の財布は妻が握ってる。あの人の目は節穴ですよ」

 「はあ?私、ユッミルとの夜なら五千で買います。そもそもユッミルが言えば財布位譲ります。その言い分は不本意です」

 「分かりましたから。まあ今回も宿の手配はネメッカ様がしてくれましたし感謝してます」

 「分かればいいのです」

 手分けしてお土産を買い込んでいく。宿側は慌てて二人目の従業員を付ける。帰りも同じ夫婦と同席する。

 「あなた達は一体?」

 「えっと、その」

 ネメッカはいつもは髪を下ろしている。今回は結んでいる。服装も全く違う。

 「ああ、ユッミルは一度も私の名前を言ってませんでしたね」

 「名前を聞けば分かる?」

 「いえいえ、そういう人もいる程度ですね。それにしてもユッミルは私の名前をあんなに長い時間呼ばないなんて私だけ連呼して一方的で恥ずかしい」

 「あの、一応目立ちたくないだけで二人の時はちゃんと呼んでますよ」

 「気遣い?そうでしたけどそれは自分の為でしょ」

 「それもあります。癖ですね」

 「そうですか、聞かない事にしますね」

 「ええ、でもそこまで気にしないで下さいね。ユッミルと言う名前でも何百人に一人位なら知ってるかもしれないので」

 「ユッミルの方が優秀なのにね」

 「私は新参ですから。ただ、この話題はもう勘弁して下さい」

 

 

 

 

読了ありがとうございました。次は基本的に8月末になります。その次は10月初旬かと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ