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至上の無名光術師の苦難  作者: 八指犬
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14章 光の新入りの予兆

余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。

また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。

 1節 光の新入り

 

 ユッミルが魚を持って家に帰るとリュッサはいよいよ寝込んでいた。とりあえず魚を水槽に入れ、少し躊躇ったもののいずれにしてもフーニャは送らないといけないので三匹の魚とフーニャを無性の家に送り届けて手早く家に戻ってくる。

 「申し訳ないです。釣りに夢中になってしまって」

 「いえ、ネメッカ様も時折見に来てくれましたし。ただ、やはりと言いますか向こうの二人も近い様で向こうも大変なのでそっちも」

 「いえ、シウさんもそろそろだと思いますし心配しないで下さい。エコさんもですし。それなのにミューレさんは」

 「私も休むよ。ユッミルの釣り、もっと長引くと思ってたし」

 「メシャ、それは言わないでくれ」

 夕方、ユッミルはコーリャがいないならレヒーハを呼び戻す事にした。レヒーハを呼び戻すとエコは帰っている。

 「あの、この状況で言いにくいのですが三日後にコーリャさんの家の庭での焼肉に誘われてしまいまして」

 「はあ、流石に行かないのは水の泡だな」

 しばらくすると来客がある。ユッミルはすっかり忘れていたがターヒョである。

 「ユッミルさん、今日からよろしく」

 ターヒョはユッミルに抱き付いていく。

 「夕食にしましょうか。メシャ、久々だけど手伝ってくれるか?」

 「もちろん」

 ターヒョは手を放して適当に座る。

 「それにしてもこの家は呪われてるのかしら?風邪の人間がまだ増えそうだけど」

 「違うわよ。三人共出産が近いからよ」

 「えっ。ああ、そう言えば式から大分…少し早くないです?」

 「そうね。式の前からだからね。私達は」

 「そうなんですか。大丈夫ですか、それ?」

 「いえいえ、式では各団が儀礼的に派遣してきましたからその前にというのは重要性の高い人なのですよ」

 「ふーん、分かりにくいですけど分かった気もします」

 「良かったです」

 「いえ、元々批判する気は無いですよ。ただ、それを私に言うのですね」

 「ええ、言わなくてもそうなりますから言った方がいいでしょう」

 ユッミル達は夕食を食べる。ターヒョは隣だ。

 「お風呂よね?」

 「はい、ですが普段湯沸しをしてくれる人が妊婦なので量が減ります。追い炊きも望ましくないので二人ずつさっさと入ります。ただ、ターヒョさんはお客様なので最後に継ぎ足します。シウさん、普通に熱湯をお願いできますか?」

 「私は有り余ってるのだけど」

 「どうでしょうね。けどまあお願いします。桶が無くなると困るので」

 「そこまではしないわよ。水はなくなるかもしれないけど」

 シウはそう言いつつも湯を沸かしている。ユッミルはエコを介抱気味に風呂に入れる。体も洗っていく。

 ユッミルはメシャーナ母子が入る前に少しお湯を継ぎ足し二人が上がった状況で残りを継ぎ足す。

 「暖かそうね。あなたも良いわよ。」

 「遠慮します。すぐ寝ますから。忙しいのですよ」

 「えっ。ちょっと」

 ユッミルはメシャーナを抱いて寝る。しばらくするとターヒョが反対側にやってくる。当然、服を着てはいない。彼女の役割を考えればおかしくはない。ユッミルの背中にくっつく。ユッミルは無視する。しばらく経つ。

 「ユッミル様、」

 ターヒョは体を押し当てながら揺さぶる。ユッミルはメシャーナ母子を起こさないよう遮音して手も密かに緩める。

 翌朝、ユッミルはさっさと光の塔に向かう。やはりイーサも昼間も休みながら仕事量を抑える形を取っている。ユッミルはフェノにしばらく家にいる様にいってすぐ行かせる。

 「ユッミル様、私がこんな状況で言うのも微妙な気はしますが実は今年は街の学校への術実演にあなたも呼ばれています。ユッミル様は塔をネメッカ様に任せてそれ以外に専念するつもりでしょうけどこの点はネメッカ様と一定程度話して下さい。時間はまだありますが術師協会の正式行事ですし光の団の術師獲得にも大いに繋がります。抜かりなくお願いします」

 「そうですか。考えておきます」

 「各団別行動で四か所回りますから時間は長いです。私も参加しますから心配しすぎる事も無いですが」

 ユッミルはネメッカと執務室で話した後、塔を出て無性の家へ向かう。フーニャの偽装登校を済ませてから家に入る。

 「おはよう」

 「朝食は?」

 「済ませたけど用意があるならもらうよ」

 三人は卓に着く。

 「明後日はいよいよだな」

 「そうですね。ですが困りましたね」

 「リュッサさんですか」

 「ですから明日はレヒーハさんも向こうに来てもらいます」

 「フーニャさん、留守番はお任せしますよ。コーリャさんが来たら私達は出かけている事にして下さい。実際に明日は夜まで帰りません」

 「はあ、良いだろう」

 ユッミルはフーニャの要望でしばらく触れ合ってから早目の昼食後にレヒーハを連れて家に戻る。家に戻ると珍しくオーネも起きてリュッサ達の世話をしている。エコもシウも昼間だがベッドに横になっている。

 「ユッミル、来てくれたのね」

 「シウさんだけは元気ですね」

 「ええ、これでもいつもよりは少ししんどいけどね。エコも大事は取ってるけど私達に関しては数日で出産は無いわね。心置きなく五日位は出かけて良いわよ」

 「ですがリュッサさんはそろそろですよね。ただ、時期が悪い事に明後日は無性での用事なんですよね」

 「ええ、フェノさんがいるから倒れてもベッドに運ぶもできるし心配は無いわ。本当はレヒーハさんがいたら回復もできて良いのだけど」

 「いえ、私では大した回復はできません」

 「けど私ではその大した事ない回復すらできない。だから無理のない範囲でいるうちに回復してあげて欲しいわ」

 「分かりました」

 「木の術師ですか。ユッホさんは動けませんしソヨッハは側室から離脱してますし。それに頼んだらあの人が来かねない」

 「大丈夫よ。本来はね」

 「ええ」

 ユッミルはとりあえずリュッサの様子を見に寄っていく。

 「ああ、ユッミルさんですか」

 「はい、大丈夫ですか」

 「大丈夫ですよ。立つのは少し厳しいですが」

 「そうですか」

 ユッミルはその後は黙ってしばらく横に座っている。しばらくするとシャーユが寄ってくるので膝に乗せておく。シャーユはそのままユッミルの膝の上で昼寝を始める。リュッサも寝てしまったのでエコの様子を見てからオーネに状況確認の為に話しかける。

 「暇そうね」

 「何処がですか?妊婦を見守りながら子守りをしているのですよ」

 「子守りは母親に任せなさいよ。それに今は人がいるから見守るのはあなたである必要は無い」

 「ターヒョさん、見守ると言ってますが厳密には気になって仕方がないのです。決して暇そうではありません」

 「忙しくてもしないといけない事はあると思うわよ」

 「そうですね。そして、忙しくなる前に休んでおく必要もあります」

 ユッミルはシャーユと昼寝をする。昼寝にはメシャーナも加わっていた。リュッサも含めて夕食を食べる。ユッミルはシャーユの世話をしながらリュッサの様子を時折気にしている。

 「ユッミルさん、一緒に風呂でもどうですか?」

 「今日は入りませんよ」

 「えっ」

 「昨日も言ったでしょう。火の術師に負担は掛けられないし毎日沸かすのは本来面倒です。まあこれまではシウさんに甘えてましたが」

 「入りたいなら沸かしますが私は入りません。リュッサさんも間近なので入りませんしね」

 「分かったわ。協力します。では一緒に寝ますよね?」

 「あの、昼寝したので眠くないので先に寝ていて下さい」

 「えっ、ちょっと」

 ユッミルはシャーユの面倒を見つつ、リュッサやエコの様子を伺う。しばらくするとシャーユが寝たのでリュッサやエコと軽く話してシウに寝る様に促す。

 翌朝、ユッミルは光の塔に行く。

 「ネメッカ様、午後から指揮所ですよね?」

 「ユッミル、大丈夫ですよ」

 「イーサさんも少し近いんですよね?」

 「ええ、けど私やイーサはともかくそれ以外の普通の団員の妊娠に過度に配慮する事はできないわ」

 「一応、主宰の子ですよね?」

 「ええ、だから最低限の配慮はするけど差は付くわね」

 「でしたら一応、今日は昼間だけですがいますよ」

 「向こうは大丈夫なんですか?」

 「こちらは間近が二人で近いのが一人ですよね?」

 「はい、そうなりますね」

 「家の方は間近が一人で近いのが二人なんです」

 「分かりました」

 ユッミルはイーサ達を見舞う。ネメッカも流石にユッミルに甘えるのは控えている。

 「イーサさん、調子はどうですか?」

 「問題は無いのですがネメッカ様が休むように言うので横になっているだけです。最近はこの為に仕事を前倒したので少し疲れてはいますが私は大丈夫ですよ」

 「イーサさん、あなたとシウさんはかなり近い時期なんですがどちらを優先して世話すればいいと思います?」

 「ユッミル様、それは私にシウ様を優先しろと言わせたいのですか?」

 「そうですねえ。イーサさんがこういう事態の元凶を作ったんですからイーサさんの方が好きであってもシウさんの方を優先すべきですよね?」

 「私の方が好きなんですか?」

 「いえ、分かりません。ただ、居れない可能性もありますが機嫌を損ねない様に願います」

 「そんな事にはなりませんよ」

 いつの間にかいなくなっていたネメッカが戻って来てユッミルにネミークを預ける。ユッミルは部屋の隅でネミークと遊ぶ。しばらくしてネメッカが昼食を食べると言うのでネミークを連れて一緒に行く。イーサも付いてくる。すると鼻が利くのかミヨーナもやってくる。

 「ユッミルさん、膝の上は二人乗せられますよね?」

 「ミヨーナは子供になりたいの?」

 「大人に見えないならそれで良いです」

 「そっか」

 「けど今後は二人同時膝に乗せないとたくさんの子供の面倒は見れないと思う」

 「分かったよ」

 ネメッカは昼食を終えると指揮所に出かける。ユッミルはミヨーナとネミークと遊びつつ、イーサ達の様子を見守っている。ユッミルにはここの二人よりリュッサが先だと見えた。夕方、ミヨーナを見送って光の団の女性数人とルーエとイーサとネミークと夕食を食べる。

 「ルーエさん、ルーエさん位ネメッカ様を待てばいいのに」

 「私はネメッカ様の夫じゃない。君の役目だろう」

 「友達や部下との食事も悪くは無いだろう」

 「まあネメッカ様が誘えば軽くは食べる」

 「私はそういう機会は無いんですよね。光の塔に居れて光が指揮所担当なら僕が行きますから。かと言って午後だけ塔に居れる状況はほぼ無い」

 「そういう事か。だがネメッカ様は君以外では不満だろう。それにイーサと話せば気が紛れる。イーサの話は面倒だからな。嫌でも他の事からは気が逸れる」

 「いや、ネメッカ様はイーサさんと仲良しですよ」

 「分かってる。だが足りないし気を紛らわすのは重要だ」

 「そうですね」

 ユッミルは夕食を終えると無性の家に向かう。コーリャはいない。

 「コーリャはいないんですね」

 「喜べないぞ。焼肉の準備に余念が無い様だからな」

 「そうですか。これは魚だけでは足りませんね」

 「どうする気だ?」

 「レヒーハさん、明日は早朝に起こしてくれますか?」

 ユッミルは特に何も考えず三人で風呂に入って寝る。早朝、帰宅してフェノを連れ出して狩りに向かう。火の塔に狩った獣を持ち込んで煮込んで臭みを消す。軽く煮込み終えるとフェノと姿を消して運び込む。家からも少し肉を持ち込む。ちなみに木の団から香辛料を譲ってもらっており、中々のタレも用意してある。

 ユッミルはレヒーハとフーニャに案内されてコーリャの家に向かう。

 「初めましてニーシャの父のルカロです」

 「コーリャの母のスーファです。娘がいつも世話になっています」

 「こちらこそ」

 「それでその袋は食材ですか?でしたら向こうに夫がいますから」

 スーファとレヒーハが話し始めるとコーリャの父の方へ食材を持ち込む。

 「これはどちらで?」

 「冒険者の知り合いに譲ってもらいました」

 「そうですか、楽しみですね」

 父親に食材を引き渡しつつも包丁を借りてユッミルが捌いていく。

 「何それ?」

 「肉だよ」

 「それは分かるよ」

 「少し荒っぽい獣の肉だよ」

 「そっか、おいしいの?」

 「どうだろう。あっさりしてるから付け合わせ次第かな」

 「ん?」

 「あっ。ルカロおじさん、こんにちは」

 「姉さん、手伝いは終わったの?」

 「まだだけどちょっと暇になってきたの」

 「妹さん、可愛らしい子だね。名前は?」

 「私の名前?私はレッカ」

 「レッカちゃんか。よろしくね」

 「お父さん。まだ?」

 「分かったから。今、行く」

 ユッミルはフーニャを抱き上げる。

 「用事ですよね?」

 「ああ、随分。楽しそうではないか」

 「そうですね」

 「妹の方が可愛いな」

 「ええ、将来有望ですね」

 「まさか」

 「何を思ってるかは知りませんが残念だとは思いますね。その彼女が将来大人になった時に私は初老ですから彼女は口説けない。それより何故、年代の近いあちらと遊ばないのです?」

 「近くない。だがそれ以前に下の子は忙しいし友達も多い」

 「同じ学校なのですか?」

 「いや姉曰くだ」

 「そういう事ですか」

 ユッミル達は焼肉と焼き魚を食べていく。

 「お招き頂きありがとうございます」

 「いえ、こちらこそこの量の肉を。それに魚も」

 「ええ、冒険者の知り合いがいるのでね」

 「是非、会って話を聞きたいものですね」

 「最近は少々景気が悪いみたいですが」

 「そうですか。こっちも特段良い訳では無いですし頑張らないといけませんね」

 「そうですね」

 ユッミルは焼肉を終えるとさっさとレヒーハと一緒に帰宅する。家ではリュッサの息が荒くなっている。

 「帰りました」

 「お帰り、ユッミル」

 「珍しく、少し大人しいですね」

 「ええ、私はまだ時折違和感を感じる程度だけどやっぱり近いのは近いから」

 よく見るとエコも少ししんどそうだ。

 「シウさんも寝てていいんですよ?」

 「眠りたい訳では無いのよ。好きにするから気にしないで」

 ユッミルはエコにそっと近づく。寝ていたのでリュッサの方に行く。迷って辺りをゆっくり見回しつつリュッサの様子を伺っている。

 「ユッミルさ」

 ユッミルはリュッサに近づく。

 「どうしました?」

 リュッサはユッミルの手を取って腹の辺りに持っていって手を緩める。ユッミルは様子を見ながら腹をさする。ついでに胎児の魔力の流れを探ってみる。

 「今日は居れなくて」

 「気にしてない」

 「後は居ますから心配しないで下さい」

 「ありがとう」

 ユッミルは手を握った後、肩を一度抱いてその後は静かに横に座る。しばらくするとメシャーナとシャーユが隣に座る。メシャーナはシャーユをユッミルに預けるとリュッサに近づく。

 「しんどいよね?でも後ちょっとだし私もいるから」

 「ありがとう」

 「シャーユ、ごめんね。君の時はママがすんなり産んだからあまり傍にいられなくて。あの安定感はなんだろうね」

 「ふーん、私って子供じゃなくて安定したママなんだ。なら次を産んでも大丈夫だね」

 「ちゃんとたくさんいる男から選んだ相手との子供をだけどね」

 「でも一人目はユッミルの子だし」

 「それは悪い事をしたね」

 「だから私がやった事。簡単には決めてない」

 「けど心変わりしても気にしない。僕にはネメッカ様がいるしね。リュッサも慣れてきて居てくれると安らぐようになってきたし大丈夫」

 「分かってる。私も居させたくさせてあげるから」

 「いやいや、メシャは居てくれると嬉しいけどメシャは他にメシャだけを見てくれる男と居た方が良い。障害になるならシャーユはこっちで引き取っても構わない」

 「駄目だよ。シャーユは私ともユッミルとも離れさせない」

 「困ったね」

 「困らない。一緒に居ればいいだけ。ユッミルが私を嫌いなら別だけど」

 「今はそれで良いけど気が変わったら遠慮はいらないとだけは覚えておいてね」

 「もちろん」

 ユッミルはシャーユを抱きながら眠りそうになる。

 「シャーユ、大丈夫?メシャ、眠いからシャーユは寝かせてきてくれないか?」

 「けど私は眠くないしユッミルがシャーユと寝てくれば?私が寝る前には起こすから」

 ユッミルはシャーユを抱いて寝る。

 メシャーナはシャーユを抱き上げながらユッミルを起こす。

 「ああ、メシャか。随分遅くまで。いつもありがとう」

 ユッミルはリュッサの方へ行く。しばらくするとリュッサがいつの間にか起きて苦しみ始める。

 「メシャは起こせないしエコも駄目。ターヒョは役に立つか分からない」

 ユッミルはリュッサの様子を続けてみるが表情は苦しそうだ。しばらくしてユッミルはその場を離れる。レヒーハを起こしてオーネも起こす。レヒーハは眠そうだがオーネは少し元気である。

 「オーネ、リュッサがそろそろなんだ」

 「そうですか。何をすれば良いでしょう?」

 「無いとは思うけど暴れてベッドから落ちない様に見てて。落ちそうになったらゆっくり手で支えながら近くで支えてあげて」

 ユッミルはリュッサの顔の真横に陣取って声を掛けていく。目が冴えてきたレヒーハも脇から様子を見て色々と準備していく。しばらくしてリュッサの表情はより険しくなるが動きは緩くなる。

 「ユッミルさん、そろそろですよ」

 「リュッサ、頑張れ」

 「ユッミルさん、代わりますよ」

 「リュッサ、もう少しだよ」

 「代わって下さい」

 「ちょっと待ってね」

 「待ちません。もうして下さい。私はリュッサさんに恨まれたくありません」

 「恨むって?」

 「その場にいる癖に自分の子を真っ先に抱かないのはどういう事ですか?」

 「分かりましたよ」

 ユッミルはオーネとリュッサから出てくる赤子を注視している。しばらくして出切ったのでユッミルが抱える。レヒーハが産着をオーネに渡してユッミルと着せる。生まれたのは男の子の様だ。しばらくしてリュッサに赤子を預ける。騒がしかったからかターヒョが起きてくる。

 「女?」

 「男の子ですよ」

 「私との子はどっちでしょうね」

 「気が早すぎますよ」

 シウも起きてくる。

 「生まれたのね。起きれなくて悪かったわね」

 「無事に生まれたので問題は無いですよ」

 「それは良かったわ」

 「ええ、ですから食事にしたいです。その後は寝ます。リュッサさんと寝ますから赤子をお願いします。メシャが起きてきたら任せても良いですから」

 「何?私よりメシャーナちゃんの方が上って?」

 「まあ母親歴は長いですしシャーちゃんといるのは何かと良さそうですし」

 「あなた、シャーユちゃんは万能薬ではないのよ?」

 「そういう事でお願いします」

 リュッサも軽いながら食事をしてユッミルと眠る。ユッミルが寝てる間にフェノが報告に行ったのでネメッカが来ている。

 「可愛いですけどユッミルの行動を見てると女の子が良かったですね。私達としては早くユッミルの娘が欲しいですね」

 「ネメッカ様、私にはもう娘がいるんですが」

 「いえ、私が言ってるのは私達三人から娘を産みたいという事なんです」

 「三人?」

 「三人目はもちろんテーファさんです。イーサを仲間に入れても良いと言いたいですけどユッミルからすればイーサは別枠でしょうしね」

 「別枠って何ですか。そもそもネメッカ様がテーファさんと三人で過ごそうとしてるだけでしょう」

 「枠ってのは団と関係の無いユッミルが好きな三人」

 「リュッサさんを勝手に混ぜないで下さい」

 「ああ、リュッサは最初はイーサの斡旋でしたね。けど希望は取りましたよ?」

 「分かりましたよ。けどネミークを置いてくるのはどうなんですか?」

 ネメッカは赤子を抱いている。

 「ネミークは世話の分担が決まっててね」

 「ですけど分担の何人かは一時離脱してますよね?」

 「それはそうなのだけど足りなくはないのよね」

 「その何人かは今はどうなんですか?」

 「ええ、もうすぐだと思うわ」

 「ならここに居て良いんですか?」

 「それはあなたでしょ?」

 「それはそうですが」

 「今日の昼間は無いと思うから夕方に行けば良いと思う。リュッサさんが動けそうなら私も行く。ただ、明日は午後の指揮所だから明日も駄目ならフェノさんに運んでもらおうと思う。」

 「分かりました。でしたら用事を済ませてきます」

 ユッミルは事務所に向かう。事務所の内装が整っている事を確認すると用意していた看板を掲げて帰っていく。帰ると昼食の時間で赤子は母親の元に戻っている。リュッサの体調は悪くはなさそうだ。

 夕方、結局、フェノがリュッサを背負ってネメッカが赤子を抱えて塔に戻る事にした。特に目立つ利点も無いのでユッミルが全員を隠して塔に向かう。

 「イーサ、体調はどうです?」

 「少し眠いだけですよ。私よりも他を」

 二人は静かにしている。ユッミルは胎児の魔力を探ってみる。シェヒユスの時とは風合いが違うのでシェヒユスが火でこの子達は光とユッミルは考えた。そうしているといつの間にか誰かが抱き寄せて口を重ねている。

 「ネメッカ様…じゃない。リュッサ?」

 「これでもう夫婦ですよね?お返し欲しいな」

 ユッミルは返礼をする。

 「どうしたんですか?」

 「子供までできたんだから夫婦でしょ?」

 「そうですね」

 「ユッミル様、私の最初の態度が悪かったのは認めますけどもう少し優しくして下さい」

 「急に言われても。けど頑張ります」

 ユッミルはイーサとリュッサを両肩に抱えて食堂に向かう。赤子の面倒はネメッカが見ている。いつの間にかネミークも連れて来ている。リュッサは楽しそうに食事を多く食べている。イーサはしんどそうだが食事の量は少なくなく多くも見える。その後、夜遅くまでユッミルは三人を見ているが様子に変化は無い。

 翌日、ユッミルは昼前に起こされる。珍しくミューレが来ている。

 「二人だけ。あの人は?」

 「出産が近いので。それでも重要なら相談しますけどね」

 「いえいえ、今日はユッミル様に連絡したい事があるだけですから。まず、エッヒネ様は元気ですよ」

 「知ってます。会ったばかりですから」

 「エコとシウの様子を見てきました。もうしばらくですね。後、ユッミル様、マッラさんもちゃんと子供を産みそうですから忘れないで下さいね」

 「そうですね。ですがミューレさんもイーサさんも同時に複数等という事をするからこうなるんですよ」

 「私じゃないですよ。シウさんが強引に割って入ったんです。私は止めなかっただけです」

 「都合悪くは無かったと」

 「そうですね」

 「同罪じゃないですか」

 「そうとも言えますね」

 「まあ良いです」

 「最後に私には子供がいませんからシェヒユス様やエッヒネ様と遊ぶついでに私のお相手をして頂ければありがたいです」

 「ネメッカ様、子供がまた増えますけど良いんですか?」

 「それは火が面倒を見るでしょうから構いませんけどユッミルが望まないのに必要はありませんよ。光以外は三人ですから誰かを脱落させるしかないでしょうね。あくまで形式的なものですけどね。ただ、余程の理由が無い限り、あの式の中身を覆すのは控えて欲しいですけどね」

 「今日の所は引き上げますね。ですが火への来訪は歓迎ですよ」

 昼過ぎ、三人の様子に変化は無く、ネメッカは指揮所に向かう。早目に風呂に入って仮眠する事にする。ネミークと赤子も連れて主宰部屋に入る。

 「フェノさん、少しイーサさん達の事を見てて下さい」

 フェノは立ち去る。

 「私も入る」

 「ミヨーナはこの後帰るでしょ。風邪ひくよ」

 「入るよ」

 ミヨーナはさっさと服を脱いでいく。リュッサはユッミルを抱き寄せて風呂に入れる。

 「リュッサさん、赤ちゃんの事を忘れないで下さい」

 赤子とネミークは既にユッミルが必死に抱えている。

 「そうね。」

 リュッサは赤子を抱きながらユッミルの膝の間に座る。リュッサは赤子を撫でる様に頼む。

 「ユッミル、その子の体、風邪を引かないようきっちり拭いてあげて」

 ユッミルはミヨーナの体を拭いていく。リュッサと赤子の体をきっちり拭いていく。

 「ユッミルさん、私の体で今晩遊びませんか?」

 「ミヨーナ、体はこんな短期間で育たない。今日は帰ってね」

 「知ってましたよ。ではまた明日」

 ミヨーナはさっさと服を着ると帰っていく。

 リュッサとユッミルはネミークと遊びながら赤子の世話をする。しばらくして赤子はリュッサと女性陣に任せてネミークを連れて塔を見回る。ネメッカが帰ってくるとリュッサや女性陣も戻って夕食を食べる。夕食を終えるとユッミルが風呂に入り終えた事を聞いて不満そうにしながらも話を続ける。

 「まあ良いです。私と寝てくれますよね?」

 「それは構わないですよ」

 「じゃあネミークと部屋に来て下さい」

 ユッミルはネミークと遊ぶ。ネメッカは風呂に入りながらユッミルに話しかける。ネメッカは風呂から出ると体も拭かずにユッミルに抱きつく。ネメッカはそのまま眠っていく。ユッミルはネミークを辛うじて抱きながら一緒に眠っていく。

 翌日、ユッミルはネミークと少しだけ散歩してから朝食に向かう。

 「はあ、ネミークと散歩って私も連れてって下さい」

 「疲れてそうだったしその方が身軽ですし」

 「まあ良いです。今は忙しいですから」

 「ええ、家も気になりますからそろそろ帰りたいですがイーサさんの出産は外せません」

 「どういう事ですか?」

 「居ないと恨まれそうですし」

 「私は後から可愛がってくれれば気にしませんよ」

 「とにかくイーサさんからは目が離せません。すんなり産んでくれたリュッサさんはありがたいです」

 「何か嫌な言い方ですね」

 「いえ、自分でやってる事ですが色々抱えてますから。しかも数日止まってます。ついついそう言いたくもなりますがごめんなさい」

 「いえ、そこまで深い意味はありません」

 昼前、フェノと共に家に戻る。フェノは休ませてユッミルはエコやシウを見舞う。

 「ユッミル、私は一応寝てるだけで今晩遊ぶつもりなら可能よ」

 「流石にその腹では無理でしょう」

 「まあそれが理由なら仕方ないわね」

 「シウさんの子供はどんな子でしょうね」

 「リュッサのは男だったしそろそろ女じゃないかしら?」

 「でしたら少し見てみて良いですか?」

 「もう分かるの?」

 「まだですけど三人以上見ましたから分かるかも」

 「どう?」

 「勘ですけど男だと思います」

 「男率、高くないかしら?」

 「現状は男が3人ですからそうですね」

 「ますますシャーユちゃんが貴重になるわね」

 「当面は男女は関係ありませんよ」

 「そうは見えないのだけど」

 「後、ミーハがどうかも分かりませんし」

 「けど水は水で育てるから数には入らないわ。エコはどうなの?」

 「まだ見てませんが」

 「そうなの」

 エコも疲れてはいるが様子は悪くなってはいないのでフェノを起こして帰ろうとする。

 「ちょっと、ユッミル。帰るの?」

 「はい、塔の様子も見ないといけません」

 ターヒョが寄ってくる。

 「私、来てからそこそこ経ったけどずっと放っておかれてるのよね」

 「ですが今は忙しいのであなた以外も寝てる方以外には相手をしていないどころか寝てる方の世話を手伝ってもらってます」

 「他の子はこれまで相手されただろうし良いでしょう。ですが私は…」

 「それで言えば出会ってその日に事に至ったのはシウさんだけです。ネメッカ様もそれに近い面はありますが他の方はある程度日を置いていますから平等を主張するなら少しお待ち下さい。いずれにしても忙しいのですよ」

 ユッミルはフェノに急な用件があれば呼びに来るように言って家に残して塔に戻る。塔では女性の片方が痛みを訴えている。

「どうしたの?」

「ちょうどユッミルが出てすぐ後位に声を上げ始めたの」

ユッミルはイーサを抱きかかえて主宰部屋に運び込む。

 「ユッミル様、ありがとうございます」

 「何を言っているんですか?イーサさんが弱ってるうちに色々しようと言うだけですよ」

 「そうですか。私が弱ってる時の方が楽しいならお任せします」

 「重症ですね」

 「確かにかなりしんどいですが正気は正気ですよ。体で遊びたいならどうぞ」

 「やはり遠慮します。もうリュッサを呼んでしまったので」

 リュッサが入ってくる。

 「イーサさん、具合は?」

 「私は何も変わっていない。騒がしいからユッミル様が移動させてくれただけです。ですからユッミル様と交っても問題はありません」

 「でしたらお言葉に甘えて」

 リュッサは既に脱ぎかけている。その状況で唐突に隣室の女性の叫び声が聞こえてくる。

 「ユッミル様、行って下さい。私もゆっくり行きます」

 「そうですか」

 「あら?やりたいならしても構わないと思いますが」

 「いえ、行きます」

 

 

 

 

 2節 赤子の属性


 「どうですか?」

 「始まったみたいね」

 徐々に体も出てくる。そんな時、唐突にもう一人も苦しみ始める。

 「ユッミル、こっちが先よ。あなたは向こうをお願いできるかしら?」

 「はい」

 しばらくすると完全に出て来たのでユッミルが抱き上げる。

 「うん、元気そうね。この子は私が預かるからユッミルは向こうへ」

 またもうしばらくするともう一人も出てくる。ユッミルは抱きかかえる。共に男の子の様だ。しばらくして母親が落ち着くと母親の元に返される。しばらくするとイーサがやってくる。

「無事産まれたようですね」

 「はい、共に男の子ですが。光は現状全員男の子ですね。何かあるのでしょうか」

 「たまたまでしょう」

 「ところでユッミル様、明日はどうする予定ですか?」

 「家に戻ろうかと。ただ、あなたの事もありますから夜は分かりませんし明後日は塔に来ますよ」

 「いえ、明日はできれば木の塔に行って下さい」

 「ユッホさんですか。確かに見舞いたくはありますがあなたを無視はできないでしょう。それにいつ生まれるかも分かりませんし。どっちが先かは分からない以上イーサさんを優先するのもやむを得ないでしょう。家も近いですし」

 「私は大丈夫です。まだ明日では無いと思います。少なくとも明日ユッホ様の様子を見てから判断しても遅くはありません」

 「分かりました」

 「話はついたようですね。明日以降、この部屋はイーサの休憩所兼子守り部屋ね。さあ、私達は夕食を食べたらユッミルの部屋に行くわよ」

 ネミークだけユッミルに抱かれてネメッカを含めた4人の母は食堂に向かう。どうも今回はイーサの判断で回復系の魔石が大量投入されたらしい。木に安く譲ってもらった様だ。

 「よく食べますね」

 「ええ、何か食欲がありますね」

 「ん?魔力の残滓か。まさか」

 「ユッミル、私は妊婦ではないので何も無いですよ」

 「その様ですね。リュッサも家にいたから」

 主宰部屋に戻ろうとすると当然の様に4人で向かう。ユッミルはそのまま五人で風呂に入る。ユッミルはネメッカの体に必要以上にくっついていく。

 「そんな誘惑をしなくてもいつでも構いませんよ」

 「ネメッカ様は奥ゆかしい女性ですから少し攻めたくなってしまいますね。けどリュッサさんも普通で良い」

 ユッミルはリュッサも抱き寄せる。

 「私達とも仲良くしましょうよ」

 「そうですよ、もう子供を作った仲ですし」

 「でもまあ産後すぐは休んだ方が良い」

 「そうですよね。今の私達は少しお腹が残念ですし」

 「そうですね。今日は遠慮します」

 ユッミルはネメッカにしがみつきながら眠る。

 翌日、ネメッカとネミークだけを起こして朝食を済ませると家に戻る。

 「お帰りなさい」

 「はい、シウさんも遂に近い様ですね。フェノ、大丈夫か。ありがとう。けどメシャーナは意外と優秀だろう?だから無理しなくて良い。フェノとメシャーナの二人ならこの家は大丈夫だ」

 「ユッミルって意外と私を直接褒めないよね」

 「忘れてるだけ。メシャは少し当たり前になってるから」

 「それなら仕方ないね。任せて」

 「そんな事よりユッミル様、その口ぶりはまた出かけると?一応、シウさんは近いですが」

 「光の塔にも近い人はまだいますし他にもいるんですよ。三か所に」

 「そこまでですか。困りましたね」

 「いえ、ですがここまで近い人が集中するのは今後は無いかもしれません。第二子はネメッカ様が先になるようにしますので」

 「えっと、それって問題の先延ばしになりますし待たせてる間に渋滞してまた集中する結果を生む事になるのでは?」

 「むっ。いえ、まあそうだとしても第一子がまだのあなたには関係ないから良いでしょう」

 「それはそうですが」

 「オーネさん、二人で話したいことがあります。この声は他には聞こえてませんので返事はいりません」

 「昼過ぎに南の裏手の路地で待っていて下さい」

 ユッミルはテーファの様子を見に行くが不在であり、今度はフーニャの様子を見に行く。元気そうで不平を言われたが何とか宥めてオーネとの待ち合わせに向かう。オーネを負ぶって急いでオーネの家を案内させる。

 「少し強引で申し訳ないがターヒョさんは避けたかったので」

 「どうしたんですか?急に」

 「はい、ターヒョさんのお相手はしばらくは避けてますがいずれは避けられません。その前にオーネさんの意思を確認しておこうかと」

 「ユッミル様はどうなんですか?」

 「聞くまでも無い事です。そうでなければこんな事はしません。そもそも私がここまで何もしなかったのも大いに問題です」

 「少し待って下さい。言いたい事は分かりますが心の準備が」

 「でしたら明日の夜。ユッホさん次第では明後日かもしれませんがそこに結論を聞きに来ます」

 ユッミルはユッホの家を出て木の塔に向かう。

 「ああ、イーサさんに言われて来たのね」

 「はい」

 「流石ね。そろそろよ。けどまあ早くても明日朝だから短い用事ならさっさと済ませて来なさい」

 ユッミルはまず事務所に向かう。夕方でも人は少ない。一瞬、光の隠遁者の気配を感じるが見逃す。すぐに引き返して日が落ちていく中、マッラを見舞う。妊娠の近そうな妊婦の中では少し先そうだ。夜遅くに木の塔に戻る。ユッホの元に近づくとユッホが抱き寄せてくれる。

 「もうすぐだけど木の術師だから元気だよ。もう少しだから居て欲しい」

 「はい、いますよ」

 「光の塔でも生まれたんですか?」

 「はい、ネメッカ様のお子様以外で三人生まれました。ここ数日で。まあ同じ日にですから当然ですけどね」

 「同じ日、ユッミル様は何をやってるんですか?」

 「そうですがあなたともそこそこ危ない事をやってしまいましたね。申し訳ない」

 「いえ、それは良いんです」

 「後、同じ日になったのはイーサさんがそういう風に仕組んだのであって私が積極的にした訳では無いですからね」

 「イーサさんならしそうですね。忘れてました」

 ユッホはゆっくりユッミルを深く抱く。

 「はっ」

 「おはよう、ユッミル様」

 部屋はいつの間にか暗めで薄ら明かりで二、三人が起きているだけで広めの部屋とは言え宿舎よりは狭い部屋に五人ほどが寝ている。

 「おはようございます。寝てしまいまして申し訳ないです」

 「いえ、寝かせたのは私です。色々何となく分かってましたので」

 「ん?」

 「では後は頼みましたよ」

 「えっ」

 ユッホはユッミルを抱く。しばらくすると手を放し深く寝て今度は手を握る。

 「そういう事ですか」

 二人の女性術師が枕元で心配そうにしながらゆったり術を掛けていく。

 「ユッミルさん、腰を支えてくれませんか?」

 「まあ構いませんが」

 「もっと奥です」

 「えっ」

 ユッミルは尻を持ち上げる。

 「んっ、くっ。やっぱりやめて下さい」

 ユッミルはさっさと手を放す。しばらくして子供が出てくる。いつの間にか朝になっている。

 「良かったわね、ユッホ」

 声の主はシーリュノであった。どうやら少し前からいたらしい。

 「いるなら声を掛けて下さい」

 「そんな事をしたらあなたは仕事を私に任せようとするでしょう」

 「まあ良いですが抱きたくないんですか?」

 「そうね。抱きに来たわ」

 ユッミルは赤子をシーリュノに渡す。

 「ユッミルさん、行っても良いわよ?」

 「行きはしますが朝食を食べて昼までは居ようと思いますが迷惑ですか?」

 「光への報告は急がなくて良さそうね」

 ユッミルはユッホを介抱して朝食に連れ出す。子供を抱いたユッホと楽しそうに話をして早目の昼食を食べて木の塔を出る。事務所でレミーカに会う。フェノに送らせたらしい。状況を聞くと特に依頼は来ていないらしい。ユッミルが送れるうちに早めに帰す。夕方、オーネの家に向かう。

 「どうですか?」

 「お受けします。そうです。元々その気でしたからやります」

 「分かりました」

 ユッミルはオーネを優しく抱く。

 「お受けしますから」

 「嫌なのですか?」

 「えっ」

 「私はオーネさんがどんな子かそこまで知りません。嫌なら適当にあしらって下さいね」

 「はい」

 「そう言えばオーネさんはどうして氷の団に?」

 「いえその、氷の術が使えたので試しにと思ってたらそのまま居つく事になってしまって」

 「昔は学校に?」

 「はい」

 しばらくユッミルはオーネの学校の話を聞くと夕食に誘い、一緒に作る。オーネは普段は家ではそこまで作らないらしい。

 「ではゆっくり風呂にしましょうか?」

 「今日は泊まるんですか?」

 「それはそうでしょう」

 「ですよね。ごめんなさい」

 ユッミルとオーネは一緒に夕食の片づけをすると風呂に入る。入浴後のオーネは少し眠そうだ。ユッミルは抱き締めて口を重ねてみる。

 「わっ」

 「起きた?」

 「寝てはいませんよ」

 「寝られたら困るけど寝る?」

 「いえ、起きます。私だって女です」

 二人は密着したまま寝床に向かう。

 「フェノさん、ユッミルさんに聞いたのだけど側室とすぐに寝ないって本当なの?」

 「全員かは分かりませんが少なくともオーネさんとはすぐ寝てませんね。シウさんとオーネさんの出会いは十日程しか差はありませんがシウさんがそろそろ出産なのに対してオーネさんには何の兆候もありません。少なくともオーネさんは二十日以上待っていますよ。フーニャさんも同じですね」

 「で、あなたは?」

 「側近だからそういう対象ではないとはっきり言われています」

 「そう。悪い事を聞いたのかもしれないわね」

 翌日、オーネに自然な様に二日は家にいる様に言いつけて家に向かう。

 「今度はシウか。エコもかなり近い」

 「うん、オーネさんの手でも欲しいわ」

 「けど光はもうイーサさんだけだからフェノはまだ残せる」

 「私は良いからエコの子がまだなら光の塔でもどこでも行けば良いわ」

 「今日は残ります。明日は頃合いを見てイーサさんの様子を見に行きます」

 「任せるわ」

 昼過ぎ、ネメッカとリュッサが呑気そうに赤子の息子を連れてやってくる。

 「シウさん、これからは子育てで協力しましょうね」

 「どうしたんですか、ネメッカ?」

 「今が良い機会でしょう」

 「いえいえ、私の子は私が面倒を見ます。勝手に遊んでくれるのはありがたいですが改まって協力という気は無いです」

 「そうですか。けどユッミルの機嫌を取りたいなら嘘でもそう言っておく方が賢明ですよ」

 「ネメッカ様?それは協力してくれた方がありがたいですがそんな打算は困ります」

 「そうね。良いわ。ユッミルを理由にされたら仕方ないわね。協力するわ。そのネミーク、この家にも預ける様にしなさい。で、あなたはこの家の子と遊びなさい」

 「分かりました。それで決定ですね」

 「ネメッカ様、頻度が高まるとあなたがいるからって家にいるとは限らなくなりますよ」

 「ええ、構いません。私が横に居てもシウさんと好きに戯れれば良い」

 「ネメッカ、余裕ね」

 「ええ、余裕ですよ」

 ネメッカ曰く、イーサはまだ掛かるのでシウを見守る事にする。ネミークとリュッサの息子は二人の母親とメシャーナで順番に面倒を見ていく。ユッミルはシャーユと遊んでいくがユッミルはシャーユが話しだしそうな萌芽を感じ取る。風呂もユッミルはシャーユと入り、ネミークがネメッカとメシャーナと入るという変な状況だ。ターヒョは大人しくしている。

 翌朝、シウはたまたま全員が起きている状況で子供を産み始める。全員が周りを囲む。ユッミルは最早誰に言われるでもなく子供を取り上げる。

 「シウさん、おめでとう」

 ユッミルはネメッカのこの態度の軟化に違和感を感じながらもこの男児の誕生への喜びと積みあがる息子の数に少々困惑しつつという複雑な感情を抱えていたので違和感は持続しなかった。

 ユッミルは昼過ぎに塔に向かう。

 「ユッミル様。お帰り下さい」

 「それは構いませんが恨まないで下さいよ。イーサさんなら調べて知ると思うので言っておきますが今の所、全員の立ち会いに成功してますからね。あなたのお蔭もあって」

 「ええ、ですから明日までは我慢します。明日夜に来て頂ければ恨んだりはしません」

 「来るようにはしますが来なくても恨まないで下さい」

 「それは約束できませんね」

 「とにかくあなたの指示で今は帰ります」

 ユッミルはテーファの家に寄る事にする。すると光の女性が二人もいてテーファも休んでいる。

 「そろそろとは思ってましたけどね」

 「うん、良かったよ。けどネメッカも相当喜んでたね。私も嬉しい」

 「テーファさんとはもう少し早く会いたかったですね」

 「今更順番は関係ないよ」

 「分かってますけど言いたくなるだけです。けどイーサさん曰くあなたはもう少しかかるので今日の所は戻ります。」

 「うん、まだだから心配しないで」

 ユッミルは家に戻る。

 「あっ。キッシャノちゃんの事、言い忘れた」

 ユッミルが帰宅しても状況に変化は無い。エコは立ち上がって昼食を食べている。

 「大丈夫なんですか?」

 「そうでもないけどそれ以上に急にお腹が減ってきたから食欲で立ってるわ」

 「それよりネメッカ様位は戻って下さい。万が一ならせめてあなただけでも居た方が良い」

 「イーサは明日朝までは生まれない事は確信してるからここに居ろと言った。信じるわ」

 「何ですか、それは。まあ私も大人しく帰ってきてしまいましたから人の事は言えませんが」

 そうこうしているとムヒューエがやってくる。

 「ああ、悪い時に来てしまいましたね。ラーハ様の慎重さが裏目に出ましたか。ですがとりあえず報告します。少し前になりますがミーハの子が無事に生まれました。水の方針で塔から出さないのでユッミル様に会いに来て欲しいのですが」

 「行きますよ。忙しいので長居はできませんがそこはラーハ様に受け入れてもらいます。いつですか?」

 「特に期日は指定してませんよ。こうなってる事は薄々知ってるでしょうから」

 夕食を食べる。

 「あの、ムヒューエさん。泊まるんですか?」

 「はい、もう私の事は子供と思ってくれて構いません。子供の服を脱がせて下さい。そのまま風呂に入れて下さい」

 「仕方ない」

 ユッミルはシャーユとネミークと共にムヒューエと風呂に入る。短めの時間で入り、シャーユ達に服を着せるとムヒューエを壁に縛る。

 「そう言えば水はそうだったわね。本当だったのね」

 「ええ、本当ですよ」

 「私もこれ位分かりやすい姿で迫ればしてもらえるのかしら?」

 「今日は勘弁して下さい」

 ユッミルはシャーユとメシャーナを抱いて眠る。朝起きるとさっさとムヒューエを解き、メシャーナとシャーユとムヒューエで朝食を食べる。

 「急ぎますので今日、済ませます」

 「分かりました」

 食べ終えると急いで水の塔に向かう。

 「ユッミルさん、お忙しい中で来てくれて感謝するわ」

 「はい、本当に忙しいので長居はできません」

 「分かりました。では早速」

 ユッミルとラーハは四階へ向かう。

 「ユッミル、久しぶり」

 「そうだね」

 「うん、そろそろ戻るから」

 「それにしてももう落ち着いてるね」

 「ええ、生まれてからもう二十日程経ってますから」

 「そうですか。考えてみればそれ位が順当ですね」

 「どうしたの?」

 「ラーハ様、触れても宜しいですか?」

 「ユッミル様、水はそんな変なルールはありません。ご自由にどうぞ」

 「それは良かったです」

 ユッミルは抱いてみる。

 「女の子ですか?」

 「あら?魔力でみえるのね?それとも光術師だから服を透かしたのかしら?」

 「術の才は水ですね?」

 「ええ、私の見解もそうよ」

 「だから手放さないんですね。けどミーハは戻してくれるんですね?」

 「ええ、むしろこちらもミーハにはあなたの元に戻って欲しい」

 「けど赤子は?」

 「そう、二人をあまり引き離すのは気が進まない。才が弱まる可能性もあるしね」

 「幸い、私は当面は忙しいのでミーハさんの相手はできませんからもう少し策を練って下さい。今日は本当に忙しいのでそろそろ帰ります」

 ユッミルは水の塔を後にする。家に帰るとネメッカは塔に戻っていた。昼過ぎに家に戻る。

 「大丈夫ですか?」

 エコに声を掛けると手を強く握られる。

 「あの、すぐ戻りますから昼食にさせて下さい」

 エコは手を緩める。ユッミルは急いで昼食を食べるとエコの元に戻り、手を握る。

 「ユッミル、私よりエコに優しいのね」

 「シウさんに頼まれた覚えが無いどころか元気だと散々主張してましたから」

 「そうね。元気よ。そろそろ、戦線に復帰しても良い」

 「イーサさんの事もあるからしばらくは無理ですしマッラさんもいますよ」

 「そう言えば言い忘れてたけど私の子が産まれたら報告に来て欲しいってミューレが言ってたわ」

 「ちょっと」

 「ごめんなさい」

 「エコさんが終わり次第行くと言いたい所ですが流石にイーサさん優先ですね」

 「そうね。仕方ないわね。まあ私も流石に今日は動きたくないわ」

 夕方、ユッミルは出かけようとする。

 「うっ」

 どうやらエコもすぐらしい。ユッミルが駆け寄るとエコは踏ん張り始める。フェノもシウも寄ってくる。

 「まあ良いタイミングね」

 「何処がですか?まあ最悪とは言いませんが」

 「静かにした方が良いのでは?」

 「そうだね」

 しばらくして元気な男の子が生まれる。

 「また男の子ですか。それでこの男の子はシウさんの息子共々ミューレさんに預けた方が良いんですか?」

 「まあ火の団にはたくさん女性がいるからその方が良いんだけど」

 「私は残るわよ。シャーユちゃんの世話も必要だし」

 「私も残りますよ。今後はリュッサさんの子供も来る機会が増えるでしょうし」

 「そうですか。でしたら今からミューレさんに私が報告してきます」

 「そうですね。お願いします」

 ユッミルは火の塔に向かう。

 「少し遅い時間ですが」

 「はい。昨日、シウさんの息子が生まれましてその報告をと思ったのですがつい先ほどにはエコさんの息子が生まれましてそれも含めて報告に来ました」

 「そうですか。お互いにとって吉報ですね。良かったです」

 「おそらくですがシウさんの息子は火属性ですしエコさんの息子も同じですから特に火にとって吉報でしょうね」

 「ですが二人、三人と積み重なれば光属性が生まれるのは必定。光の団はユッミル様の子息が席巻しそうですね」

 「そんなには産みませんよ」

 「ここ最近の感じを見てるとそうは思えませんが」

 「たまたま重なってるだけです」

 「つまり、シウさんやエコと今後も気にせず励むという事ですね」

 「気にはしますよ。ですが特にシウさんは止められませんよ」

 「そこで私はどうです?私ならこっちで産みますから何回しても家が子供で溢れたりはしません」

 「何のアピールですか?」

 「いえ、いずれあの家の子育てが大変になりそうだなと」

 「ミューレさんと会話してるとエコさんと今後やりにくくなるんですけど」

 「そうですか。けどエコの子供は場合によってはこちらで育てても構いませんよ」

 「考えておきます」

 「まあその話はそれ位にしてそろそろ無性の学校での術の実演があるの、忘れてませんか?」

 「忘れてはいませんが準備不足は否めません。」

 「では行きましょうか」

 「えっ」

 ユッミルは応接室を出て一階でそのまま待たされる。するとエッヒネがシェヒユスを抱えて降りてくる。

 「ユッミル、今から私が学校での術実演でやる予定のを見せるからシェヒユスを抱いててくれないかしら?」

 ユッミルはシェヒユスを抱きながら魔石生産に使われることの多い高めの天井で二階に屋根が届く別館に入る。エッヒネは術を実演していく。

 「ユッミル、あなたも暫定案があるなら見せてくれないかしら?」

 「構いません」

 ユッミルはエッヒネに色々と指導を受ける。

 「ではそろそろ」

 「随分遅い時間だけど」

 「問題はありません」

 「夕食は?」

 「まだですね」

 「私もよ」

 ミューレとエッヒネと夕食を食べる。ミューレに例年の術実演の話を聞く。

 「今度こそ帰ります」

 「もう夜だけど」

 「今回は急ぐので」

 「なら最後にマッラに会わない?上にいるのだけど」

 「分かりました。ですけど下手に顔を出すけどすぐに帰りますはどうなんですか?」

 「大丈夫よ。マッラはあなたが他にも生まれそうな母親を抱えてるのは知ってるから」

 ユッミルはマッラと会う。疲れてはいるが明るい。

 「シェヒユスちゃん、お父さん帰るんだって」

 「お父さんではありません」

 「けど他にお父さんいないし名付け親なんだからお父さんで良いよねえ」

 「紛らわしいのはやめましょう」

 「シェヒユスちゃんは今日位、パパと寝たいよね?」

 「ユッミル様は忙しいから無理は駄目よ」

 「エッヒネ様、勝手にシェヒユスの言い分を創作しないで下さい」

 「私が親なのだから一番分かるわ。けど確かに私の願いでそう聞こえるのかもしれない。ごめんなさい」

 「いえ、謝る必要は無いですが」

 「火の団は私、ミューレを側室に任命してますからお相手頂けますか?エッヒネ様、部屋をお貸し下さい」

 「ええ、構わないわ」

 「いやいや、どういう状況ですか?」

 「行けば分かります。シェヒユス様のお世話をして頂きたいだけですよ。」

 ユッミルはシェヒユスと遊んでいるが眠そうなので眠らせた。その間にミューレは風呂を終えており、やはり服を着ずにベッドで待機している。

 「ユッミル様、一緒に風呂で…シェヒユスは?」

 「寝てしまいましたので」

 「そうでした。計画が杜撰でした」

 「計画って何ですか?それにあなたも見てましたよね?」

 「それはそれとしてご一緒頂けませんか?」

 「どうしてですか?」

 「私がしたいからですよ。嫌ですか?」

 「嫌ではありませんが」

 ユッミルは誘惑に負けてエッヒネと風呂に入る。ユッミルは風呂から上がるとそのままミューレに覆い被さる。

 「冗談ですよ、寝ますね。側室なのに無断で襲うのは勝手ですが責任は取りませんので」

 「ユッミル様、それは暗に私の側室としての能力を否定しているのですか?」

 「どうでしょう?ですがそう取ってもらっても構いません」

 当然の様にエッヒネも服を着ないままユッミルの腰に手を掛ける。ユッミルも手を回し返すが足は動かない様に我慢して寝る。早朝、シェヒユスの頭を撫でてから急いで光の塔に向かう。

 「ユッミル、あれだけ言ったのにこんなに来るのが遅いなんて」

 「ごめんなさい。もしかして」

 「いえ、それは大丈夫よ。けどかなり近いから行きますよ」

 ユッミルはネメッカに伴われて上の階に向かう。フェノもいる。リュッサ母子もネミークとネメッカもいる。

 「イーサさん、来ましたよ」

 「本当にあなたは絶妙な時に来ますね」

 「えっ」

 その言葉からそんなに間の無い間にイーサも力み始める。イーサはもう分かってたかのように激しい表情になる事は無く円滑に見える様な産み方をする。

 「ユッミル様、お願いします」

 ユッミルは言われるがままに赤子を取り上げる。

 「元気な男の子で良かったです」

 「イーサさん、光の団に男が増えてますけど大丈夫ですか?」

 「そうなってから考えますよ」

 「そうですか。所でネメッカ様、お時間良いですか?」

 ユッミルは下の別館で術実演の相談をする。しばらくするとイーサもやってくる。横でリュッサが座り込んで三人の赤子の面倒を見ている。赤子はユッミル達の術を興味深そうに見ている。それを終えると朝食なのだが遂に光の団の五人の息子と母親が一堂に会する。加えてお腹を大きく膨らませた四人も入ってくる。食堂のテーブルは長辺5人、短辺2人が座れる形だが両脇にネメッカとイーサ、ネメッカの脇の左の二席の手前にはリュッサ、残りの六人は正面と右の二席の奥に座っている。

 「その、これは何ですか?」

 「ユッミルママ協議会ですね」

 「ネメッカ様は私の母ではないですよ」

 「ユッミルの息子、娘の母親協議会光の団支部では長いので」

 「まあ良いです。いったい何を」

 「薄々勘付いてるとは思いますが母親はもうすぐ9人体制になります。その上で子供は9人です。であればとりあえず3人交代で9人を世話するのが合理的だと思いまして」

 「そうかもしれませんが他にもいますよね?」

 「もちろんです。五人います」

 「ただ、リュッサさんはこちらにも居て欲しいのですが」

 「ですから協議が必要なのです」

 「そうですか。分かりました。ですがネメッカ様は指揮所もありますし私もいくつかお願いしてますし政務もやってます。イーサさん共々免除で良いのでは?」

 「はい、申し訳ないですがそれはある程度やむを得ません。ですからネメッカ班、イーサ班、リュッサ班に分けて子供の世話をしますからユッミルにも話を聞いておいて頂きたいのです」

 「ですが九人同時に一か所となると塔しかないですよね?むしろ三班に分け…。いえ、三人を家で引き受ければ良い」

 「家は他にも子供が二人いますよね?」

 「いえ、三人ですよ」

 「六人ですか。それだと二人で六人の三交代は厳しくないですか?」

 「フェノさえお貸し頂ければ三人で六人を見る三交代制は可能です」

 「分かりました。リュッサ班はユッミルの家という事で」

 「構いません」

 「でしたらここからが本題なのですがネメッカ班は主導部屋を拠点に使う事もあります。それを踏まえた上で各班の人選はユッミルに一任します」

 「はあ?」

 「他に誰が決めるというのですか?」

 「それはイーサさんでしょう」

 「でしたらイーサ班がユッミル様の家に陣取り、リュッサ班が妊婦の世話の指揮を執ります」

 「それは駄目です。あなた達三人の配分には異論は認めません」

 「はあ、その勢いで夜の相手も順番を強制してくれればいいのに」

 「そんな事はしません」

 「分かりましたが流石にユッミル様の家に行くリュッサ班の残り二人はユッミル様の人選で願います」

 「なら仕方ないですが既に出産済みの二人を引き取ります」

 「それは駄目です。バランスが悪いので一人でお願いします」

 「そう言われましても決める基準に困ります」

 「分かりました。会議の続きは朝食後に場所を変えましょう」

 朝食を終えると十人と五人の赤子は四階に登る。四人の妊婦は眠る。

 「そういう訳ですので妊婦以外の二人のどちらを選ぶかを今から決めてもらいます。妊婦の中のもう一人は子供が生まれてからですね。では早速脱いで下さい」

 「ちょっと待って下さい。どういう事ですか?」

 「あの家に住むんですからお相手でもあります。そうなれば体が大事でしょう」

 「それはそうですがその方向性はシウさんやネメッカ様で間に合ってます。中身も大事ですよ」

 「それもそうですね。でしたら両方重視なのでユッミル様と脱いで寝床に入るまでで判断してもらいましょう」

 「では私が先に行きます」

 「では始め」

 「はあ」

 「ユッミル様、服は脱がせるのが好きですか?それとも脱ぐのを待つのが好きですか?好きにして下さい。何もしないなら脱いでいきますよ」

 「なら脱がせますよ」

 「では次ですね」

 「どうぞ」

 二人目はユッミルを隣に座らせ、手を腰に回させ、否が応でも体に目が行く状況で服をゆっくり脱いでいく。

 「もういい。こんなの何処で覚えた?」

 「何となく」

 「嘘をつくな。まあ良い。こんなのはネメッカ様には見せられない。イーサさん、人選はちゃんとして下さい」

 「申し訳ない」

 「で、私を選ぶって事?」

 「いえ、もう一人の方で」

 「えっ」

 「まあでも家には置けませんが宿舎ではお相手頂けるならこちらとしては構いません」

 「なら良いです」

 「ところでお名前を聞いてましたっけ?」

 「いえ、ユーカと申します。それで今回の赤子の名づけをお願いできませんか?」

 「待って下さい。まずはリュッサさんの息子からです。それにしてもまだ決まってないのですから本当に待って下さい。それよりこれから同居いただくあなたのお名前は?」

 「ケーシャです。よろしくお願いします」

 「それは良かったです。でしたら家に帰りましょうか」

 「あの、私の息子の名前は?」

「イ、イーサさん、まずはリュッサの息子が先で良いですか?」

「ええ、その後、私の息子に名付けて頂ければ今日はお帰り頂いて結構です」

「リュッサさんの息子はリュンルクは?」

「それでも構いませんがユから始まる名前が好ましいです」

「えっと、他の人が望まないなら構いませんがゆから始まる名前で溢れるのはどうかと思うんですよね」

「少なくとも私は今回はゆから始まる名前を要求する気はありません」

「でしたらユンルクにします?」

「はい」

「ではイーサさんの子供ですね。イーシャンで良いと思いますよ?」

「真面目に言ってませんよね?」

「困りますね」

「私と紛らわしい名前はせめてやめて下さい。サーイ君は?」

「随分投げやりですが私の機嫌をあえて損ねようとしてます?」

「でしたら赤子を抱かせて下さい」

「それは全く構いませんが」

「イーサさんはどんな名前が良いんですか?」

「それは私に付けろと?」

「賢そうな名前ですか?」

「そういう意味ですか。そうですね。穏やかな名前ですかね」

「意外と普通ですね。けどまあ男の子には難しい。カノールとか?」

「あまり聞かない名前ですね」

イーサは少し吹き出した。

「珍しい。ただ、名前としては駄目そうですね」

「いえ、私の要求には叶っている気がしますからそれにします」

「あの、あまり変な名前だと子供自身が大変ですよ。子供間で馬鹿にされたりとか」

「流石にそこまでの名前であれば拒みますがそこまでではありません。現に他の方は笑っていません」

「ネメッカ様、正直な感想をお願いします」

「ああ、流石ユッミルだとは思いますし珍しいどころか聞かない名前ですがイーサが笑ってしまった理由は分かりません」

「私もよく考えれば普通の名前だと思いますよ。今の時代の人が付けないだけで」

「分かりました。イーサさんが構わないのでしたらそれで良いです」

ユッミルはリュッサとケーシャと二人の息子をフェノと送る。ユッミルは途中でフェノに任せてテーファの家に向かう。

「テーファさん、どうですか?」

「かなり近いと思います」

「さて、どうしますか。テーファさん、私の家に来ませんか?」

「ええ、私は構いませんが…」

「でしたら私は塔に報告に向かいます」

「えっ」

「私は付いていきたいのですが」

「ええ、構いませんよ。それとあなた、報告は不要ですから家の留守番をお願いできませんか?」

「ああ、そうでしたね」

ユッミルはテーファを負ぶって家に向かう。

「ユッミル君、大袈裟だよ。少ししんどいけどゆっくりなら歩ける。それとも私とずっと歩くのは嫌なの?」

「ああ、いえ。最近は急ぐ癖が付いてしまって。ただ、姿は隠しますね」

「そうだね。ぶくぶく太り切った私の恥ずかしい姿はユッミル君にしか見せられないよ」

「あの、だからしんどそうに見えただけですからね」

「うん、でも早く元に戻って楽しく一緒に寝ようね」

「そうですね。けどしばらくはゆっくりしてくれていいからね」

「分かってる。ユッミル君は優しいね」






 3節 学校での術実演

 

 「ただいま」

 「あらっ。テーファさん、お久しぶり」

 「ああ、シウちゃん。それが息子?羨ましいわね。けど私ももうすぐ母親仲間だよ」

 「テーファ。そう言えば居たわね、結婚式。で、光から女を新しく調達してしかも一人はもう子を産ませてるのね」

 「あの、自慢でもないんですが光の指揮者の意向で子供を産むように誘惑された結果ですがもうネメッカ様以外に子供が四人います。そのうちの二人がこの二人で既にそれとは別に4人がもうすぐ生まれますので少し私も反省しています」

 「なっ」

 「それもこれも何やらイーサさんが光の団単独で残りの他の団に私の子供の数で負けたくない意向の結果なので特に他の団の女性と新しく子供を作るのは必ずしも望ましくは無いんですよね」

 「でも我慢も不要だし我慢の限界を超えたら仕方ないわよね?」

 「はい、それはそうです。ですが色々重ねてますので限界はかなり高いですよ」

 「それは仕方ないわね。策は練り直すわ」

 「まあテーファさんは数に入らないので関係ないのでお願いしますね」

 「もちろん」

 子供を含めるとかなりの大人数で食事をする。

 「このままだと獣肉すら食い尽くしそうですね」

 「そうね。かなり増えたわね」

 「私、戻ろうか」

 「ここ五日とかは関係無いのでそれは大丈夫ですしテーファさんはそこまで食べてません。フェノですね。ですがそれだけではないでしょう」

 「私も増えたよ」

 「うん、でもメシャはそれでも大した事は無い。けどそれは良いんだ。あの、私は忙しいので狩ってきてくれませんか?」

 「誰が?」

 「フェノ、メシャ、ターヒョ、エコ、ピュッチェがいれば大丈夫でしょう」

 「誰が指揮を執るのよ?」

 「フェノがエコと同行してエコが指揮を執ればいい。前衛はメシャとピュッチェ主体だね。ディユ君を呼んでも良い」

 「後衛火力はほぼターヒョだけね。大丈夫なの?」

 「心配なら保険としてシウも連れていけばいい」

 「そこまで行くと子守り…大丈夫そうですね。オーネさんは?」

 「ああ、オーネさんは居たんですか?」

 「ええ、寝てますが」

 「本人に聞いて…いえ、一度は同行して火の二人で判断して下さい」

 「けどこうなってくるとフーニャの離脱は痛いわね」

 「そういう事を言い出すとエッヒネ、シェンハ級がいないと困るという結論になりかねません」

 「いや、ユッミルがいないから困るのよ。ユッミルがいるからミーハや私が遠距離攻撃に専念できる。フェノさんだと少し不安ね」

 「分かりますが頑張ります」

 「火の団にはピュッチェみたいな近接系は居ないんですか?」

 「いないけど実質的には多いわね。鍛冶師系は武器に火を纏わせるから」

 「氷も多いわよ。シェンハ様も実は近接でも強いし」

 「そうですね。ディユ君もそうです。あなたは自衛もできそうですね」

 「ええ、けど遠距離術師を獣から保護するまでは不完全ね」

 「あの、ここで話しててもあれなので安全に撤収できる戦力が整備できたらお願いします」

 「急ぎはしないので。獣の運搬はメシャとフェノが一体ずつなら運べます。逆に無駄ですので二体以上はできる限り、狩らないで下さい。襲ってきて止む無くは仕方ないですが」

 「まあ適当にするわ。けど役に立つと分かったらご褒美位は頂戴ね」

 「仕方ありません」

 ユッミルはケーシャとリュッサと風呂に入り、普通に一緒に寝る。

 翌日、エコの息子を連れて火の塔へ向かう。

 「ああ、丁度いい所に」

 「えっ」

 ユッミルが4階に通されるとマッラはもう子供を産みかけている。しばらくするとユッミルが子供を抱く。

 「あの、少し子供の数が家に増えすぎたのでエコさんの息子をこちらで面倒を見てもらおうと思ったのですが」

 「ああ、それは全く構いませんよ。人手には余裕がありますから」

 「それより明日ですよ。術実演は」

 「ええ、まだ妊婦は居ますけど少し間はあります。それに幹部の出産は終わりましたから」

 「イーサさんは子持ちですか」

 「はい、先を越されましたね。ユッミル様のせいで」

 「ミューレさん、火の団の女性は同じ火の団の男性か無性の街で結婚した方が良いと思いますよ。そうしないと他の団の女性が困ります」

 「けどそれ、ユッミルさんとなら関係無いですよね?もしかして私は何かお願いされてますか?」

 「いえ、僕はもう手一杯です。これ以上多数の女性は相手にできません」

 「火の団も団内結婚はそこそこありますけどエッヒネですら余るのが現状で私なんて到底」

 「あなたの場合もエッヒネ様の場合も立ち位置が問題でしょう。その立ち位置に長い期間居座らなければいい」

 「けど私が居座らないと他の人が私みたいな女として残念な事になるんですね」

 「あなたは好きでいますよね?」

 「ですが遊びたくもありますよ」

 「ですが子育ては大変ですよ。まあシェヒユス達の子育てを見守ってそれでもなおその気なら考えます」

 「その返事は嬉しいですね。分かりました」

 「2年かかりますが?」

 「構いません。まあ良い相手がいればこの職を投げてそっちに行きますけど」

 「代役の育成に取り掛かるべきですね」

 「いえ、後継者は常に育成しようとしてますよ」

 エコの赤子を預けると夕方には家に戻る。

 「おお、上手く行ったみたいだね。けど一匹か」

 「ええ、一度一匹がどの程度の食糧になるか確かめようと思って」

 「あっ」

 ユッミルが外に出ると入る時に見た何気ない茶色の物体を再度見ると薄い毛皮が被さった血が少し残った獣の頭部であった。家に戻ると赤い液体を見つける。

 「これは何ですか?」

 「獣の生血ね。あまり振り回さないでね。管理は大変なんだから」

 「どうする気ですか?」

 「飲むのよ。提案したのは私だし現場でもう飲んだわよ。後はシウの息子にも少し飲ませたわね」

 「それは駄目でしょう」

 「そうね。瓶に入らない分をどうしようかと思ってたらつい」

 「シウさんも飲んだんですか?」

 「いえ、少し気が進まなくて。フェノさんが飲んでくれたわ」

 「フェノ」

 「はい、一番の下っ端が実験台を務めたまででございます」

 「そういう事か。まあ赤子に与えなければそれで良い」

 ユッミルはレヒーハを無性の家に送ってフーニャを散歩に連れ出す。

 「フーニャさん、生血を飲む行為ってどう思います?」

 「いきち?ああ、生血の事か。どうだろうね。良い事とは思えないが生血に害は無くそれ自体は体にいい。」

 「それは分かってます」

 「ただ、生血の入手は簡単ではない。簡単ではないものに依拠した食生活は良くない」

 「依拠ですか。殺生ですし自分の身も危険…」

 「ん?どうした?」

 「いえ、何でもありません」

 ユッミルは予定を変更してフーニャを無性の家に帰して自分は家に戻る。

 「ではこうしましょう。生血を飲んだ人は食事を半分に減らしましょう」

 「それで様子を見ます。食事量が減らなければ生血に利点はありません。赤子以外で飲んだ人ですけど。後、生血を飲んだ人は何か怖いので五日間その人とは寝ません」

 「まあ良いわ。私も軽率だったし反省ね。生血は私が飲んで何とかするわ」

 「仕方ないですね。ターヒョさんの食事量が減るかは見ものですね」

 ユッミルはテーファの世話を焼いて風呂に入って一緒に寝る。

 翌日、光の団の主導や主宰とその側近の一行は無性の街に向かう。途中で土の団と合流し、木の団と待ち合わせて合流し、火の団も合流する。

 「火の団はやはり規模が大きいですね。土の団も凄いですが」

 「けどユッミル様の身内率も随分高いと思いますけどね」

 「土の団はそんなにいませんよ」

 「つまり、未開拓の土の団の大物を狙うと」

 「いえ、それ以前に土の団は男性が多い」

 「そうでしたね。つまり、土の女性と子供を産んで育てていずれは席巻と」

 「ミューレさん、そんなのは無理ですからね」

 「思ってても認めませんよね」

 「でしたら水はどう攻略するんです?」

 「そうでしたね。あそこは難攻不落でした」

 やがて術師協会指定の集合場所には月や氷に水も集まる。

 「ユッミル、久しぶりね」

 「シェンハ様、どうしたんですか?」

 「深い意味は無いわよ」

 「ユッミル様、ご無沙汰ですね。シェンハさんもお元気そうで」

 「リッネ様、いつもご苦労様です」

 「ああ、指揮所に君が来ないから話すきっかけを掴めなくてね。申し訳ない」

 「いえいえ、私も今は色々と忙しいので」

 「そうだったね。うちのキッシャノも君の子を産んだよ。そろそろ会いに来てくれないか?」

 「落ち着いたら伺います」

 「ええ、月の塔でしばらくはいるから」

 「は?」

 「というかまさか子供がいないのは氷だけとか言わないわよね?」

 「火には二人いますよ」

 「ミューレさん」

 「光は五人ですね」

 「まあそれは仕方ないわね。噂でもよく回ってるわ」

 「何ですか、それは」

 「後は木もきっといるわよね。後は水と土。」

 「シェンハさん、水の塔には一人ですがユッミル様の娘がいますよ」

 「後は土か」

 「ラーハさん。今、余計な事を言った三人は本当に要注意人物ですよ」

 「構いませんよ。そう思われても仕方ない」

 「ネメッカ様、お助け下さい」

 「ユッミル、無駄ですよ。けどどうなんでしょう?土の塔にユッミルの子供は一人も住んでいない筈ですが土術師の娘は居る。ただ、彼女は土の団にそこまで居ついていない上にその子供はユッミルに影響されて光の術の使い手だとしたら」

 「そう、土には追いつけそうね」

 「もう好きにして下さい」

 術師は4組に分かれる。4校を順に回る。火と光、水と月、木と土、氷単独に別れる。

 「今回のメインは氷ね。単独で回る分。時間が長い。しかも今回はシェンハさんが単独だから好き放題やるんじゃないかしら?」

 「まあ派手好きですしね」

 「その点では光も派手にしようと思えばできるわよね?」

 「ですが光の場合は主役を押し付け合ってしまいましてね」

 「ユッミルは初ですし注目されてるんですからそうしないとおかしいのです」

 「まあ火は私がやるしかないので迷わなくては済みましたね」

 「バッソーさん、一応いますよ」

 「わしは尺調整じゃよ」

 「まあバッソーさんの凄さは子供では分かりませんし爆破する訳にもいきませんしね」

 「まあわしも昔は手数で勝負する術師だったがな。今はそれをやると後が続かない」

 「中々難しいものですね」

 学校に着く。生徒が集まっていたのはやはり建物の横の屋外であり、最初にユッミル達が壇上に立つ。まずはユッミルのサポートの下、ネメッカの術を紹介していく。

 「まずは光点。これが光術の基礎になります。こうやって使うだけなら」

 ユッミルはさっとネメッカに目隠しをする。

 「適当に撃つのは光術師なら簡単です」

 「皆、これは嘘ですからね。このお姉さんは凄いから見なくてもこの辺りにしかも綺麗に撃てるけど普通の術師は撃てません。真似しないでね」

 ネメッカは目隠しを外す。

 「主宰さん、お願いします」

 ユッミルは四体の獣の幻影を出す。獣は蛇行するがネメッカは的確に光点を当てる。

 「実際にはやってますけどこんなのはこの主宰さんが一人でやる事もできますからこんなのは前座です」

 ネメッカは光界の低出力版を乱発する。低出力だがある程度練られた術の高い回転率での発動は少しでも術について知っていればネメッカの高い能力は嫌でも分かる。見た目も華やかだ。

 「さて、ネメッカ様は綺麗な実演をしてくれましたが僕は軽く実戦の話をします」

ユッミルはさっさと一体の獣と後方に数人の術者の幻影を映し出す。

 「獣が一匹の場合は光術師は後方から正面の突進に罠を張って最短距離で来るのを防げばいい。特に突進系の獣はそれで良いですがある程度術師が強いと」

 ユッミルは術師が術を使う幻影まで映し出す。

 「光術師には出番はありません。組む術師が弱いと光術師が時間を稼いでも結局、逃げるしかなくなります。ですから組む相手を選ぶのが難しいのが光術師です。まあそこのお姉さんは絶対的な足止めができるので発動が遅いけど威力はある術師みたいなのには向こうから誘われたりもしますが光術師は基本難しい。ですが」

 ユッミルは獣の群れの幻影を出現させる。壇上ギリギリまで埋めて前の方の生徒は驚いている。ユッミルは敢えて大きめの足音を立てながら壇上の奥に斜めに歩いていく。同時に壇上に多数の攻撃する術師の幻影を出現させて攻撃させながら剣士の幻影に獣を包囲させる。獣の群れは分散していく。いつの間にか壇上の奥には背景が投影され光術師は壇上よりも奥に居て発光しながら光射をしている。獣は方向を見失っていく。それらを術師が狩っていく。光術師は悠然と手前に戻ってきてユッミルに統合される。

 「光の術を極めればこういう風な戦い方もできます。獣を騙すのが光術師の仕事です。さっと倒すのが理想ですが時にこういう戦い方も必要です。これで光の術の実演を終わります」

 生徒達は呆気にとられている。拍手はまばらだ。火の団は例年通り水の入った桶を五人ほどの生徒に並べさせ、後ろを向いていたエッヒネが振り返って手早く燃やしていく、味方に見立てた人形を並べてそれに当てない様に的を燃やしていく等の術を実演し、バッソーの花火で魔族人形を吹き飛ばして締める。

 ユッミル達光の団一行はその後もエッヒネ達火の団一行と次々と4つの学校を回っていく。

 「ユッミル様、初めてにしてはできすぎね。来年以降が大変ね」

 「そうですか?ネメッカ様の方が反応は良かった気もしますが」

 「うーん、まあネメッカさんは知られてるしね。それにこれまでの事とかが相乗効果で乗っていくから大変なのは間違いないわね」

 「それは楽しみですね」

 「ユッミル、抱き付き禁止令はまだですか?」

 「まだですよ」

 「けど夫婦なんですよ。くっつく位良いでしょう」

 「イーサさん、良いんですか?」

 「ネメッカ様、家で散々やってるんですから今位は我慢して下さい」

 他の団とも合流する。

 「どうでした?」

 「無事に終わりましたよ」

 「それは良かったわ」

 「ええ、初めてにしてはかなり良かったわ。流石、ユッミル」

 「何が流石なのかは分かりませんがありがとうございます」

 「ユッミル殿、私は散々だったよ。月にとっては難易度が高い行事だ。今日ばかりは後半に戻ってきた主宰に助けられてしまった」

 「初めてでも無いのに大丈夫ですか?」

 「いや、この行事に参加するのは初めてだが?」

 「えっ」

 「去年はなりたてという事で指揮所担当を買って出て出なかったからな」

 「なりたて?」

 「ああ、季節一つすら過ぎていなかったからなりたてと言っていいだろう」

 「そうなんですね」

 「ああ、そうだ。シェンハもなったばかりだったらしいが堂々としていたらしい」

 「想像がつきますね」

 木の団と氷の団、水の団、火の団、土の団と順に別れ、月の団と光の団だけになる。

 「君が最近忙しいのは知っているが月の塔で子供が待ってるからいずれは来てくれる事を期待している」

 「ええ、いずれは行きますよ」

 リッネは月の塔へ去っていく。

 「ではネメッカ様、私は家に帰ります」

 「どうしてですか?」

 「テーファさんの事があるので」

 「ああ、招いたんでしたね。であれば私も行きます」

 「ネメッカ様。それは困ります。今日は仕事がありますから」

 イーサはネメッカを塔へ連れ帰る。ユッミルは足早に帰宅する。テーファはしんどそうだ。

 「何か足りない事とか欲しいものは無いですか?」

 「大丈夫ですけど横にはいて欲しいです」

 「それ位なら。ただ、先に夕食を食べたいのですが」

 「まだ掛かるので待って下さい」

 「そうですか」

 ユッミルはテーファとゆったり会話をして夕食をさっさと食べると戻ってくる。しばらくしてシウと風呂に入るとまたさっさと戻ってくる。テーファが寝るとユッミルも眠りにつく。

 翌朝、テーファは女の子を産んだ。メシャーナが気づいてユッミルを含めた何人かを起こした上にそれなりにすんなり出てきたので皆安堵している。

 「次女ね」

 「うーんと三女だよ。ミーハの所にも一人娘がいるからね。けど顔は合わせられないかも」

 「あらっ。メシャーナさん、女の子が増えて嫌なのかしら?」

 「これまでが男の子が多すぎただけ。気にしていられない」

 「けどテーファさんは戻るから女の子が少ないのはしばらくこのままだよ。そもそもこの子にしても遊べるのは先だし、そうこうしてるうちにお話もできるようになる。その辺りまではシャーユの独壇場だよ」

 「までは?」

 「他の子も活発に動き始めたらシャーユにばかりは構っていられないし、シャーユも徐々に親以外に興味を持っていく。ここまで仲良くできるのはその辺りまでだよ」

 「でもそれはシャーユとユッミルの話。私とユッミルの関係は続くし問題無いんだった」

 「そうだね。仮に関係が弱まるとしてもそれは両方が違う相手と仲良くなる事。問題は無いよね」

 「それよりユッミル君、この子に名前を付けてくれない?何かもうあなたがつけるのが恒例になってるし」

 「もちろん、テーファさんの娘には是非名前を付けたいです。ただ、他の男の子は何人いるのやら。名付けるだけでも一苦労ですね」

 「そうだよね。ゆっくりで良いからね」

 「ファッリーユはどうでしょう?」

 「構わないわ。良い名前ね」

 「ちょっと待って。私の子は?」

 「シウさん、別に名前はあなたが考えても良いんですよ?」

 「考えてくれないの?」

 「考えますが今度にして下さい」

 昼食後、ユッミルは無性の家に寄ってレヒーハを送ると事務所に向かう。特に変わった事は無く無性の家に戻る。

 「ユッミル殿、まずいぞ」

 「えっ、どうしたんですか?」

 「遂に私もだ」

 「何の事ですか?」

 「子供だ、子供」

 「まさか」

 「兆候はあったが今回は間違いない。少し膨れて来たしな」

 「なんて間の悪い」

 「流石に酷いぞ、ユッミル。そもそも他の女共と違って私はあまりいい思いをしていないぞ」

 「申し訳ない。つい口が」

 「まあいい」

 「ですが数週間居ないとなると言い訳は難しい」

 「まあ雨季の真ん中は休暇だがね」

 「しかし、危ういですね」

 翌日、レミーカに会うと依頼があったと発覚する。内容としては娘の交際相手の素行調査らしい。

 「えっと、調査難度や依頼受諾可否を判断したいのでその交際相手の職業等々を聞いておいて下さい」

 「職業はというか学生ですね。依頼主の娘さんとは違う学校だそうです。放課後は会ったりもするが会えない日も多くどうも何か用事があると言って予定を合わせてくれないそうでして。娘さんは寂しいと言っているだけだが依頼主はその話を聞いて疑念を持ってしまったようです」

 「あの、当面はそれで良いですが一応、初回は調査の種類を聞いてこちらが提示する一般的な条件を提示してお持ち帰り頂いてこちらは優先順位を付けつつ、着手する場合に依頼人に提示を要求する情報を整理して順番に次の段階に進んで依頼人にそうした条件を提示した上で依頼をここで受けるかを判断頂くという手順を踏まないといけない。例えば素行調査であれば街中での追跡だけなら基本料金だが潜入が必要なら追加料金が必要になる。相手方の予算によっては潜入しない不十分な調査で我慢いただく事になる。そういう事情もあって手順を踏まないといけない」

 「あの、調査対象のお名前と所属学校はもう聞いてしまっていて」

 「値段は提示しなかったの?」

 「いえ、基本料金は払うし調査結果次第ではもっとと言っています」

 「はあ、今回はそれで良いけどそのやり方は揉める元だよ」

 ユッミルは調査時間が夕方なのでテーファの家で一度休みに行く。

 「あっ。ネメッカ様」

 「奇遇ね。それともテーファと二人きりが良かった?」

 「そんな時間は無いでしょう」

 「そうね。今は人が用意できずに私だけどしばらくは誰かが必ず付くわ。もちろん、ユッミルが担当してくれるなら他は外させるわ。」

 「今日は久々に無性の家の方に泊まろうかと」

 「そうですか」

 ユッミルは素行調査に向かう。特に変わった行動は見えなかったが流石に一日での結論は性急なので継続調査として家に帰る。その帰り道、ネメッカが現れる。ユッミルは一度テーファの家に向かう。

 「ネメッカ様、どうしました?」

 「はい、明日辺りにキッシャノさんのお子様と会うという予定を立てたいのですが」

 「午前中なら構いませんよ」

 「それは大丈夫です。では明日は一緒に月の塔という事で塔に来て頂けますか?」

 「仕方ないですね」

 ユッミルは無性の家に帰る。レヒーハと触れ合いつつもフーニャを気にしている。フーニャはまだまだ元気そうだ。

 「やはり君はこうなると優しいな」

 「あなたが大人しければこちらもそうなりますよ」

 「大人しいか?」

 「そんな気がしますよ」

 「気のせいだと思うが」

 「そうかもしれませんね」

 翌朝、ユッミルは早くから光の塔へ向かう。

 「ユッミル様、おはようございます。今日はよろしくお願いします」

 「どうしたんですか?」

 「あまり気の進まない行為でしょうから丁寧にですよ」

 「それはあなたこそでしょう」

 「そんな事は無いですよ」

 「そうだよね。今日の話は必要だしね」

 「はい、形式的なものですから。おはよう、ユッミル」

 「ネメッカ様、今日は全くするなとは言いませんがやりすぎないで下さいね」

 「はい」

 ユッミルはネメッカやイーサ、フェノを連れて月の塔に向かう。リュッサやルーエは塔に残る。

 「あの、確かにネメッカ様がくっつくなとしか言ってませんでしたが」

 「嫌なら振りほどけばいい」

 「分かりました。歩きにくいので離して下さい」

 「逃げませんか?」

 「しませんから」

 ネメッカが手を離すとユッミルはネメッカの腰の高い位置を抱き寄せる。

 「これ、ユッミルの言うやりすぎじゃないんですか?」

 「嫌あるいは不適切と言うならやめますが」

 「いえ、私はそうは思いません」

 「それ以前に月と光の往復の道中は人は少ないですし気にする必要は無いかと」

 「そうね、集会所の方に寄りましょう」

 「寄りません。早く行きますよ」

 途中、ユッミルは見覚えのある人影を発見する。

 「お迎えに上がりました」

 「いやいや、家から来てますよね?」

 「私を置いていくんですか?」

 「光に移籍するんですか?」

 「ですからお迎えなのです」

 「分かりましたよ」

 テーファはユッミルの横を歩く。フェノは後ろに下がる。

 「ユッミル様、左手は忙しんですか?」

 「いえ」

 「でしたら私も同じ様に」

 「テーファさんは迎えですよね?」

 「それ以前に妻ですよ」

 「ネメッカ様、テーファさんと交代で良いですか?」

 「それは離婚するという事ですか?」

 「どうしてそうなるんですか?」

 「これは一応公式行事になっていますからそうなります」

 ユッミルはネメッカを抱き寄せたままテーファも抱き寄せる。

 「これは歩きにくい」

 ユッミルは歩くうちに手の位置が徐々に上がっていく。

 「ユッミル、観念して掴みやすいものを掴めばいい」

 「ネメッカ様の服は何処も掴みやすくは無いですよ」

 「そうですね。もう抱きついていいですか?」

 「いえ、頑張ります」

 月の塔に着く。

 「ユッミル殿、今日はご足労…両手に花と言うべきだが姿勢が低くなってないか?」

 「ああ、失礼しました」

 「まあ良いのだがキッシャノは上で休んでいる。ついてきてくれ」

 ユッミルはキッシャノと抱かれた男の子と顔を合わせる。

 「お久しぶりですね。そして、初めまして」

 「はい。そろそろこちらから出向こうかとも思ったのですが赤子を無闇に連れ出すのも考え物ですので来て下さってありがとうございます」

 「もうかなり安定してますね」

 「ええ、もうそろそろ二十日ですから」

 「申し訳ない。ただ、その子の弟や妹が何人も生まれそうだったので遠くの月の塔には足を向かせられませんでした」

 「他も忙しいそうですのでお気になさらず。リッネ様も積極的に世話して下さいますし」

 「それは良かったです。リッネ様、ありがとうございます」

 「それでだ。今日、呼びつけたのは他でもない。君にこの子の名前を決めてもらいたい。そろそろ名前が無いと不便でね。けどできれば君に決めてもらいたいのだよ」

 「名前ですか。男の子ですよね?」

 「ああ、男だ」

 「それだと先約が埋まってまして」

 「どういう事だ?」

 「イーサさん、名前が決まっていない男児の数を教えて下さい」

 「シウ様とエコ様の子供がまだなのであればユッホ様もまだですから5名ですね。しかも光には4名出産間近の子がいますからいずれ最悪の場合、9名の未命名男児が残ります。ミーハ様の娘もまだですから未命名児は10名になりかねません」

 「でしたら尚の事早くして下さい」

 「今はシウさんの息子の命名を思案中でして少しお待ち下さい。急ぐのであればリッネ様が名付けた方が箔が付くと言うものですよ」

 「分かった。何やら今は火の勢力が強い様だが少し待とう。だができる限り、早く願いたい」

 「あの、でしたら赤子を抱かせて貰っても?」

 「ああ、そうだな。気が利かなくて済まない」

 「そうですね。その方が名付けやすそうですね」

 ユッミルは赤子を抱いてみる。少し重い程度で特に差は感じない。

 「それでずっと気になっていたがテーファ、その子はまさか」

 「ファッリーユ、ユッミル様の子ですよ」

 「君の子はもう名前を?」

 「はい、女の子は少ないからか名前はすんなり決まりましたね」

 「まあ良い。少し待つとしよう」

 ユッミルとテーファとキッシャノは子供と触れ合う。

 「この子の面倒は月の団が?」

 「ああ、中々無い事だが人気者で常に数人の担当を決めてはいるが昼間はそれ以上の人数が可愛がってくれる」

 「光の団はもう赤子が四人もいますから赤子が団の話題の中心ですね。ですがもう慣れましたね」

 「うちも赤子が出来て以来、人の出入りが増えたよ」

 「ネミークはそろそろ歩きそうで成長を感じますね」

 「そうなの?」

 「ユッミル、あなたが女と遊んでる間にネミークは成長します。放っておくと無視されますよ」

 「気をつけますが手近なシャーユにどうしても手が伸びてしまいます」

 「知ってます。シャーユも女の子ですしね」

 「遊ぶってのはそっちの意味ですか?」

 「違いますよ。熱心に可愛がるという事です」

 「ネメッカ様は可愛がったつもりは無いですが」

 「えっ。全部演技だったのですか?」

 「ネメッカ様、何を言っているんですか?」

 「ユッミル様、ネメッカ様と過ごす時間は楽しいしネメッカ様の仕草や言葉は魅力的で言葉を交わしたり、触れ合ってそれにまたネメッカ様が返答や反応があって嬉しいですよね?」

 「ん?まあそんな感じですかね?」

 「それなら良いです」

 しばらくすると月の塔を後にする。ユッミルはテーファ母子を家に届けると無性の家に向かう。

 「ちょっと待って」

 「ユッミル様、流石にそろそろ近いので光の塔に」

 「この後は仕事なんだがそれも駄目か?」

 「いえ、夜に塔にお帰り頂けるなら」

 「ならそうしよう」

 ユッミルは再度調査するも特に問題は無い。塔に戻る前にレミーカに会い、経過報告を伝達する。

 「答え合わせもしたいので無理なら良いのですが今日と昨日との娘さんとその相手とのやり取りを聞き出して下さい。もし会うのが遅れるようならその前日までのもできる限り、お願いしたい」

 「了解しました」

 ユッミルは無性の家に寄って家にも寄る。シウの息子を抱き上げる。

 「シウさん、その子の名前を決めて良いですか」

 「もちろんよ」

 「テヒウス」

 「冗談よね?」

 「はい。ミリットでお願いします」

 「ありがとう、お礼にあなたもおっぱいを吸っていきなさい」

 「遠慮します。赤ちゃんでは無いのでお礼にはなりません」

 「何ならお礼になるの?」

 「あなたは今から言う事を何かのお礼でないとしてくれなくなるという事ですか?」

 「そうね。お礼はいらなさそうね」

 ユッミルはミリットに丁寧に別れの挨拶をして塔に向かう。塔に戻ると4人が並んで寝ているので順に声を掛ける。更に二人の子が寄ってくるので軽く相手をするとネメッカ母子やイーサと夕食を食べる。

 「4人並んでますけど同時では無いですよね?前回の二人の絶妙な近さは奇跡でしょう」

 「今回の4人はほぼ似た行動をとってますけどね」

 「それは無理でしょう」

 「ですがすぐである事に変わりはありません。待ちましょう」

 夕食後、ユッミルとネミークとネメッカが風呂に入っているとイーサが駆け込んでくる。

 「そろそろかもしれません」

 ユッミルは急いで服を着てネミークにも着せると迎えの部屋に向かう。

 皆落ち着いている。

 「どうやら違ったようですね」

 しばらくすると別の女性が少し苦しそうにし始める。

 が、しばらくして収まる。ネメッカはユッミルを胸元に抱き寄せて仮眠させつつ自分も目を閉じる。

 深夜、最初に呻いた女性が出そうだと訴えたので周りにいた女性がネメッカに声を掛け、ネメッカがユッミルを起こす。

 「今回は来たんですね」

 「おそらくは」

 女性は踏ん張ってはいるが中々赤子は見えない。

 「イーサさん、大丈夫ですかね?」

 「私に言われましても。ユッミル様が手を突っ込んで助けるんですか?」

 「そうですね。今の所は何もできません」

 「とりあえず状況を確認してみれば如何です?ユッミル様なら相当奥まで見えるのでは?ユッミル様にかかれば今のネメッカ様程度の服では裸同然でしょう」

 「やった事はありませんがイーサさんで試しましょうか?」

 「私の体に興味がお有りなら脱がせて遊べばいいのですよ」

 「そうかもしれませんからそんな必要はありません」

 「なるほどユッミルは私にくっ付かれると見えなくなるから嫌がっていたのですね。ごめんなさい」

 「で、くっつくのをやめるのですか?」

 「いえ」

 ユッミルは状況を確認するが少しずつ出口に向かってはいるので様子を見る事にした。

 しばらくしてようやく体が見え始めるがこれまでと比べて明らかに遅い。夜明け前、引っかかりが取れた様に最後はすっと出てユッミルが取り上げる。女の子である。ユッミルが寝ようと女児を渡すと母親はユッミルも抱き留める。ユッミルは眠っていく。

 「ごめんなさい」

 「どうしたんですか?」

 「赤子を差し置いて母親の体を借りてしまうなんて」

 「いえ、長丁場で疲れてたんですから仕方ないですよ」

 「分かりました。ですがとにかくこの後は赤子の面倒を見てあげて下さい」

 「それは構わないですけどずっと赤子の相手ではなくあなたの相手もできますからね」

 「そうですね。赤子の体調の安定が確認できるまで待ってます」

 また、呻き声が聞こえてくる。次のお産の様だ。

 「これ、長丁場になってその間に別の女性がとなったら目を離す隙が無い」

 「あの長丁場は中々無いでしょう。そんなに心配ならまた確認すれば良いでしょう」

 「そうですね」

 ユッミルはまた確認した。どうやら問題は無い様だ。

 「どうです?」

 「多分、大丈夫なので待ちます」

 ユッミルが待っていると一人目の母親が赤子を抱えて隣に来る。ユッミルの所見通りすんなり出てくる。残り二人の女性の容態は安定しているので今日生んだ二人の母は普通にユッミルと食堂に朝食に向かう。ネメッカとイーサもいるが両脇はその二人である。もう一人は男の子であり、ユッミルは二人の赤子に声を掛けながら朝食を食べていく。ユッミルは塔での仕事をこなして昼前に二組の母子や二人の妊婦の様子を見に行く。特に変化は無く、また二組の母子やネメッカにイーサにフェノやミヨーナにルーエと昼食を食べる。ユッミルは昼過ぎに素行調査に出かける。調査を終えると急いで塔に直行する。

 

 

 

 4節 名付け

 

 ユッミルが塔に帰還すると三人目の子供はもう出そうであった。

 「今日三人目ですか」

 ユッミルは赤子を抱きながら呆れている。

「同じ日にしたのですからおかしくはありません」

 「実際の順番とはバラバラですが同じ日とは」

 夕食にはフェノの他にネメッカを含めたリュッサとケーシャ以外の六組の母子が一堂に会する。ユッミルはネミークを膝に乗せながらイーサの息子に声を掛けてみたりしながら食事を食べていく。今日は仕方なくイーサ母子とも風呂に入ろうと4階の主宰部屋にイーサ母子と戻ろうとすると隣室のユーカが部屋から出てきて呼び止める。声が聞こえたネメッカ母子と共に部屋に戻ると最後の女性は少し力んでいる。ユッミルはまたまた確認するが赤子はまだ奥で見えない。

 「見えませんね」

 「そうですか。長丁場かもしれませんね」

 しばらくすると今度は女性本人から皆に声を掛ける。ユッミルが見ると確かに赤子が少し見えた。

 「確かにいますね」

 「そうですか。頑張ります」

 「あの無理に出すものでは無いですよ」

 「ユッミル様、そんなのは無理ですよ」

 「そうですよね」

 その後、しばらくすると赤子はすっと出てくる。特に異常は無い。産声は若干小さかったが体はしっかりしている。また、男の子である。その後、しばらくして夜は遅かったものの今日出産した四組の母子とイーサ母子はユッミルと共に生まれたばかりの母子の食事に付き合う。何気ない会話を軽く多方でかわすとユッミルは主宰部屋に入ってすぐに寝る。

 翌日、ユッミルは朝から木の塔に向かう。イーサと話した上でユッホとの息子にまず命名する事にした。ネメッカは昼から指揮所であり、休ませる為にイーサとユッミルで済ます事にしたがネメッカはフェノを連れて遅れて付いてくる。

 「シーリュノ様、おはようございます」

 「おはよう」

 「ただ、一応言っておくけどあなたと私の立場は対等よ。少し前まではあなたは主宰になりたてだったけど今やそんな感じではないわね」

 「そうですか。確かに少し時は進みましたね」

 「それよりご案内を」

 「そうね」

 ユッミルは応接室に行く。そこにはユッホと赤子と数人の術師がいる。

 「ユッミル様、今日はこの子の名前を付けてくれるんですよね?」

 「はい、ノウォックですかね」

 「分かりました。そうします」

 「ですが今度からは一人で考えない方が良さそうですね」

 「今度?そうですね。次の子は私も一緒に考えます」

 「是非、お願いします」

 「あっ。次を許可した覚えは無いですよ」

 「なら何故結婚式で止めなかったんです?もう遅いですよ」

 「そうでした。好きにして下さい。ですが永久に側室ですからね」

 「分かってます、忙しいユッホさんにはその方が良いですし」

 ユッミルは木の塔を後にする。

 「イーサさん、ネメッカ様を任せましたよ」

 「私も行きますよ。ユッミルにまとわりつく妻としてね」

 「分かりましたよ」

 ネメッカは水の塔が近づくにつれユッミルに体を寄せていく。

 「ようこそ、では早速、行きましょうか」

 ユッミル達は2階の食堂に通される。ミーハは赤子にミルクを飲ませている。ムヒューエとシャーネも居て食事も用意されている。

 「ユッミル、来てくれてありがとう。そろそろ戻るからね」

 「ラーハ様、戻るんですか?」

 「当然でしょう」

 「この赤子は?」

 「ご心配なく、当面はミーハに預けます」

 「意外ですね」

 「総合的な判断ですわね」

 「そうですか。ミーハ、隣に座らないの?」

 フェノは横にずれる。ミーハが隣に座る。ユッミルは赤子を撫でたり、じっと見たりする。

 「そう言えば赤子の名前を付けて頂けるという話でしたね」

 「ええ、ですが既に水の団で命名したというのであればその命名を取り下げてまで名付ける様な大層な命名ではないので辞退させて頂きますが」

 「いえ、命名はまだよ。火の団のエッヒネ様の子に命名したという噂がこの子が産まれる前に回ってきたのであなたに命名を依頼するつもりでしたし」

 「であればそうさせてもらいます。ミーハ、どんな名前が良いの?」

 「穏やかな名前かな」

 「それならサーナはどう?」

 「うん、良いよ」

 「あら?意外と丁寧な名付けね」

 「喜んでいただけて幸いです。女の子は貴重なので丁寧に名付けてしまうだけですけどね」

 「貴重と言ってももう三人は居るのでしょう?」

 「四人ですね。男は十人近い」

 「ムヒューエは第何子を産む事になるのやら」

 「そう言われても反応に困ります」

 ユッミルは水の塔を後にする。ネメッカと別れて無性の家で遅めの昼食を食べて少し休憩してから素行調査に向かうがこの日、彼はまっすぐ帰宅したので家に帰宅する。

 「久々ね。ユッミルさん」

 「ターヒョさん、ただいま」

 ユッミルはユンルクやミリットを抱いてみたり、ミルクをあげる。既にシャーユ、ユンルク、ミリット達五人の赤子は彼らの母とオーネを加えた六人が二人で三交代制で面倒を見ている。オーネは夜型でケーシャも夜の当番は日常茶飯事であり、昼夜問わず三交代で対応している。昼の当番はリュッサとエコである。ユッミルはエコに休んでもらい、リュッサに赤子の様子を聞きながら世話を手伝う。夕食後はリュッサとエコを交代して世話を手伝う。シャーユはメシャーナが帰ると母親の方に甘えていく。しかもいよいよ何か途切れ途切れながら声を出している。

 「シャーユ、そろそろ話せるかもしれないな」

 「うん、最近は何か伝えようとしてくれてるみたい」

 「そっか、僕も話してみるよ」

 「シャーユちゃんはどんどんお姉さんになっていくのね。うちの息子も早くしゃべらないかしら?」

 「シウさんの子は産まれたばかりでしょう。しゃべり始めたら怖いですよ」

 「ユッミル、お母さんと抱き合った時は気持ち良かった?」

 「そんな事を聞いてくる息子は困ります」

 「そうだとしても悪いのは私よ。罰は私が受けるわ」

 「そんな息子にはならないと思いますよ」

 「そうね」

 ユッミルは夜の当番のケーシャと少しだけ話すとシャーユやメシャーナと寝床に着く。リュッサとケーシャは二人で二人の息子を寝かせる。そこ以外は母子で寝る。昼間に仮眠を取っていたケーシャは息子とユンルクが寝付くとオーネを起こす。早朝、メシャーナが起きるとケーシャが寝て、オーネは眠くなってきた頃合いでシウを起こす。そんな感じの輪番制が成立しているらしい。

 ユッミルは珍しくメシャーナを土の団に送ってレミーカの家に向かう。

 「どうですか?」

 「はい」

 レミーカは依頼主の娘とその彼氏の接触状況、予定に関するやり取りをユッミルに報告していく。

 「うーん、友達との放課後の出歩きは用事なのか。彼女に飽き始めているとか?」

 「いえ、用事の回数が増えた以外には特に変化は無いそうです」

 「用事と称して友達と出かける際に特に異性はいませんでしたよ。それは確定ですので報告して構いません」

 「それは良かったです。娘さんが少し彼氏の予定を気にして問いただす頻度が増えて関係性が若干悪化していた様なのでその報告だけでもあった方が良いでしょう」

 「そうですか。でしたらもし調査継続なら娘さんに彼氏にやらない様に強く言った事が無いか聞くように言っておいて下さい」

 ユッミルは光の塔に向かう。途中の集会所でシェンハを見かけたので一応姿を消す。塔に着くと息子達の名前を思案しながら世話を手伝う。ユッミルは今日も素行調査に向かう。彼氏は珍しく一人だ。

 「また、ここか」

 彼氏は食堂に入る。ユッミルは集音して彼氏の注文内容等を把握する。他にも同じ注文をする学生がおり、少し人気の品の様だ。その日はそれだけで帰宅していく。

 ユッミルは無性の家でレヒーハに声を掛けてから家に帰宅する。

 「エコさん、息子の名前を決めましょうか。流石に呼び掛け等不便でしょう。ケーシャもすぐ決めますから少し待って下さい。エコさん、どんな風な名前にしたいですか?」

 「私は強い子に育って欲しいですね」

 「シェンタ君ですか?」

 「いえいえ、ユッミルさんは名付けに飽きたからと言ってからかわないで下さい」

 「まあ急いでませんしね。強い子ですか。シェンタはともかくバッソーさんにあやかるとか言う話は無いのですか?」

 「バッソー様は強いというより賢いですから今回は違います」

 「エッヒネ様は女性ですしね。ツーシュンさんですかね?」

 「誰かにあやかるのはやめましょう。ユッミル様、強そうな名前をお願いします」

 「強そうですか。まあバッソーはそこそこ強そうなので近い名前になってしまうかもしれませんけどエコさんの考える強そうな名前は誰なんですか?」

 「難しいですけど強いて言うならネメッカ様でしょうか」

 「マシャバとかはどうでしょう?」

 「少し女性っぽい気がしますね。ネメッカ様に近い響きはやめましょう」

 「ゼフロとか」

 「確かに強そうですね。そうしましょう。とりあえず、ゼフロに声を掛けてくれませんか?」

 「そうですね。ゼフロ、ユッミル父さんだよ」

 ぼうっとして特に反応は無い。

 「ありがとうございました。私は良いので次をお願いします」

 ケーシャは赤子をユッミルに抱かせる。

 「さて、どうしましょうか」

 「ユッミル様はこの子にどう育って欲しいのですか?」

 「そうですね。ノシャフスには元気に育って欲しいですね」

 「それで良いですよ」

 「確かに考えはしましたがケーシャさんの意向は大丈夫ですか?」

 「ええ、構いません」

 「分かりました」

 ユッミルはシウの息子ミリットを抱く。シウは横から顔を近づけて赤子の様子を見ると見せかけてユッミルと口を重ねる。ユッミルはため息をつきながらもシウを抱き寄せて夕食も隣で食べる。もう一方の隣はリュッサ母子である。

 「リュッサさん、私の子守までして頂いてありがとうございます」

 「い…えっと、ユッミル様。私と過ごして何がありがたいんですか?」

 「安らぎますよ。ネメッカ様にはどうしても気遣いますから」

 「それはあまり言わない方が良いのでは?」

 「そんな気もしますが言ってしまいますね」

 ユッミルは食事を終えるとリュッサと触れ合っている。

 「あの、今日は誰と寝るんですか?」

 「ターヒョさん、何かあるんですか?」

 「団の使いの仕事です」

 「ですがあなたは式を挙げた側室ではありません」

 「つまり、駄目という事ですか?」

 「そうは言いませんが彼女たちが優先ですね」

 「つまり、氷の残り二人が先ですか?」

 「基本的にはそうですが絶対ではありません」

 「つまり、あなたの気分次第と」

 「そういう側面もあります」

 「ですがあなたは私に機会すら与えません」

 「ですから今は忙しいのです。まずはそれをご理解頂きたい」

 「その方と遊んでますが」

 「疲れを取っているのですよ」

 「まあ良いです。待ちますけどあまりにもだと戻ります」

 「分かっていますよ」

 ユッミルはリュッサ母子と風呂に入り、シウ母子と寝る。

 翌朝、ユッミルはキッシャノの息子の命名の為に月の塔へ出向く。

 「こんにちは、リッネ様。名前の相談に来ましたよ。いくつか案も無くは無いのですが相談して決めた方が良いと思いまして」

 「いや、君に決めて欲しい。ただ、彼がどんな子か知り足りないというならもう少し触れ合ってからで構わない」

 「そうですか、キッシャノさんも同意見なのですか?」

 「そうだね。その方がこっちにとっては良い」

 「ただ、ここ最近は息子に名付けてばかりなので時間が掛かってしまいますけどお許し下さい」

 「私としては君が長く居る事は歓迎だ。しかし、君は忙しい」

 「そうですね。早速、行きましょうか」

 ユッミルはキッシャノと会う。リッネ共々食堂で何となく赤子を囲んでいる。

 「この子はどんな様子ですか?」

 「元気ですかね。ですが他の赤子がいないので比べようも無いのですが」

 「その辺りは私が見るべきですね。何か気づいた事とかは?」

 「難しい質問ですね」

 ユッミルはしばらく赤子を見ていく。

 「ウメックにしましょう」

 「分かりました。ウメックですね。命名頂きありがとうございます」

 「ええ、ですがエッヒネ様の子は私の子ではないので感謝されるのは分かりますがこちらは実子なのですから感謝されるのも変だと思いますよ」

 「それはそうですね」

 ユッミルは月の塔を後にすると変装、変声の上で素行調査対象が利用した食堂を昼食として利用してみる。歪曲視野で店内のメニューを見回すと彼の注文した品物は放課後の時間帯限定の学生向けの商品らしい。ユッミルは食事を済ませると事務所に寄る。レミーカは居ない。気配を探るが術者も居そうにない。その後、素行調査を行うが今日は依頼主の娘と居たので深追いせず撤収していく。ユッミルは推理を重ねようとするが中々辿り着けない。そこでそこらの学生から適当に見繕って今度は学生に変装する。何校かはどんな学校か調査済みであり、少々微妙ながらも注文して食べてみる。

 「そういう事か」

 放課後限定商品はかなり脂っこいものだった。味も濃い。今回の対象の恋人の実家、つまりは依頼主は中級商人の妻らしい。貴族ではないものの素行は気にするだろうというのは対象も考えそうな事だ。こんな不健康そうな食事はまずいと思っても不思議ではない。ユッミルは今度こそ無性の家に帰宅する。

 翌朝、レミーカに会う。

 「えっと、依頼主には会いましたか?」

 「今日ですね」

 「そうですか。でしたら集音オプションについての希望を聞いておいて下さい。もう結果は出てしまったのですが一応、利用しないなら調査の終了を通知して下さい」

 「分かりました」

 ユッミルはもう素行調査は不要と判断し、昼食はテーファの家で食べる。ついでに赤子にちょっかいを出してみるが特に反応は無い。流石に生後十日以内では当然の結果である。ユッミルは家に向かう。五人の赤子の様子を一頻り見て回ると光の塔へ向かう。

 「ユッミル、今日は泊まるんですね?」

 「ええ、まずは夕食ですが」

 ユッミルの予想通り七組の母子が並ぶ。

 「ユッミル?」

 「ネミーク、よしよし。カノール、元気かな?と二人の名前は決まっている。他の子も名付ける必要がある。しかし、五人一気には無理なので先に生まれた残り一人と女の子の名前を先に決めますので二人の赤子の様子を教えて下さい」

 「私の子はそうですね、良く寝ますね」

 「他の赤子もそうだと思いますが」

 「そんな気もしますが少し寝る時間が多い」

 「そうですか。他には?」

 「どうでしょう?イーサさん?」

 「ミルクを飲むのが遅いですね」

 「ああ、のんびりした子なのはそうなんですね。さて、どうしますか。やはり僕が名付けないと駄目なんですか?」

 「そうですね。そうして頂けると助かります」

 「ズードにしましょう」

 「分かりました。ありがとうございます」

 「次はこの子ですね」

 「ナミーエですかね」

 「随分早いですね」

 「はい。ですけど女の子の名前もそろそろ手が切れそうです」

 「私の子以外はそうそう増えませんよ」

 「だと良いんですが」

 「ええ、ユッミル様。私達は用済み?」

 「そういうつもりはありませんがイーサさんの目的が子供のいる側室の数ならもう急ぐ必要は無いでしょう」

 「ユッミル様、まだ大丈夫ですよ」

 「とにかく急ぐ事はしませんよ」

 ユッミルはネメッカとネミークと風呂に入って寝る。翌朝、ユッミルはテーファと会ってから無性の家に向かう。家ではフーニャが寝ている。

 「はっ。しまった、大丈夫ですか?」

 「少ししんどいだけだ。だがこの腹の膨らみ、コーリャとは会えない」

 「申し訳ない。とりあえず家に帰します。病気になったので休暇を前倒して休養している事にしましょう」

 「分かりました」

 「ありがとうございます」

 ユッミルは家に戻る。フーニャを布団に寝かせる。

 「あれ?ミーハに、子供も?」

 「ユッミル、ただいま」

 「うん」

 「子供はラーハ様の許可は取ったよ。子供は普通に寝かせて良いよ。まだ水術師と正式認定ではないしね」

 「そうですか。まあ母親がああなる時点でこの子に嫌われそうな気もしますが」

 「大丈夫だよ」

 「まあ良いです。昼食を用意しましょう。これで六人の赤子ですか」

 「おめでとう」

 「シウさん、大変ですねという意味ですからね」

 「それはそうだけどそれはそれで良い事よ」

 「そうかもしれませんが赤子を抜きにしても女性も多い。席が足りなくなりそうです」

 ユッミルは辺りを見回す。ユッミル自身、シャーユ、フーニャ、ターヒョ、シウ、エコ、リュッサ、ケーシャ、ミーハの五組の母子、にオーネと光の団員で六人の赤子と八人の女性にユッミルを加えると15人である。席数は九席必要だが八席しかない。

 「私は立ちますので」

 「いやいや、全員一緒に食べる必要は無いわ」

 「机、二つに分けた方が良いかもしれませんね」

 「それってまだ女を連れ込むって事?」

 「そうですね。少なくともいずれレヒーハは帰ってきますしメシャも居ます。加えてネメッカ様やテーファさんが来る等もあります」

 「あの、私はもう常駐しなくても良さそうですか?」

 「そうですね。こういう形なのは申し訳ないですが」

 「では早速、引っ込みますね」

 「全く来なくなるのは困りますからね」

 「分かってます」

 エコは息子を連れて火の塔へ出かけていく。

 「ただ、家事戦力は衰えましたね。リュッサさんに負担を掛けますが申し訳ない」

 「私も最低限はできます」

 「そうでしたね。ありがとうございます、ケーシャさん」

 「ユッミル、それはどういう意味?」

 「ミーハ、家事できるの?料理とか」

 「けど水には困らないとか全く役に立たない訳では無いわ」

 「そうだね。子供の面倒を見て欲しいし」

 ユッミル達は昼食にする。結局、ユッミルとシウとリュッサ等で用意をする。昼間は人が増えて特に当番を決める必要は無さそうだ。子供はミーハとケーシャが世話している。シャーユはユッミルと言葉を交わそうとしている。

 「どうしたの?」

 「いえ、僕ばかりより他の人とも話した方が良いと思って」

 「それで選んだのが私?」

 「今日はそうですね」

 「そーね」

 「まあ良いけどあなたが話すだけで十分だと思うわ。シャーユちゃん、ユッミルは女好きだからあなたをこれからますます可愛がるわ。安心しなさい」

 「やはりあなたと会話はしなくて良いです」

 ユッミルはシャーユを抱えてシウから離れる。その後もシャーユに話しかける。そうしているとメシャーナが帰宅する。ユッミルはシャーユをメシャーナに引き渡す。

 「ユッミル、シャーユと遊びたいならそのまま遊んでていいけど?」

 「それもそうだね」

 「ユッミル、シャーユはどう?」

 「色々話してはいるけど会話にはなってないね」

 「それは気が早いよ」

 「それはそうだけどね」

 ユッミルは夕食の準備に向かうが一度フーニャの様子を見る。疲れているらしい。ユッミルは少しだけ夕食の準備を手伝う。準備が終わりかけるとフーニャを抱き上げる。

 「くっ、まるで赤子扱いだな」

 「嫌ならやめますけど」

 「いや、構わない。体調が良くないからな。存分に私を抱くと良い」

 「はいはい、抱きますよ」

 ユッミルはそのままフーニャを抱きかかえたまま食事を始める。両脇にはメシャーナとミーハとその娘達がいる。

 「ユッミル、君は周りを五人の女で固めるんだな。男も増えてきてるのに」

 「そうかもしれませんね。それにしてもミーハもメシャも食べにくくないの?」

 「全く、目を離す方がしんどいわね」

 「けどシャーユもかなり…」

 シャーユはユッミルの方を向く。

 「シャーユ?」

 「ヤー?」

 「シャーユ」

 「ヤーウ」

 「惜しい」

 「なるほどユッミルは四女にご執心という訳か。まあ私は病気だが四女に構ってくれていい」

 「四女ですか?でもまああなた方三人は年齢順通りですね。胸が大きくても幼い事に変わり…」

 「幼いって何?」

 「背も小さいし雰囲気もね」

 「背は少し伸びてるし雰囲気って何?」

 「何となくだし気にしなくて良い」

 ユッミルは夕食を終えるとフーニャをベッドまで運ぶとシャーユとの会話に挑戦する。

 「ユッミル、シャーユとそろそろ風呂でも入ったら?」

 「そうだね」

 ユッミルはシャーユを風呂に入れる。ユッミルはシャーユを世話しながら話しかけていく。

 「ユッミル、焦ったら駄目だよ」

 「それは分かって…メシャ、一緒に入らないでって」

 「うん、ネメッカより先に二人目を産んだらシャーユとこの家を出る。それなら良いでしょ?」

 「えっと」

 「嫌なら嘘でもいいから嫌いって言って」

 「そうだね。けど三人目も四人目も先は越したら駄目だよ。ネメッカ様も若くないし五人目以降は産めるか分からないし子供はあまり生みすぎたら駄目だよ」

 「うん、ユッミル。それで良い」

 「メシャ、あんまり抱かれるとシャーユが潰れる」

 「そう、シャーユを含めた家族で上手くやらないと」

 メシャーナはシャーユを抱いてユッミルに背中を預ける。

 「あの、申し訳ないですが今夜こそ隣で寝させて頂きたい」

 「そう言えば十日位は経ちましたね。ですが今日はそういう気分では無いですよ」

 「そんなのは知りません」

 ターヒョは服を脱いでいく。ユッミルは術でターヒョを寝かせるとメシャーナ母子とケーシャ母子の間で寝る。メシャーナ母子を抱きながらケーシャと静かに話す。

 翌朝、レミーカから集音追加について肯定的な返事を得たと言う話を受けて調査結果を伝達する。

 「明日以降なら結果は通知しても構いません」

 「分かりました」

 ユッミルは昼前に光の塔へ向かう。まずは出迎えたユーカの息子を抱いたり、撫でたり触れ合う。その後、階段を上がっていく。食堂の階でイーサが息子を差し出すので同じ様に抱いたり、撫でたりしていく。次に宿舎の階ではまた二人の息子と触れ合う。

 「名前、待ってますよ」

 「申し訳ない」

 「いえいえ」

 「それよりそろそろ昼ですよね?来てから意外と時間が経ちましたよね?」

 「えっと、そうですね」

 「それにしても各階での出迎えみたいなのは不要ですよ」

 「いえ、イーサ様が来るからユッミルと遊ばせる様に言いましたので」

 「残りの子は?」

 「ミヨーナさんとネメッカ様にフェノさんが世話してますよ」

 「ではネメッカ様の所に行きます」

 上階に上がって会議室に向かう。ここは最早臨時託児所と化しており、幹部会は開催されていない。定例会はユッミル抜きで細々と食堂で短時間の開催となっている。

 「ネメッカ様、大変そうですね」

 「それはそうですが皆ユッミルの子供ですから」

 「ありがとうございます。ただ、残念ながら今日の晩は別の女性の所に泊まります」

 「浮気ですか?」

 「側室扱いの人ですけど二人目がネメッカ様より早くなるかもしれません」

 「シウさんですか?ただ、あの人は事前に受けるとか言う人でも無いですよね?イーサはここに居ますしミーハさんですか?まあ順番を考えるとそうなりますか。けど私は拒んでもいないのにしてくれないだけですからね」

 「リュッサさんはもうしましたけど今日はテーファさんですね」

 「ああ、それなら好きにして下さい。それとも気を引く為に宣言しに来たのですか?それなら次来た時は期待していて下さい」

 「ネメッカ様、すっかり元通りですね」

 「そうかしら?」

 ユッミルはネメッカを強く抱く。

 「ネメッカ様にその気は無くても美しいですよ」

 「ありがとう」

 ユッミルとネメッカはしばらく触れ合う。

 「で、いつ手を出すんですか?」

 「この部屋で何かするのは駄目でしょう」

 「じゃあ主導部屋に行くんですよね?」

 「ええ」

 二人は主導部屋に向かう。

 「ユッミル、脱がせていいんですよ?」

 「今日はしませんよ」

 「まさかあの程度で満足と?」

 「そういう事ですね。この後はテーファさんと寝ますし」

 「まあ良いです。私も不意を打たれて油断しましたから今日は仕方ないです」

 ユッミルはネメッカ達と昼食を食べる。ユッミルは少しだけ仕事をするとテーファの家に向かう。

 「ああ、ユッミル君」

 「今日は泊まっても」

 「大丈夫だよ」

 ユッミルは娘を世話しようとするが特に何も無い。ユッミルは夕食を食べる。その後は三人でお風呂に入る。

 「ユッミル君、着る気は無いの?」

 「そうですね」

 「じゃあファーちゃんはどっちの後ろに置く?」

 「こちらにしましょうか」

 ユッミルはファッリーユを寝かせる。

 「テーファさん、お待たせしました」

 「ユッミル君、ファーちゃんは何もしなければちゃんと寝るよ?」

 「構いすぎたんですか?」

 「うん。ユッミルはファーちゃんとの遊びに夢中になったのかと思った」

 「まさか、ですけど聞いておけばよかったですね」

 「ネメッカ様、ご機嫌ですね」

 「はい、やっとミーハさんやシウさんの先を越す人が増えそうですから」

 「シウ様は敢えて引いてる気もしますけどね」

 「ええ、けど私としてはメシャーナちゃんを取り込みたいのですけどね」

 「それに関してはユッミル様が止めてきますね」

 「いえ、それ以前にあまり信用されてませんね。しかもミーハさんとの関係も悪くない。さらにはあの家にいる子全般と良好な関係を築いている」

 翌朝、テーファは目を覚ますと上半身を抱き寄せているのでユッミルは抱き返す。

 「朝食にしましょうか。十分ではないですが時間ですね」

 「でも良いの?私、まだ太ったままだよ?」

 「テーファさんは大丈夫ですよ」

 ユッミルは帰宅する。昼前だ。さっさと食事を済ませると指揮所に向かう。交代相手はツーシュンである。そして、今回の幹部はターヒョとミューレである。

 「ミューレさん?」

 「お久しぶり」

 「はい」

 「今日は居るのね。居なかったら別の子にしたんだけど居るなら私がやる」

 「やりたい放題ですね」

 「仕事よ。魔族の様子は直で見たいのよ」

 「直では見れないと思いますが」

 「そうね。けどあなたは違う」

 「私に聞きに来たと」

 「正確には見て欲しい所を現場で見てもらう為」

 「仕方ないですね」

 「ちょっと、私も混ぜなさいよ」

 「それにしてもどうしてばれたんですかね」

 「いや、あなたがいないから指揮所に来たら居ただけよ」

 「そういう事にしておきます」

 「けど私は戦闘が発生したらそれなりに役に立つわよ」

 「起きたらね。ミューレさん、用件はさっさと済ませましょう」

 「ならあそこはどう?」

 「あの、見えてませんよね?」

 「大体の方角位知ってるわよ」

 「分かりました」

 ユッミルはミューレに現状を説明していく。

 「ありがとう。参考になったわ」

 「それは良かったです」

 「用件は終わったみたいね。ユッミル、帰るわよ」

 「なっ、また増えるのか」

 「けどまた実力者だぞ」

 「まあ今回は俺らには関係なさそうだしいっか」

 「そうだな。テーファさん以外はそんな可愛い子はいないしな」

 「まあ帰りますか」

 「シェンハ様でもいないと可愛い子はいないと言いそうね」

 「まあ反感もたれても良い事は無いですし。それに基本は実力主義ですから」

 「なら私の何が不満なのかしら?」

 「実力は十分ですよ」

 「まあ外でする話でも無いわね。急ぐわよ」

 ユッミルとターヒョは揃って帰宅する。

 「お帰り、ユッミル」

 「ただいま」

 「その様子だと指揮所に襲撃があったのね」

 「そうですね。大変でしたよ。根掘り葉掘りですから」

 「意外ね」

 「えっ。あの人はそういう人でしょ」

 「えっと、誰の事?」

 「ああ、知らないなら良いです」

 「まあ良いか。夕食は皆もう済ませたわね」

 「私はこの子の面倒を見てたからまだね」

 「私もそろそろ食べようと思ってたの」

 ミーハとメシャーナが立ち上がる。ミーハは服を脱いでいく。

 「ミーハ?この後は寝るし良いでしょ?それともユッミルが脱がせたかった?」

 「もう好きにしてくれ。ってメシャ?」

 「服邪魔だし」

 「は?」

 「何か問題あるの?」

 「風邪引くよ?」

 「そっか、じゃあ食べようか」

 「えっ?」

 ミーハとメシャーナは子供を抱いてユッミルを押して席に着く。

 「下まで脱ぐ必要は無かったよね?」

 シャーユは乳を吸っている。メシャーナはシャーユを時折制して食事を食べていく。

 「ユッミル、好きに触って良いからね。大人になってるか知ってね」

 メシャーナは少し背が伸びてはいる。ミーハはほとんど変わっていない。

 「私も触って良いなんて言わなくても分かるよね?」

 「赤子優先だよ」

 「もちろん、優しくなら赤子の方にも遠慮なく触ってね」

 ユッミルはシャーユに話しかけたり、サーナを撫でていく。ユッミルは食事をほぼ終える。

 「メシャ、椅子を少し引いて」

 ユッミルはシャーユを抱き上げて横にもたれさせる。ユッミルはメシャーナの正面に座る。

 「どうしたの?」

 「痛いか?」

 「痛くは無いけどどうしたの?」

 「メシャ、本当に脱いでて良いの?」

 「大丈夫だよ」

 「足の方を見せて。まだ少し子供だね。よくこれで産んでしまったね」

 「子供って酷いよ、ユッミル」

 「そうだね。ユッミルは酷いかもしれない」

 「けどユッミル、私は身勝手な事をした。別れて欲しいなら先に償わせて」

 「付き合ってもいないと思うが」

 「それは関係ない。追い出したいならそうして」

 「嫌じゃないの?」

 「嫌じゃないと償いにならない」

 「メシャが嫌な事はしたくないんだけど」

 「そこまで嫌ではないよ」

 「考えておく」

 ユッミルはメシャーナに服を着せる。ユッミルはミーハ母子と風呂に入る。ユッミルはミーハの誘いを先延ばしにしてリュッサに抱いてもらいながらメシャーナを抱いて寝る。

 翌朝、レミーカから依頼完了の連絡を受ける。詳しい話をする為にレミーカの家に向かう。

 「どうでした?」

 「調査がそこそこ早いと喜んでいましたよ」

 「そうなんですか。他の事務所の具合も調べておくべきでしたね」

 「報酬も十分頂きましたよ」

 「それよりどうするつもりなんですか?」

 「どうするとは?」

 「素行調査の結果、彼は密かに味の濃い粗悪な食品の虜になって週の半分位食べに行っていると分かった訳で依頼主がどうするかは少々気になります」

 「ああ、それでしたら、別に構わないらしいですよ。同時にそういうのは婚約する段階で教育すればいいと」

 「そうですか。彼氏さんは大変ですね。ありがとうございました、レミーカさん。引き続きよろしくお願いします。」

 「ええ、報酬は面倒なのでネメッカ様にお預かり頂きました。約束通り、固定給と報酬の20分の1は頂きましたからそれはもう大丈夫ですよ」

 「分かりました。ただ、事務所の整備費に一割は当てるのでネメッカ様にその分は差し戻す様に言って下さい。」

 「結構な額なので一割でも相当ですよ」

 「でしたらその半分ですね」

 「分かりました」

 「そのお金は事務所の整備になら勝手に使って構いません。後で何に使ったか報告頂ければいいです」

 ユッミルは帰宅する。急いだので昼にはまだ早い。

 「シャーユ」

 「シャーウ」

 「おお、ユッミルは?」

 「ユッミリュ」

 「少し話せるか。メシャーナは?」

 「シャーン」

 「あのママは自分の名前位憶えさせろよ」

 「ママ、こどもー?」

 「うん、パパしか興味無いのは子供だからだよ」

 「むー?シャーだよ」

 「シャーだね」

 「シャー」

 ユッミルは昼食を食べながら料理の名前をシャーユに教えてみる。他にも机等のものの名前を教えてみる。だがそこまでの手ごたえは無い様だ。昼過ぎ、フーニャが苦しそうにするのでユッミルや数人が傍に行くがすぐに収まる。

 「ただ、近いのは間違いなさそうですね」

 「そうね。まあこれだけ居れば一人増えても同じだけど。ミルクを買いに行く頻度が増えるだけ」

 ユッミルは夕食後に無性の家に向かう。レヒーハとゆっくり過ごす。翌日、午前中は事務所に居る。するとネメッカがお金を持ってくる。

 「大金を持った美しいお姉さんですか。どうしますかね?」

 「意中の人と二人きり。邪魔は確実に入らない。どうすると思います?」

 「分かりました。ゆっくりしましょう」

 ユッミルとネメッカはしばらく話をしてユッミルは姿を変えて買い物をする。ネメッカと歩いていると気配を感じる。ただ、すぐに何処かへ行く。二人は事務所に戻り、荷物を置いていく。

 「向こうも姿を変えてる事位は分かるでしょうね」

 「まあ探偵を光術師がやるのは無くは無い」

 「こちらが気づいてる事にも…」

 「気づいてる可能性は高い。自信があるんでしょう」

 「ですがそんな術師が団に入るでしょうか?」

 「ただではないし探偵業との掛け持ちも許すよ。ただ、姿を変えて数日に一度指揮所に行ってもらう。休みたければ塔で留守番をついでにしてもらう。それだけだよ」

 「さて、お昼はどうします?ユッミルと遭遇すると分かってれば用意したのですが」

 「ここは昼食を食べれない。それは机を買えばいいけど食事は安くない」

 「ではテーファの家に行きましょう」

 二人はテーファの家で昼食を食べる。その後、三人でしばらくファッリーユの世話をする。テーファの家を後にする。

 「ネメッカ様、塔では無く家に来ませんか?」

 「それは構いませんが」

 二人は家に向かう。

 「ああ、フーニャさんもそろそろなんですね。そうだ、リュッサさん、子供は私が見ますから光の塔に行くか家に帰りなさい。休んで構わないわ」

 「はい」

 リュッサは家を出る。

 「で、あなたがターヒョさんですね」

 「はい、ネメッカ様」

 「氷の団はなんと?」

 「成婚した二人にお呼びがかからない以上好きにしろと言われました」

 「こちらも悪いですが面倒ですね。氷の団は人数が多いのにこういう対応が光より粗雑」

 「まあシェンハさんがああですから。若いですが愉快な人ですけどね」

 「まあシェンハ様はお前の事を弱い、ネメッカに相応しくはあるけどって言ってたけどね」

 「皆、どうしてネメッカ様を雑魚代表扱いにしようとするのか…」

 「ユッミル、それはどういう?」

 「水はそうでしょうしシェンハ様やリッネ様はそう思ってますよ。まああの人達に取ってみれば大半が弱い。何故かその代表があなたなんでしょう」

 「それはまあお気に入りのユッミルを手中に収めてるからでしょう」

 「そうかもしれませんね。ではターヒョさん、シェンハ様に雑魚と夜営なんてのは気の迷いでしょうから金輪際そんな冗談はおやめ下さいとお伝え下さい」

 「くっ。いえ、今はユッミル様と必要なら連携を考えている様です。夜営もその一環の様で私からもお願いします」

 「はい、考えておきますが忙しいのでしばらくお待ち下さい。」

 「分かりました」

 ユッミルはユンルクとネメッカと風呂に入り、ユンルクとシャーユとメシャーナを片手で抱いてもう片方の手はネメッカと手を繋いで寝る。

 「やはり子供だけでも4人が限度ですね」

 「だけど両側に女性を置けば全子供と寝れると思うわ」

 ネメッカは指揮所に既に行ったらしい。ユッミルはゆっくり休んでいる。リュッサはネミークを連れて戻ってくる。

 「もっと休んでくれて良かったのに」

 「いえいえ」

 ネメッカがこっちに戻る様子は無いので昼食を食べる。しばらくするとネメッカとイーサが一人ずつ子供を抱えてくる。

 「今日は昼寝しましょうか」

 「そんな事をしたら夜が地獄ですよ」

 「そんな長時間は寝ません」

 ネメッカはネミークを抱くだけでユッミルの両側に4人ずつ子供を配置する。

 「あの、こんな事の為にイーサさんは我が子を連れて来たんですか?光唯一の女児まで」

 「この時期の子供には色々やらせた方が良い」

 「何ですか?それ」

 「ユッミル様は寝てればいい」

 ユッミルは片手に4人ずつの赤子を手に抱えて溢れさせながら昼寝する。逆側はメシャーナとシウが支えている。

 「確かに可愛らしい光景ですが手が動かせませんしそこまで休めません」

 その後、九人の子供をユッミルとイーサとネメッカで遊ばせる。夕食前にイーサは息子と女児を連れ帰る。

 翌日もネメッカは帰らず、早く起きてメシャーナやシウと子供達の世話をしている。昼前、ユッミルは一度無性の家と塔に様子を見に行くが戻っても変わらない昼食後はシウが出かけてリュッサとミーハも加わって世話をしている。ユッミルはシャーユとネミークと遊んでいく。

 「ユッミル、最近はやっと暇そうね。フーニャちゃんの体調が悪化したらやめても良いけど基本的には今日こそ付き合ってもらうわよ」

 「あなたの目的は?」

 「団員の代わりよ」

 「分かりました。でしたら早い内に氷の塔に出向いて成婚した団員のお迎えに上がります。構いませんね?」

 「えっ。ちょっと待ちなさい」

 「構いませんよ。そちらにも待ってもらいますが」

 「そういう事、私は最初から捕まってたのね。さっさと仕留めないのは酷いわね。」

 「理由は?」

 「言ったらしてくれるの?」

 「いえいえ、そうですね。自分で探るべきでしょう」

 ネメッカは今度は夜通しフーニャの事を見守る。朝、気づくとネメッカが抱き付いている。ネミークは上にのしかかっている。翌日は小雨が降っている。レミーカと落ち合って事務所に向かう。一件、依頼の書簡が投函されている。

 「特に難しいものでは無さそうですし話は聞いていただいて構いません」

 「分かりました」

 ユッミルは買い出しの続きに出かける。

買い出しを終えるとまた気配を感じる。歪曲視野で少し追うが簡単には見えそうにない。荷物を整理すると帰宅する。フーニャは少し元気だった。ただ、腹はいよいよ膨れかなり近いのは明白だ。シウは様子を伺っている。しばらくしてネメッカが来る。

「ああ、ネメッカ様ですか」

 「ええ」

 「私は?」

 「いえ、今日は居て下さい。ユッミル、まだ無性の街に残るんですか?」

 「始めた探偵業が少し依頼が残ってまして。こちらの都合で投げ出すのもあれなのでもう少し続けます」

 「仕方ないですね」

 ユッミルは漫然とネメッカに甘える。ネメッカはそれを受けながらフーニャの様子を見ている。しばらくするとユッミルもつられてフーニャを心配する。

翌日、依頼は成立した。依頼としては人探しである。特に期日の指定は無く依頼主の情報を基にまずは聞き込みは避けて姿を隠して探す。手がかりは無く昼前には帰り、昼食を食べる。シャーユと話してみるがメシャーナが帰ったのでシウ母子と遊ぶ。夜はターヒョが寄ってきたが以前程のしつこさは消えていた。

翌朝は早くに指揮所に向かう。幹部はあまり見知らぬ木の女性と土の男性であった。魔族はリッネがいないからか草原の方で若干前に出ていたが森の方は守備固めという感じだ。特に問題は無く昼過ぎに帰るとネメッカがいてフーニャの世話をしている。

「どうですか?」

「問題は無い。他のと時期が被っていないから皆の世話が手厚い。ユッミルに邪険にされ、後回しにされた役得だな」

「病人は邪険にしませんよ」

「そうだな」

夕方、ネメッカがレミーカの迎えに一度出て戻ってくるとレミーカも一緒に来る。ネメッカに呼び出されて外で話す。どうもまたいくつかの依頼が舞い込んだらしい。

「繁盛ですね。本当にいつ帰ってくるのでしょうね」

「事務所は残して家は撤収の選択肢もありますから」

「まあ任せますよ」

家に入ろうとするとメシャーナが帰ってくる。夕食後はネメッカ母子とメシャーナ母子で遊ぶ。

「メシャ、風呂はどうする?」

「今日は後にする。ユッミルが先で良い」

ユッミルはリュッサ母子とネメッカ母子と風呂に入る。ユッミルはネミークにフーニャの手を握らせる。

「なっ。将来的には私の相手をこの子にさせる気か、お前如きでは光の主宰の相手には相応しくない。子供同士でやっておけと?」

「何を言ってるんですか?そもそももう一人目は産めそうじゃないですか」

「それもそうだな。大人しく待つよ」

翌日、無性の家とテーファの家と光の塔を順に回る。光の塔では子供達の世話を手伝う。昼過ぎに家に帰るとネメッカがいてネミークのついでにシャーユや留守のシウの息子の世話もしている。リュッサやネメッカ達と遅めの昼食を食べてそのまま三人の子供と遊ぶ。夕方頃、フーニャが苦しそうなので子供を連れて様子を見る。そうしているとエコが来る。息子は連れていない。マッラに任せたらしい。ミーハは塔に戻っている。夜にシウが帰宅するがユッミルはエコとリュッサ母子と風呂を終えていた。深夜、とうとうフーニャが呻き出す。最初に気づいたのは子供の様子を見ていたケーシャであり、うとうとしていたオーネも気づき、ユッミルやネメッカを起こす。騒ぎでメシャーナやシウも起きる。ターヒョは寝たままだ。

「ヌーグですね」

「随分早い名づけだな。雑過ぎないか?」

「あなた一人が妊婦なので考える時間があっただけですよ」

「まあいい」

夕方までフーニャ母子の世話をするとネメッカは居残るらしいのでリュッサ母子を連れて光の塔へ向かう。夕食はやはり多数の母親と共にする。夕食を終えるとイーサ母子とリュッサ母子と風呂に入る。そのまま挟まれて寝る。

翌日、母親達を集める。

「では残り三人の命名をしますね」

ユッミルは三人の名づけを終えると世話をして昼食を終えると小雨が降っていたが事務所に向かう。事務所付近でまた視線を感じたので一瞬広範囲に光を照射。相手は防御するもユッミルは位置を補足。ある程度追いかけるともう一度光を照射するが今度は何も見えない。

 「逃がし…」

 ユッミルは歪曲視野を使う。ユッミルも姿を隠して密かに追う。ユッミルはゆっくり術師を捕まえる。

 「やっ」

 ユッミルは追いついた後の事を考えていなかった。とりあえず遮音して少女の視野を回収する。力量はユッミルの方が上の様だ。魔石を使って眠気を誘う。少女は辛うじて寝たので無性の家に連れていく。


読了ありがとうございます。次章は早ければ4月前半の予定ですが基本的には4月末かと。その次はその一カ月後位なのはおそらく変わりません。

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