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至上の無名光術師の苦難  作者: 八指犬
13/23

13章 外れの街

余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。

また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。

  1節 学校の事情

 

 ユッミルやエコは例の物件周辺に近づかないよう脅迫して撤収する。数日程度何も無ければ契約成立の様だ。

 「あの、ユッミルさん。私も泊まります」

 「えっ」

 「シーリュノ様の許可も頂きました」

 「そうですか、構いません。今は人が少ないので」

 三人は真っ直ぐ北に向かう。月と光の境界付近でレミーカと別れて家のある東の方に向かう。

 「あれ?フーニャさん?それにメシャもか」

 「何?嫌そうだけど」

 「そんな事は無いけどね。ここが外でなければ抱きしめたい所だよ」

 「すぐそこに家あるけど?」

 「うん、入ろうね」

 ユッミルはメシャーナと手を繋いで家に入る。

 「げっ。」

 ユッミルが家に入るとまずイーサが目につく。奥にはネメッカらしき人もいる上にシウにリュッサにエコもいる。よく見るとオーネも寝ている。歪曲視野を使うとやはりネメッカがネミークを抱いている。

 「あの、というか光の塔に行けという事ですか?」

 「ああ、ユッミル来たのね。来たなら来たで良いわね」

 ユッミルは後ろを向く。

 「光の塔に行くなら私も追います。それでネメッカ様が居ないと言う事ですが良いですか?」

 「メシャ、そろそろシャーユとネミークは会わないといけない。良いよね?」

 「あの、別々で遊んでるだけで近いですよね?」

 「いや、母親が許可するかは大きい」

 「ユッミルが言うなら状況が状況だし構わない」

 「じゃあ先にネミークと遊んでるから連れてきてね」

 ユッミルはネメッカに近づいていく。

 「今、用があるのはネメッカ様ではありません」

 ユッミルはネメッカの横に座ってネミークを呼び寄せる。ネメッカはネミークにユッミルの膝を背もたれに座らせる。そうしているとシャーユは這って来てユッミルの膝に跨る。ユッミルはネミークをシャーユのいる方に向かせる。二人の赤子は一度見つめ合うがシャーユはユッミルに遊びをせがみ、ネミークはユッミルの膝深くを背もたれにしてネメッカの方を向いている。シャーユは徐々にユッミルの腰付近から正面に移動して足がネミークにかするがお互い気にせずに寝て手遊びをする。シャーユは時折声も出すがネミークは微動だにしない。

 「ユッミル、何か期待したんですか?」

 「いえ、そういう訳でも無いんですが。まあ子供同士は特に何も思いませんよね」

 「けどユッミル。子供はシャーユの方が可愛いでしょ?」

 「今だけかもしれないけどね」

 「ネメッカに気を遣わず正直に言えばいいのに」

 「言ってるに等しいですけど構いませんよ」

 「余裕ね」

 「メシャ、膝に来て良いよ」

 「うん」

 「ネメッカ様にはこれはできないからね」

 「そうだね」

 ネメッカは腰を上げようとする。

 「ネメッカ様、やめて下さい」

 「仕方ないですね」

 「それよりネミークも色々な人に慣れた方が良さそうだし、ソヨッハ」

 「どうしました?」

 「この子抱いてみて」

 「はい」

 ソヨッハは座ってネミークを抱く。シャーユはユッミルの肩に登って遊んでいる。シャーユは少し心配そうに手をこまねいている。しばらくするとイーサが近づいてくる。

 「飲む時間ですね」

 ユッミルはシャーユを静かに下ろすと服をはだけようとするイーサの手を掴む。

 「やめて下さい」

 「ネメッカ様ばかりにさせられません」

 「僕はネミークとシャーユと大人しく触れ合いたいのです。母親ならともかくそうでない人は大人しくしてて下さい」

 「ユッミル、私の胸を揉めば私の胸が好きな仲間と認識してネミークと仲良くなれますよ」

 ユッミルはネメッカと頬を合わせる様な所作をした後にネミークにもやってネミークを抱き直す。シャーユにも頬を合わせる。シャーユとネミークを抱きながら近づけると今度はシャーユがネミークの肩を軽く叩く。ネミークは少し顔を向けただけだがユッミルは思わずシャーユを撫でていく。

 「はあ、流石長子ですね。これだから一番の子供は私が射止めたかったんですよ」

 「ごめんね」

 「いえ、出会いの時点で負けてますからこれは仕方ないです。ネミークは再教育ですね」

 ネメッカはネミークを抱き上げてあやしていく。メシャーナはシャーユとユッミルに甘えていく。ユッミルはシャーユと遊びながらも今度はリュッサと話している。

 「それでユッミルさんは今晩は誰と寝るんですか?」

 「せっかくだからシャーユとネミークと寝てついでにその保護者とも寝ようかと」

 「子供を盾に身を守れれば油断するんですね」

 「そんな事は無いですよ。ネメッカ様がその気になれば拒めません。ですがネメッカ様は大抵、気を遣ってくれてるだけですから」

 「でしたら風呂はどうするんですか?」

 「二人とは入りませんよ。ネメッカ様と入りたいなら塔に行きます」

 「ユッミル、塔に来た日は毎回入るの?私は歓迎だけど」

 「そういう意味では無いです」

 「期待させるような事は言わないでね」

 「分かりましたから。まあリュッサさんは忙しそうなので中々機会に恵まれませんね」

 「私もご一緒したいのはやまやまですがシウさんやエコさんに今日は譲ります」

 「そうですね。リュッサさんとはこれからは機会が増えそうですし」

 「機会と言えば一番貴重なのは私かもしれませんよ」

 「遠慮します。イーサさんの気分を害したら後々大問題ですし」

 「その拒絶で害するとは考えないのかしら?」

 「あの、イーサさんはどんな男が好みなのですか?」

 「さて、どうでしょう?女性に対して遠慮深い人ですね」

 「ネメッカ、こっち来て」

 ユッミルは無造作にネメッカを抱き寄せて顔を近づけて抱く。

 「どうしたの?」

 「イーサさん、あなたの好みでは無いでしょ?」

 「何の話ですか?私はやり切ってくれるなら積極性も評価しますよ。諦めて私に抱かれて下さい」

 「何の為ですか?」

 「では逆に聞きますがリュッサさんと私の立場の違いは?」

 「あなたは幹部に近い」

 「つまり、あなたは幹部の方を邪険にするんですね」

 「正直に言えばあなたを疑ってます。意図が見えないので」

 「大した意図は誓ってありません。子供はもう宿ってますのでその方向も関係は無い」

 「ですから不思議なのです」

 「ですから親睦を深めたい事の何がいけないのですか?」

 「イーサさんはいつも打算的なので狙いを勘繰ってしまいます」

 「そうですか。でしたらなおさらユッミル様が私を抱いて下さい」

 「同じ事ですよね?」

 「つまり、私はどう足掻いても打算的にしか見られないという事ですか?」

 「そうですね。そんな感じです」

 「酷いですね」

 「あなたの過去の行いをお忘れですか?」

 「でしたら過去の行いのお詫びとして今日は差し控えますが大人しく抱かれながら寝ます。服装もユッミル様がご指定して下さって構いません」

 「じゃあ構わない。今日の風呂はイーサさんとエコだね」

 ユッミルは夕食後、イーサの手を取る。

 「ネメッカ様、どうにかなりませんか?」

 「入ると宣言しておいてそれですか?そもそもユッミルはさっき私とはここでは入らないと言ったばかりですよ。イーサとの親睦が深まる事に利点は多いですし」

 「ネメッカ様が望むのであれば」

 ユッミルとエコとイーサは並んで服を脱いでいく。

 「イーサさん、寄ってはくれないのですか?」

 「ユッミル様が良いのであれば」

 「構わないよ」

 「では遠慮なく」

 「その、方針転換ですか?」

 「まあそういう言い方もできますが打算の割合を少し下げたという事でもあります」

 「まあ良いです。私も疑念の割合を少し下げましょう」

 ユッミルは終始イーサを気にしながら風呂に入る。横ではエコがのびのび入浴している。イーサはユッミルの肩に手を掛けながらユッミルに話しかけている。

 「イーサさんも流石に団の話が無いとそこまで事務的ではないですね」

 「ですが基本は団の事の比重が高いので普段より口数は減りますが」

 「イーサさんに任せきりで申し訳ない」

 「いえ、ユッミル様は何気に仕事をこなしてくれますし。ユッミル様との相談で負担は減ってます。ネメッカ様だと意見が近いのでついつい意見を聞く回数が減ります。それに意見が近いので同じ問題に直面しやすい」

 「そういう事もあるんですね」

 ユッミルはシャーユとネミークを脇にしてついでの様に母親にちょっかいを出すだけでシャーユ達に声を掛けたり、じゃれたりしている。

 「ユッミル、シャーユにやってる事、私にもして」

 「メシャは娘になりたいの?」

 「肩を撫でる様に叩いてたけど私には胸を撫でる様に揉んで」

 「メシャ、シャーユにできないメシャの良さはそこじゃないよ」

 「どこ?」

 「抱いては寝れないね。横に置くって感じ」

 「私も抱いて寝れますよ」

 「ネメッカ様の場合は抱き合って寝るでしょう。抱き締めて寝るのは無理です」

 「やればいいでしょう、やれば」

 「感覚の問題なのでできないものはできません」

 「まあ良いですがネミークにも構って下さい」

 「そうしたいのはやまやまですが安眠を邪魔してまではできませんよ」

 ユッミルが夜中に目を覚ますと背中はネメッカに抱かれてメシャーナは手を繋いでいる。シャーユは肩に寄り掛かっている。ユッミルはすぐに寝なおす。

 朝起きるとシャーユはいない。メシャーナはユッミルにさらに近づいている。ネメッカも相変わらず抱き付いている。

 「ネメッカ様、おはようございます」

 「ユッミル、服に手を入れるならもっと堂々として」

 「ネメッカ様、起きてますよね?」

 「もう脱がせればいいのに」

 「現実では抱いて動きを封じてるのに服に手を入れられてる夢?どういう事だろう?」

 「また太ってきたからやめる?酷い」

 「起きて下さい」

 「醜い体は触りたくない?別れる?」

 「分かりましたよ」

 「おはよう、ユッミル。もう少し抱いてて良いですよ」

 「悪夢はどうしたんですか?」

 「目を覚まさせてくれてありがとう」

 「もうそれで良いですよ」

 朝食を済ますとフーニャを連れて無性の家に戻る。

 「レヒーハさん、留守番ありがとうございます」

 「いえ、私の仕事ですから」

 ユッミルはフーニャを送ると一度光の塔に戻る。フェノと情報交換をしてイーサが戻る前にさっさと塔から出る。帰りはゆっくりで一度テーファの家でリュッサと会ってから昼頃に無性の家に帰ってくる。

 「良かった。ちょうど昼食ですよ」

 「はい」

 ユッミルは昼食を食べ終えるとフーニャを胸元に抱え込んで話をしている。

 「ですが構わないんですか?」

 「何がだ?」

 「ニーシャちゃんはまだまだ小さな女の子だね」

 「そういう事か。だが君はもう知っているだろう。立派な女性だと。この可愛らしさと大人の女が同居するのだからそれは使うべきだろう」

 「ああ、けどありきたりですね」

 「なっ、どういう?」

 「いえ、メシャやミーハには負けてますけどね」

 「だが今は二人ともいない。それにミーハはしばらく帰らない。それに私を代わりにしておけばメシャ君に手を出さずに済むぞ?」

 「いえ、それは大丈夫ですよ」

 「本当か?」

 「はい」

 「だが私と違って若いから変わるぞ。それで魅力が落ちる可能性もあるが上がる可能性もある」

 「あの、心配しなくても今はフーニャさんと遊びますから」

 しばらくしてユッミルはいつも通りフーニャの幻影を帰宅させる。すると視界に少女が入ってくる。ユッミルは少し幻影の速度を早める。

 「ねえ」

 ユッミルは迷ったものの幻影に振り返らせる。

 「こんにちは、私はコーリャ。あなたは?」

 ユッミルは姿を隠せるので少女の正面に立つ。少女はどうもユッミルから見て少し下程度に見える。

 「えっと、ニーシャだよ」

 「ニーシャちゃんか。来たの、最近だよね?どうしてここに住んでるの?」

 「学校に通ってるの」

 「そうなんだ。どの学校?」

 「名前、忘れちゃった。今度聞いておくね」

 「そっか、家に来てお話ししない?」

 「今日は急ぐから明後日とかなら」

 「分かった。またね」

 ユッミルはニーシャの幻影と共に帰宅する。

 「ユッミル殿、私はあんな年下と遊ぶのは無理だぞ」

 「すいませんがこれもお仕事です。それと思ったより私達は無性の街について無知すぎました。学校名等々知っておいた方が良いですね」

 「グーリッツ打鉄学舎とでも言っておけばいい」

 「明らかに設定と違いますよね?」

 「そうですよ。ニーシャちゃんには無理です」

 「フーニャさんでも無理でしょう」

 「それでどうするんだ?」

 「明日はフーニャさんと火の塔でミューレさんに無性の街の学校について教えてもらいに行きます。エコさんに伝言を頼みますので行ってきます」

 ユッミルはとりあえず家に向かう。

 「エコさんは」

 「どうしたの?」

 「あの、無性の街について勉強不足な事が発覚しまして火の塔で無性の街に詳しい人に色々聞きたいのですが」

 「何が知りたいの?」

 「まずはどんな学校があるかですね」

 「ユッミルさんはどの程度知ってるの?」

 「三段階あって最初の段階が二校、次の段階が三校、最後の段階は五校だと聞いています」

 「それはそうなのだけど多分、最後の段階と思ってるうちの二校は最初の段階を終えてれば入れるわね」

 「フーニャさんには最初の段階に入るという形ですからその辺りが知りたいですね」

 「ところであなたは行っていないの?」

 「多分、行ってないと思います」

 「まあ行ってない子は術師には多いけどその年で術師になったばかりなのにってのは珍しい」

 「ええ、ほとんど覚えてないので」

 「そう言えばそうだったわね。」

 「あの、お願いできますか?」

 「構わないけど急ね」

 「無理ならネメッカ様とかイーサさんにここに来てもらいます」

 「私、明日は暇だし朝ここに来て一緒に行きましょ」

 「えっと、メシャの面倒を見てもらいたいのですが」

 「そうだったわね。けど一応駄目かもしれないから一度昼前にここに来て」

 ユッミルは無性の家に戻る。

 「なら向こうに泊まれば良いではないか」

 「それはそうですがあまりレヒーハさんに留守番の負担を掛けすぎるのは気が引ける」

 「そうか、それはそうだ。今日はレヒーハに譲ろう。もっともこんな男と過ごすのはごめんだというなら私が面倒を見る」

 「それならレヒーハさんに拒まれたら一人でいます。面倒を見られる気は無いので」

 「冗談に決まっているだろう」

 ユッミルはレヒーハと風呂に入って寝る。

 「ニーシャ、行くよ」

 「私は君の娘だからな。嫌でも手を繋いで出かけてもらうぞ。」

 「そうですね。けど今日の場合、会いたくないんですが」

 「急いでいると言い訳すればいい」

 「まあ急いでるのに手を繋ぐのはおかしいけどまあ無しではないか」

 ユッミルはフーニャと手を繋いである程度歩いてから姿を隠して家に向かう。特に誰の気配も無く家の近くで姿を戻す。

 「思ったより早いですね」

 「まあニー、フーニャさんの偽装登校のついでに来たので」

 「そういう事ですか」

 「それでミューレさんか誰かの都合はついたのですか?」

 「はい。ただ、シウさんが仕事なのでリュッサさん次第ですがシャーユさんの面倒を見る必要がありますので」

 「今だけでも私が見ますね」

 ユッミルはシャーユを抱き上げようとするが少し拒まれたので下ろす。下ろすとシャーユは座り込む。ユッミルが近くで座っていると寄って来て膝の上に座る。

 しばらくすると誰かが訪ねてくる。エコが扉を開けるとネメッカだった。ユッミルはとりあえずシャーユと姿を隠す。ネメッカは扉を締めると目を凝らす。

 「ユッミルがいた様に見えたけど気のせいの様ね。ユッミルを求める余り見えないのに見えてしまったわ」

 ネメッカはやはり部屋を見渡していく。徐々にユッミルに近づく。

 「さて、風呂でも入ろうかしら」

 ネメッカが服に手を掛けるとユッミルはネメッカの手を掴む。

 「分かりましたよ。いますから」

 「黙っていればいいものが見れたのに」

 「あの、今日はこの後出かけるのでお相手できませんしね」

 「あの、その事なんですが」

 「エコさん、どうしたんですか?」

 「ここに来ます」

 「は?」

 「ですから来ます。ミューレさんが来ます」

 「私が行けば良いでしょう」

 「ユッミル殿、ここではまずい事でもあるのかね?」

 「シャーユが迷惑を掛けるかもしれませんしこの何というか仕切りの一切無い布団の並びも良くないです」

 「まあここはそういう場所ですし」

 「そういう場所ではないですよ」

 「ユッミル殿、そういう場所だよ」

 「なら客人を呼ぶ場所じゃないでしょう」

 「よく分かりませんがミューレさんの申し出なので。そもそも火の塔はエッヒネさんの件でいよいよ忙しいのです」

 「なら仕方ないです」

 しばらくすると昼前にミューレがやってくる。

 「エコ、お腹すいたわ」

 「分かってますよ」

 「ミューレさん?」

 「今、火は忙しいのよ。あっちに居たら食堂に長居するのも気が引ける。あなたのお蔭で休む口実ができたわ」

 「それは良かったですけど」

 「あら。ネメッカ様もいるのね。お久しぶりです」

 「ええ、久しぶりね。ユッミル、私達も食べましょう」

 「そうですね」

 ユッミルはシャーユを膝に抱え、フーニャとネメッカを隣にして食事にする。そうしているとリュッサも帰宅して昼食にする。

 「本題はもう話しても良いでしょう、ミューレさん」

 「休ましてはくれないんですね」

 「あなたがいるとユッミルは構ってくれないから」

 「変わりましたね」

 「隠れていたものが出て来ただけよ」

 「そうですか。ところでユッミル様は何が知りたいのですか?」

 「まずは学校の名前ですね」

 「確か、ユッミル様は光の塔付近から通うんでしたね」

 「まあ全体から見れば光の塔は近い」

 「でしたらシューレッツェ初等院でしょうね。貴族や富豪の設定ではないですよね?」

 「そうですね」

 「ただ、フーニャさんは小さいと言っても少し遅めという設定は必要そうですね」

 「そうなのか」

 「まあフーニャさんが背が高いという設定でも構いませんが」

 「そうですね、多少遅いというのはあそこに住む理由にもなりそうですし」

 「あそこに住む理由ですか」

 「正直に前の妻がベタベタしてうざいのでその妻が寄り付きそうにない場所に新しい妻と住み始めたと言えば良いだけでしょ」

 「ネメッカ様、それだとフーニャさんは連れ子という事ですか。まあ無しでは無いですが私の印象が良くないので却下ですかね」

 「まずはうざい事を否定して下さい」

 「これで満足ですか?」

 「まあ良いです」

 「よくあるのは収入が苦しいので貯蓄してからとかですが引っ越し後にすぐなので微妙ですね。引っ越しという事は仕事先が変わったという事になりそうですね」

 「前の妻の親の仕事を手伝っていたけど嫌気がさして新しい職場を見つけて家を出たとか」

 「ネメッカ様は離婚されたいのですか?」

 「ユッミルは今、別居を選択したんですからそれを噛みしめて下さい」

 「だとしたら前の妻の親が面倒を見るふりして変な仕事をさせようとするので別の仕事を見つけて別居しているが本当は妻と同居するか迷っているですね」

 「それだと妻を連れだせばいいという話ですよ」

 「いえその親は収入不足を盾に妻を手放さないという話です」

 「あの、流石に真剣に考えましょう」

 「そうだね。リュッサ、ありがとう」

 「まあ収入が低くてニーシャちゃんを学校に入れられずにいたが低家賃のこの家への引っ越しを機に決心したという設定で良さそうだね」

 「妻が働き出した事にすればいい」

 「そうですね」

 「分かった」

 「けど学校がどんな所かはやはり分かりませんよね?」

 「まあニーシャがどう振る舞うかの為に知識は多少備わったが」

 「でしたらフーニャさんとユッミルさんには提案があります。今度、術師が学校に出向いて術を教える企画があります。講師は各団の主戦級にお願いするので指揮所との兼ね合いもあって術師協会が最終的に選定するのですがユッミル様にお願いできないかと。フーニャさんも助手として同行してもらっても構いません。流石に明日には間に合いませんが」

 「フーニャさんはどうです?」

 「断る理由は無い」

 「良いですよ」

 「ユッミルの助手はネメッカであるべきだとは思いますがここは譲りましょう。夫婦共演は光の団で別途用意しますしね」

 「ネメッカ様?」

 「光の団にも講師依頼が無い訳では無い。まあイーサに頼んでおくわ」

 「だから妻の親に仕事を強要されてるなら話しやすいんですよね」

 ユッミルはミューレを火の塔の近くまで送るとフーニャと共に帰宅する。翌朝、フーニャの幻影と共にレヒーハと姿を隠してテーファの家に向かう。

 「リュッサさん、今日は少し早めで家にいるフーニャさんに放音で声を掛けて一度姿を隠させて道中に連れだしてからいつも通り姿を現させて下さい。今日は本人がいる訳ですから家の近くまでは行かなくて良い」

 「分かってますよ」

 ユッミルはレヒーハを連れて光の塔へ向かう。

 「イーサさん、今日は無性の街の学校について知ってる事を教えてもらいに来ました」

 「私としてはユッミル様が正妻を放り出して目の届かない所で他の女性と同居する事に協力したくは無いのですけど」

 「ネメッカ様は協力してくれましたよ」

 「そうですか。もし私と一緒に宿舎の風呂に入る事を条件にしたらどうします?」

 「二人でですか?」

 「二人でも構いません」

 「今日でなくても良いんですか?」

 「まあ良いですよ」

 「そんな事をしてもイーサさんに利益は無いと思いますけど教えてくれるんですね?」

 「では了承を取り付けたという事で話しますね。では待っていて下さい」

 しばらくするとイーサは子供を8人ほど連れて戻ってくる。

 「そういう事ですか。けどミヨーナは後で良かったと思いますが」

 「そうですね。もっともあてになるのはアーティーユさん位でしょうか。ですけどまあ実際に通っていた子の意見は何気に参考になる筈です」

 ユッミルは子供達の学校での思い出を聞いていく。

 「アーティーユ、初等院の授業はどんななの?」

 「読み書きね。計算も習うけどそんなに難しい授業ではないわよ。運動も結構多い」

 「初等院は実質的に中等院入学試験の内容を教える場所なんですよ」

 「レヒーハも受けたの?」

 「はい、高等院には進みませんでしたが。高等院の試験はちゃんとしてますよ」

 「はい、中等院には試験がありますがはっきり言って勉強しなくても通る子は通ります。家庭教師を使って中等院に直接入る子も多い。高等院は中等院での成績も加味されますから実質的には無理ですが」

 「イーサさんは?」

 「高等院は卒業しましたが進路は決まらず色々あって入団しました。高等院卒業後は役人になる選択肢もありますが無理そうでしたし他の就職も上手く行きませんでしたね」

 「アーティーユは中等院に行ってないよね?賢いのに」

 「初等院の時に光の術が使えると分かったから途中で抜けたわ。最後の方に少しだけ先の授業を受けてね」

 「どういう事ですか?」

 「初等院には実質卒業という概念はありません。一応、スケジュールは決まってますが願い出れば上の学年に混ざる事も可能ですし途中で出て行っても何も変わりません。中等院の試験内容を学ぶ機会を失うだけです」

 「けどユッミルは賢いからどんな試験か教えれば中等院には入れると思うよ」

 「アーティーユ、もう少し具体的な授業内容を教えてくれないか?」

 「ああ、けど文字を何度も書いたり、音読させられたり、特に話す事は無いわよ。計算も数字を覚えるだけみたいな簡単な奴だし。掛け算に苦労する子はいるけどね」

 「休憩はどれ位あるの?」

 「それも知らないの?勉強したらその半分位の時間休憩して。昼休みは長いわよ。昼休みの後は二つ授業して終わり。午前中は五つだけどね。日によっては一つで終わり」

 「運動ではどんな事を?」

 「最初は決まった動作で体を動かす授業をしてその後に集団での勝負事になっていくわね」

 「学校にはどんな子がいた?」

 「モヌに似て活発な子はいたよ。ただ、その癖して結局仲間頼みみたいな子には呆れてたわね」

 「そっか」

 「後はまあけどロコッサみたいなのは少なかったわね。いるにはいたけど。もちろん、ネメッカさんみたいな女性は中々いないわよ」

 「あんなのがたくさんいたら困ります」

 「ユッミル、それはどういう意味ですか?」

 「あなた二人以上に絡まれたら大変だろうと思うだけですよ」

 「ああ、ユッミルみたいなのはいそうでいないわね」

 「それはまあネメッカ様共々大人だし子供時代は想像しにくいからでしょ」

 「それはそうですね。けどここにいる大人が全員子供になったらユッミルさんはレヒーハさんと仲良くなりそう」

 「アーティーユ、それはどういう意味かしら?」

 「ユッミルさんは子供時代のネメッカ様を可愛いと思ってもフーニャさんと遊んだり、レヒーハさんと仲良くして遠くから見そうだしネメッカ様はユッミルさんの存在に気づけなさそう」

 「そうね。結局、私はユッミルに絡みついて体を餌にしたものね。それなのに最近は調子に乗ってこの残念な中身で好かれようとした。改心するからちゃんと私の体を楽しんでね」

 「ネメッカ様、その辺りでお願いします。ネメッカ様は十分に私に触れ合ってくれてますからそんな事は無いですよ」

 「残念な中身な事は否定しないのね」

 「嫌いな中身の人とは結婚しませんよ」

 「まあ良いわ」

 「そうですね。むしろアーティーユの話はフーニャさんに聞かせるべきですね」

 「それはそうだけど」

 「明日の昼間は空いてるかな?お昼を食べながら夕方頃までね」

 「今日の夜で良いわよね?」

 「えっと、そうだね。向こうの留守番は僕が行けば良いし」

 「ユッミルさんがいないなら行かないわよ」

 「ユッミルがいない状況でシウさんとは嫌。その点ではモヌがいても役に立たないし」

 「ネメッカ様やイーサさんを付けても良いですよ」

 「けどユッミルがいないと嫌」

 「僕が夜あそこにいると…」

 「どうしたんですか?」

 「イーサさん」

 「大丈夫ですよ。決まりですね。レヒーハ様が留守番なのは残念ですが。ネメッカ様、格の違いを見せましょうね」

 「そうですね。子供は子供ですから」

 「シウとネメッカがいたら大丈夫か」

 ユッミルはまず、アーティーユとネメッカを家に送り届けて無性の街に向かう。

 「ユッミル、やはり一人で相手は酷いではないか」

 「けど今回は相手の家に行ったんでしょ?それか外でしょ」

 「それはそうだが今度はこっちに引き込むからな」

 「まさか明日ではないですよね?」

 「特に期日は決めなかったな」

 「今日はまた学校について知る為に人を呼んだので向こうに来てくれますか?」

 「君はどうする?」

 「行きますよ。レヒーハには留守番してもらいますが」

 ユッミルはフーニャを連れて家に戻る。家にはメシャもシウもいる。オーネも寝ている。そして、リュッサとイーサもいる。

 「エコさん、今日は塔に戻っても良かったんですよ?」

 「いえ、大丈夫ですよ」

 「ユッミルさん、お泊りって事はやるんですか?構わないですけど優しくお願いしますね」

 「モヌーユさん、それは側近である私の役目。同じ団というだけのあなたの出る幕ではないわ」

 「ミヨーナ、いたのか」

 「はい、お子様がいれば私も大人に見えるかと思いましてね」

 「シウさん、申し訳ないですが近くに来てくれますか」

 「お誘い?」

 ユッミルはネメッカとシウを抱き寄せる。

 「僕は大人でも弱い方だけど女の子はもっと弱いからこうなるから気を付けてね」

 「ネメッカ様楽しそうだし私にもやって」

 「子供は楽しくないからやめておこうね」

 「子供だと楽しくないのはユッミルの方もでしょ。まあ良いよ」

 「はい、お願いします。私は大人なので」

 ユッミルはミヨーナを抱く。ミヨーナはいつの間にかユッミルの手を掴んで服の中に招き入れる。

 「ミヨーナ、流石に掴むものが無い内は駄目だよ。メシャは子供に見えるけど掴み切れないし」

 ミヨーナはユッミルがさっさと手を出すと少しユッミルから離れる。

 「ユッミル、私は子供じゃないと認めるの?」

 「シャーユがいる以上それはそうだよ。あっ」

 ユッミルはミヨーナの手を掴む。

 「ユッミルさん、気が早いですね。それとも自分で脱がすのが好みでした?」

 「ミヨーナ、君は確か塔だと他に目ぼしい女の人がいないからと言ってたけど今はシウさんがいるよ」

 ミヨーナは服を着直す。

 「ユッミルさん、けど何も無しは嫌なのでお風呂位は一緒に入ってね」

 「モヌ?イーサさんやネメッカに面倒を見てもらう予定だったのだけど?」

 「私はフーニャやアーティーユと入ると思ってた。シャーちゃんも入らないの?」

 「どうして平均年齢を下げようとする?けど流石にネメッカ様は入れないか。けどまあフーニャさんがいれば大丈夫だろう。夕食にしましょうか」

 ユッミルはイーサにシャーユの面倒を見させながらイーサと触れ合っていく。

 「イーサさん、ありがとうございます」

 「いえ、その私ももっと遊びたいので今日は私と寝てくれませんか?」

 「今日は流石に子供達と寝ないと駄目ですね」

 「私は中々ユッミル様とこうして触れ合えなくて残念です」

 「ネメッカ様がいない隙は中々無いですから」

 「ユッミル、別に私がいるからってイーサを脱がせてはいけないなんて全く思ってないわよ」

 「イーサさんは中立でないと駄目でしょう」

 「つまり、私はユッミル様を愛せないと」

 「そんな気はさらさら無いでしょうが」

 「酷いですね」

 「言いすぎましたがとにかくリュッサさんで間に合ってますからリュッサさんをやめさせたら考えます。私は困りますが」

 「私も困ります。あなたにはよりたくさんの光の団の女性と仲良くして欲しいですから。私もリュッサさんも光の団の女性です」

 「まあそういう事にしておきますよ」

 エコやネメッカに促されて食事の席に着く。ユッミルの隣はアーティーユとネメッカであり、膝の上にはメシャーナとシャーユがいる。

 「食べにくいかな、メシャ」

 「気にしないで私の胸なんて好きに掴んで押し分けてくれていいから。シャーユは大事にして欲しいけど」

 「私の服も邪魔なら脱がせていいですよ」

 「今日はそういうのは無しですよ」

 「私は塔で迎えれば良いですしフーニャさんは向こうの家で仲良しなんでしょうけどシウさんは可哀想」

 「あら。珍しく正妻らしい発言ね。普段は第一夫人のメシャさんや光の団の女性とかテーファさん以外は気遣わないのに」

 「シウさん、あなたは上手ですからいないと困りますけどネメッカ様が一番手ですしあなたなんていなくても困りませんから」

 「ごめんなさい、ユッミル様。言われればいつでも服を脱げる態勢で待ちますのでどうかお許し下さい」

 「シウさん、ネメッカ様への態度と落差がありすぎますね。どちらかへの態度が嘘なんじゃないですか?」

 「そんな事はありません。ユッミル様に服を脱がして頂いた時の私を見れば分かる筈です」

 「分かりましたから。今日はできませんが」

 「大丈夫です。ユッミル様が好きな時で良いですから」

 「はあ、シャーユの教育に悪いなあ」

 「ユッミル、脱ぐ、好き」

 「メシャ、何を教えてる?」

 「さあ、どうだろうね」

 「別にユッミルはママを抱くのが好きって教えれば良いだろ。シャーユは最早抱き上げられるのは嫌がってるけど」

 「そうなの?けど私も抱こうとしたら自分で歩きたいみたいだし抱かれるのが嫌という事じゃないと思うよ。今も抱かれてる様なものだし」

 「そうだね。嫌われるのはまだ先かな」

 「そんな日が来ると良いわね」

 夕食中もどうやらフーニャとモヌーユやミヨーナは話していた様でユッミルが気づくと会話が弾んでいる。ユッミルは術を使ってゆっくり机から離れる。

 「ユッミル、殿」

 「…さん」

 「えっと話が上手く行ってるならそのまま続けて」

 「そんな事は無い、世代の違いを感じる」

 「フーニャさんは思ったより賢くてついていけない」

 「分かったけどシャーユ優先だし困らせないでね」

 ユッミルはさっさと服を脱ぐとシャーユの服も脱がせて抱きかかえる。

 「ユッミルさん、そんなのを見せないで下さい。光術師は正面からじゃなくても見えるんです」

 「えっと、そういうアーティーユも全部見えてるけど良いの?」

 「女は良いんです。男は下半分は消して下さい」

 「まあ大した手間じゃないけど光以外の男はどうすればいいんだろうね」

 「どうせ私で隠れるから私は気にしないけどね」

 「誤解を招く表現は慎んで下さい」

 「もしかしてフーニャさんもそういう関係なんですか?」

 「当然だ。今いる中で君ら子供以外で関係が無いのはそこで寝てる氷の眠り姫だけじゃないか?さっさと寝込みを襲えばいいものを」

 「フーニャさん、リュッサはイーサさんの仲介ですしあなたも含めた他の団は団の都合でしょう」

 「あら?聞き捨てならないわね。希望に応じただけよ。嫌なら来てないわ」

 「はい、こちらも希望を聞いた上です」

 「イーサさん、団の子供の教育を考えて下さい」

 「えっと、主宰のユッミルさんが手当たり次第に嫌がる女を襲っていると嘘をつけと」

 「違います。そういう事に関しては詳しい話をしない方が良いと言ってるんです」

 「そうですね。ユッミル様はネメッカ様一筋。時折、女性だけの宿舎に行ってますが何も無いですよね」

 「あなたが仕組んでるんでしょうが」

 「詳しい話はしないんですよね?」

 「まあ無駄ですが。イーサさんが光の団を牛耳ってるのは子供でも分かるでしょう」

 「行くぞ、ユッミル殿」

 「ああ、そうでした」

 「フーニャさん、何故前に立って邪魔するんですか?」

 「私の体位押して行けるだろう」

 「シャーユがいるので邪魔しないで下さい」

 「仕方ない」

 モヌーユとミヨーナはユッミルの手を引く。フーニャは最初に湯船に入っていく。

 「さあ、入りますよ」

 「イーサさん、いつの間に?」

 「拙いながら術を使いましたよ。邪魔ですか?」

 「いえ、ありがとうございます」

 ユッミルはフーニャの後ろに座り、横にはイーサが座る。

 「ユッミルさん、逃げてません?」

 「イーサさんも魅力的だからね」

 「その割には緩くしか触ってないよね」

 「子供に手を出したら、いや、出さなくても素振りが見えたら機嫌を損ねる人が二人いるし団としても良くない」

 「大丈夫だよ。モヌはまだ子供だし」

 「意味分かって言ってるのか?」

 「何となく。でも三人の中だと一番子供っぽい私を隣が一番いい」

 「モヌ、あなたは一応年上でしょ」

 「そうだった。ミヨーナが一番下だったね」

 「嬉しくないですね。けどまあ間違いは起こらないから心置きなくできるよ」

 ミヨーナは横に座る。

 「ユッミルさんが手を出さなければ機嫌は損ねないから大丈夫ですよね」

 「子供ができたらどうするんだ?あっ。いや」

 「大丈夫です。その場合は側室になります。ユッミルさんが面倒を見てくれるならそれでも良いです」

 「アーティーユ、その場合、面倒を見るのは僕じゃなくイーサさんになる。やめておきなさい」

 「もう遅いです」

 「じゃあモヌも」

 ユッミルはシャーユをイーサに預ける。

 「可愛いけどまだまだ子供だね」

 「ユッミル、別にそんな気は遣わなくて良いですよ」

 「はあ、それより話の続きはしないの?」

 「良いけど膝を出して伸ばして」

 「分かったから」

 ミヨーナは膝の奥の方に座る。モヌーユはもう片方の奥寄りに座る。フーニャはミヨーナの前に座る。

 「フーニャさん、蹴ってるみたいなのでやめませんか?」

 「何を蹴っていると言うのかね?」

 「フーニャさんをですよ」

 「そんな事を言っていれば一緒に風呂等無理だろう」

 「足先に体を置かないで下さいと言っています」

 「今、私が座ってるのは足先よりは少し手前だぞ」

 「フーニャさんが気にしないなら構いません」

 「最初から気にしなくてもいいのに余計な事を言うから…」

 「アーティーユ?」

 「私だけ駄目とは言いませんよね?」

 「じゃあもっと近くに寄る気はあるの?」

 「できますよ。モヌ、交代よ」

 「アーティーユ、十分育ってるね」

 「ユッミルさん、その気なら風呂では無く布団でした方が良いですよ」

 「油断を待ってるかもしれないよ」

 「声を掛ければ大人が来てくれますししないでしょうね」

 「とりあえず隙を見て襲いたいからフーニャ達と話してて」

 「分かりました」

 アーティーユやフーニャは話を再開する。ユッミルも話に参加する。

 「イーサさん、隙を見せすぎですね」

 「遅いですね、やりにくそうなので近づきますね」

 「流石、イーサさんは頭が良いですね。ですが騙されません」

 「ユッミル様、私の体に興味を持ってくれるのは嬉しいのですが言って下さればもっと余裕のある場所でお相手しますよ」

 「分かりました。やめておきます」

 ユッミルは大人しくシャーユを抱き直す。

 

 

 

 2節 強泊


 「ミヨーナ、服着てるよね?」

 「ユッミル様にしっかり抱きついてるので脱げてしまうかもしれませんけど」

 「アーティーユも何を?」

 「子供の体をどう触っても良いんですよ。何も起きませんから」

 「モヌーユがとてもいい子に見えてきたよ」

 「私もユッミルと寝るのは何か好き」

 「じゃあおやすみ」

 「私には何も言わないのか?」

 「フーニャさんとはいつもの事ですし」

 「新しい女が有利なのか」

 「そういう事では無いですよ。けど寝ますよ」

 ユッミルはさっさと寝る。ユッミルは夜中に目を覚ます。一瞬歪曲視野を使うがさっと戻って横を見るとアーティーユは戻ってくるとまたユッミルに体を絡める。ユッミルも強引に眠る。ユッミルは朝起きると4人全員が寝ているのを確認するとモヌーユを抱きかかえて起きて残り三人の服を脱がせる。

 「ユッミル、遂にやる気になったの?」

 「いや、脱がせたけどその気にならなかったからそのままにしただけ」

 「酷いなあ」

 ミヨーナは抱きついてくる。

 「諦めてくれ」

 「嫌、成長していくのに諦める訳がない」

 「そうだね」

 ミヨーナは服を着る。次に起きたのはフーニャだ。

 「ユッミル殿は寝てる間にやるのが好きなのか?でもそのままにしないで密かにやるのが好きならそれでも構わない。今度からは勝手にしてくれ」

 「フーニャさんが服を着てるのが似合わないと思って脱がせましたけど飽きたのでそのままにしました」

 「なるほど私に恥ずかしい姿を丸出しにさせ続ける事はそれはそれで楽しかったと」

 「もうそれでも構いません」

 アーティーユも目を覚ます。目を見開いて自分の体を触る。ユッミルはさっと近づいてアーティーユの手を掴む。

 「さて、続きかな」

 「ユッミルさん、私って脱ぎ癖があったんですね」

 「違う、僕が脱がせた。君も女だしね」

 「昨日と言ってる事が違いますね」

 「油断させるための嘘だよ。こうして捕まえたしね」

 「はあ。ですから本気なら無理にしなくても構わないですよ。けどネメッカさんの行動を見てたら無い話だと分かります。そんな事で私の服を脱がせないで下さい」

 「そう、服は脱がせたでしょ。油断してるとそうなるよ」

 「何ですか、それは。そんな事は気にしません。不思議ですが」

 「ネメッカ様は思わせぶりに脱ぎますけど本当は何も無かったんですね」

 「ユッミル、子供と大人は違います。今やユッミルには抱かれでもしない限り、大した意味は無いですが」

 朝食を終えるとフーニャと共に無性の家に帰宅する。

 「帰りはどうする?」

 「やるつもりですが」

 「やったら来るぞ」

 「ああ、そうですか。ですがいずれは避けられません。レヒーハ、フーニャの友人が来ます」

「所でどんな子なんですか?」

 「ユッミルは見たんじゃないか?」

 「ですが本人の言い分は聞いていません。見た目で年齢は分かるとは限らない」

 「年齢は分からないが中等部だな」

 「なら同じ学校なのに会わないと言われる可能性は無いですね。しかし、長く居る訳では無いのであまり深入りしたくは無いですね」

 「そうだな。私も年下に年下扱いされて気分が良い訳では無い」

 「ただ、8歳の女子が使わない手で逃げようとしないで下さいね」

 「私は10歳超えの気でいるんだが」

 「初等級にいる年齢であればいいのでそれは知りませんが初等級の女の子が言いそうにない事を言わなければそれで良いです」

 夕方、ユッミルはフーニャを一度連れだして中心街と家の間位で姿を現す。家の近くに差し掛かるとフーニャは声を掛けられる。それを見たユッミルは姿を隠したまま無性の街で時間を潰してから帰宅する。

 「は?」

 「ユッミ…ルカロ、お帰りなさい。ニーシャのお友達が来てるわよ。泊まりたいって着替えももう持ってきたわね」

 「えっと、急だな」

 「ごめんなさい」

 「構わないよ。ニーシャちゃんの友達ですしね」

 「私はコーリャ。おじさん、よろしくね」

 「コーリャちゃんね。よろしく」

 コーリャはユッミルと言葉を交わすと部屋の隅に向かう。

 「ここのってこうなんだ。ちょっと恥ずかしいね」

 「ん?」

 コーリャは用を足そうとしている。

 「残念だけどおじさんは疲れてるから朝まで家にいるし今からでも家に帰っても僕は仕方ないと思うよ」

 「そんなつもりは無いですよ。おじさんが良いなら一緒に風呂に入ります?」

 「ニーシャと仲良くするのを邪魔する気は無いよ」

 「それは残念ですけどそうしますね」

 夕食ができて配膳を終えるとレヒーハはユッミルの隣で庭の世話の話をしている。実際、庭には相応の植物が生えている。レヒーハはユッミルに仕事の話を振ろうとしたがユッミルなやんわり制止する。

 「ルカロさんってニーシャちゃんの父親にしては若いですよね」

 「そこまで若くは無いがまあちょっと若いかな」

 「そうなんですか。そこまでではないんですね。ごめんなさい」

 夕食を終えてユッミルとレヒーハは食器を片付けていく。それを終えて部屋の中央寄りにあるソファに座っているとコーリャは風呂付近で普通に脱ぎ始める。ユッミルはレヒーハに甘えていく。

 「確かにあの体は初等の子供ではない」

 「見たんですか?」

 「それはそうだろう。同年代って訳でもないのにフーニャと仲良くする理由が分からない」

 「近所に遊び相手は少ないですし」

 「そうだね」

 しばらくしてフーニャ達は風呂から出る。するとコーリャはユッミルの方に近づいてくる。ユッミルは視界の端に少女のカバンの存在に気づく。コーリャは屈んで布を出す。そのまま立ってユッミルの方を向く。

 「あっ」

 「うちの布を使ってくれていいよ」

 風呂近くの壁には確かに布がかけてある。

 「ありがとうございます。でもこれを使います」

 少女は無造作に髪を拭こうとする。ユッミルはレヒーハの膝に手を掛ける。

 「あっ」

 少女は布を後ろに落としたので後ろを向いて拾うとそのまま風呂の近くまで歩いていく。入れ替わる様に満面の笑みのフーニャがやってくる。

 「お父さん、体拭いてよ。ニーシャだと遅くて風邪引いちゃう」

 「分かったよ」

 ユッミルはコーリャに背を向けてフーニャの体を拭いていく。

 「お父さん、上手いね」

 「フーニャさん、自重して下さい」

 ユッミルは伝音でフーニャに伝える。

 「お父さん、ありがとう。けどここはまだ濡れてるよ」

 「そうか、ごめんね」

 「お父さん、痛い。そこ強くしないで」

 「フーニャさん、ちゃんと演技して下さい」

 「ユッミル、別に今で無ければ嬉しいが今、子供から出ないものを出させては駄目だろう」

 「こんな事では出ませんよ」

 「君は知らないかもしれないが私はユッミルに夢中だからその程度でも危ない」

 「分かりましたから切りますよ。もうニーシャちゃんで居て下さいね」

 フーニャは足早に服を取りに行って着る。フーニャは既に服を着終えるがコーリャはまだ風呂に入っている。

 「コーリャちゃん?」

 「もう少し入る事にしました。お父さんも一緒で良いですよ?」

 「ニーシャちゃんが寂しいだろうから居てあげて」

 「一緒は嫌なんですか?」

 「僕はニッ…お母さんと入りたいから狭くなっちゃうし」

 「分かりました。上がりますね」

 「えっ」

 コーリャは普通に立ち上がる。かと思うと座る。

 「やっぱりもっと入りたいから一緒は駄目ですか?」

 「駄目ではないけど待つよ」

 しばらくしてコーリャは無造作に体を拭く用の布で体を拭きながら近づいてくる。

 「上がりましたからどうぞ」

 レヒーハはユッミルに密着していく。レヒーハは終始ユッミルに密着したまま風呂を終える。ユッミルはそのままレヒーハと手を取るだけで静かに寝る。夜中違和感で目を覚ます。コーリャが寄り掛かっている。ユッミルはさっさとコーリャを起こす。

 「あの目が覚めたので話に付き合ってくれませんか?」

 ユッミルは寝床から少し離れる。コーリャもついてくる。

 「どうしたの?」

 「ニーシャちゃんも年の割には利発ですけど私とは遊びたいみたいなので」

 「構わないよ」

 「私だけ外れに住んでるから同じ店の服を持ってなくて。話が微妙に合わなくて同年代もいない」

 「この街は人が少ない。けど街も大して多い訳では無いし気にする事は無い」

 「気にしますよ」

 「ああ、別にそれが悪いとは言っていない」

 「確かにフーニャさんのお父さんで違和感は無いかも」

 コーリャはユッミルに体を預ける。

 「けどニーシャには大変な思いをさせてたのかもしれないな。急には無理だが引っ越すべきか」

 「私がいます」

 「そうだね。けど好むと好まざると無関係に中心街での仕事や他の地域での仕事になる事はある。君も同年代の子と仲良くした方が良い」

 「そうですね」

 「そろそろ寝ないのか?」

 「もう少し話したい」

 翌朝、朝食後もゆっくり居座ってからコーリャは帰っていく。

 「ユッミル、やはり裸を見せてくれた普通の体の女の方が好みの様だな」

 「何を言ってるんですか?まああなたよりは多少、いえ、やはりあなた程の魅力すらないですよ」

 「その割には随分優しいではないか」

 「深い意味は無いですよ。そもそも向こうが少し積極的に過ぎるだけですよ」

 「私もそう思います。そんな言いがかりをつけてるとユッミルさんは私が面倒を見てしまいますよ」

 「なるほどあれが家に泊まると私が一方的に不利だな」

 「はい、ですから何とか止めて下さい」

 「良いのか?」

 「ええ、ずっと面倒を見れないのに半端に助けるのは気が咎めます」

 「ほう、私の事はずっと面倒を見れるというのか?」

 「そうは言いませんが誰かに引き継ぐ位はしてあげたいですね、できればですが。ですがあの子にはそうしてやる事すらできない」

 「まあ私の面倒なんて気にしなくて良い。50回位やって飽きたから次の女に交代でも構わないがメシャ君はどうするんだ?」

 「下らない質問ですね。最後まで見ますよ、メシャが求める限りですが。ネメッカ様にはむしろ見てもらう側ですけど」

 「そうは思えないが」

 「そうですか?」

 「はい」

 「でしたら相互に面倒を見合う良い関係ですね。レヒーハさんも気遣ってくれますからそうなれると思いますよ」

 「頑張ります」

 「はい、お互いですが」

 「くっ。コーリャのせいだけじゃないという事か」

 「フーニャさんは確信犯でしょう」

 「ユッミル殿はよく分からない事を言うね」

 昼食後、庭の世話をしていたレヒーハが戻ってくる。

 「あれ?もう終わったの?」

 「いえ、これを見つけたので」

 「ああ、手紙か」

 手紙にはミューレから火の塔に来るように書かれていた。

 「エッヒネさんの事は一段落したという事でしょうかね」

 「だがエッヒネの件は君にも可能性はあったと思うが残念だったな。あれは君から見てもそれなりの女性だろう」

 「そうかもしれませんがそこまで親密ではないので魅力を知る前に何処かへ行ってしまったという感じですね」

 「君の場合はそれ以前にネメッカがいるだろう。更にはテーファ君もだ。近づきがたいエッヒネに行く理由が無いのはそういう事だろう」

 「そうですね。フーニャさんみたいに丸出しで迫ってはくれませんしね」

 「君は側室の意味を理解しているのか?私は正しいと思ってああ振る舞ってはいない」

 「本当ですか?」

 「まあ本当は本当だがこの感じは望んだものではあるとは言っておこう」

 「それが困るんですが」

 「正妻ではないのだから我慢頂くぞ」

 「勝手にして下さい」

 ユッミルは夕方頃、早目の夕食を食べて家に向かう。家に着くと入れ替わりでムヒューエが水の方へ戻っていく。他にはリュッサもいる。オーネとエコはいるがシウはいない。

 「夕食はどうしましょうか?」

 「軽くしか食べていないのでこちらでも頂きます」

 「あの、ユッミル様。ネメッカ様がこちらに来るので夕食を一緒になされては如何でしょう?」

 「まあ構いませんが塔に戻るべきでしょう」

 「いえ、あなたがいるとすれば残ると思います」

 「今日は光の塔に戻る気は無いから仕方ないか」

 ユッミルはシャーユが立とうとしているので手を繋いでゆっくりとした歩みに付き合っていく。しばらくするとメシャーナが帰ってくる。

 「ユッミル、そこまで私の娘にばかり構わなくていいのよ」

 「うん、けど今は子供は一人だから」

 「それはそれとしてリュッサさんはそろそろですね。というか無理させてましたね。本当に申し訳ないです」

 「いえ、ここ数日はユッミル様がほぼしてくれていましたしフーニャさんと相談してそれ以外も回数は減らしていました」

 「重ね重ね、申し訳ない」

 「その様な言葉は不要です。側室とは言え夫婦なのですから」

 「お互いがこの様な口調では説得力に欠けますが」

 「そんな事は無いです。ユッミル様は妊婦にはお優しいですが同時に抱いても抱かれても嬉しくなさそうなので手控えてるだけです」

 「それは申し訳ないと同時に子供も楽しみですがそれ以降もですね。それで今の任務の代行はネメッカ様にお願いしますから心配なさらぬよう。とは言え管理にはリュッサさんに関与頂きたいのですがリュッサさんは何処で静養なされます?まあテーファさんの家で陣頭指揮を執ってもらいたくはありますが光の塔の方がネメッカ様の都合やイーサさんも参画してもらえる等利点も多そうですが」

 「いえ、シャーユちゃんの面倒があるので残ります」

 「待って下さい。メシャ、少し昼間だけとはいえシャーユを放置しすぎだ。少し休んでくれ」

 「それは構わないけど」

 「任せた」

 「あの、シャーユちゃんの世話は負担ではないですよ」

 「うーん、でもまあメシャにはそろそろ休んでもらいます」

 「分かりました。ですが私も協力します」

 ノックの音がする。ユッミルが扉を開けるとテーファがいる。

 「良かった、最近はこっちにもいる回数が多いって聞いてたし」

 テーファは特に迷う事無くユッミルを抱く。リュッサが扉を閉める。

 「分かりましたから扉からは離れましょうね」

 リュッサはユッミルもろともテーファを抱きながら部屋の中央へ押して行く。

 「ユッミル君、夕食は食べた?」

 「まだですけど」

 「私が作ってあげるから終わったらお風呂でも入ろうよ」

 「ネメッカ様を待ってるんですが」

 「ああ、ネメッカは指揮所だったね。それなら先に風呂に入ろうよ。リュッサちゃんも一緒で良いから」

 「まあ構いませんが」

 ユッミルは促されてテーファの服を脱がせる。

 「あっ。いつの間に」

 「そう言えばユッミル君は妊婦だと魅力半減らしいし今なら私が何も着てなくても何も思わないよね?」

 「多少は慣れましたよ」

 「ならこの状態ならもっと慣れるね」

 「この状態のテーファさんは少し可愛いですね。まだ少し掛かりそうという事でもありますが」

 「ええ、間違いなくリュッサちゃんの方が先ね」

 ユッミル達は湯船に浸かる。

 「それにしてもユッミルの中で私の地位はどうしても低くなってしまうわね」

 「えっと、行きたいのは行きたいですが時間が無いだけです。テーファさんが頼んでくれれば行きます」

 「ありがとう。でもそこじゃないのよね」

 「どうしたんですか?」

 「ユッミルにご報告があります。キッシャノさんも妊娠というかもうそろそろ生まれます。つまり、私は月の中でも二番手という事ですね」

 「子供はそうかもしれませんがそれは実態とは違います」

 「分かってますが残念です。しかもリッネ様も割り込もうとしていますから二番手も危うい」

 「まさかもし間違ってリッネ様と子を為してもテーファさんの先を越す事はないですよね?」

 「ですが実態の地位は私より上になるでしょうね」

 「ごめんなさい。ですがリッネ様と付き合ったりはしないと思います。あの人は女ではないです」

 「ですが妊娠すれば認めざる得ない。ですから気を起こさない事を望みますしするならご覚悟下さい」

 「当面はありませんし私からはしません。リッネ様は強いので強引にされてしまう可能性は無くは無いですが」

 「ふん、そうやって強引にされたという形で産ませる気なのでしょ?急に疑わしくなってきたわね」

 「テーファさん、絶対に逃げます。けどそうなった場合にリッネ様を宥めるのに協力して欲しいですしリッネ様の動きを伝えて事前回避していきましょう」

 「そうだね。頑張ろう」

 「リュッサもイーサさんの回避に協力してくれないか?」

 「しばらくは大丈夫よ。むしろ大変なのは出産後の色々が収まった後ね」

 「それは協力してくれるという事?」

 「まあイーサさんが頻繁に出産で抜けるのも困るし光の二番手の地位位は欲しいから協力はするけど稼げても二十日とかその程度でしょうね」

 「そうですよね。イーサさんの意思を変えるしかない」

 ユッミルは風呂から出てテーファが服を着た途端に甘えていく。

 「帰りました。開けて下さい」

 ネメッカの声が部屋にも届く。ユッミルはテーファを布団に押し込んで隠れる。エコが対応してネメッカは入ってくる。ユッミルは魔力量を抑えながら擬態している。

 「ただいま」

 どうやらシウもいるらしい。

 「夕食にしましょ。待っててくれたのね、リュッサ」

 「ですが向こうでイーサさんと食べれば良いのでは?」

 「今日はこっちと伝えてあります。何やら明日朝にユッミルが来るという噂があるので。」

 「では準備します。手伝いは…」

 「不要です。指揮所ですから帰宅時間は分かっていたのでもうほぼできています」

 「あれ?風呂から湯気?誰か風呂…リュッサですか」

 「珍しいわね」

 「妊婦は養生するようユッミル様がよく言うので先に頂きました」

 「そう言えばテーファは来なかったのね。私も夕食を待つ間入ってようかしら?」

 「ですけどすぐできますよ?」

 「すぐ終わるわ」

 ネメッカは服をさっさと脱ぐと部屋の中央に立つ。薄めのみを開けて色々な場所を触っていく。風呂の後はさっさと布団を触っていく。

 「泥棒ね」

 ネメッカは布団を剥がす。

 「ごめんなさい」

 「許しませんよ」

 ネメッカはユッミルの腕を掴みつつ服を脱がせる。

 「待って下さい」

 「誰かいるのかしら?いないわよね?」

 テーファは唖然としている。

 「あれ?ユッミル、いたのね」

 「いますよ。どうしたんですか?」

 「そうね、あなたみたいな男がいたから使わせてもらったわ。本物は最近、相手してくれないけど今や君の姿だけでも満足ね」

 「どういう意味ですか?」

 「君が黙っててもいるだけでそういう気になる。君に似た男がいたらもう落ちるわね。それが嫌ならそろそろ私から離れないで」

 「分かりましたから服を着て夕食にしましょう」

 ユッミルはテーファとネメッカに挟まれて夕食を食べる。主にテーファと話していく。

 「そう言えばユッミル、私の胸はどれ程おいしいの?」

 「食べた事は無いので分かりません」

 「けどさっきもだけど口に入れた事はあるよね?」

 「さっきは驚いてよく覚えてません」

 「けど覚えてた時はあるわよね?」

 「ネメッカ様の体を汚したくないのでおいしいとしてもたくさんは舐めません」

 「その汚したくないという考えが困るのだけど」

 「そうでしたね。ですがネメッカ様の体は食べ物ではないです。そういう考え方は相容れません」

 「分かったわ。けどユッミルは結局、近づけたら舐めてくれるし構わないわ」

 「さっさと風呂に入りましょう」

 「よく分かったけどその投げやりの感じは嫌ね」

 「演技ですよ。というよりも今はこうですけど一度ネメッカ様を抱き始めたら手を放す気は失せますよ」

 「それは嬉しいわね」

 ユッミルはネメッカとシウと風呂に入る。

 「ユッミル、私とネメッカには随分手慣れて来たのね」

 「そんな気はしますがシウさんに関してはその少し膨らんできたお腹のお蔭であって完全になれた訳では無いです」

 「けど一度慣れた感覚は抜けない。私もやり口を変えないといけないわね。私は子供を産んだら魅力半減、けど産まないと地位はどんどん下がる」

 「地位とかは無いですよ」

 「それはきれいごとね。あるわよ。どうしても。あなたがどう思うかは変えられないし変える気も無い。子供も産んでくれない女と産んでくれる女の扱いが違うのは仕方ないわよ。あなたがどうこう出来る事でも無い。私も三人以上の男と生活したらそうなると思う」

 「ですが女は同時に複数産めないですから自分で選びますよね。ですから選択肢なく地位を付けざる得ないでしょ」

 「まあここにいる女は大半が迷う必要は無いけどね」

 「ありがとうございます」

 「好きでやってるだけ。とにかく産むわよ。もうできたしそれに子供が欲しいかどうかは分からなかったけどシャーユちゃんを見てると欲しくなったわ。もういるけどね」

 「それは良かったです」

 「けどこのままだとエコと私は同時期にここで産みそうだから覚悟して欲しいし直前位はここに居て」

 「極力そうします」

 ユッミルは風呂から出る。

 「ユッミル、誰と寝るの?」

 「テーファさんかなと」

 「けどこの家も妊婦が増えたわね。確かユッミルは妊婦だと気が乗らないんだったかしら?」

 「ですが悪い意味では無いです」

 「けど乗らないことに変わりはない。そうなるとシウさんも厳しいしリュッサは無理。エコさんも少し厳しいわね。けどテーファも少し出てきている。そうなると新鮮なのは私しかいないわね。オーネさんかしら?」

 「ですから一緒には寝たいですって。それ以上はさっきもしましたし」

 「けどもししたくなったら選択肢は私しかありません」

 「向こうの家にはいます」

 「フーニャさんは限界があるでしょう。レヒーハさんですか。ですが当面はあの家にいますよね」

 「ご謙遜を。ネメッカ様は他にいないからではなくネメッカ様がいるから一緒に寝たくなります。ですがそういう時は塔に行きますから」

 「そうですね。今日は私の希望ですね」

 「ユッミル君もネメッカさんもそういうのは良いから寝よう」

 ユッミルは布団に入ってネメッカも招き入れる。

 「私はお人形ですか?けどこの人形は本来服を着せない方が肌触りが良いですよ」

 「寝る時に必要なのは興奮では無く安らぎです」

 「まあ良いですけど」

 翌朝はゆっくり起きて遅めの朝食後にテーファとネメッカをテーファの家まで送り届けると急いで家に戻り、早目の軽い昼食後にエコと火の塔に向かう。

 「お待ちしておりました」

 「いえいえ。こちらこそお時間をお取り頂いて」

 「はい、お呼びたてした用件ですが無事契約成立です。今から引き渡しに向かいますがお時間は大丈夫ですか?」

 「それは大丈夫ですがレミーカさんにも同行頂きたいので急いで呼びます。私の家の近くで待ち合わせてから再度向かうという事で構いませんか?」

 「でしたら火の家で待ち合わせましょう。少し話の続きもあるので」

 「分かりました。急いでもらいます」

 ユッミルはレミーカを迎えに行く。

 「では契約内容を確認します。契約は一季毎ですが半分近く経過しているので今回は半額です。季の変わり目に今回の倍額を支払って下さい。解約についてはいつでも可能と言えば可能ですが私に相談いただけると幸いです。」

 「まあ長居せず事が済めばいいんですけどね」

 「私としては長居して頂きたいですけどね。半額持ちましょうか?」

 「やめておきます。主導の機嫌を損ねますから」

 「残念です。もちろん、契約名はルカロさんで登録しているのでご安心下さい」

 「それに関しては探偵としての身分とあそこに住んでる身分が同じ方が良いのかは微妙ですよね?」

 「どうでしょう。ユッミル様は姿を変えられますし大丈夫だと思いますが」

 「そうですね。長居するなら話は変わりますが」

 「そうですか。仕方ないですね」

 ユッミルとレミーカはミューレと事務所に向かう。そこにはバッソーよりは少し下程度の老人がいて契約を交わす。やはりその老人は近くには住んでいないようで契約を終えると住宅街のある東の方へ消えていく。

 「私も帰った方が良いかしら?」

 「今日は居てくれても構いませんが用事も無いですよ?」

 「じゃあ私はこの家の中を点検して問題が無ければ帰ります」

 レミーカとユッミルは数少ない残された備品の配置を変え、ミューレは壁の状況や扉や窓を確認していく。

 「問題無さそうね。では何かあったら火の塔に来て下さいね」

 ミューレは北の方に戻っていく。

 「さて、やっと本題ですけどここでは表面上依頼を受け付ける探偵をやりますがそれは表向き。まあ諸般の事情から依頼はこなしますけどね。ですがまだ看板は掲げません。準備をしてから掲げます。その前に確認しておく事があります。今回の目的は光術師の調査なので向こうが目を付ければ監視してきます。目立ちやすい事は目を付けられる前に済ませたい」

 「そういう事ですか。しかし、目立てばその時点で目を付けるのでは?」

 「そうですね。ですが普通は目立つなんて無理ですよ。しかし、同業者は別でしょう。つまり、探偵事務所の看板を掲げ始めると今回は目立つ事になります。それまでも人づての漏えいがあるので警戒は必要ですが看板を掲げれば警戒を強めないといけない」

 「それで探偵と名乗るのは伸ばすですか」

 「はい。ですが繰り返しますがそれまでも最低限は気を付けて下さいね。ですが今日は事務用品の相談でもしましょうか」

 ユッミルはレミーカに買い出しを頼むと光術師を少し探してみるが見つからないので事務所の配置等を考えていく。レミーカの買い出しを迎えて買ったものの整理を終えるとレミーカと共に姿を隠して家に送る。

 「あの、今日はユッミルさんの幻影を使ってもらいましたが今後一人で事務所に行く時はどうすれば?」

 「そうでしたね。ですがいずれにしても帰宅先は隠したいですから私無しで出勤したい場合は光の塔でネメッカ様に頼むしかないですね。私は家にいるか光の塔か無性の方ですけど不定期ですからね。少し待って下さい。手筈は用意します」

 レミーカの帰宅を見守るとユッミルは光の塔へ向かう。

 「ネメッカ様、お願いがあるのですが」

 「フーニャさんの件は仕方なく受けましたよ」

 「えっと、ついでにレミーカさんを拾って集会所にお願いできますか?往復して頂けると助かります」

 「毎日ですか?」

 「流石にそんな事は頼みません」

 「はあ、私がユッミルの頼みを断れないのをいい事に」

 「そんな事は無いでしょう」

 「あるわよ。でも受けるわ」

 「ありがとうございます」

 ユッミルは塔を出、ようとするが姿を隠したネメッカに回り込まれ、衝突して躓くと何故か裾がめくれたネメッカの足元に倒れ込んでいる。

 「ネメッカ様、余計な事はやめて下さい」

 「ユッミル、許可なく帰らないで下さい」

 「ネメッカ様、触っていいですか?」

 「ユッミル、一々そんな事で許可は取らないで下さい」

 ユッミルはネメッカの服の裾を整える。

 「ユッミル、私の服には常に埃がついてる事にして良いですよ」

 「ネメッカ様、そんなつもりは無いですよ」

 「とにかく今日は泊まってくれますね?」

 「分かりましたが明日は早速レミーカさんの送迎手順を確認しますからね」

 「では決まりですね」

 ネメッカはユッミルにくっついて食堂に向かい、夕食を共にする。

 「ネメッカ様、逃げませんよ」

 「ユッミル、別にそんな理由ではないです。それも少しありますが」

 「分かりましたよ」

 夕食後は主導部屋で一緒に風呂に入り、そのまま一緒に寝る。

 「結局、昨日は何がしたかったんですか?」

 「したい事はしましたよ」

 「ただ、寝ただけですよね?」

 「一緒にね」

 「それだけですか。そんな事ならあんな手を使わなくても」

 「そうでないのがユッミルですよ。それより今日はどうします?」

 「買い出しです。これがあるので家が良かったんですよ」

 「その買い物は変装した方が良いですか?」

 「そうですね。そうしましょう」

 二人は姿を隠して塔を出て集会所で姿を現すと買い物に向かう。ネメッカはいつも以上にくっついていく。

 「ネメ」

 「駄目ですよ。また私の名前、間違える気ですか?」

 「買い物を済ませてからね」

 「何の事?私は何もしてないよ?」

 ユッミルは買い物を済ませるとレミーカを迎えに行き、家に向かう。

 「ネメッカ様、今日はかなりくっつかれたのであなたの体の型を作れそうですね」

 「ん?そんなものはいらないでしょ?実物あるし」

 「まあとにかくレミーカさんの出勤は私かネメッカ様が支援します。行きは姿を隠したままテーファさんの家の付近に送ってそこで姿を現させます。帰りも行きで姿を現した場所近辺で消えてその後はテーファさんの家か帰宅かをしてもらいます」

 「テーファの家は何か休憩所ね。ユッミル、もう少し泊まってあげなさいよ」

 「あなたの相手が減りますが構わないのですか?」

 「ええ、けど口実にしてテーファの家でも主導部屋でも無い所に泊まる回数を増やさないで下さいね?」

 「まあ配慮しますがこの一件が終わったら嫌でもネメッカ様とは寝る回数が増えますけどね」

 「何ですか、それは」

 「ですからあなたが嫌でも主導部屋に居座るという事ですよ。ネミークもそろそろ気になりますし」

 「なら良いんです」

 荷物を持って月の塔の近くでレミーカの姿を現させる。ユッミルはネメッカを塔かテーファの家かに帰らせようとする。

 「風呂でマッサージしてあげますから」

 「それはつまり、ここで断ったら永久にしてくれないと?」

 「そんな事は無いですけどお願いします」

 「あの、気楽にあなたみたいな目立つ人間に来訪されるのは困るのですが」

 「頻繁には行かないし絶対変装は怠りません」

 「あの、そこもそうですが事務所の事をイーサさんを含めた他人に口走られるのが困るんですが」

 「分かりました。今日、ここに来た事も含めて内緒にします」

 ネメッカは変装して事務所の整理を手伝う。その後、練習としてネメッカに一度先にテーファの家の近くに向かってから合流する。ネメッカの歪曲視野もあって難なくこなす。

 「ネメッカ様は優秀ですから全て色々任せたくなりますね」

 「ご褒美があればやりますよ」

 「塔に二人共不在が常態化するのは困ります」

 「分かってますよ」

 ユッミルは無性の家に帰る。夕食を終えるとそのまま寝てしまう。翌朝、レミーカを迎えに行き、準備の続きをする。

 「一時的に人手が欲しい。エコさんに頼みます。ですから今日は早く引き上げます」

 ユッミルはレミーカを無性の街の外に送ってレヒーハに声を掛けてから家に戻る。

 「エコさん、明日少々用事があるのですが」

 「けど明日はシウさんも用事だからリュッサちゃんとシャーユちゃんを置いていくけど少し心配ね」

 「そうですか。どうしますかね」

 「その用事は他に誰がしてるの?」

 「レミーカさんと二人なので手が足りない」

 「レヒーハさんとかフーニャさんは手伝わないの?」

 「はい、そうですね。そうしましょう。こちらにはレヒーハさんを送ればいい」

 夕食を終えるとユッミルはシウに捕まる。ユッミルはそのままシウと風呂に入る。

 「強引に風呂に引き込んだ割にはくつろいでますね」

 「くっついて欲しいの?けどたまにはこの位の距離も良いでしょ?」

 「それはそうですけど」

 「そのまま私を好きに抱いてくれてもいいのよ?」

 ユッミルはシウの背中を軽く抱く。夜もそのまま静かにシウを軽く抱いて寝る。

 「ユッミル、おはよう」

 「はい、シウさん。おはようございます」

 「よく眠れたかしら?」

 「ええ、まあシウさんも大人しかったので」

 「私ってそんな騒がしいかしら?」

 「いえ、気分屋でした。こんな感じなら安らげる…」

 「どうしたの?」

 「ネメッカ様とより安らいだ可能性も、いえ互角。まずい」

 「側室なのだし問題は無いでしょう」

 「それはそうですが腑に落ちません」

 「私、今は少し太ってるからその分安らいだのよ。心配しなくて良いわ」

 「そうですね。思う所はありますがとりあえず仕事をしないと」

 ユッミルはレミーカを送ろうとするがネメッカが待機しており、ユッミルに気づいて手を振ってきたので先に事務所に向かう。事務所でエコを出迎えて作業を始める。仕事を終えるとエコの提案で少々強引に火の家に引き込まれる。

 「お帰り、ユッミル」

 「マッラさんに他にも」

 家にはマッラの他にシウもいる。そして、ミューレに加え、エッヒネもいる。

 「こんにちは、ユッミル」

 「エッヒネ様」

 「はい」

 「こんな所に出入りしないで下さい」

 「ユッミル様、ここは表面上はマッラやエコの家ですから大丈夫ですよ」

 「どういうつもりですか」

 「エッヒネ様がお子様の名前をユッミル様に相談したいらしいのですよ」

 「でしたらここで会う必要は無いでしょう」

 「密会の方が良いと思いましたが余計な気遣いでしたか?」

 「いえ、密会であれば私が姿を変えれば良い」

 「それだと誰をエッヒネ様と会う形にすれば良かったんですか?」

 「塔で会えば良い」

 「現状で塔の中にエッヒネ様が一人というのは中々難しいでしょう」

 「そもそも子供に会っても無いのに名付けはできません」

 「それは失礼しました。でしたら面会頂けるという事で良いですか?」

 「口実がありません」

 「それは何とかしますよ。暇な日をお教え下さい」

 「明後日ですね」

 「はい、何とかします」

 「用事はそれだけですか?」

 「そうと言えばそうですが私達と一緒にいるのが嫌なのですか?」

 「エッヒネ様は赤子の面倒を見なくていいのですか?」

 「ずっとだと休まらないでしょうから任せてきましたよ」

 「そうですか」

 「夕食にしましょう」

 「そうですね」

 ユッミルの両脇はエコとシウで固められて楽しそうに食事を終える。


 

 

 

 

 

 

 

 

 3節 準備


 「ユッミル、ゆっくり話しませんか」

 「エッヒネ様、どうして服を緩めるんですか?」

 「丁度お風呂の時間ですし」

 「それはそうですが」

 「私は多忙ですしそれ以前に塔に住んでますからこういう機会は中々無いんですよ。一回きり位お付き合いしてくれないかしら?」

 「エッヒネ様の一回きりは毎回重大すぎます」

 「ただ、一緒に入るだけよ。あなたが望むなら二度目でも良いけど困るでしょ?」

 「シウさん、あなたも脱いで下さい」

 「それは構わないけど扱いが酷いわね」

 「それは申し訳ないですがお助け下さい」

 「まあ構わないわよ」

 三人が服を脱いでいると残りも脱ぎ始める。

 「全員はちょっと」

 「大きさ的には問題無いよね?」

 「そうだった」

 ユッミルの家の風呂はそれでも大きめだが五人がひしめき合ってようやく入れる程度だがここの風呂は八人、無理すれば十人は入れる大きな風呂だ。水さえ張ってれば火の術師がさっさと温めれば良いので多量の温水の確保に苦労しない火の術師の多い家故の特権だ。

 「あれ?かなりいい」

 「ありがとう」

 「そういう事ですか。ですがこの湯さえあれば他が気にならなくなります」

 「そうね、私もいるしね」

 「そういう事なら近くでお話ししましょうね」

 「いや、その」

 「ユッミル、まずここにいる子達には話しても良いかしら?」

 「構いません。もう言ってる様なものですしミューレさんのお墨付きなのでしょう?」

 「そうね。まずは男の子だったわ。あなたにとっては次男という事ね。ちゃんと元気よ。何か気になる事はある?」

 「属性ですかね」

 「まだ確定ではないけど火だと思うわ。そんな気がする」

 「そうですか」

 「けど私以上の素養なら無駄よ」

 「ですがすぐよりは良いでしょう」

 エッヒネが赤子の様子を話し始めるとミューレやマッラも加わる。シウやエコは対抗するかのようにシャーユの話題を話していき、ユッミルも参戦していく。

 風呂から上がりユッミルが服に手を掛けようとするとマッラが抱き込んで引き戻す。

 「ユッミル様、この家はこういう場所ですので服を着るなんて言う無粋な真似はおやめ下さい」

 「エッヒネ様は着ても構わないですよ火の団の幹部ですからよそ者の私と違って自由です」

 「そう言えばマッラとエコにシウはもう子供がいるんでしたね?でしたら空いてるのは私とエッヒネだけですね。しかもエッヒネは産んだばかり。誰と寝るべきかは言うまでもないですよね」

 「ミューレさん。あなたは側室ではないのですから駄目ですよ」

 「さて、マッラとエコはどうして側室になったのですか?」

 「火の団が派遣…」

 「そういう事です。私が私を側室認定した訳です」

 「遠慮します。拒否権はある筈です」

 「もちろんですが理由を聞いても良いですか?」

 「私の側室として手が取られれば火の団の力が損なわれる。他の団を取り持つ火の団にはしっかりして頂きたい」

 「そうですか。ですが理由は他にもありそうですね。私ってユッミル様の他の側室と比べれば劣るからでしょうか」

 「ネメッカ様には皆劣りますから」

 「試しますね」

 「ちょっと。シウ様、お助けを」

 「確かに反応は悪いですが無理では無さそうですね」

 「シウさん、一緒に寝ましょう」

 「この流れでは嫌だけど仕方ないわね」

 「そう言えば私の機嫌を損ねたくないというのは本音ですか?」

 「エコさん」

 「私じゃないわよ」

 「それもありそうですが足りませんね」

 「そんな事を言ってるとエッヒネ様を襲いますよ」

 「ご自由に」

 「ユッミル、無駄よ」

 「知ってますよ」

 ユッミルはミューレの体を触って気を散らそうとする。

 「ユッミル様、流石ですね。私の体ですら使えますから興味が無いという可能性は無さそうですね」

 「もう良いです。こうなったらエッヒネ様に甘えます。シウさん、あれを何とかしないとエッヒネ様と遊びます」

 「けど私としては私とも遊んでくれるならそれでも構わないわよ。それにそろそろ止めれないし」

 ミューレはユッミルに跨る。

 「あっ」

 ユッミルは手早く起き上がる。

 「あっ。そういう事ですか。子供が困るんですね。」

 「それはそうですよ。ミューレさんが休まざる得ない状況を作った犯人は火の団に恨まれます」

 「大袈裟ですね。本当にそんな理由ですか?」

 「他にどんな理由が?」

 「エッヒネ様はそこそこの有名人でそれなりに美しいと評判ですからさらに若いネメッカ様を妻にしてるあなたは美しい女性の独占という事での反発を恐れているそうですね」

 「それはそうでしょう」

 「ですが私はそこまででは無い。しかし、あなたがその手の事を配慮してるのは間違いない」

 「とにかくミューレさんにまでは手出しできません」

 「ですが困りましたね。私はそういうつもりでしたから。ここに泊まるのですから当然です」

 「エッヒネ様は違うでしょう」

 「その様ですね。エッヒネ様はユッミル様から適当に体を楽しんで一回きりで捨てる女に認定されてしまったようですし」

 「そんな事は無いです。事情が許せば五日に一回位お願いしたいですし」

 「五日に一回ですか。」

 「ええ、ネメッカ様ですら毎日は困ります。三日に一回が限界ですよ。今はシウさんの方が魅力的ですがきっと親睦を深めればエッヒネ様の方が魅力的でしょう。ですがそうはなりません。ただ、ミューレさんはどう足掻いても十日以上に一回の女です」

 「ユッミル様、それは私を遠ざける嘘にしか聞こえませんしそれはそれで興味がありますね」

 「えっと?」

 「エッヒネ様、どうやらユッミル様は私に迫られたら困るらしいですよ」

 「その様ですね。私は一度わがままを聞いてもらったので今回は強引な事は手控えますけどね。エコさんが羨ましいわ。今日、別に必死にならなくても明日でも明後日でもユッミルと触れ合える」

 「けどエッヒネさんも主宰をやめたら状況は変わりますよ」

 「だと良いわね」

 「ユッミルさん、子供ができるのが困るのでしたら軽く触れ合うだけ触れ合ってそれで終わればいい。私はそれでも構いませんよ」

 「あの、ミューレさんの機嫌を損ねたくも無いのでそれでも懸念は残りますね」

 「流石に全く満足のいく対応なんて無理ですよ」

 翌朝、寝ぼけたままエッヒネに朝食を食べさせてもらい、エッヒネとは家の前で逆の方向に別れる。ユッミルはエコと事務所に向かう。レミーカはおらずエコと細かいものを買い出しする。

 「明日、火の団が手配した大きな家具について相談があるのでユッミル様はここに居て下さい。私も同行します」

 「分かりました。開所は先になりそうですね」

 「家具はそこまで足りないようには思わないですが?」

 「言ってませんでしたか。今回の相手は光系術師、目立つ事は開所前に済ませたい」

 「そうですか。まあとにかくそういう事ですから」

 ユッミルはエコを家に送ると無性の家に向かう。

 「なっ」

 「お帰りなさい、おじさん」

 「ニ、ニーシャ。仲良いんだね」

 「聞いてよ、父さん。コーリャが強引に今日も泊まるって」

 「こ、こちらとしては構わないけど親は心配しないの」

 「少し言われるだけ。そんな事よりユッミルさんはどんな仕事してるの?」

 「少し説明が難しいかな。色々やる仕事だしね」

 「そっか。恋人は他にいないの?」

 「そうだね」

 「けどおばさんとは違う女の人の匂いがするよ」

 「うん、職場には女の人もいるし」

 「そっか。もっと話したいから隣で食べて良い?」

 「まだだったの?」

 「何故か待つと言いだしたんだよ」

 「えっと、おじさん一人だと可哀想でしょ」

 「君の親は放っておいて良いのか?」

 「大丈夫」

 コーリャは色々聞くがユッミルは基本的にはあまり答えない。コーリャは深く追求する事は無かった。

 「じゃあ風呂に入ろうよ」

 「うん、僕は後で良いよ」

 「一緒に入ろうよ。ニーシャちゃんと入ってるんでしょ?」

 「それはそうだけど君はそういう年でもなさそうなんだが。ニーシャ、今の若い子はこんなものなのか?」

 「知らないよ。けど私はパパと入りたい」

 「ママは良いのか?」

 「少し狭いしパパとが良い」

 「コーリャちゃん、おじさんは一人の方が良いのだけどニーシャと二人で入ってくれないかな?」

 「ニーシャちゃんは三人が良いよね?」

 「うん」

 「なら良いよ」

 ユッミルが若干躊躇しているとさっさと服を脱いだコーリャは全身でユッミルを押して急かす。コーリャは平均的な体型なのだろうとユッミルは勝手に感じた。メシャは同年代だが身長は低すぎて胸は大きすぎる。フーニャは少し上だが胸は小さい。レヒーハは少し上で同様に胸も身長も若干大きい。等の判断だ。風呂はそこまで広くないので自然と距離は近いがコーリャはそれ以上に近く何処とは言わず全身が触れてしまう。フーニャも対抗してくっついたのは言うまでもない。

 「コーリャは学校どうなの?」

 「特に何も。家が遠いから夕方は遊べないし。それにニーシャちゃんやおじさんみたいに面白い人はいないし」

 「面白い?」

 「うん、どんな人か分からないけど学校にも学校で話題になる人にもおじさんみたいなのはいないよ」

 「そんな変なつもりは無いのだけど」

 「変とも違う気がするけど悪い意味じゃなくて仲良くしたいかなって」

 「僕としてはニーシャと仲良くして欲しいのだけど」

 「それはもちろん。ニーシャとは昼間にお話ししたけど小さい子は夜は寝てしまうし」

 「そうか、そうだね」

 風呂から上がるとフーニャはさっさと寝る。ユッミルは風呂から引き続いてコーリャとゆっくり話している。時折、レヒーハの助けは入るがコーリャはかなり遅くまで話したそうにして喋っていく。翌朝、ユッミルはコーリャが起きる前に出て家に向かう。少し寝てから朝食を食べてレヒーハを迎えてエコと事務所に向かう。昼頃に大工業者が来て物差しなどの少しの道具だけ抱えた軽装でやってきてユッミル達と内装の話をする。業者が帰るとユッミルは買い出しに向かう。それを終えると警戒しながら扉を開ける。

 「コーリャはいないよ」

 「良かったです」

 「別に無用に詮索している訳でも無いだろう。警戒しすぎだ」

 「それはそうですが」

 「ただ、君の休みを聞かれてしまった」

 「休み?」

 「向こうはともかく無性の街は五日に一回休むのが一般的だ。学校もその日は無い」

 「そうでしたね」

 「だからコーリャに君の休みがいつか聞かれてしまってね。次の休みは休みと答えてしまった」

 「そうですか、仕方ないですね。いつでしたっけ?」

 「二日後だ」

 「その辺りの事情はネメッカ様に説明しておかないと」

 「それとそのネメッカからの伝言だが用事があるから塔に来てほしいそうだ」

 「今からですか?」

 「ああ、君が家に帰ればリュッサ君が、テーファ君の家に行けばテーファ君がと万全の包囲網だよ。その代わりにこちらもテーファ君やネメッカに二日後について要求しておいたがね」

 「分かりました」

 ユッミルは急いで光の塔に向かう。

 「ユッミル、こんばんは。まずは夕食ですね」

 食堂に着くとイーサとフェノもいる。ネメッカは隣に座る。

 「呼ばれたのはどうしてですか?」

 「その前に、ミューレさんと寝たのは事実ですか?」

 「エッヒネ様を含めて五人の火の女性ですよ。避けられる筈もない」

 「否定しないんですね」

 「エッヒネ様とは何もしてません。ミューレさんとも何も無い筈です。仮に何かあってもネメッカ様に遥かに劣る位置でしかないですよ」

 「ユッミル、問題は私ではありません。私との関係は問題無いのでユッミルが乗り気ならこのまま二人目に向かっても構いませんがイーサはあなたに信頼を置かれて進言する立場がミューレさんに奪われる事を懸念しています」

 「それは無いですが深い意味は無くミューレさんとも話します。ですがネメッカ様が懸念するというなら控えます」

 「何を言っているんですか?私はイーサとの仲を深める事をお願いしているんです」

 「用件はそれですか?」

 「いえ、用件自体はもっと嫌な話です。ユッミル、エッヒネの方の赤子との面会を希望させられたそうですね?」

 「まあそうなります」

 「種々の都合上、下手に後になっては手が限られますから明日この四人で向かいます。正式訪問ですね。」

 「分かりました」

 「あっさりですね」

 「ええ、断る理由はありませんから」

 「でしたらこの話は終わりにして夕食後もお付き合いくださいね」

 「ん?」

 夕食を終えると主導部屋に向かう。ネメッカはネミークを預かりに向かいの予備部屋に入っていく。ユッミルがベッドに腰掛けるとイーサも隣に座る。

 「遠慮しなくて良いんですよ?」

 「今はネメッカ様を待ってるんじゃないんですか?」

 「私と仲を深める事はネメッカ様もむしろ望んでいる事です。光の団に末永く居残って頂ける事にも繋がりますし」

 「いえいえ、ネメッカ様がいつ戻るかを気にしていると色々上手く行かないかなと。ねえ、ネメッカ様」

 ネメッカは部屋に入ってくる。

 「ユッミル、さっきも促しましたよね」

 「落としますよ」

 「ならユッミルに預けます」

 「ネミーク、お母さんは騒がしいね」

 「んー?」

 「ユッミル、話を聞いてます?」

 「二人きりにしたいならもっと上手くして下さい。今回は不合格ですよ」

 「それは」

 「イーサさんにしては随分拙いですね。どうしたんですか?」

 「ユッミル様、私もネメッカ様がいても構わないと思ってるのですが?」

 「そうですか。であればとりあえず二人でお風呂にでも入りますか。まあネメッカ様の希望ですし」

 「はい。こちらとしてもそういう形で良いと思いますね」

 ユッミルとイーサは体を預け合いながら風呂に入る。

 「ユ…」

 ネメッカはネミークの世話をして風呂の方を見ないようにしている。

 「次はネメッカ様ですよ。私も残りましょうか?」

 「いえ、イーサと先に遊んでて下さい」

 ネメッカは風呂に入る。

 「ユッミル、どうして寝てないんですか?」

 「ネミークの世話を焼くネメッカ様が可愛らしいので見てただけですよ」

 「これからネミークを放って色々やりにくくなる様なことを言わないで下さい」

 「そうですね。それにしても最近のイーサさんはどうしたんでしょう。効率を考えれば一人目を産んでから動いた方が良いのに」

 「いえ、私の出遅れを痛感しまして」

 「あなたの地位からして出遅れは気にしなくても良いでしょう」

 「そんな気もしますがユッミル様と一線を引くのがいい加減に面倒になって来ましてねというのもあります。ユッミル様からしても周りに押し付けて自分は何もしない女にさせてしまえばすっきりしますよ」

 「あの、私はイーサさんの考えが分かりにくいから警戒してるだけですよ」

 「ですからちゃんとユッミル様への好意を隠さない事にしただけです」

 「分かりましたよ。とりあえず信じておきます」

 翌朝、フェノを加えて三人で朝食を食べていると途中でリュッサとルーエも合流してくる。

 「ネメッカ様、おはようございます」

 「おはよう、ルーエ」

 「それにしても今日は総出なのですね。私位は塔に残った方が良いのでは?」

 「私達6人以外にはできるだけの数を呼んでいますし問題は無いです。ネミークも連れていくので普段世話してる子達の手も空きますし」

 「そういう事ですか。ですがネミーク位そこの男に任せればいい」

 「そうしたいのはやまやまですが道中はともかく火の塔に着いたら主導と主宰が動きます。形式的には私が抱きますがリュッサにも助けてもらわないと」

 「リュッサさん、しんどい時期にすいません」

 「いえ、ネミークの世話係の大半は同じですからユッミル様の側近の私が動くのは当然です」

 「ありがとうございます」

 ネミークの世話係から妊娠していない女性一人を連れてネミークを含めて八人で塔を出る。

 「ああ、光の団か」

 「改めてだがまさかネメッカがああなるとはな。遂に子供だぞ」

 「しかもどうやら訪問先は火らしくてそこではエッヒネもらしいぞ」

 「やはりエッヒネの相手は気になるよな」

 「あら?何かネメッカさん以外とも仲が良いのかしら?」

 「光は男少ないし仕方ないわよね」

 ユッミル達は火の塔に着く。

 「ユッミル様、ネメッカ様、本日は少々急な招待をお受け頂き、ありがとうございます」

 「いえいえ、日頃火の団にはお世話になってますから」

 「まずは是非、ユッミル様がこの子を抱いてあげて下さい」

 ユッミルは赤子を抱く。ただ、赤子はエッヒネを探す様に後ろを向こうとしている。エッヒネはネミークを抱こうとしていたがネメッカに一度返してユッミルごと赤子を抱く。

 「ユッミルさんはきっとあなたには優しいですから心配しなくて良いですよ」

 エッヒネは赤子を軽く撫でるとネメッカの方に戻ってネミークを抱く。赤子は大人しくユッミルに抱かれる。

 「ネメッカ様はどうします?」

 「エッヒネ様も抱いたんですから私も抱きますよ」

 ユッミルは一度ネミークを抱くがエッヒネを筆頭にミューレ等にも促され、赤子を抱きながら軽く談笑する流れに持ち込まれる。ネミークはエッヒネが抱いている。

 「エッヒネ様も大変ですね。それにしても酷い父親ですね。しかも素性を明かせない人と」

 「ネメッカ様も愛してしまえばそういう人でも付き合うでしょう?」

 「それはそうですが今やそんな心配は無いですけど」

 「ネメッカ様、その人にどんな事情があるか分からないのですから」

 「そうですね。私もあなたを褒められたやり方で捕まえた訳では無いですしね」

 「それはもう良いでしょう。それよりそろそろ」

 「はい、ユッミル様。昼食の用意ができてますので食堂に移動しましょう」

 やはりミューレが仕切っている。食堂に着くといつの間にかユッミルのネメッカと反対の隣はミューレが占めている。赤子の面倒の手助けをしている。

 「ユッミル様、この子は少し甘えん坊なんですよ。お母さんにいつもくっついて」

 「あの、まあ赤子は大体そうですよ」

 「そうでした、この子の他に二人の父親ですからね」

 「で、二人の父から見てこの子はどうですか?」

 「大人しい子かな。それと人をよく見てる」

 「そうですか。この子の事を分かって仲良くして頂きたいものです」

 「それはそうですね。優秀な光術師という可能性も僅かにある訳ですからね」

 「つまり、この子が立派になるまで光の団にいると」

 「そうですね。ネメッカ様からは中々逃げれそうにない」

 「さっきは捕まえたと言いましたけどその言い方は酷いです」

 「名前はどうするんですか?」

 「まだですね」

 「候補とかは?」

 「忙しくてですね」

 「不便でしょう」

 「でしたらユッミル様から名づけを頂くのも良いですね」

 「まさか名前が決まって無いとは思いませんでした」

 「そうですか。じっくり考えて下さいね」

 ユッミルは赤子をそっと撫でたり目を合わせたり、色々している。

 「良い子でしょ?」

 「エッヒネ様に似るんですかね、これから」

 「男の子ですからお父さんと似ていくかもしれませんよ」

 「そんなものですかね」

 「で、名前はどうします?」

 「一応、エッヒネ様の意向も重要だと思いますが」

 「少々昼食が長くなってますが午後からは会談にしましょう。大人数もあれなので火の側からは私とエッヒネとエコが出席しますから後のものはネミークちゃんの面倒を見てて下さい。団で子供の世話は最近では久しいのだから先んじた光の団の話を聞いて損は無いでしょう」

 「分かりました。こちらも私とネメッカ様にイーサさんが出席して他は楽しくお話ししてもらいましょう」

 エコやミューレは食堂を後にして応接室に赤子を連れて向かう。

 「そういう訳ですので名付け会議ですね」

 「エッヒネ様はどう思っているのですか?」

 「ユーヒル君とか」

 「あの、私丸出しは困ります。エッミネ、女の子みたいですね、何が良いですかね?」

 「エッヒネ様は女性なのですからそれに近い名前だと女の子になってしまいますよ」

 「あまり響きを親と近づけるのにこだわらないで全く無関係でも良いと思いますよ。それか主導のバッソーさんから取るとか」

 「ネミークからもらってレミークは?」

 「それは嫌ですしそれにどっちにしろユッミルから名付けをもらった事は公表するんですからユーヒルはともかくユッミルさんに近い響きでも問題無い筈です」

 「あの、それだと私が父親でもないのにエッヒネ様のお子様に自分の名前を押し込んだ事になりますよね?」

 「そんなに誰も気にしないしそれを言い出せばあなたが名付けてる時点でほぼ変わりません」

 「シェヒユスにします」

 「えっと、珍しい響きですね」

 「ええ、そんな気もしますが下手にエッヒネ様の名前を引き継ぐと考えると難しそうなので」

 「まあエッヒミルみたいな名前よりは遥かに良いですよね」

 「私はそのエッヒミルでも良い気がしましたがユッミルにもらう名前としてはユッミルの評判を落とすのでシェヒユスでお受けします」

 「ありがとうございます」

 エッヒネは軽く微笑む。

 「あなたがお礼を言うのは変ですよ」

 「それはそうですが」

 「ユッミル、そろそろ帰りますよ」

 「まあそれはそうですけどどうかしました?」

 「特には」

 「さて、まだですよ。イーサさん、ギルドの運営状況はどうなんですか?」

 「昨年に比べればましですね。ユッミル様を中心に術者に供給頂く光術付与の魔石の供給量増加がありますから」

 「だがその割にはという事ですね」

 「ええ」

 「火は減収減益だね。客単価も低下している。天候不順もあるが」

 「やはり例の話ですか。どうにも解決しないのですか?」

 「当面は冬の生活費が減るのだし難しいだろう。火としては冒険の比重を下げてもらっている」

 「光は元々高くないので下がりませんけどね」

 「光は元々状況が悪かった分心理的に強いわね。他の団はあまりいい空気では無いわね。まあ水は備えてたみたいだし氷は団を当てにしないからそこまででは無いみたいだけど土の火は痛いわね」

 「土の戦力低下はかなり痛手ですよ」

 「そうね。だから皮以外の商品が欲しいわね」

 「金属加工はどうなんです?」

 「それだと火の引退組の反発を食う」

 「冒険者しかとれないものですよね。獣以外にあります?」

 「無性の街から引ける金となると指揮所の維持費という名の魔族防衛費。でも最近は無性の街に飛来しないから上げさせるのは無理ね」

 「守らない方が良いですか?」

 「ユッミル様」

 「良いのよ。私も過るし。けどそれだと魔族からの襲来に役に立たない術師って事で逆に下げる要素にもなるから迂闊にはできない。手詰まりね。皮を手直しできるだけでこんな事になるとは思わなかったわ」

 「術師は減るのでしょうか?」

 「まあそうなるわね。目先の収支を考えて指揮所への派遣規模を減らせば徐々に引退者が増える。魔石収入は減るからさらに団財政は悪化」

 「けど術師が減れば皮の価格は持ち直すのでは?」

 「そうね。だから減り続けるは無いけど減りそうね」

 「けど無性の街の経済が良くなればこっちにも波及しないんですか?」

 「そうなると良いんだけど無性の働き口は足りていない。あまり期待しない方が良いわね」

 「そうなると獣の肉料理を出すしかなくなりますね」

 「駄目よ、それも反発を買う」

 「そんな事を言ってる余裕はあるんですか?まあそろそろ失礼しますね」

 「えっと、まあ確かにこんな時間…」

 「エッヒネ様、申し訳ないです」

 「いえ、大事な事は大事な事ですから」

 ユッミルが家に帰るとルーエ以外はくっついてくる。

 「イーサさん、あなたは帰って下さい」

 「側室に帰れとは酷いですね」

 「仕事はして下さい」

 「夕食位は良いでしょう」

 「私が向こうの家に行けば帰ってくれますか?」

 「でしたら風呂だけでも」

 「私は食後に入りますが」

 「良いですよ。帰りますよ、ネメッカ様」

 「ネメッカ様」

 「何ですかそのサービス。浮気前みたいですよ」

 「どうでしょうね」

 「では帰りますね」

 シウ達と夕食を済ませる。

 「では向こうに戻ります」

 「あら?ネメッカさんの勘は正解?」

 「いえ、むしろ逆の可能性もありますよ」

 「逆?」

 「女性がいても何も手を出せない状況ですよ」

 ユッミルが無性の家に向かうと案の定コーリャがいる。

 「お帰りなさい、おじさん」

 「パパー、お帰り」

 「ニーシャちゃん、良い子にしてた?」

 「うん、だから風呂で体洗ってよ」

 「今日はコーリャちゃんがいるでしょ」

 「私も一緒に洗えば解決だね」

 「そうだね」

 ユッミルは夕食を終えた事を言い出せずに二度目の夕食を食べる。

 「私のも上げるね」

 「ニーシャ、自分で食べなさい」

 「あれ?いつもは喜んで食べるのに」

 「そろそろ背も伸びるよう食べた方が良いと思うよ」

 「そっか、分かったよ」

 夕食を終えると三人は風呂に入る。レヒーハが気を利かせて石鹸と洗い場を用意したらしい。光の塔を含めて塔には立派な排水系が存在するが普通の家はその都度近くの主流の排水系まで管をバイパスしなければならないし地下深くを掘ったりはしないので壁面近くから少しだけ掘って簡単な構造で排水するだけだ。その都合上排水地点は基本一か所でせいぜい数ヵ所位だ。実態としては排水は台所以外は直接運ぶ形になる。

 一度風呂に入った後、適度に体が濡れた状況で洗い場に三人で移動する。フーニャは洗い場に立っていてコーリャも立っている。

 ユッミルはフーニャの背中に適当に石鹸を塗り、コーリャの背中に若干丁寧に石鹸を塗る。それを終えると石鹸をフーニャに引き渡し、コーリャにも渡す。

 「父さん、いつもみたいに手も足も洗ってよ」

 「ニーシャ、友達がいるからって普段しない事をねだったら駄目だよ」

 「手と足位良いでしょ?」

 「自分でできるでしょ」

 「今日は自分ではしないし全部やって」

 「くすぐったくても良いのか?」

 「構わないよ」

 ユッミルはあえて多少くすぐる様にフーニャの全身に石鹸を塗っていく。フーニャは必要以上に笑っている。既に感覚は麻痺してユッミルに少々触られても何も無いらしい。

 「楽しそう」

 「げっ、はっ」

 「ねえ、私にもやって」

 「うん、フーニャやってあげて」

 「私にもおじさんがして」

 「は?」

 「え?」

 ユッミルはコーリャの反応で自分の常識に対する自信を失ってしまった。ユッミルはコーリャにも遠慮がちに全身に石鹸を塗っていく。その後、ユッミルはフーニャを流すふりをしてフーニャに軽く抱きついて心を落ち着かせてからコーリャの体も流す。その後、ユッミルもフーニャに体を不必要に押し当てられながら背中を洗われる。

 風呂から上がると最早、恒例行事かの様に普通に三人で寝る。フーニャが体の半分を乗せるので軽く抱く。

 翌朝、その日は無性の街の休日なのでコーリャは朝食後も普通にフーニャと遊んでいるしユッミルは抜けるに抜けられないが散歩と称して少しだけ外を見回る事にする。家に戻って連絡事項が無いかリュッサやエコにさっと確認するとすぐに家に帰る。しばらくして昼食を食べるが朝食同様何故かコーリャとフーニャに挟まれる。実際には片方は角越しだが。そもそもコーリャがフーニャとユッミルを隣に座らせた上でユッミルの側の角に座ってこの状況を作っている。そして、やはりユッミルが居るとニーシャとは別でそこそこ話していると言ってユッミルと話そうとする。

 「魚好きって珍しいね」

 「冒険者の知り合いもいるから食料の現地調達の余りを時折分けてもらうけどおいしいよ」

 ユッミルはこれに関しては計画的だ。冒険者には資質が関係するので友人内であっても向き不向きがある。それで関係性が薄れる人もいるがミューレやユッホに聞く限り、少なくない冒険者が無性の友人を持っており、収穫物をお裾分けするのはよくあると調査済みである。故に口も軽い。

 「どんな人なの?」

 これも想定済みである。シウやネメッカは有名すぎて論外。テーファも然りだ。フーニャやレヒーハはここにいる。メシャやオーネは駄目。フェノも対応に難があり、水系は論外。そうなるとエコかソヨッハだろう。けど会わないならディユも無くはない。

 「木の術師さんだよ。優秀な人だから最近は忙しいみたいで会う回数は減ってるけどね。ここに住んでからはまだ会ってないなあ」

 「じゃあ話そうよ。引っ越しきっかけで会わなくなるとかあるからね」

 「えっと会いたいの?」

 「まさか」

 「おじさん、私を何だと思ってるんですか?」

 「そんなつもりは無いよ」

 「魚、期待してるね」

 「たくさん釣れた時に余るだけだから毎回とは限らないよ」

 「来週の休みに食べたいなあ」

 「約束はできないけど用意できたら呼ぶよ」

 その後もユッミルやニーシャと好き放題話して夕方の早いうちにコーリャは帰っていった。

 「さて、ユッミル君。昨日はよくも僕に体を押し当ててくれたね」

 「そういう意図では無いですがあなたはそういう意図でいつもやってるじゃないですか」

 「だが少々いつもよりあれだったが。コーリャさんですよ。あの子、大人手前なのに無防備すぎですよ。それにあなたもそれを知って止めませんし」

 「お零れを貰えればと思ったんだが」

 「それは無いです。不意を打たれましたが今後は大丈夫ですよ。ですが良くないです」

 「ただ、コーリャちゃんは楽しそうだし良いだろう」

 「自分で避けるしかないんですね」

 翌日、昼過ぎに大きめの家具が運び込まれてユッミルとレミーカとエコで対応する。業者が帰った後も作業していたがその日で終えられそうに無いので早めに撤収する。無性の家にコーリャがいない事を確認すると家に戻る。

 家ではリュッサの腹もいよいよ膨らみ、シウも流石に服の上からでも分かるほど膨らんでいる。イーサは緩い服なので分かりにくいが脱いだ時は相応だった事を思い出す。エコもシウと同じ日だが若干長身な分目立ってはいない。当然、エコが力仕事をした訳では無いが少しユッミルは反省した。レヒーハはともかくフーニャは確認しないといけないと気づく。

 「エコさん、後は私とレミーカさんでやりますからゆっくりして下さい」

 「そうですか、まだ作業もあった気はしますが急がないのであれば大丈夫ですよね」

 「ところでこの後はどうするんですか?」

 「ここにいますよ」

 「えっとそろそろですよね?シウさんもですが」

 「そうでしたね。三人を一気にでしたね」

 「あなた方が仕組んだのでしょう」

 「ええ、全員が出来て良かったです」

 「とにかくそういう事ですから移動は控えた方が良いのでどちらにするんです?」

 「シウさんはここから動きませんよね?」

 「ええ、前に休んだ分エッヒネに押し付けるわね」

 「そういう事なので私もここに残ります。まあシャーユちゃんの世話を少し手伝う位なら問題無いですしその点はリュッサさんも同じなのでシャーユちゃんはしばらく女王様ですね」

 「弟や妹ができるのでお姉ちゃんですけどね。メシャーナは認めない様ですけど」

 ユッミルはエコとリュッサと一緒に風呂に入り、体をほぐしながら洗い、肩等を揉みながら軽い会話をしてそのまま寝てもらう。その後は久々にメシャーナとシャーユを遊ばせて眠らせると手を繋いで寝る。シウが反対側から抱きついたが黙って寝る。

 翌日は作業しながら探偵事務所の運営方針を話し合う。基本はユッミルが決めていく。

 「開業は今週末だけど来週からは週初めと三日目に営業。その時はレミーカがいてね。基本的に僕は依頼者と直接は会わないから以来の実務は私がやるけど。レミーカはここに来たらポストを確認して依頼があれば内容を教えてね。ただ、週の二日目辺りに時折来る事もあるから急がない内容は急がなくていいよ。まあ最初は依頼もそんなに来ないよ」

 「分かりました」

 「受けられる依頼の大体の内容は来週辺りに掲示するし掲示物は作ってあるからレミーカも確認しておいてくれ。流石に暗殺とかは受けられないからね。そんな事を探偵に依頼する人がいるのかは知らないけど」

 「じゃあ今日は帰ろうか。看板は僕がやるからレミーカは気にしなくて良い。けど看板を掲げたら気を引き締めてね」

 「本当にその術師は引っかかるでしょうか?」

 「いずれは引っかかるよ。それなりの難易度の依頼もこなすからね。気になるライバルになるだろうから。けどもっと警戒心が強ければもっと早いから警戒しておいて」

 「そうですね」

 ユッミルは光の塔に行く。ネメッカに今度は正式にレミーカの送迎を依頼する。ネメッカは代わりに明日午前の指揮所をお願いした。早朝、指揮所に行くと氷と土の幹部がいて共に男性だった。急な事だった事を考えると他の団がユッミルの指揮所時間帯に女性術師を優先しているのではと疑った。ただ、水や火の団は幹部に女性が多い等団によって事情は違うしそもそもユッミルは偶々なのか氷の幹部の同席は初めてである。指揮所にも男性が多く居づらい雰囲気をユッミルは感じている。

 魔族領は平和であるが日が昇ってしばらくするとまたリッネが魔族狩りをしている。魔族は明らかに森の方面で戦線を下げているので草原の手前の前線の側面は脆弱だ。

 結局、ユッミルは終始黙ったまま任務を終える。ただ、その沈黙はさっさと破られる。

 「ユッミルさん、ご苦労様」

 シーリュノ様はユッミルをさっさと抱き込む。氷や土の幹部はさっさと撤収する。そして、後方にはどうやらピュッチェがいる。

 「あれ?」

 「ご無沙汰してます」

 「うん、それもそうなんだけど」

 「はい、シーリュノ様の護衛を務める事になりました。ローテーションの一人ですが」

 「形式上はそうだけど場合によっては一番危険な指揮所には毎回連れていく事になったわ。ユッミルさんと経験を積んで強くなったしね。もちろん、私の指揮所任務以外では引き続きユッミルさんの狩りに同行しなさいという事です」

 「そういう事ですか。それは良かったです」

 「ユッミル様ですか?」

 「ああ、ムヒューエ。久しぶりではないか」

 「そうですけどゆっくり話す機会は無かったですね。今もそこまでですが」

 「もっと早ければ話せたのに」

 「いえ、ネメッカ様だと聞いていたので」

 「そうでしょうね」

 「私はユッミルさんもネメッカちゃんとも会うのが楽しみだから早いけどね」

 「ですがまあここまですね。帰ります。ムヒューエさん、まだ」

 「ええ、また」

 ユッミルは塔に寄ってイーサに挨拶をしてネメッカと交代する。敢えてレミーカには告げずに送迎する。光の塔の方に抜けた所で術を解き、レミーカと合流する。

 「どうでしたか?」

 「ああ、ユッミル様でしたか。なるほど」

 「どういう事ですか?」

 「ユッミル様の方が魔力が強いというより鋭い。ネメッカ様は包まれる様な感じですね」

 「どちらが良いんですか?」

 「失礼ながらネメッカ様の方ですね」

 「出力を下げると不完全になりませんか。まあ全開にはしていませんが」

 「確かにユッミル様のやり方の方が確実な上に魔力も悟られにくい」

 「まあ低出力を細かく長く使ってるからね。多方向に出力してるから総合的な出力は大きいがそれに周辺にもより弱いのを撒いてる」

 「凄いですね」

 「ネメッカ様はネメッカ様でじんわり間合いを持って消してるからそれはそれで凄いけどね」

 「消してると言うより空間を伝う毎に減らしてる訳ですか」

 「ええ、難易度は高いが魔力消費は小さい」

 「ただ、精神力がしんどいのと周囲の警戒が悪くなるので実戦向きでは無いですが」

 「そういう事ですか」

 「ですが取り入れはしましょう」

 「そこまででは無いですが」

 「いえ、訓練になりますから」

 「確かにそれは言えますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4節 つりにつられて


 「ユッミル様、珍しく遅い時間ですね。そういう用事ですか?ここに来るという事はマッラでは無い。もしかして私ですか?仕方ないですね」

 「あの、かなり下らないのですが急ぎはしたいのですけど魚釣りってできます?」

 「少々待って下さいね」

 ミューレは少し考え込む。

 「ちょっとすぐには難しいですね」

 「例えば釣り具を用意してもらうとか」

 「そういう無理難題は好きな人がいるじゃないですか」

 「ハースナさんですか。雷装剣で獣を切る回数が減ったと言うか剣がすり減らなくなったので最近はハースナさんに会ってないんですよ。怒ってません?魔族を切ってもそこまで剣自体は消耗しませんし」

 「分かりませんね。ただ、前の雨季や寒季はかなり客が減ったので暇そうでしたよ」

 「そうですか。ただ、いきなり行って剣では無く釣り具ですからね。せめて釣り具に具体的な注文ができる様になってからですね。火の団に釣りが得意な人とかいないんですか?」

 「心当たりは無いわね。けどまあ少しは探しておくわ。釣り、面白そうだし」

 ユッミルは急いで帰宅する。家にはリュッサ、シウ、エコ、メシャーナ、シャーユ、オーネがいる。

 「あの、この中に釣りに詳しい人とかそういう知り合いがいる人はいます?釣りをした事がある程度でも構いません」

 「無いですね」

 「火の人間は無いわよね?」

 「無いですね」

 「私は魚を捕まえた事はあるよ。水を掬ってね」

 「メシャ、流石にそれは釣りとは言わないけど釣りに行く時は連れていくね。まあリュッサやエコもシャーユの面倒を見てもらおう。オーネは寝てるけど連れていく。起きたら明日と明後日の予定を空ける様に言っておいてね」

 「えっと何処か行くの?」

 「釣竿ってどう作れば良いと思う?」

 「うーん」

 「木だよ。少し木の団に行ってくる」

 「もう遅いけど?」

 「木の塔に泊まるかもしれない」

 ユッミルは急いで木の塔に向かう。入ってしばらくするとパータナに声を掛けられる。

 「いよいよお見舞い?」

 「えっ」

 「ほらっ。ユッホが産むでしょ?」

 「あっ」

 「忘れてたの?」

 「最近は忙しいんですよ」

 「で、今日もそんな感じですか?」

 「はい、釣りがしたいんです」

 「本当に忙しいんですか?」

 「えっと、知り合いの知り合い位の人に友達が釣りを良くすると言ってしまってですね。他にも色々な隠し事がありましてこれを何とかしないとその色々も崩れるかもしれないので何とかしたいんですよ」

 「ああ、嘘って積み上げると厄介な事ってありますよね…」

 「本当は正直に言った方が楽ですけどできないんですよね?」

 「ええまあ」

 「協力しますよ」

 「ありがとうございます。けどとりあえずソヨッハに会いたいんですが」

 「確か風呂ですよ」

 「それ位は待ちますよ」

 「泊まるんですか?」

 「それも可能です」

 「あっ。ユッミルさん」

 「その声はユッホさん」

 ユッミルは声の方を向く。

 「ユッホ、大丈夫か」

 「ユッホさん、太っても可愛いですね」

 「ユッミルさん、何ですかそれは」

 「いえ、ネメッカ様とかは元の体型が完璧なので太るとその差で魅力が落ちるんですよ」

 「そんな事より今日は泊まるんですか?とりあえず赤ちゃんを抱いてあげて下さい」

 ユッミルはユッホの腹を抱きながら撫でる。

 「宿舎に入って良いんですか?」

 「まあユッホはその上の階で世話されてるけど」

 「世話?流石にユッホ主催の稽古は一時中断。回数を減らして私とかが日替わり講師をやってる」

 「何か申し訳ないです」

 「いや、それは私達の方。ユッホが抜けるだけで成り立たない運営は駄目だったんだよ」

 「それはそうかもしれませんけどね」

 「ああ、気にしなくて良い。それよりユッホの面倒を見てやってくれ。別に上階は二人や許可された者以外立ち入り禁止という訳では無いからソヨッハは私が連れていく」

 ユッホとしばらく適当に話しているとソヨッハが入ってくる。

 「ユッミルさん、こんばんは」

 「うん、じゃあ夕食にしようか。」

 「私はもう食べましたよ」

 「ユッホは?」

 「夜食の予定を早める」

 「えっ」

 「ユッホさん、最近は目に見えて食事量が増えてるんですよ」

 「回数も?」

 「はい」

 「ユッホさん、大丈夫なの?」

 「多分ね」

 「お腹以外はそこまで太ってないし」

 「そうですか。とりあえず行きましょう。けど軽くですよ」

 三人は食堂に移動する。

 「あっ、ユッミルさんね」

 「ん?シーリュノ様ですか」

 「食事、一緒で良いかしら?」

 「はい」

 シーリュノはそこそこの量を頼む。

 「ユッミルさん、大丈夫ですから行きます。半端に食べてあれを見たらお腹が空いてきました」

 ユッホは追加で頼み始める。

 シーリュノは食事の山の一部をユッミルの前に置く。

 「食べれるわよね?本当は」

 「あの、用事があってソヨッハと話があるんですが」

 「まさかこの時間に帰るとは言わないわよね?」

 「ええ、まあ」

 「なら急がないでしょ?」

 「分かりましたよ」

 ユッミルもそこそこの量を食べ始める。

 食事は続くが少し収まって来てユッミルはようやく本題を話し始める。

 「木の団って釣りをする人はいないんですか?」

 「釣りって魚とかを取るの?」

 「はい」

 「ああ、この団には昔からそういう人はいるけど今はこの場には居ないわね。釣りをするのは男が多いし。それに多くの人がするって訳でも無いしね」

 「でしたらせめて竿を作れたりはしません?」

 「材料なら提供できるし木材加工も朝なら工場を使っていいけど先端は用意できないわよ?」

 「いえ、持ち手部分だけでもありがたいです。後、ソヨッハさんを借りますね」

 「そうね。レヒーハではそういうのには向かないわね。けどピュッチェも連れていくと良いわ」

 「そうですね。木の団に来て正解でした」

 ユッミルは食事を終える。

 「ユッミルさん、風呂はどうするんですか?」

 「泊まらせて頂くのですから入れなくても仕方ないですよ」

 「ユッホちゃんと主宰部屋で面倒を見てあげるわ」

 「もうそれで良いですよ」

 ユッミルは主宰部屋に向かう。

 「ユッミルさん、私の服を脱がせてくれないかしら?」

 「それはそのまま押し倒して抱き込んでいいと?」

 「ええ、でもそんな気は無いわよね?」

 「そうですね」

 「ユッホのもあなたが脱がしてね」

 ユッミルは二人の服を脱がせていく。

 「ユッホさん、本当にそろそろですね」

 ユッミルはユッホを軽く抱き寄せながら風呂に入る。

 「ユッミルさん、私に甘えても良いのよ?」

 「遠慮します。間違ってもあなたとの子供ができたらとんでもない事になりかねない気がしますし」

 「そう言われると余計にしたくなるわね」

 「けどあなたは僕の意思には反しないと思っていますが」

 「そうね。だからその気になるかを探ってる訳だし」

 「当面は無いですよ。そんなリッネ様を刺激しかねない行為は無理ですよ」

 「そういう事ですか。私はかなり不利な様ですね」

 翌朝、朝食を木の塔で食べると事務所周辺を通って月の塔周辺に遠回りして家に戻る事にする。事務所周辺でまた姿の無い場所での魔力を一瞬感じるが去っていく。ユッミルはソヨッハを待たせてフーニャを迎えに行き、三人でピュッチェを迎えて家に帰る。

 「昨日も言った通り、釣りをします」

 「何か意見がある人は?」

 「それ、竿よね?先はどうするの?」

 「糸はソヨッハさんが用意できますが針と餌ですね。そもそも森の魚が何を食べてるか知ってる人はいます?」

 案の定の沈黙である。

 「そういう訳なので僕は魚をよく見ておきます」

 ユッミルはソヨッハ、ピュッチェ、オーネ、メシャーナ、シウ、フーニャを連れて森へ向かう。

 「ユッミル様、お待ち下さい」

 ユッミルが振り返ると男性の多い集団がやってくる。

 「ミューレさん?」

 「火の団としても釣りをしてみる事にしました。まずはこれを」

 「釣り具ですか?ありがたいです。糸も頂けると」

 「これだけなら」

 「これだけでもありがたいです」

 「君が釣りをしようという光の主宰か?」

 「ええ、まあ」

 「俺はテューグ、釣り経験ありだ」

 「そうですか。協力して頂けるのですか?」

 「ええ、デューグさんをお貸しします。その代わりと言ってはあれですがユッミル様をお借りできませんか?」

 「どういう事ですか?」

 「私達は湿地に向かいます」

 「魚、いるんですか?」

 「はい、いるようですね」

 「ですが流石に目が離せない可愛い子がいるのでそれは無理ですね。そうですか、泉の方だと火の術師は補助でしかない…氷の術師に頼めばいいでしょう。集会所ででも」

 「あなた同様急ぎたいのですよ。あなた方に足並みを揃えたい」

 「合同は駄目ですか?」

 「効率的ではないでしょう」

 「分かりました。フェノを呼びます」

 ユッミルはフェノを呼び寄せてミューレ隊に預け、デューグに同行してもらう事にした。木の団からもらい受けた五本の竿のうち一本をミューレ隊に渡す。

 「獣寄ってこないな、減ってるという噂は本当だったのか」

 「ええ」

 「警戒も強いでしょうしね」

 「魚はどうか」

 「そうですね」

 ユッミルはメシャーナと手を繋いでいる。

 「それにしても雷さんの班は子供が多いんだな。まあ装飾品や杖を見る限り、実力は子供ではないんだろうけどな」

 メシャーナはユッミルの手を握っているがその手の甲の側は厚めの皮で覆われ左手の手首は厚手の金属製の腕輪の様な防具に投げナイフが数本差してある。いつの間にかかなりの実戦仕様だ。投げナイフは短めながら腰にも差してある。ちなみにフーニャはかなり小さなナイフを杖に円形に付けている。もちろん、普通に動かしていると落ちるので薄ら魔力を使って支えている。シウの杖はシンプルで長さも短い。しかも置く前提なのか下側がしっかりしている。もっとも指揮所派遣時には普通の杖を持っている。木の術師は防具のみで手ぶらである。必要なら木で即席の杖を作れる事もあり、木の術師は一部を除いて杖を持たない。光の術師は基本杖を使うのだが例外はいる。ユッミルが持っているのは剣だが実質杖代わりと言っていい。実際、雷花等露骨に雷装剣を杖代わりに使う場面は多い。例外とはネメッカである。もちろん、ユッミルも剣無しでそこそこの術は使えるがネメッカは杖を使わない。一応、持ってはいる様だが指揮所にも持って行っていない。イーサですら塔の外では大抵の場面で服の中に杖を忍ばせているがネメッカはそれすらない。オーネの杖というより槍気味の意匠の棒は短めであり、槍気味である以外は地味な装飾で普通である。杖の長さは一度に使う魔力量に比例するので杖が長い方が実力が強いとされる。

ただ、短い杖に常時魔力を流して多量の魔法を使う術師もいる。シェンハは実は自分の指を杖に見立てて大量の魔法を使っているらしい。そもそも素養が高いと短い杖でも一度に流せる量を多くできる様だ。ユッミルやリッネに至っては自覚も無く剣の一部だけを媒体にして扱う事もしている。逆にシウはどうやら低い量を流せないらしい。流すとなるとそこそこの量を流してしまう様だ。それ故に短い杖で威力を抑える訳だがそれでも限界があるらしい。土術師や月術師は武器を持つ事が多くそれを杖代わりにしているのは言うまでもない。氷術師は自弁の氷を使い捨て浮き杖にする派と杖を用意する派に二分している。

ちなみに現状で最高の杖を使っているのはエッヒネである。エッヒネの杖には木材や皮をベースに多彩な長さや太さの金属骨格が埋め込まれており、その骨格を擬似的に杖扱いする事も可能でその上、エッヒネの魔力操作も上々なので威力を含めれば神経を尖らせたユッミルには及ばないものの事実上最も精密に術を繰り出せる。

 装飾品は魔力を少しずつ回収する役割、所有者の魔力の保有量を増幅させる役割を担っている。術を使っても基本は全てが術に使われるのではなく一部は周辺に放出される。それを回収する事もできる。もっとも杖自体に残る、戻るもあるが戦闘中はそんなものを当てにせずに流すので杖からは漏れの方が多い。人にもよるが。宝飾品はそれを回収していく。それ故に魔力調整が未熟な若い冒険者程宝飾品を使う。ただ、安くは無いので中堅冒険者が最も多い。無自覚なユッミルやリッネ達を除けばその点ではネメッカが至高なのでネメッカは宝飾品を付けていない。エッヒネは慢心を戒める為に、あるいは衰えを警戒して僅かに付けてはいるが空中から少し回収している程度の張りぼてである。

 しばらくして小さな池に着く。シウ等が竿を振ってソヨッハが糸用の植物を用意し始める。ユッミルは竿に糸を取り付けるとオーネに渡す。

 「ユッミルさん、釣り具無しは酷いですよ」

 「別に釣れなくても良いから」

 ソヨッハはフーニャに頼んで植物を切り出していく。

 「少し太いね」

 「はい、けどこれ以上細くするとすぐに切れます」

 「まあやってみよ…餌か」

 「それは俺が用意している」

 「虫ですか。しかも生きてますね」

 メシャーナとシウはさっさと餌を取り付ける。オーネとフーニャは虫を嫌がる素振りを見せる。

 「フーニャさん、早くして下さい」

 「いや、そこそこ気持ち悪いのは本音だ。子供はともかくシウ君はよく平気だな」

 「ええ、変な動きをすれば燃やせばいいしね」

 「そうですね」

 ユッミルはオーネの釣具に虫を取り付ける。オーネも池の釣りに向かう。

 「私のだな、次は」

 「デューグさんにやってもらって下さい」

 フーニャが釣りに参加し始めるとその様子を見ながらもピュッチェとソヨッハとも話しながらもデューグと次の釣り場を相談していく。しばらくしてユッミルは池の魚の数を調べてデューグと相談する。メシャーナとオーネにソヨッハ、デューグと次の池に向かう。次の池の方が有望そうなのでまずはシウを呼び寄せる。シウと入れ違いで元の池に行き、フーニャ達を呼んで次の池に移動する。

 「釣れませんね」

 「まあそういう事もある」

 「燃やして干上がらせた方が早くないかしら?」

 「あなたが言うと冗談に聞こえないのでやめて下さい」

 「術を使っていいならナイフで切り裂こうか?」

 「生きたまま捕まえたいので駄目です」

 「ならユッミル殿の雷撃はどうだ。魔族は死ぬが魚は死にはしないだろう」

 「深くは届きません。届かせたらそれを遥かに上回る反射で大惨事です」

 「術は中々なあ。まあ運ぶのには氷が良いそうだから氷の子はありがたい」

 「オーネ、魚を凍らせられるか?」

 「良いですよ、やるだけやってみます」

 オーネは水を凍らせるが氷が出来上がる前に魚は逃げていく。氷で逃げ道を塞ごうとしても間に合わない。

 「なら今度は植物で絡めとるのは?」

 「難しいとは思いますがやってみます」

 ソヨッハは植物を伸ばしていくが全く間に合わない。

 「ユッミル、騙すという点では君の術が適任だろう」

 ユッミルは動く餌の幻をしばらく投影する。魚は近づくものの食いつかない状況には変わりない。

 「魚は匂いで狙ってると思うから光では効果は薄い」

 「そんな気はしていました。この程度で釣れるなら光術師は釣り放題ですから。ですけど本物の餌もいますから連れても良い筈ですけど」

 「人と同じで空腹でないと食べない。来るのが遅かったかもしれない」

 しばらくするとフーニャが一匹だけ捕まえる。

 「どうする、ユッミルさん。中々釣れそうにないぞ」

 「ですけどあなた方は食糧として当てにできる位釣ってたんですよね?」

 「だがまあ昼はそこまでだな」

 「なるほど夜営ですか」

 「だがそこまでの準備は無い」

 「ええ、戻ってからですね」

 「だが向こう次第だな」

 「こちらはこちらで釣りたいのですが」

 「それも一度ミューレさんに相談してからだ」

 「それはそうですね」

 「ユッミル殿、この一匹で十分ではないか?」

 「そうね。私は子供を抱えてても大丈夫ではあるけど目的を考えれば十分よ」

 「いえいえ、もう少しやりますよ」

 「おいおい、無性の家にその肝心のコーリャが来たらどうするんだ?」

 「泊まりは断ればいい。大体、宿泊を高頻度でされると厄介です。いずれは止めないと」

 「はあ、まだやるんだな」

 「もちろん、ミューレさん次第ですよ」

 ミューレ隊との遭遇を期待しながら森を出て火の塔に向かう。フーニャは一度無性の家に帰す事にしてオーネとメシャーナを連絡役に夜営用の装備を準備する様に言っていく。火の塔に着いてしばらくすると向こうも火の塔に引き上げてくる。

 「惜しかったですね」

 釣果は無かった様だがその割には皆、足元は濡れている。魚自体はメシャーナが家に運んで皆で世話するので手元には釣果は無い。

 「大丈夫ですか?」

 「濡れただけですね。霊族はフェノさんが危なげなく払ってくれました」

 「ですが光も人材不足なので私はともかくフェノはあまり…」

 「氷に打診した所、術師を提供いただけるそうです」

 「それは良かった」

 「ユッミル様との同行が条件なのでそちらの戦力を回して頂けないでしょうか?」

 「えっ」

 「はい」

 「まさか女性ですか?」

 「まあ氷は男性が多いですが世の半分は女性なのですからまさかという言い方は不思議ですね」

 「では言い方を変えます。まさか結婚式で前の方に、エッヒネ様より前に座っていた方では無いですか?」

 「さて、私は結婚式にはいましたが後ろの方ですので前の状況は知りません。シェンハ様が壇上の横で最も目立っていたので氷の人はその位しか知りませんがシェンハ様では無いですよ」

 「まあそういう事ですね。ですが氷はどちらかと言えば泉向き。私達は森向きの選定をしています」

 「はい、ですからユッミル様には情報交換をして泉の調査をして頂きたい。ユッミル様なら泉でも問題無いでしょう。戦力補強は構いませんか?」

 「構いませんが水術師は駄目です」

 「そういう事ですか。事が大きくなってますね」

 「ええ、皮の問題は放置できません。当面の間、魚を使って凌ぎます。釣り具加工は火の術師に利がありますから。木の術師の竿もあって自然と木と火の協力を築く事にも繋がります。氷の関知も可能です。魚は無性の街ではあまり出回りませんから無性の街とは表面上は摩擦は起きません。別に水に損害を与える気はありません。ただ、邪魔されたくないだけですよ」

 「分かってます」

 「さて、食事にしましょう。今日は宿泊する火の術師を減らしてベッドを開けましたから泊まって作戦を練り直しますよ。風呂もありますから」

 「あの、僕は普段からそこの子達と入りますけど」

 「火の団の場合は光と違って男女は日では分けません。夕方、早い時間に女性が先に入浴して風呂は奥にありますから女性に食事をしてもらいつつその間に男性が入ります。まあ男性は奥で寝ますから夜中入り放題ですね。男女を分ける幕の所には男女一人ずつ見張りがいますから何も起きませんよ」

 「そうですか」

 「まあユッミル様は私との作戦会議がありますから女性側で寝てもらいますが」

 「風呂は?」

 「どちらでも構いませんがシウ様と入りたくないんですか?」

 「ですが他の女性もいますし」

 「一応、再度確認を取っても良いですがむしろシウや私と入る前提ですよ。」

 「分かりましたよ。今日はそれで良いですが釣りは夜や早朝が良いと聞きます。夜営は考えないんですか?」

 「ユッミル様、あなたは戦力をそこそこ持ってますしそれ次第ですね。少なくとも私とユッミル様が両方を調査して話し合って戦力配分を考慮してからですね」

 「あの、シウさんは余裕だから連れて来ていますがエコさんにマッラさんも無理です。当事者が言うのもあれですが時期が悪くないですか?」

 「いえいえ、今は調査ですから身を守れれば良いだけです」

 「フーニャさんは再度迎えに行きますが泉の方にはメシャーナは無理でしょう。まあオーネは連れていきますがユッホさんも動けませんし大して増強は無理ですよ」

 「テーファさんがいるでしょう」

 「テーファさんも近いんです」

 「そうでしたか、ユッホさんもそれでしたね。でしたらリッネ様を呼べばいいでしょう」

 「本気で言ってます?」

 「いえ」

 ユッミルはシウに抱き付きながらミューレから身を守りながら風呂に入る。

 「ユッミルが私を誘惑してくれて嬉しいわね」

 「シウさんはこうやっても見向きもしてくれないんでしょうね」

 「見向きされたら困るわよね?」

 「それはそうですが。盾が足りないですね」

 「そうね。ピュッチェは仕方ないとしてオーネは側室の癖にまだ慣れないのかしら?ソヨッハ位がちょうど良いわよね?私は慣れすぎだし」

 「そうですね。ただ、もう側室では無いですから。元々そういう感じでもありませんでしたし」

 「側室じゃなくても仲が良いのは大丈夫ですよ」

 「そうだね」

 ユッミルはソヨッハとシウを両脇にしてミューレを遠ざける。

 「ユッミル様、酷いです。今回は二人の計画なのに」

 「話は服を着てからでもできるでしょう」

 しばらくすると他の火の術師も入ってくる。ユッミルは目を丸くしている。

 「これは上がれという催促ですか?」

 「聞いてますよ、ユッミル様。光の女性だけならともかく木の団でも女性達と入ってるらしいですね。火の団だけ駄目は無いですよね?」

 「無いですよ。ですけどもう少ししたら上がりますね」

 ユッミルはソヨッハとシウと上がって食堂に向かう。ミューレやオーネ達もすぐに来る。

 「さて、男性方には先にある程度普通のものを食べてもらいましたがここからは魚料理を出しますね」

 「どういう事ですか?」

 「私達が昼間釣りをしてた間に私の仲間が魚について聞いてたら魚を安値で譲られたという次第です」

 「仲間ですか」

 「ん?」

 「部下ですよね?」

 「仲間ですよ」

 「まあ事情は分かりました。食べてみましょう」

 ユッミル達は魚料理を食べていく。獣肉に比べて癖が無いので上手く調理すればその味が染みる分調理はしやすい様だ。

 その後は男性陣に先に風呂に行ってもらい、ユッミル達はゆっくり食べていく。

 「では会議を始めましょうか。ユッミルさん、来て下さい」

 食堂の隅のテーブルには数枚の地図が置いてある。一枚は見覚えがある。森の地図である。

 「そういう事ですか」

 「これは森の地図です。釣りをした池の魚の状況を教えて下さい」

 ユッミルは状況を説明した上でデューグにも話を聞くように言った。

 「それで明日は早く出るんですか?」

 「いえ、早く出るのは私の側だけです。デューグさんもピュッチェさんも借りますがあなたは氷の子を待っていて下さい」

 「分かりましたよ。はっ」

 ユッミルは強い魔力を感じて歪曲視野を使う。そこには火の主宰の姿がある。

 「あの、私もここで寝て良いですよね?」

 誰も答えないとエッヒネは近づいてくる。

 「ユッミルさんに聞いてるんですよ?」

 「私は向こうで寝ましょうか?」

 「いえ、むしろユッミルさんと寝に来たんですよ。主宰部屋に誘っても無理でしょうしシェヒユスの遊び相手になってもらおうかと」

 「まだ生まれたばかりですから遊ぶとは言い難いですけど」

 ユッミルはシェヒユスを見ている。

 「抱く位はお願いします」

 ユッミルはシェヒユスを抱く。

 「こんなお父さんだったら良いね、シェヒユス」

 「エッヒネ様」

 「何か問題かしら?あなたは私の誘いを受けないのだからこんな事を言っても何も意味は無いわ」

 「そうですね、申し訳ない」

 ユッミルはエッヒネとシェヒユスの世話をしながらいつの間にか眠っていく。

 翌朝、ユッミル達はエッヒネに起こされる。起きるとミューレやピュッチェはいない。朝食後しばらくして氷の術師がやってくる。

 「ターヒョと申します」

 「お久しぶりですね」

 「はい、お待ちしておりましたが一向に声が掛からないので来ました」

 「氷の団ってそういう事を誰に言えば良いか分からないんですよね」

 「氷の塔に来て頂ければ済む話です」

 「他の用事では来たそうですけど」

 「忙しかったので手が回らなかったのは認めざる得ない」

 「忙しい人が釣りですか?」

 「夜は忙しいんです」

 「それはそうらしいですね。そういう事ですか。行きましょうか」

 ターヒョは早速ユッミルと距離を詰める。ユッミル達はそのまま出発する。シウが対抗して逆側を陣取ったのは言うまでもない。

 「ユッミル、今日は戦力不足だからあまり奥には行かないわよね?」

 「ある程度は行きますがそこまで奥には行きませんよ。まあむしろ見つける方が大変なので一人や精鋭で来るべきだったかもしれません」

 ユッミルは歪曲視野を使うが魚はいない。少し奥に来て霊族が寄ってくるので少し払う。自然とソヨッハとシウを近くに居させる。オーネも少々牽制している。ターヒョは少し先行し始める。

 「ターヒョさん、危ないですよ」

 「大丈夫ですよ。駄目なら引く位の力はあります」

 シウは大人しい。ユッミルは広い範囲を見ながらで自然と歩みは遅い。ターヒョも最低限はユッミルから離れすぎない様にしている。

 「ん?」

 ユッミルは不思議なものを遠くに見つける。

 「ユッミル?」

 「何かいるかもしれません。けどはっきりは見えませんね」

 ターヒョは寄ってくる。

 「何処ですか?」

 「あっちですね」

 ターヒョは急いで向かう。仕方なくユッミル達も後に続く。

 「なっ」

 泉が扇形に凍っている。確かに魚っぽい何かも氷の中にいる。

 「凄いわね。けどこんな所でこの出力は」

 「ええ」

 魔力に反応して霊族が群がってくる。

 「ターヒョさん、こんな大きな氷をどうする気ですか?」

 「けどこうしないと逃げられるし」

 「それに霊族に囲まれてますよ」

 「えっと、そうみたいね。私は逃げれるとは思うけど迷惑掛けたわね。けど光の主宰のあなたも大丈夫でしょ?」

 「魚っぽいこれ、どうしますかね」

 ユッミルは雷装剣で氷を切り出しつつ霊族を攻撃していく。

 「ターヒョさんとシウはしばらく術を使わないで霊族の位置を把握して下さい。オーネさんは向こう側の霊族を払ってて下さい」

 ユッミルは氷を切り出しつつ霊族を払う。霊族の囲いが狭くなってくる。

 「ユッミル?」

 「そうですね。ターヒョさん、向こうにできる限り突っ込んで沢山の霊族を一気に凍らせてくれます?」

 「ユッミルさん、意外と人使いが荒いですね」

 「まあ君のせいだし力もあるし」

 ターヒョは側方の霊族を軽く攻撃しながら走っていく。そして、ユッミルが誘導した霊族の塊に相応に近づいて一気に凍らせる。それを確認するとユッミルはターヒョの退路に一気に攻撃を加える。ターヒョは急いで引き上げる。ユッミルは周囲の霊族を雷射で着実に減らしていく。ターヒョが戻ってくるとオーネを肩車してソヨッハを抱えて足早に撤収する。魚は氷塊に残したまま雷装剣に突き刺している。

 「オーネ、剣から落ちそう。凍らせてくれ」

 「はい」

 ある程度撤退したが霊族が退路に群がる。

 「ターヒョさん、攻撃しなくて良いですから魚を持っていて下さい」

 「分かったわ」

 ユッミルは雷装剣を氷から抜く。ターヒョは魚の氷塊に手をかざし手先から出した氷とくっつけて持ち上げる。ユッミルはオーネと連携して眼前の霊族を払っていく。しばらくしてユッミル達は無事、泉の奥から脱する。火の塔に戻ると慎重に火の術師が解凍し、水槽に移される。多数の鰭を持つ不思議な魚である。どう考えても安易に食べれる代物ではない。火の塔に帰るとかなり遅いが昼過ぎだったので食堂で食事にする。夕方、ミューレ隊も帰還する。

 「やはり夜営も必要ね」

 ミューレは開口一番そう言っていく。

 「それはそうでしょう」

 「まあ二匹連れたがな」

 「流石ですね」

 「いや、これだけの経験者でこれは恥ずかしい…なんだそれは」

 「泉に居ました。捕まえましたがお蔭で散々でしたよ」

 「流石、ユッミルさんはこういうのを引き当てますね」

 「捕獲したのはターヒョさんですよ」

 「そうね」

 「そうですか。ですけどどうせ見つけたのは歪曲視野でしょう。言わなくても分かります。そうでなければこんなのは見つかりません」

 「それはそうですが」

 協議の結果、泉の側の調査はしばらく保留で次はいよいよ合同で森の奥の池や川を夜営して調査する事になった。そして、どうも次はエッヒネも参加するらしい。今日の夜は一度休んで明日の昼すぎに出発らしい。ターヒョは辛うじて氷の塔に返して帰宅してメシャーナ達と夜営の準備をする。

 翌日、火の塔に集まった面々は昼食を食べながらミューレの今日の予定を聞く。

 集まったのはミューレ隊や森に行ったユッミル隊の他にターヒョとエッヒネにエコも参加するらしい。さらにミューレはテーファも呼び寄せた。総勢十数人で釣竿を抱えた集団は目立つのでユッミルは主に釣り関連の道具を見えなくして集会所周辺も含めて歩いていく。さらに自分やミューレも含めた五人ほども姿を消させて十人程度の集団に見せている。森に入ると奥に進んでいく。ただ、ユッミルとエッヒネにシウにフーニャがいて加えて前衛にピュッチェやメシャーナのいる過剰戦力を前には大した危険も無く、シウとターヒョは何もせず釣り場に陣取る。ユッミルとミューレは中央に居て指揮を執る。

ユッミルにはソヨッハとテーファがくっついている。エッヒネとピュッチェとターヒョが森の奥の側を警戒し、フーニャとシウとメシャーナは反対側やそれ以外をユッミルの指示を受けながら警戒している。

慣れてくるとユッミルは釣りをしながら指揮を執る。指揮と言っても警戒の指揮である。釣りや魚の状況の報告はミューレが仕切っている。特に問題無いのでシウとターヒョも釣り要員に回される。夕方になるとユッミルとミューレ隊の釣り爺共の半分が仮眠していく。魚は数匹釣れたらしい。ユッミル達が起きると少し遅めの夕食が振る舞われる。基本的には狩った獣中心だが一匹分の魚が全員に分けて振る舞われた。ほぼ味見であるが。

 「ユッミル、大丈夫だと思うけど守ってね。もちろん、ユッミルは好きに触っていいけど」

 「ユッミル殿、触らないのは逆に変だぞ」

 「あの、痛いのはやめて下さいね」

 「ソヨッハ、君には何もしないよ」

 「守って下さいますし少し触るのは構いませんよ」

 「寝ます。適当にして下さい。私を触っても気持ちよくは無いと思います」

 「私もいるんだからある意味何もさせないわよ。寝るのはハンデよ。馬鹿女共」

 四人が寝付くとシウはユッミルに抱き付く。しばらくするとミューレがやってくる。

「良いわね、それ」

 ミューレはユッミルにもたれて寝る。

 「エッヒネ様がいるからって」

 「私は起きてるし大丈夫よ」

 しばらくして一匹獣が近づいたので雷撃で倒すが絡みついたフーニャ達を起こすので放置する事にして座ったまま上半身だけ向きを変え釣りを始める。シウは仕方なく身を引いて横で眺めている。そして、遂にユッミルも魚を釣り上げる。動けない事が功を奏したのかもう一匹釣り上げる。そうしているとエッヒネが寄ってくる。交代なのでテーファ達を起こす。ミューレ隊の釣り爺はそこそこ釣ったので満足して眠っていく。フーニャ達は起きて話を始めてユッミルの釣りを邪魔していく。エッヒネとターヒョは眠りにつく。

 夜更け前、ユッミルが必死に説得してフーニャ達を釣りに参加させるとミューレ隊の前半睡眠組同様に十分に釣り上げていく。ミューレは目を覚ますと釣果に満足した様子でエコに指示を出す。

 「ユッミルさん、エコには色々と準備をしてもらうからメシャーナちゃんを護衛に貸してくれない?大丈夫だとは思うけど」

 「まあ構いませんよ」

「シウも一応少し追って」

 メシャーナとエコが歩いていくとシウも少しだけそっちの方に向かうがしばらくして戻ってくる。メシャーナも走って戻ってくる。

 「エコさんは戻れたと思う」

 「ありがとう、メシャ」

 「うん」

 「メシャーナさんはかなり強いわね」

 「そうですね、術はまだまだですが」

 しばらくすると南の方から爆音が聞こえてくる。

 「えっ。どういう事?」

 ユッミルが視野を広げると6人の火術師が爆発を囲んでいる。よく見ると爆薬が使われている。

 「ミューレさん」

 「ちょっと釣れすぎたから池を作って放流しようと思うの」

 「水はどうするんですか?」

 「それも何とかするわ」

 ユッミルが詳しく見ると火の術師は爆発でできた穴を掘り進めている。その先には小川がある。

 「はあ。計画通りですか」

 「釣りを全て計画通りなんて無理よ」

 爆発と切削をよそに釣り爺は釣っていく。調査隊はエッヒネとターヒョを除いて起きて朝食を食べる。朝食を終えると釣果の一部をミューレが作らせた池に移す事にする。少し遠いのでエッヒネを起こしてからミューレ、ユッミル、メシャーナ、と釣り爺数人で池に向かう。到着すると水が徐々に引かれており、若干傾斜した下側に水溜りができている。そこに二匹を放す。

 「まあ今も水は増えてるが少しずつだな。数匹なら生きれるがこれ以上は厳しくないか?」

 「ですが大穴だと今後水が増えすぎます」

 「それにしてもバッソーさんを筆頭に火の団は滅茶苦茶ですね」

 「水を運ぶぞ」

 釣り爺は持ってきた桶の魚を暫定的にミューレの池に流すと桶で水を汲んで池に流していく。一度きりの水路を作って埋め戻せばいいとユッミルは途中で思いついたが言うのはやめた。しばらくして当面大丈夫そうな水位まで上がったので撤収する。ミューレがエコと残って話し合ってから行くと言った後で再度爆破したのでユッミルは呆れながら調査隊の方に戻る。

 今度はミューレの池に全員でやってきて過剰分を放流する。池には不完全ながらそこそこの水が溜まっている。歪曲した水路が形成されている。最終的に池には十数匹が放流される。水の量は十分そうだ。ゆっくりながら水も増えていっている。火の塔に戻って十数匹を調理して魚料理を昼食として食べてから解散した。ユッミル側は八匹の魚を確保した。

 

 


次は3月中の何処かですね。基本的には後半かと思います。その次は4月後半になると思います。余程進捗が良ければ4月前半ですが…

5月以降は時間が取れそうにないので予定は不透明です。

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