10章 凪
余計な情報を排除する為に殊更場面転換を明示する事は致しません。会話の間の表現を重視し、詰まりの無い会話はそれに応じて発言が連続します。発話者が分かりにくい事も多々ありますがご容赦下さい。その代わりに「」の鍵括弧を一纏めとして同一人物の発話が描写を挟まずに連続する事はほぼ排除しております。
また、多少前後している事もありますが描写は時間順となっております。
10章 凪
1節 休養
「リッネ様のこの姿を町で見せる訳には行きません。私が姿を隠して月の塔に運びます。」
「別に構わないだろう。君とシェンハが健在ならば問題無い」
「駄目ですよ。むしろ我々三人にエッヒネ様がいた状況であなたが怪我した等という風評は困ります。せめて後でユッミルが失敗してリッネが庇ったという事にするのが一番動揺が少ないでしょう」
「ではその状況で私はどう帰還したんだ?よく考えられる奴は君の評価に困るだろうな」
「そうですね、意外と面倒な事をしてしまいましたね。申し訳無い」
「やはり私が不覚を取って君が私を必死に連れ帰したという現実をきっちり知らしめるべきだろう」
「そもそもあなた、全力を使いませんでしたよね?」
「ああ、そんな事をすれば後が続かない可能性があった。仮面や腰から上を守れば後は何とかなると思った。そもそもあの攻撃は胸の高さが中心で直撃は避けた」
「知ってますがもう少し分厚い盾なら足の火傷は無かった」
「厚い盾を用意する間が無かった。だから不覚を取ったのは現実だよ」
「分かりました。負担をかけすぎて申し訳ない」
「ただ、君は姿を消したりできるし切りかかっても止まる時間が短い。直撃から万全に守らなくていい。今回は不覚を取ったが君やシェンハとの魔族領での狩りに支障がある問題ではないのは分かっているよね?」
「それはそうですがしばらく安静ですよ」
「それはそうだがこれは深手だしソヨッハ君が治療をやめてしまったら死にはしないが一度寝始めれば二日程度昏睡だろう」
「そこまではなりませんが止血傷を塞ぐにはまだ掛かりそうですね」
「ソヨッハさん、本当に申し訳無い」
「やはりこれは術師協会に報告して治療を受けるしかないでしょうね」
「エッヒネ様はどう思います?」
「ユッミル、心配しなくてもあなたが強くとがめられる事はありません。もちろん、リッネ様次第ですが」
「そうですよね。僕はリッネ様に借りを作ってしまいました」
「そんな事は無い。怪我をして退却中も護衛してもらった。怪我は私のせいだ」
「治療は責任をもって行いますが、月の塔はよく考えれば駄目ですね」
リッネは出血は少量だが片膝とは言えそこそこの深い火傷だ。
「それならユッミルの家はどうだ?君の家なら木の術師がたくさん出入りしても不審ではないだろう。キッシャノ、軽い怪我をしたから寒季の休暇を取ると塔に伝えてきてくれ」
「フェノ、イーサ様にリッネ様が怪我をして密かに家で治療する事を伝えてきてくれ」
「はあ、大事になるから私は帰らないといけないわね、シェンハ様もよ」
「まあ良いわ。ディユ、帰るわよ」
「あの、家が手狭になるのでオーネさんも連れ帰ってくれません?」
「良いわよ」
「ユッミル様、酷いです」
「えっと、残りたいなら構わないよ。人は多くなって狭くなってうるさいかもしれないけど?」
「残ります」
「フーニャさんも残りますか?」
「その前に確認だがミーハやシウにはその提案をしないのか?」
「シウ様はリッネ様の体を冷やさない為にも必要ですから」
「私は残るぞ、邪魔者かもしれないが居座ってやる」
今や、治療はミーハとオーネが火傷を冷やしている。
「オーネさん、意外と治療が上手ですね。帰ってもらわなくて良かったです。メシャ、リュッサさんに頼んでシャーユを密かに光の塔に連れて行ってくれ」
「もしかしてネメッカの子にしてしまうの?」
「酷い怪我人をシャーユに見せるのは気が進まない」
メシャーナが指揮所の方に向かうのを見送るとユッミルはリッネを負ぶる。リッネは鎧を外しているので体は直接密着している。そもそもリッネ自体がしっかり捕まっているので体はかなり密着している。膝より上は無傷な割に服はかなり焦げ落ちている。
「リッネ様、運び方の希望がありましたら教えて下さい。理由は一々言わなくていいですから本当に色々申し訳ありません」
「膝の近くを持たれると痛い。もう少し後ろを持ってくれ」
「まさか」
「構わない。私は男であっても女であっても君に無防備な姿で接して信頼を得ようとしているのだから構わない」
ユッミルはリッネの体を左に寄せ変えて尻に近い位置に持ち帰る。リッネの指示でテーファも軽く支える。
ユッミルはリッネを隠して自分が普通に歩いている様に見える幻術を使う。家に帰るとシャーユはいなかったがメシャーナは残っていた。イーサもいる。
「イーサ様、申し訳ありません」
「いえ、まあ魔族領への攻撃を主導したならご反省頂きたい所ですが怪我の責任の所在自体はあなたではないでしょう。もちろん、過大な人数の護衛をリッネ様一人に押し付けたのなら別ですが」
「それは無い。いつも通り女子はユッミルの周りに群がっていた」
「その言い方はやめなさい。それにあなたもでしょう。それに指示をしたのは僕ですから。ですがリッネ様が前衛にいたのは事実。私は多数を率いていたとはいえ後方」
「自己責任だよ。それでも悪いと思うなら不安なので上半身を強く抱いてくれないか?」
「月の主導がそんな姿を見せて良いのですか?」
「こういう頼みをしている時点でもう手遅れだろう」
ユッミルはリッネの頭を軽く抱く。
「血は大した事ないけど火傷部分が深い」
「本当に申し訳無い」
「気にするな」
「ありがとうございます。ですがすぐに治らないと色々と問題ですね」
「ユッミル、やはり火傷部分は取った方が良いと思う」
「私はそれでも構わない」
「どうやって?そんな技術は誰に?」
「全部じゃないわ」
「ミーハがやってくれるの?」
「私は止血係ね」
「なら誰が?」
「雷装剣で切られるなんて光栄だな」
「リッネ様、雷装剣は余計に肌の打撃を増やします」
「浅く切ってもらうつもりなんだが?」
「それはそうですが」
「それに内側は私が防御する」
「分かりました」
ユッミルは視覚的にリッネの足の火傷を確認して剣で切除する。
「かなり痛いが悪いのは私だ。ただ」
「なっ」
リッネはユッミルに抱き付く。
「呪うんですか?」
「これほどの怪我は久々で堪えるんだ。君が支えてくれ。私は弱いからね」
「久々?」
「そうだな。初めてだ」
「ですがミーハのお蔭で血は出ていないとはいえこの状態はここで手に負えるかどうか。レヒーハだと治療にかなり時間がかかる」
「そうですね。レヒーハさん、シーリュノ様に頼んで応援をお願いして来て下さい」
「そうですね。ソヨッハが居てくれるなら急ぐ事も無い」
「光は寒季で人手が少ないですしこの件では役に立ちませんね」
「ならイーサさんはどうしてここに?」
「状況把握ですよ。ユッミル様に浮気の疑いありと」
「リッネ様は女性ではありません」
「私からは分かりませんがもし女性であった場合は男女交際しているかのような触れ合いですね」
「怪我人の介抱をしているだけです」
「リッネ様は積極的にユッミル様を抱き寄せていますが」
「そうです。リッネ様がしている事です」
「どうして拒まないのですか?」
「怪我人を振り払えませんしそもそも強大な月の主導様の機嫌は損ねたくは無いですから」
「ユッミル様が不快なら控えよう」
「不快ではないですが側室の方もいますし誤解を招く事は好ましくないです」
「分かった」
リッネは手を緩めるがユッミルに軽く寄りかかってはいる。ユッミルはかなりの魔力の接近を感知する。リッネも感じた様だ。
「ユッミルさん、良いかしら?」
「私の同居人が呼んだ人ならどうぞ」
扉を開けてレヒーハに続けてシーリュノが入ってくる。
「主宰様が良いんですか?」
「その方が良いでしょ?」
シーリュノが治療するとリッネの表情や顔色はそれなりに良くなっていく。
「流石ですね」
「ええ、主宰だからね」
「ありがとう」
「でももう帰るわ。ユッミル君はきっとシーリュノとの交際を少しでも世間に疑われたくないだろうし。私は構わないけど。それとソヨッハはユッホと交代で夕方までいて下さい」
「えっと、ユッホさんが泊まるんですか?」
「そうね」
「酷いですよ。今日はリッネ様やネメッカ様がいてそんな状況でユッホ様と一緒ですか」
「嫌なら別の子でも」
「嫌とは言っていないですが」
シーリュノは帰っていく。
「シウさん、疲れました。抱いてくれますか?」
「服は脱ぎましょうか?」
「いえ、そのままで」
ユッミルはシウの肩に体を預ける。
「どう?」
「ええ、シウ様は本当に気の利く女性ですね」
「どういたしまして」
ユッミルは眠っていく。しばらくしてユッミルが目を覚ますと背中の胸の感触が浅くなっている。そして、腕を緩く握られている。ユッミルが辺りを見回すとユッホに肩を貸されながらリッネに腕を抱き寄せられている。ユッホはリッネを治療してもいる。ミーハも薄着で治療に参加している。
「ユッミル起きたのね」
「ええ、ですがこの状況をネメッカ様に見せたくは無いですね」
「けど今日はどうしよう。夜も治療した方が良いよね?」
「そうか。まあ夜は下級魔石で凌ぐ手も…」
「えっ、でも私はユッミルの子供がいるんだよ。暗殺なんてしないよ」
「そうだね。で、ラーハ様の許可は貰ったのか?」
「貰ってない。けどそうだよね。せっかく私で遊べる状況は温存しておきたいよね」
「まあ今日位は良い。けど眠くなったら寝かせる」
「私がここで寝たら私を風呂に入れて体を洗って」
「私も風呂には入りたい」
「えっと、良いんですか?」
「君は構わない。ただ、他は駄目だ。そういう事だから君が世話してくれ」
「もしあなたが女なら恥ずかしくは無いんですか?シウ様とか術師は平気な方も多いですが」
「君は意地が悪い。私は気にする方だが君から信頼を得たり、親睦を深める方が大事だ」
「そうですね。意地が悪いです。あなたは足を怪我しているのですから少なくとも下半身は脱がなくていい」
「あっ」
「ユッホ?」
「うん。多分、傷は塞がったよね?」
「まだ完全ではないです」
「私が判断する」
「いえいえ、無理は駄目ですよ」
「患部には布を巻くよ」
「服を着て上半身だけで問題無いでしょう」
「せっかくの機会だ。私はただでさえ君に隠し事を疑われている。体位隠さない付き合いをしたいと思ってね」
「そんな事に積極的だと余計に疑います」
「私はそうならないと思ってるからしたいのだが」
「私も入ります」
「私もよ」
「分かりましたけどユッホ様の事は魅力的に感じていますので治療の邪魔になりかねないほど手を出してしまうかもしれません。ただでさえ治療でお疲れなのに。そういう訳ですから別の方をお勧めしますが」
「ユッミル様こそ良いのですか?他の側室様が見ておられますしネメッカ様も帰ってきますよ」
「そうですね。そういう事にしておきましょう」
「けどユッミル様、服の上からでいいので私に少し手を出して下さい」
「えっと」
ユッホはユッミルの側頭部に軽く息を吹きかける。ユッミルはユッホの体を触っていく。
「私はこの手の術は苦手ですけどそれでも触ってくれるという事は本当は触りたかったんですね」
「それはそうですがユッホさんは…」
「私は嫌なのにこんな事をする変な人に見えますか?」
「いえ」
「けどユッミル君、私は不要なの?」
「困った事は言わないで下さい。ですが今はユッホさんの方が魅力的に見えます。けどユッホさんは昼間は向こうの用事がありますから愛情が同じであれば一緒にいる事に不都合が一切無いネメッカ様には敵いませんよ。テーファさんも支障は少ない」
「同じならね。けどどうなの?」
「そんな事は中々分からないでしょう」
「ですがユッミル様、私とてずっと向こうで教える訳ではありません。ネメッカ様と別れてしまえば逃げられなくなりますよ」
「ネメッカ様はともかくテーファ様は僕にそこまで期待していないのでそうはなりませんよ」
「ユッミル君は困った子ね。確かにユッミル君に大きな期待はしていないけど満足してるからよ」
「はい、ありがとうございます。しばらくはリッネ様の事がありますけどテーファさんは安心できますから居てくれてありがたいです」
しばらくしてネメッカが帰宅する。
「ユッミル、随分と女性が増えましたね」
「人数的にはそこまで…まあ火の二人は増えましたけど」
「木のユッホさんですよ、問題は」
「ですがリッネ様の治療に必要ですし」
「そちらの子がいるでしょう」
「交代で見る必要がありますので」
「ミーハさんの交代要員はいませんけど?」
「傷はとりあえず塞がりましたし風呂も入りますよ」
「ネメッカ様、ユッミル様をお借りします」
「まあ良いですよ。おそらくあなたが本気になれば私には敵いません。好きにして下さい」
「買い被りですよ、今の環境だとこうなります」
「ユッミル、私は疑ってますし同時に寂しいです」
「ネメッカ様、夕食を食べましょう。いつも通りテーファさんも横で良いですよね?メシャも」
「ユッミル、それはシャーユは孫って事?」
「それでも良いよ」
「メシャちゃん、良いから食べますよ」
テーファとユッホに抱えられてリッネも食卓につく。
「リッネ様の姿も安定してきたからシャーユは明日、ネメッカ様に連れて帰ってもらう。良いですか?」
「主導にお使いを頼む、流石影の主導ですね」
「そうですね、主導に体で奉仕させているから言う通りかもしれません」
「ユッミルは騙されてくれてありがたいです。奉仕させているのは私なのに」
「それよりシャーユに迷惑を掛けた」
「いない子の事はどうでも…」
ネメッカはユッミルの肩を掴む。
「あの、うちの子はどういう待遇になるの?」
「えっと、特におかしな事にはなりません。基本的にあなたと行動するだけでしょう」
「あなたは見てくれないんですか?」
「そんな事は無いですがイーサ様次第ですし基本的にはネメッカ様と一緒ですね。そもそもネメッカ様が忙しいならともかくそうでもないのに子供だけ預けるんですか?」
「それはそうですが…」
「今回は仕方なくシャーユを塔に連れて行きましたが子供をあまり頻繁に移動させるのは望ましくない」
「ユッミル、そうやって私を遠ざける作戦ですか?」
「ユッホ様は側室ではないですしテーファ様も違います。メシャはまだいますが他は側室なんですからネメッカ様が好ましく…」
「分かりました。そう言いつつも気に掛けてくれると思いますのでそれで構いません」
夕食の片づけと並行してマッラとシウとミーハは風呂を用意する。
「あの、今日は順番は僕が決めますね。まずはリッネ様ですね。次はユッホさんです。次にミーハ。この三人には早く入ってもらってリッネ様を寝かせて治療してもらいます」
「後は?」
「フーニャさんとオーネさんですね。私はその間に休みます」
「完全に格下扱いか。まあ良い。今日は人が多い。こういう時には引くのも良い女という事か」
「火の三人の最後の人と入りますので三人で決めて下さい」
「後の人とは嫌でも全員順に入ってもらいます」
「私はやめておくけど良い?」
「メシャ?」
「うん、だって間違ってまた子供ができたら今度こそユッミルに嫌われるし」
「分かった。ユッホさんとの後に僕は上がるからメシャとミーハで入って」
「えっ。どうして私も」
「深い意味は無いよ。ただ、基本的には同居人は今日はやめておく」
「では入りましょう。怪我しているので脱衣をお願いできますか?」
「どうしてそんなことを平気で…」
リッネは仮面越しからでも分かりかねない位露骨に紅潮している。
「あの、私もそこまであなたの事を信用していない訳ではないので大丈夫ですよ」
「早く脱がせて下さい」
「あの、そのもうどうせ助からないから早く殺してくれみたいな感じで言われるとやりたくないのですが」
「私が弱いだけだ。気にするな」
「仕方ないですよね。今、リッネ様は弱ってますから全部脱いだら僕から身を守れない」
「ユッミル、そんな事を考えていたら頼まない。襲いたければ襲うとよい。別に襲うだけならもうできるだろう」
「えっと」
「事が進まないからとりあえず脱がせてくれ」
リッネはユッミルに背を向ける。
「分かりました」
「だが皆には見せられないから君の術と体で塞いでくれ。手で掴んで塞いでも良いし体を当ててくれても構わない」
「そうでしたね」
「そう言えばさっき私が身を守れないと言ったが君の方は心配無いのか?」
「分かりませんが先程の様子を見るに心配はしていません」
ユッミルはリッネの体を光らせながら服を脱がせていく。リッネの患部に布を巻いて桶に入った事を確認して光を解く。ユッミルも服を脱いで入っていく。
「体勢がしんどい。君に寄りかかっても良いか?」
「そうですね」
リッネはユッミルの膝に腰掛ける。
「楽になったよ」
「深すぎます」
「そうか、ならユッミルが動かしてくれ」
「動かない」
「ユッミル、遠慮なく掴みやすい所を掴んでくれ。まあ手や足の根元が楽だろうね」
「では足の方を行きます」
「ええ、ひゃっ」
「ごめんなさい。強かったかも」
「いや、大丈夫だ。嫌ならきちんと言っている。ただ、ユッミルが私を避けているのが困る。抱かないとまた元に戻る。何回も同じ事をしたいなら仕方ないが」
「ネメッカ様、やはり布を…」
「ユッミル、抱きたくない理由を…」
「分かりました。ただ、交際していないのですから程々にすべきでしょう」
「私は女ではないのだから交際もできないが男性に体を触られる事に何の意味もない」
「ユッミル、駄目ですよ」
「ネメッカ殿、何が駄目なのだ?女ではないただの人同士として抱いてもらいながら介抱するだけだ。私はあなたが羨ましい。女としてユッミルに好き放題抱いてもらえるのだからな」
「リッネ様、私はあなたを抱きかかえて風呂から出て全身を隈なく拭いていきますがどうします?」
「危ないから足の根元は支えてくれないと困るし全身は手で拭いてくれ」
「良いんですか?」
「ああ、君を信用しているしそれに君が少々私を女と勘違いして遊んだり使っても構わない」
「そんな事をしてもあなたを信用したりはしませんからただ遊ばれるだけですよ」
「それでも構わない」
「嫌なら早く言って下さいね」
「ああ、嫌ならきちんと言う」
ユッミルはリッネを絡むように抱いて風呂から出すと光の中で布と手を使ってリッネの体を拭いていく。
光を解くとリッネは呆けて服を着直して座っている。
「ユッミル、ごめんなさい。私が太って遠慮して魅力が無くて」
ユッミルが気づくとネメッカは既に服を着ておらずユッミルは体を抱き締め上げられている。
「ネメッカ様、腹が食い込んでます。お互い良くないかと」
「でしたらあなたが後ろから私が逃げない様に願います。隙があれば姿を消して逃げますよ。ここで私を逃がしたら別れるかもしれません。」
ユッミルはネメッカを抱き寄せたまま後ろに回り込む。
「ユッミル、やりすぎです。一度離れて下さい」
「ネメッカ様がいなくなりそうなのでお断りします」
「そうですね。では私が座り込むまで私の体を攻めて下さい。嫌なら構いませんよ」
「ネメッカ様が宜しいなら私はしますよ」
「ええ」
「もう離しても良いですか?」
「はい、消えたりはしません」
「ちょっと、ユッミル君?」
「ミーハ、風呂は空いたから先に入ってて。ネメッカ様、テーファさんが脱落するかもしれませんよ」
「ユッミル、逃げるんですか?」
「姿を隠しませんか?」
「分かりました。私がやります」
ネメッカはリッネを取り込んで姿を隠す。
「そういう事ですか」
「ユッミルは凄いわね。ネメッカをあんな感じに堕落させちゃった。私は元々堕落してたけど。フーニャちゃんはああなりたいの?」
「なれるものならなりたいがユッミル殿はそこまで私に構ってはくれないさ」
「そうね。けどユッホさんにはあり得るわよ」
「ネメッカ様はネメッカ様ですから。成り行きで私もああなったらそれはそれでいいですよ」
ミーハは風呂から上がるとそのままネメッカ達が姿を隠した近くで立っている。風呂は先にフーニャが使い始めた。しばらくすると三人が姿を現す。ユッミルはリッネをベッドに運ぶ。ネメッカは体を全般的に赤くして座り込んでいる。
「ユッミル、いつものお願い」
「ミーハ、ちゃんと拒絶しないと駄目だよ」
「ユッミル、ここを押す方が連れて行きやすいわよ」
「まあ良いよ。気は抜かない」
ユッミルはミーハの背中を押していつもの場所に連れていくといつも通り縛っていく。
「ミーハ、ちょっと濡れてるから拭いてあげるよ」
「大丈夫だよ」
「ううん、拭いた方が良いと思うし拭くね」
ユッミルはミーハを拭き終えるとユッホの所に行く。
「ユッホさん、心を元に戻していいのでご一緒して良いですか?」
「では戻します」
「戻りましたかね?相変わらずユッホさんは魅力的ですが」
「分かりませんが入って下さい。戻っていないようなら私が戻しますから」
ユッミルとユッホはゆっくりお互いの近況や他の人の術の使い勝手について話をしていく。
「オーネさん、どうぞ」
「はい」
オーネは服を脱ぎ始める。ユッミルはユッホの手を取って風呂から出る。服を着て布団に入って話を続ける。ネメッカとリッネは既に眠っており、テーファはユッミルの横で寝る。リッネはレヒーハが治療していく。
その後、メシャーナにマッラとシウが順に入る。
「ユッミル様、入りますよ」
「エコ?」
「火の今日の相手は私ですよ。次に三人から選べと言えばマッラですよ」
「まあ良いです、帰りたくなるかもしれませんよ。リッネ様とネメッカに振り回されましたから少し気が抜けてます」
「良いわよ」
風呂に入るとユッミルは終始エコに寄りかかっていく。
「この気の抜け方なら歓迎よ。もっとしっかり掴んでも良いのだけど」
「気が抜けてますから力は入りませんよ」
「次は私とね」
「テーファさん、無理しなくても良いですよ」
「どういう事?」
「リッネ様とかなり色々していましたから思う所があるのではと?」
「それはですね。思い出したのですがリッネ様はユッミル様に怖がられているのが相当不満だった様ですのであの行動も納得という訳なので」
テーファは服をさっさと脱いでいく。
「そうですか、正直に言いますと私の憶測なのですがリッネ様は何か一緒にしたい事があるみたいですがすぐには言い出せない訳でしてそれは相応に面倒な事だと思うんですよね。何せあのリッネ様が誰かに協力を仰がないといけない案件なのですから」
「そういう事ですか」
「はい、ですがリッネ様に知られると事態が早く進んでしまいますのでやめて下さいね。それにおそらくあなたも巻き込まれます」
「分かっていますよ」
「エコさんもシウさんもマッラさんも他の方もお願いしますね。言ったら全員魔族領での魔族狩りにまた巻き込みますよ」
「まあ問題は無いわよ。結局、あなた次第よ」
「基本的にはそうですが。」
「ユッミル君。せっかく私と入ってるのに」
「分かってますけどテーファさんがそうやって抱き寄せてくれるならもう少しシウさんと話したくなりますね」
「抱き返したくないの?」
「いえ」
ユッミルが風呂を上がると服を着る間もなくテーファにシウの横に連れ込まれる。
「シウさん、いつの間に」
シウは当然の様に服を着ていない。
「油断しすぎね」
「エコさんに譲らないんですか?」
「その方が良いの?」
「そういう訳ではないですが」
「まあ私とテーファはもう寝た事がある仲な訳だし今更ね」
「分かりました。まあ良いですよ」
しばらくすると下から誰かが入ってくる。
「ユッホさん?」
「私は朝には帰りますから優先されても良いと思います」
「あの、別に脱がなくても良かったんですよ」
「私とも寝た事があるのですから問題は無いですよね?」
「それはそうですが」
四人はしばらく触れ合うと眠っていく。
翌朝、ユッミルが目を覚ますとシウとテーファは同じだが上には違和感を感じる。少し間があって上に乗っているのはレヒーハだと分かった。やはり服は着ていない。
「ユッミル、おはよう」
「ユッミル様、おはようございます」
「えっと、リッネ様にネメッカ様、おはようございます」
「ユッミル、慌てないのね」
「そう言われましても寝起きですし動けないんですよね。リッネ様も立てる様になって良かったです」
「まだ速度は遅い。私を始末するなら今のうちだぞ」
「いえ、あなたは自分から攻撃する様な方ではないですから怒らせなければ怖くは無いと考えていますよ」
「それはどういう?」
「ユッミル、そんな事より早く起きて下さい。そんなにレヒーハさんの体が気持ちいいのですか?」
「いえ、両手がシウさんとテーファさんに取り込まれていまして」
「分かりました」
ネメッカはとりあえず布団を剥がそうとするがシウとテーファはユッミルの布団と手を体に抱き込んでいる。
「確かにユッミルは動けませんね。テーファさん、起きて下さい」
テーファは体を揺すられてユッミルの布団から手を放す。ネメッカはレヒーハを近くの布団に寝かせる。ユッミルは手をシウとテーファに抱き込まれている。
「ユッミル、守りたければ術で身を守った方が良いですよ」
「構いませんよ。ネメッカ様が触れ合ってくれるのは嬉しいですよ。ただ、シウ様が起きたら起きますけど」
リッネは服をはだけてユッミルの顔を胸に抱き寄せる。
「ユッミル、私の胸は暑苦しいですよね?」
「ネメッカ様、息苦しくて死んでしまいます」
「であれば足は動かせるのですからそれで何とかなさったらどうですか?」
「テーファさん、起きて下さい」
テーファはユッミルの手を放す。ユッミルはネメッカを抱き寄せる。
「ネメッカ様、もう間近なんですから体を冷やさない方が良いですよ」
ユッミルはシウの体から手を抜いていく。手を抜き終えるとネメッカに服を着せていく。
「シャーユを迎えに行きます」
ユッミルは急いで塔に向かい、シャーユを預かるとシャーユ毎姿を消して家に帰る。
「朝食にしましょうか」
「ええ」
「シャーユに嫌われてなくて良かったです。素直に大人しくしてくれて良かった」
「私の娘だし当然」
「そうだね。メシャより可愛いかも」
「そうそう、私やネメッカと違ってユッミルを襲わないし」
「メシャ、良いから朝食を食べるよ。そう言えばシャーユは這い回る様になったみたいだね」
「うん、私がいないと移動してる事もあったからそうだと思う」
朝食を食べ終えるとユッミルはシャーユを膝に乗せる。
「シャーユ、おいで」
メシャーナは呼びかける。シャーユはユッミルが手を緩めるが動こうとしない。
「向きを変えるのが難しいのか」
ユッミルはシャーユを膝から降ろしてメシャーナの方を向かせる。
「シャーユ」
シャーユはゆっくり少し向きを変えてユッミルの膝に上半身を乗せる。
「長い距離は無理かもしれない。メシャ、少し近くに来て」
ユッミルは一度シャーユを膝に乗せ直して抱えてあやして再びメシャの方に向けて目の前に下ろす。シャーユはやはり這ってメシャーナの膝に向かう。ユッミルはしばらくネメッカやリッネと話す。
「シャーユ」
ユッミルの声がするとシャーユはメシャーナの服を引く。
「ユッミル、シャーユは賢いわよ。私もユッミルの方に行きたい事を知ってる」
「そっか、まあ這うように仕向けるのは難しいか」
しばらくしてユッミルもメシャーナも離れると断続的に這って近くのメシャーナを追っているのをユッミルは確認したのでシャーユやオーネにも注意してくれるように頼む事にした。
「リッネ様、足の状態はもう大丈夫そうですね」
「帰れと?」
「もちろん、明日で結構ですよ」
「残念だが寒季の盛りは休む事にした。居候だからね、慣れる為に私を好きに使ってくれて構わない。能力上可能な事は全て協力しよう」
「ユッミル、明後日にはイーサが休暇に帰りますから挨拶に来て下さい。もうリッネさんは落ち着きましたから塔に泊まっても大丈夫でしょう。後、ユッホさんに常駐してもらう事になりましたしね。寒いですから一緒に寝ましょう。布団は大きくしておきましたから」
「明後日は指揮所でしたね」
昼食後はシャーユの昼寝を見守りながらメシャーナやネメッカと話す。リッネは低品位の治癒魔法を自分に使っている。
「ユッミル、疲れた」
リッネはユッミルの膝で寝る。ユッミルがよく見ると上下共服は乱れている。
「服を全て脱がせて縛って体中あなたが起きても気が済むまで触り続けましょうかね?さぞかし屈辱的でしょうね」
「好きにして良い。ただ、側室にしてくれるならだが」
「冗談ですがあまりに無防備だとやりかねない」
「縛らずに触るのは自由だよ。攻撃しても問題無い事を知ってくれればいい」
「分かりましたから」
「そうだな」
「リッネ様?」
リッネはユッミルの手を握る。
「汚いものを触らせてすまないね」
「えっ」
「当面は私も実質側室だから好きにしてくれ」
「そんな事しなくてももうそれなりに信用してますから」
「信用してるなら男のあれの捌け口として一度使いたまえ」
「リッネ様、それだと信用はしますが変態疑惑を持ちますよ」
「そうかもな、だが危害を加えかねない危険人物と思われるよりはましだ」
「もう良いです。いっそ殺して下さい」
「ユッミル?」
「ネメッカ様、リッネ様が私を好く事は無いですが気分は悪くないのですよ」
「好いていないのにこんな事を強要はしません」
「別に嘘をつく必要は無い」
「まあ今はそれで良いです」
「私としても子作りに発展しないなら止めません」
「はい、そんな気はありません。この人の子供を産ませるなんてのは生半可な覚悟ではできません」
「そうだな。流石にそこまでになるとネメッカとは離婚してからでないと受け付けられない」
「ええ、そんな気はありませんよ」
「私だけの意思でネメッカと別れさせる事は無いが君の意思で別れたなら君の気持ち次第で可能性はある。その上で私にこの強い力がなくなってもなお求めるなら真剣に検討しよう」
「それはお断りという事ですね」
「そんな事は無い。言葉通りだよ」
「分かりました」
「それはそれとしてメシャーナちゃんみたいにしっかり抱かれてみたいのだが」
「は?」
「君は他の女は躊躇無く抱いて触るのに私は脅さないと触らない」
「えっと、多分ですがシェンハ様は尻でも触れば氷漬けで拷問してくるでしょうけどあなたはそっち側ではないのですか?」
「これまでの行動を見てそう思えるユッミル君が心配だよ」
「いえ、私に心を許させる演技なのかと」
「それを望んでいるのは確かだがそれだけではない」
「分かりました。私としてはあなたが女だった場合に共寝したいと思える位には魅力的だとは思いますがあなたはそれを望んでいない。ですからその意思は尊重しますが一緒に寝る以上ある程度の触れ合いはさせてもらいますね」
「それはこちらの言い分だ」
リッネはユッミルの横でユッミルの首に顔を向けながら腰に手を回す。ユッミルはリッネを抱き寄せる。
「シウさん、少しまずいですね」
「私はこれでも良いけど術師の側としては不確定要素ね」
「ラーハ様には絶対に報告できません」
「ちょっと、ユッミルの意思で誰かと仲良くするのは勝手でしょ」
「私もユッミルさんの意思を蔑ろにしたくは無いです」
「ユッホさん、そんな事は言っていませんがこの仲が魔族への攻撃に結びつくのは危険な事態を呼び込みかねない」
「そうかもしれませんが」
「大丈夫よ、ネメッカ。二人は自分の率いる団の意見は軽視しないわ」
「さて、どうだろう。実際に実力的には下級魔族なら一掃できるし中級魔族も数体ずつなら狩ってしまうだろう。上級魔族も一体単独との対決に持ち込めば倒せる可能性はある」
「フーニャ、そんなのは言っても無駄な事よ。とにかく私達はユッミルがリッネと結託しすぎない為に一緒に魔族を止められる力を得てユッミルを安心させて討伐なんて言う考えに向かわせなければいいの」
「ミーハ君、分かってはいるよ。ただ、土はそれに熱心ではない。そもそも土の強者は男が多い」
「分かっているわ。水もラーハ様を筆頭に年寄りも少なくないし一人が突出するという団でもないわ」
「それはエッヒネ様頼みでしょうね。ですから焦らなくても構いません」
「エッヒネ様は少し年寄りでは?」
「それは心配ないですよ。ですが当面は私達も十分に重要です。まあ私は実際にユッミルが好きなのですから障害や躊躇は全くないので基本的にはお任せ下されば良いですが」
「あらっ。私はユッミルさんが信じないから表立っては言えませんがそれに関しては私も同じですよ」
「そうですね。ですがシウさんの気持ちは実に軽々しい。簡単に消えそうですね」
「あなたこそ燃えすぎていつの間にか燃え尽きるなんて事になりそうですからそうなった場合には私が何とかしますよ」
「そろそろ家族になって身内になりますからそうなればもう冷めるなんて事は無縁です」
「だと良いわね」
「あなたこそその軽々しいが息が長いとこちらも助かるのですけど」
「お二人が駄目になったら私が引き受けますね。私はそれまで控えておきます」
「そんな悠長なことを言っていると最後まで蚊帳の外よ」
「かもしれませんがユッミルさんの意思を尊重して下さいね」
「まあ良いわ。好きにしなさい」
夕食前にテーファがやってくる。ユッミルとリッネも起きる。ユッミルはシャーユを抱いてメシャーナとネメッカを両脇に夕食をとる。ユッミルはネメッカを連れてシャーユと風呂に入る。
翌朝、ユッミルはネメッカと塔に向かう。昼食をイーサやフェノと食べてイーサ不在時の予定を確認していく。昼過ぎ、三人とルーエはイーサを見送る。夕方にはフェノがユッミルの家に向かう。塔には見回りのついでに軽作業を行う団員しかおらず広い塔にネメッカ夫妻以外は五人しかいない。しかも二人は夜の見回りに備えて宿舎で寝ている。残りの三人は宿舎と食堂と一階で留守番をしている。そのうちの一人はルーエで宿舎で寝ている。
「ユッミル、邪魔者はいません。二人きりですね」
「はい、ですけど脱ぐのはなしですよ。そういう楽しみは安全にその子が生まれてからです」
「脱がなければ激しくても良いんですね?」
「ですが朝の用事は忘れないで下さいよ」
二人は顔を近づけて抱き合って眠っていく。
翌朝、ユッミルはルーエに起こされる。
「ルーエさん、ありがとうございます」
「いや、良いんだ。朝食も用意したからネメッカ様を起こさないようにな」
「そうですね」
ユッミルは静かに食堂に降り、食堂も見回りに来たルーエに見送られながら寒空の街を指揮所を目指して歩いていく。
ユッミルが寒さを少し術で防ぎながらも寒さで身を縮めながら歩いていると誰かが走ってくる。
「シウさん」
「ええ、今日は指揮所での寒さを私で凌ぐと良いわ」
「ありがとうございます。火の術師の特性とは言え本当にありがたいです」
ユッミルはシウにくっついていく。
「今日のユッミルは私を手放せないのね」
「ええ、そのかわり遠慮なく色々言って下さいね」
「まああなたにこれ以上求める事は無いと思うけど一応分かったわ」
二人は指揮所に向かう。指揮所に着くとフェノも待っている。
「あなたは温めないわよ」
「ええ、寒さの中で集中力を切らさない鍛錬なのでそれで構いません」
シウも離さないしユッミルも離れないので二人はずっと寄り添っている。周りも火の術師の特性を理解しながらもシウとユッミルの虚像に浸っている。昼前になると少し暖かくなり、ユッミルは少しだけ離れる。魔族軍の前線はいよいよ下がってしまった。昼過ぎ、指揮所から引き上げると帰り道でもユッミルはシウにくっついていく。フェノはユッミルの家の近くでユッミルと別れて塔に向かう。
「ただいま」
「お帰り、ユッミル君」
「ああ、テーファか。もうしばらくこっちか」
「そうだね。けどあんまり嬉しそうじゃないね」
「うんまあ他の女性と結構遊ぶ事になるから」
「そんなのは気にしないよ」
「だと良いけど」
ユッミルはリッネの方に歩いていく。
「ご苦労だったね」
「いえ、あなたも治ってきましたね」
「そうだな。そういう訳だから側室として働く事も可能だ」
「あなたは女扱いではないですよ」
「そうだな、子供は作れない。だがまあできてしまったら仕方がない」
「絶対に駄目でしょう」
「そうだな。でも君が脱がなければそうはならない。私の体を好きにしてくれて良い」
「そんな事をしなくてもあなたを危険扱いするのは控えますから」
「いやまだだ。だがしたくないならしなくても良い。こちらはいつでも良い」
その後、ユッミルはテーファに抱かせるが途中でシャーユが這ってきたので面倒を見てメシャーナと話す。その後はシウと夕食の準備を始める。そうしているとネメッカが来る。
「来ましたよ、ユッミル」
ネメッカはユッミルを軽く抱くと珍しく着ていた上着を置きに行く。
「ユッミル君、手伝うよ」
「はい」
ネメッカはシャーユを構いながらメシャーナと話をしている。ユッミルは順番と称してユッホとフーニャを両隣にして夕食を食べる。
「食べさせてやろうか」
「遠慮します」
「ネメッカにもそんな事を言うのか?」
「ネメッカ様には中々言わないでしょうね。あなたとは立場が違います」
「ユッホ君の立場はどうなんだ?」
「違うと思いますよ。出会ったのが結婚式ではありませんから」
「なっ」
「はい、ご察しの通りですが結婚式が最初の出会いのあなたは側室でも底辺の立ち位置ですよ」
「残酷だな」
「そうかもしれませんね。ですがここに住みたい様ですから結果的にはレヒーハさんよりはいい扱いになっているとは思っていますが?」
「くっ、まあ確かにユッミルを追い回して追い詰めたという噂のネメッカに比べれば私は怠慢の極み」
「フーニャさん、あれは駄目なんですよ。あれは脅しの類ですからね。フーニャさんはそのままでお願いします。最近は大人しいのでようやくゆっくり交流できます」
「何か手なずけられただけの気もするがであればきっと体でご奉仕したくなるように仕向けてくれるだろうし待っているぞ」
夕食を終えるとユッミルはユッホと風呂に入ってそのまま一緒に寝る。ユッミルは口数も少なくユッホと触れ合っていた。朝起きるとネメッカの布団に潜り込んで抱き付いてそのまま寝る。
「おはよう、ユッミル」
「はい、ネメッカ様。それにしても先程は申し訳ない。あまりにもネメッカ様が魅惑的でしたので眠りの邪魔になると分かっていたのに見境なくあなたの体を求めてしまいました」
「そうですか?その割にはしっかり抱いてはくれないんですね。私は落胆しましたけど同時にあなたが目の前にいたので我慢できずに抱き寄せましたよ」
「そうですね。ですが朝食の時間ですので起きますね」
「ええ、別に続きはいつでもできます」
シウもいつの間にか服を脱いでいてユッミルは服を着れないままネメッカとシウに両脇を抱えて食卓に連行される。その状況を見たミーハも服を着る事は無く当然の様にそのまま卓に着く。シウとネメッカは普通に体を寄せてくる。ユッミルは両側の胸に幾度も顔を吸い込まれそうになりながら食事を進めていく。
食後もそのままネメッカとシウに連行されていくがテーファが目の前に立つ。
「ユッミル君、私も仲間にして。ネメッカの事は君が脱がせたんだよね?」
ユッミルはネメッカとシウとテーファと触れ合う。
「そろそろお昼ね」
ネメッカはユッミルに軽く口付けすると服を着に行く。シウもそれに続く。ユッミルはテーファを抱き留める。しばらくすると何かがユッミルの顔を覆う。よく見るとシャーユでしかも服を着ていない。
「メシャか。何をしてる。確かにエコさんのお蔭で寒くは無いが」
「そうね、シャーユがおしっこしたそうだったからトイレに行かせたつもりだったけどユッミルだったのね」
「メシャ、母親のくせして父親に娘の尻を舐めさせるな」
「舐めたの?」
「舐めては無いが息苦しかったから撫ではした」
「良かったわね。嬉しそうよ」
「今は何もわかっていないからね。けどまあ知らなければ良いか」
「ユッミル君、私の尻はいらないの?」
「もうお昼だし僕も着るから全員服を着てね」
昼食の卓に着くとミーハ以外は服を着ている。
「ミーハ、暑いなら外で散歩でもしてくれば?」
「あっ、もしかして毎日私の服を脱がせるのを楽しみにしてたの?それなら悪いし着るけど?」
「そうだね。僕も裸の女の子は好きだから隣に来て。嫌なら良いけど」
ミーハはユッミルの隣に座る。ユッミルは早速体に手を掛ける。
「ミーハは暑いみたいだし体に寒気が走る様にしてあげるから服を着たくなったら言ってね。すぐにやめるから」
食事をさっさと終えたテーファはユッミルに抱き付いていく。
「ユッミル、私を触ってて食事が進んでいないみたいだから食べさせてあげるね」
「ミーハ、服を着てくれ」
「心配しなくても水術師は体液を操って体は冷やさないわよ」
「そういう事でもないのだけどまあ良いよ」
「そう言えば今夜も一応寒さは防ぎますがここ数日の寒さを全て防ぐと流石に三人の魔力が持たないので今日からは夜はきっちり布団と服を着て下さいね」
「そうですか、仕方ないですね」
「まあユッミル様は私達と日替わりで寝れば暖かく寝れますけどね」
「ですけどシウさんが魔力切れを起こすとは思えませんけどね」
「いえいえ、この大きさの家を五日も寒季の盛りに冷気から守るなんてエッヒネさんでもしんどいですよ。ですがエッヒネとシウが交代なら可能でしょうからこの部屋を夜も暖めたいならエッヒネを呼べばいい」
「でしたら今日はマッラさんと寝ますね」
「もう一方の隣はテーファで願います」
「メシャ、今日は僕がシャーユと寝るから」
「ちょっと、ユッミル君?」
「シャーユちゃんはシウに任せればいい」
「ネメッカ様が隣ならそうしますけどね」
「ユッミルに最初から委ねた方が良かったですね」
「でしたら食事や風呂位は私とでお願いします」
「そうですね」
結局、夕食をシウとユッホに挟まれて食べて風呂にミーハとテーファと入り、ネメッカとマッラに抱かれて眠る形をとる。シャーユはシウとメシャーナに挟まれて寝る。
「ユッミル、今日は随分積極的ですね」
「寒いですからね」
「私は少し寒いですけどあなたは暖かいでしょう」
「ネメッカ様に寒い思いをさせたくないからですよ」
「それでもユッミルが強く抱いてくれるので嬉しいですけど」
「ネメッカ様、おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
2節 最も寒い季節
「ユッミル、殺していい?」
「シウさん、人を殺すなら返り討ちを警戒して多少は防備すべきでしょう」
「なら逆襲してくれるかしら?」
「いえいえ、シウさんの美しい体を目にできる状況を変える必要は無いでしょう」
「ネメッカを抱いておきたいだけよね?」
「シウ様は暖かくて気持ちいいですね」
「殺しはしないけど絞めて良い?」
ユッミルはシウと遊んでいく。
「ユッミル、側室とか無関係に遊びたい方と遊んで良いのよ」
「ネメッカ様、おはようございます」
シウはユッミルの足を股で挟む。
「シウ?」
「向こうに行くならきっちり拒んで下さいね」
「分かりましたよ」
「拒む気は無いみたいですね」
「これが嫌ではないなら仕方ないね。けどネメッカ様の機嫌は損ねたくないんだが」
「ネメッカ様が立場は無関係と言いましたよ」
「それはそうだがであっても駄目だろう」
「はあ仕方ないですね」
シウは足を解放する。
「ユッミル、朝食にしますよ」
朝食はネメッカが特に占領しないのでテーファとユッホを両隣にする。
ユッミルは火の術師の三人に身を寄せて温まっていく。メシャーナは布団に引き籠り、ミーハはいつも通りでネメッカとリッネ以外は少なからず三人の近くに集まっていく。ユッミルはフーニャやミーハを中心に談笑しつつ時折メシャーナとシャーユの方へ様子を見に行く。午後からは寒さが少し収まったので多少は分散した。ただ、レヒーハのトイレの頻度が増える。メシャーナやオーネも用を足す。
「ユッミル、見たよね?」
「そうかもね。メシャが嫌というなら見ないけど?」
「嫌じゃないよ。それに前は待てなくてユッミルが寝てる間に済ませてしまったから今度はユッミルに脱がせてもらってしっかり確認してからしてもらうよ」
「メシャ、少なくとも次の季節は我慢してもらわないと駄目だしその後も僕がしたくなるとは限らないよ」
「で、他の男?なら私がユッミルと離れて外に出ても男を作らなければ次も良いの?」
「あのだな。現状ネメッカ様と別れるつもりは無いし別れたとしてもメシャを恋人にしようとは思わない」
「そうだよね。今はたくさんの女に囲まれてるからそう言えるよね」
「そうかもしれないがこの状況は当面変わらない気がするよ」
「けどシウさんに恋人ができてネメッカにも飽きられたら私に好き放題抱き付いてしまうと良いよ」
「メシャーナちゃんは面白いわね。であればここにいる皆様に男を紹介して差し上げれば良いのでは?」
「えっと、よく分からないけどシウに聞かれてたみたいだし話は終わりね」
「その必要は無いわ。けどあなたは必要そうだから手伝ってあげるわよ」
「ユッミルさんに面倒を見られてるだけのあなたにできるのかしら?」
「シウさん、その辺りで」
「だけではないしあなたと違って何の伝手も無い仲間だし」
「そう仲間よ、仲間。どんな形であれ側室は恋人の一種よ」
「シウさん、少し寒いんですけど」
シウは黙ってユッミルを抱く。
「ユッミル、まだ話は終わってない」
「メシャ、別に恋人ができても僕から追い出したりはしないし一度出て行っても戻ってきて構わない。好きにして良いんだよ。だから一度外で何かをして見てもいい」
ユッミルはシウと一頻り触れ合うとその後はネメッカの様子を伺っていた。
「やはりネメッカ様の機嫌が悪い気がします」
「ユッミル君、何かしたの?」
「した気はしないでも無いのですが」
「謝ったの?」
「いえ、謝るという様な話でも無いのですが」
「そっか、なら抱き寄せながら寒いから一緒に風呂に入ろうみたいに誘えばいい」
「そうですね。とにかく話してきます」
ユッミルはユッホにマッラの回復を依頼してからネメッカの方へ近づく。
「ネメッカ様、何か言いたい事でもありますか?」
「気にしている事はありますがそれはユッミルが判断する事ですし」
「気にしている事?」
「ユッミルが誘ってくれないし一緒に寝ても最終的には他の子の方に向くとかですね」
「それは単に今のネメッカ様を見ているとそういう行為でご負担を掛けたくないだけですよ」
「ならゆっくり甘えてくればいい。言い訳です」
ユッミルはネメッカの肩に抱き付く。
「これで満足ですか?」
「何ですか?その言い草は?」
「いえ、不満はそこではないですよね?」
「そうですね。一番の不安はそこではないですね」
「不安?」
「ええ、実質的な正妻の座を誰かに奪われる事です」
「無いですよ。誰にですか?」
「まあそう言うでしょうね」
「えっと、シウさんは飽き性だし女性としては魅力的ですけど妻としてはネメッカ様の方が理想的ですよ。ユッホさんは良い人なので木での人間関係を結局優先すると思います。他に誰か懸念していますか?」
「いえ、ですけどリッネさんが女性だった場合はどうなんですか?」
「団の主宰と主導同士は好ましくない訳でそれを覆してまで付き合ったりはしないですよ」
「そうですか。それでお風呂には誘わないのですか?」
「聞いてたのですか。元々誰となく入る気だったのですがネメッカ様は嫌かもしれないと思っていましたけどネメッカ様が嫌でなければ」
「もちろん、入りたいですよ。二人で」
「それは良かったです」
「ユッミル、どうしたんですか?もうすぐ家族が増える位なんですから」
「それはそうですけどそうなるとネメッカ様との触れ合いから愛情が減る気もしますけどね」
「私はそうは思いませんけど言いたい事は分かりました」
夕食が近づくとエコとシウとテーファとユッミルで夕食の準備に取り掛かる。しばらくしてユッホとネメッカもやってくる。
「テーファさん、僕達は不要そうですね」
「そうね。ネメッカさん達に任せようか」
テーファは台所の隅でユッミルを甘やかす。
「そこ、狭くないですか?」
「狭いから嫌ばかりではないですよ」
夕食が並び始めるとユッミルはネメッカに寄り掛かる。
「ユッミル、どうしたんですか?」
「いえ、立場が逆転したと思ったので」
「本当に?」
「えっと、あれ?」
ユッミルの手はいつの間にかネメッカの服の中にある。
「抜かなくて良いですよ」
「どうやって?」
「服を上げ下ろししただけですよ。ユッミルがしっかり掴んでくれないので」
「分かったから」
「そうですね。私もこの産む直前の体だとユッミルへの誘惑が半減ですから」
ユッミルはネメッカの隣で夕食を済ませる。もう一方の隣はマッラが座っていたがほぼ無視していた。
「所でユッミル君、この家には石鹸があるのは本当か?」
「ええ、そうですね。まあリッネさんは使ってもらって結構ですよ」
「だがその使い方が分からないのでユッミルがやってくれ」
「手や布で擦って泡立ててその泡に汚れを吸わせるのですけど」
「ユッミルが全身を洗ってくれ」
「リッネ様、いい加減に体を触らせようとするのはやめて下さい。もうあなたにそこまで恐怖を抱いてはいませんから」
「駄目だ。君が私の体を自分の服の皺を気にして直す位の気軽さで触れる様になるまでだ」
「それはいい案ですね。まずは私の体をですね」
「ネメッカ様、あなたはその体ですよね?」
「ちょっと、ユッミル。まさか。リッネを?」
「リッネ様、早急には不可能ですし今後もその要求の無謀さは変わりません」
「私がそう思い込む位に気軽に触って騙せばよい」
「気が向けばそうします」
「では石鹸の件はお受け頂けますね?」
「良いんですか?あなた、もうここまで来ると触られたい人みたいですよ」
「構わない」
「実は何も無くても触らせたい人かもと疑いますよ」
「何も無いはおかしいだろう。気に入った相手でないとおかしい」
「それはそうですが認めるんですか?」
「君こそ私が君を気に入ったと認めるのか?」
「認めたら私に触らせる必要は無いのでは?」
「何を言っている?大事なのは君が私を手中に収めたと私が確信する事だ。私の気持ちを認めてもらうのは入り口に過ぎない」
「分かりました。リッネ様は気に入った男がここにいて信用される為に体を触らせる事を楽しんでいると考えますけど良いのですか?」
「構わないがその認識だと君が触らないとすれば私はかなり傷つくね」
「そんな事は無いでしょう。私の近くにはネメッカ様がいる訳ですから」
「そういう事であれば君の力で隠れてやればいい。協力しよう」
「遠慮します」
「フェノさん、そろそろ寝て構いませんよ」
「あなた達に起こされたが寝ていただろう」
「いえ、寝床でです。時間になったら起こしますから」
「熟睡すると集中力が戻るまで時間がかかる」
「分かりました、少し前に起こしますから」
「リッネ様、この状態を維持されたらどうします?」
「どうするも何も何もできない。月系術は相手の能力を下げるだけ。こちらに武器も動く手段も無ければ無力だ。攻められればさらに追い詰められる」
「月の仮面主導をやめた後に光の多妻主宰に体を汚されていた過去はあれでしょう」
「それは私の子を為したくなったという誘いかしら?」
「さすが、リッネ様。不快なのに流暢に話しますね」
「そうよ、気分は悪くは無い」
「リッネ様?」
「さっきもそうですが私も加担しましたよ。不快ではないですから。それに魔族領の奥地等ネメッカ様がどうしてもいけない所はあります。そう言った所では私が代わりをしますから。シェンハには務まらない」
「分かりましたよ」
「ユッミル?いつまでやっているんですか?」
「リッネ様が離してくれないので」
「振りほどけるでしょう。それにそのやり方。今、私が太ってるからってリッネ様に浮気ですか?」
「魔族領の奥地でも本格的な討伐隊ならネメッカ様は同行するでしょうからそんな状況は起こりません。それに第二優先順はテーファさんですしメシャーナ以下ですよ」
「この街に長期間戻れないのが確定的な状況でシェンハ以外のこの街の知り合いがいない状況でも私と付き合えない程嫌いですか?」
「分かりません。あなたが隠しているので」
「あなたも見ようとしない」
「そうですね。知らない方が良い事はありますし」
「けどあなたより程よく年若い体を間違いなくしている事は分かったと思うので少し満足です」
リッネはユッミルの手を放す。ユッミルもそのままリッネの体から手を放す。
「けどネメッカと若さは変わらない気がするけどね」
「ネメッカ様はよく分かりませんが私はあなたより少し下です。あなたが17歳というなら私は15歳です」
「まあそれはそうなんだが僕の感覚と実際は合わないし」
「なら私の体も合わなかったんですか?」
「15歳の体の感覚は持ってない」
「体格や顔立ちはどうですか?年上ですか?」
「そうだね。少し下という感じだ」
「それは忘れないで下さいね」
ユッミルはその後ネメッカと入浴し、話の流れからネメッカの半分以上湯につかった腹に耳を当てながらお腹を撫でる事になっている。
「ユッミル、下の方も撫でて全体にバランス良くお願いしますね」
「分かっていますよ。ん?」
「痛いでしょうけど我慢して下さいね」
「痛く無いどころか…」
「痛いですよね。不安にさせた罰は受けさせます。抜いてはいけませんよ」
「ネメッカ様、このままだと溺れます」
「分かりました。はあ早く生んで体型を戻してしまいたいですね」
しばらくして全員が入浴を終えるとユッミルはネメッカを抱いてシウに抱かれながら眠っていく。
翌朝、朝食後しばらくするとレヒーハが部屋の隅に向かう。ユッミルは呆けている。
「ユッミル君、どうしたの?」
「いえ」
テーファはユッミルをゆっくり抱き寄せる。ユッミルが目を覚ますと昼食に促される。両脇はテーファとユッホが座っている。昼食を終えてテーファやユッホと話しているとミーハも加わってくる。
「リッネ様もようやく回復してきましたね。ユッホさんのお蔭ですよ。まあミーハのやった事はよく分からないけど」
「やっぱり水術師は怖いの?」
「少しね」
「けどユッミルは父親になる位だし大丈夫だよ。父親でなくても何もしたら駄目だよ」
「裸で縛り上げて私の体を舌で舐めてきても?」
「いや、服を脱がそうとした時点で逃げなよ」
「ユッミル君、舐めたいの?」
「そう思わなくもないですけどテーファさんの事は静かに抱いておきたいですね」
「良いよ」
ユッミルはテーファを抱きながら歪曲視野を使う。メシャーナとネメッカは不服そうだ。フーニャとオーネはマイペースだ。レヒーハとシウは掃除しながら外を気にしている。ユッホはリッネの様子を見ている。
夕食を終えるとフーニャとミーハが先に風呂に入り、しばらくしてユッミルも入る。その後は二人の代わりにネメッカとテーファが入ってくる。二人を送り出すとシウとユッホと入る。
「ユッミル、もう行くの?」
「ええ、流石に熱いです」
「いてくれたらユッミルの手で私が触らせてあげると言っても?」
「残念ながらそうですね」
「ネメッカに感謝しないとね」
ユッミルはメシャーナとシャーユを抱きながらネメッカに抱かれながら眠っていく。
「ちょっと塔の様子が心配なので見てきますね」
ユッミルは朝食を終えるとシウに貰った数個の魔石を携えて出かけようとしている。
「日が暮れる大分前に確実に帰って下さいね」
「分かっていますよ。迷惑になりますから向こうで昼食をするつもりは無いので確実に帰りますから」
結局、シウに途中まで見送られて塔に向かう。
「ユッミル様?ああ、そういう事ですか。ですがお代として暖かさをくれない限り、今は無理です」
「ん?何かわからないが見回りに来ただけだよ」
「私はお気に召さないと」
「まあ良い。フェノは何処?」
「あなたの部屋で寝ていますよ」
「寝てるなら良い。ここは広すぎるね。宿舎かな」
「あの、皆さん疲れてますから。その、私がここでお相手しますから」
「君は何を言っている?」
女性は服を脱ごうとする。ユッミルは一瞬ひるむが肩を掴んで手を止める。
「疲れているのは君だね」
ユッミルは魔石の術を使って体を温める
「暖かいですけどお代を払ったという事ですね」
「あのだな、イーサさんに何を吹き込まれてるのかは知らないが家に五人以上の側室を抱えておいて塔でまで無理にそういう事はしないから通してくれ」
「いえ、引き止めるつもりは」
「分かればいい」
ユッミルは宿舎に向かうと今度は部屋そのものを温める。主宰部屋でフェノも暖める。
「ユッミル様」
主宰部屋では寝ぼけたフェノにユッミルは抱き締め上げられて上半身で転がされていく。ユッミルは逃げる事も出来たがイーサもいない極寒期の留守番を押し付けた罪悪感から一頻り好きな様にさせた。フェノが大人しくなるとゆっくり抜け出す。ユッミルが階段を下りて宿舎に向かおうとすると下の方に強い魔力を感じる。ユッミルはとりあえず宿舎から食堂に向かう階段から食堂の入り口の様子を伺うが何も無いので降りていく。すると堂々と食堂に上がろうとする強い術者を感じる。剣を抜く。ただ、ユッミルが剣を構えて対峙するとそこにいたのはエッヒネであった。
「おどかさないで下さい」
ユッミルは思わず声が大きくなる。
「ごめんなさいね、ユッミル」
「それに今の責任者の許可無しに上に上がらないで下さい」
「それもそうね。でも君もネメッカも不在と聞いていたから」
「私がいる事を言ってくれないと困るね。まあ君は持ち場に戻って。エッヒネ様もいつも通り応接室へ行きますよ」
「せっかく来たからこの塔を暖めていきたいのだけど」
「一階が暖かいのはそのせいですか」
「迷惑ごとの様な言い草ね」
「いきなり謎の術が発動されれば心配になります」
「はい、じゃあ次は君ね。シウのだと少し時間が短いしね」
「エッヒネ様は近づかなくてもできて素晴らしいですね」
「抱いて欲しいなら後でね」
「エッヒネ様は口が上手いですね。早く行きますよ」
二人は応接室に入る。
「今日は本当に暖めに来ただけの様ですね」
「ええ、イーサさんが心配しててね。まあネメッカさんがいたからって寒さには無力だしいずれにしてもね」
応接室もいつの間にか暖まる。
「分かりました。私も目的は同じですが魔石を使いますのであなたに役割は譲ります」
「ええ、任せて。それより近況報告をして良いかしら?」
「ですが火の団は特段何も無いでしょう。泉の方で何かあったんですか?」
「その事ではなく」
エッヒネは立ち上がってユッミルの横に陣取る。
「子供の話。まず、ネメッカ様の先を越すのは無理だから安心して。でも火の中では一番早いと思うわ。けど世間は誰を父と判断するのかしらね?」
「それは脅しですか?」
「諦めて迎え入れてくれて良いのよという話だけどそれが脅しって酷くないかしら?」
「そうですね。受け入れられなくて申し訳ない」
「何故、無理なの?」
「リッネ様を抑える自信がありません。そこにあなたが加わってしまうと三人で何かをしようとしているというあらぬ疑念を掻き立てかねません」
「今は大丈夫だと思うけど」
「エッヒネ様もお互いきっぱりした方が良いのでは?」
「一度だけ抱いて下さい」
その後、エッヒネが食材を持ち込んできたので塔の滞在者の大半を集めて昼食が振る舞われる。昼食の準備にはユッミルも巻き込まれる。しかもユッミルとの触れ合いに消極的なのは少数派で事あるごとにユッミルに不必要にくっついていく。フェノとエッヒネは少し苛立ったが基本的には暖かさもあって明るい昼食であった。昼食後はエッヒネとユッミルで残り全員を宿舎に寝かしつけてしばらく二人で見回っていく。その後、次の見回りの数名を起こし、エッヒネは暖め用魔石を授けて帰っていく。ユッミルもシウ製の魔石を少しだけ与えて少しだけ時間を開けて帰宅していく。
ユッミルは帰宅すると外が寒かった事もあり、エコに寄っていく。夕食は特に何も考えずに無造作に席に着くとシウとテーファに挟まれる。風呂についても少し迷っているとミーハ、エコにフーニャが寄ってくる。ユッミルが定位置で寝ているとユッホとマッラが両脇で寝床に着く。ユッミルは静かに眠っていくがマッラは仕事として抱いていく。ユッミルとユッホは寝ぼけながらお互い抱いていく。ユッミルは最近の事情からして睡眠中の抱擁を問答無用で受け付けるようになっている。早朝、ユッミルは目を覚ます。これだけの人数で全員が寝ている等はまずあり得ず、リッネは起きている。ユッミルが体を起こすとエコが様子を伺っている。メシャーナも起きる。
「ユッミル、森に散歩でも行こうか?」
「あなたは一応、隠れてここにいるんですよ?」
「君が私自体を別人に仕立ててもいいだろう」
「遠慮します」
「では仕方ない」
「寒くは無いんですか?」
「少しは寒いな」
エコがユッミルに寄ってくる。
「そろそろ帰還ですけど怪我は問題無いですか?」
「そうだな、ユッホとやらに感謝せねばな」
「ええ」
「もっとも最大の功労者は君だがね」
「どういたしまして」
三人は静かに軽めの朝食を済ませる。ユッミルはその後、ネメッカの隣に潜り込む。エコも慌ててその隣で寝る。
ユッミルが起きると今度はオーネ、エコ、ユッホ、メシャーナ以外は起きている。
「ユッミル、私と寝たいなら最初から言えば良いのに」
「私が先に寝てしまっただけですよ」
「まあ良いです」
ユッミルがテーファとネメッカの間の席に着こうとすると椅子を引くと同時にネメッカとテーファが膝を寄せて上に乗せられネメッカに抱き込まれる。ユッミルはテーファとネメッカに食事を口に運ばれていく。朝食後もネメッカとテーファがくっついていく。時折、メシャーナ、フーニャ、ユッホが近づいて来て言葉を交わすが昼食も相変わらずネメッカとテーファが隣に陣取る。午後は一度ユッミルがシャーユを構った以外は二人が交互にユッミルを抱き込んでいる。夕食前にはユッミルも積極的に二人に抱き付いていく。夕食中もそのまま近距離で食事を済ませていく。夕食後には寒くなってきてユッミルは自然と二人に吸い寄せられる。その流れで風呂も入るがネメッカを抱いた所で子供が新たにできる訳でもないのでユッミルに躊躇は無くネメッカも寄せるのでくっつきながら入浴していく。テーファもその輪に入る。ユッミルは寒さを理由にして自然と二人に吸い寄せられ、そのまま三人で眠っていく。
翌朝、朝食後にネメッカは塔に戻っていく。ユッミルはテーファと過ごしているがユッホが寄ってくる。ユッミルはユッホと話し始める。そうしているとフーニャやミーハも参加してくる。
「ユッミルの使う剣はそんなに強力なのか?」
「強力なのは術ですけど。多数相手の戦闘ならリッネ様以上ですし時にはシェンハ様にも劣らないかと」
「ユッホさん、言いすぎですよ。私では味方の補助が二人に比べて弱すぎる」
「さて、それはどうだろう?君はそんな事に本気を出した事が無いだろう。前はテーファ君を保護して見せてくれたが」
「それはそうですが幻術は不完全です。強制的に敵を遅くするシェンハ様の術に比べればやはり劣りますよ」
「それはそうだけどユッミルの術の強力な所は攻撃も隠せる所よね」
「それはそうだがそんな連携は難易度が高い」
「けどできるよね?ユッミル?」
「ただ、魔族は鋭いから完全でもない」
「もともと速い私の攻撃は無関係だし外れにくい月系術も無関係だろう」
「幻術は月と特に相性がいい訳ではないが大量の魔族を相手にする際には雷撃と閉月は強力な手段となる。金属による攻撃は雷撃に比べれば弱い。シェンハ君の防御も魔力効率が悪い」
「それでも高出力が使えるだけ凄いですよ」
「ユッミルも使えるでしょ?」
「リッネ様とは違うんですよ」
「そうですね。私も未だに全力を出した事は無い。それが必要な相手に出会った事が無いから」
「だから一緒にしないで下さい」
「そう言えばお互いは必要な相手になりそうですね」
「だからあなたは嫌なんですよ」
「ユッミル?私はこれまで君に敵とみなされない努力をしてきた。それを無にする筈が無い。君に服を脱がされて縛られようが攻撃したりはしない」
「リッネ様、お願いですから諦めて下さい」
「つまり、君は私が敵意を持っていると?」
「今もそう思ってるなら諦めてくれますか?」
「無理だな。だがいずれは二人だけで話がしたい。それで全て話しても駄目なら諦めるかもしれない。ただ、今ではない」
「分かりました。あなたの言い分に歯切れの悪さがあるのは理解しています。隠し事の存在を認めただけ進歩でしょう」
「やはり見透かされているのか。本当は本気でやりあったら捕縛されて下僕になるのは私なのだろう。だから生き急ぐ私は君に先回りして降伏してしまう」
「リッネ様?そんな言い分は困ります」
「そもそも私は君の側室だろう。脱いで相手をしろと言われたら断る権利は無い」
「そんな事は無い」
「実際にユッミルが本気になったら私も含めて強要されてしまうだろう」
「リッネ様、いい加減にして下さい」
「そうだな、気が早かった。君は私が月の主導である限り、駄目だった。その意見は一理あるし尊重しよう。私も当面はこの地位を全うしなければならない。明日には戻るから私で遊ぶなら今日だぞ」
「フーニャさん、急に遊びたくなってきましたので」
「嬉しいがごまかしに使うのはやめてくれないか?」
「フーニャさん、ごまかしではなくどちらかというと口直しですよ」
「私が強引なのだから怒ってはいないが悲しいね」
ユッミルはフーニャを膝に乗せて顔を近づけて話をしていく。
「そう言えばフーニャさん、土の団に普通の実力で入ったらどうなるんですか?」
「班に所属する。土の場合、魔石は志願制だから班は連絡事項が班長を通じて伝えられるだけ。まあ頼めば入団後数週間は多少は指導してくれるが丁寧ではない。基本は実力主義だな、土の団は。後は一階の掲示板に様々な実力の土術師向けの依頼が提示される。大半は土術師と組む為の小手調べ。土術師と組みたい奴は多い」
「光には無いですけどね」
「それはそうだろう。光の数少ない戦力である君もネメッカも組みたいと言った所でネメッカに撥ねられるに決まっている。君に直接頼もうにもいつも女に囲まれている」
「実際、僕が外部と組んでも仕方ないですね。それより土術師なら初心者でも需要はあるんですか?」
「初心者はともかく武器が使えて相応の攻撃手段があるなら需要はあるよ」
「聞き方が悪かった。基礎系土術が一通り使える程度の実力ならどうだ?」
「ああ、それなら需要はあるよ。ただ、初級者の班では手厚い保護は期待できない」
「そんなものですか、ありがとうございます」
「で、君はどんな女と組みたいのかね?」
「難しい質問ですね。僕の場合、防御力と火力が不足しているので両面で補って欲しいですね」
「君が求めているのはシェンハ君という事だね」
「まあネメッカ様ではない事は確かだな」
「私はお呼びでないとでも?」
「まああなたの場合、防御面では十分ですよ。ですがあなたと組むとなると僕が不得手な攻撃を担わなければならない」
「それはそうだろう。雷撃は対魔族最強の矛。君が攻撃に回るのは必然だ」
「だから嫌なんですよ、あなたと組むのは」
「だが私が足手纏いを積極的に勧誘している訳ではない事は理解しているだろう。実際、君が力を付ければ私と中級魔族を難なく相手にできるようになる」
「そんな事にはならないと思うがそんな事をしてどうする?」
「だからそれは二人きりの時に聞いてくれ。それに今ではない。私とて君に信頼されない状況ではできない事は多い」
「また同じ返答をさせて申し訳ない」
「いや、気にしていない」
昼食後は全員何となく部屋の中央に固まって適当に過ごしていく。
「ユッミル、最後位私を洗ってくれ」
「分かりました。リッネ様がそれで納得するなら構いません」
「じゃあ私もね」
「君は最後じゃないだろ」
「嫌なんですか?」
「そうは言いませんが」
「私もお願いします」
「ユッホさんはまあ良いですよ。私は望む所です」
「私も良いわよね?」
「はい、シウさんやメシャは気にしません」
「私はどうなのよ?」
「ミーハもするの?」
「する」
「私も願おうか」
「まあ良いですけどあなたの場合はさっさとしますから不満なきよう」
「どういう事だ?」
「フーニャさんの体を触るのはただじゃないんですよ」
「私がいつ見返りを求めたというのか?」
「見返りではなく私があなたを求めているという事を事実にしようとしますから」
「事実ではないか」
「少なくともシウさんやネメッカにテーファさん程ではないしユッホよりも求めていない」
「ユッミル君、酷いではないか」
「そうですね」
「冗談だ。言いたい事は分かった。私の体は当面は適当に扱えばいい」
「そうですね。あなたが悪い訳ではなく何人もの人間関係を丁寧には扱えないだけですから」
「はあ、君は私は丁寧に扱え等とは一切言っていないし望んでもいないんだが分かっていないね」
「それすらも難しいという可能性もありますよ、フーニャさん」
「まあいい。とにかく洗ってくれ」
夕食後、ユッミルはリッネ達の体を洗っていく。その後、リッネとユッホを隣にして眠りにつく。翌日、昼前にリッネは月の塔に戻っていく。昼食後、訪問者が来る。
「ユッミルさん、少し火の塔に来てお話願えないかしら?」
「エッヒネさん、珍しいですね」
「主宰様が何か御用かしら?」
「心配しないで。夕食には返す事を約束する」
「それはお気遣いありがとう」
ユッミルはエッヒネと出かける。
「それで用事とは?」
「一つ目はメシャーナちゃんの事。気が変わったのよね?」
「いえ、元々いずれはそうするつもりでしたから」
「ああ、子供の事があったのね」
「ええ、まあ」
「で、もう一つの事だけど。私は父親が誰であるか話しても良いと思ってるけど?」
「ずるいですね。僕は肯定できませんよ」
「本人には?」
「お任せします」
「私はまた負けたのね」
「僕は結局、最初から変わっていませんよ。ただ、エッヒネ様のお子様ですから強いでしょうね」
「けどこの子が光、あるいは雷系で頭角を現したらその時はごめんなさいね」
「そうですね。それはやむを得ない事」
夕食前、ユッミルは帰宅する。ネメッカは塔に戻ったらしい。
「おかえり、ユッミル」
「ただいま、シウさん」
「夕食はもう少しね」
「そうですか」
「ユッミルさん、ネメッカさんの子供はもうすぐみたいだけどその次は誰なのかしら?」
「少し空きますけどこの中だとミーハだと思いますよ。ラーハ様の見えない圧にかなり押されましたからね」
「私はまだ順番的に先なのね」
「そこまで先ではないですけどね」
「つまり、私が長男を産む可能性もあると?」
「まあそうですがネメッカ様は望みを叶えてしまうお方なので長男を引き当てるのはネメッカ様の気がしますけどね」
「つまり、4番手以降である私には期待していないと」
「えっと、シウさんは誰を三番と思ってます?」
「テーファちゃん」
「なら二番手は?」
「それは分からない。私が知りたい」
「まあ良いです」
ユッミルは夕食を終えるとユッホやテーファと風呂に入り、最後にはシウと入る。ユッミルはシウに積極的に話したが会話は続かない。ユッミルはその後、ユッホとテーファの間で寝る。翌朝、ユッホとテーファは帰っていく。昼間はレヒーハとシウとミーハがユッミルと話をしていく。昼過ぎ、珍しくフーニャが出かける。その後、ユッミルも塔に行く事にしたのでミーハは水の塔に出かける事にする。マッラも家に帰る事にした。ユッミルは塔に向かう。
ユッミルが塔に着くとイーサはいない。
「私は部屋に戻っています」
ネメッカはユッミルに状況を説明すると部屋に戻っていく。ユッミルは少し塔を見回るが特に仕事は無い。ユッミルはネメッカを早めの夕食に誘う。夕食を終えるとネメッカをベッドに寝かせて足を揉みほぐしていく。
「ユッミル」
「気分が悪かったですか?」
「ユッミル、あなたは私の使用人ではないのです」
「疲れていそうだったので」
「なら下半身全体を頼めば揉むんですか?」
「凝ってそうな場所に絞りますけどね」
「肩の下は凝るので全般的に揉んでほしいですしユッミル以外には頼めないんですが?」
「それ位は構いませんよ」
「というか全部脱ぐので全部揉んでくれません?」
「そこまでされるとこちらも甘えたくなってしまいます」
「ですけどいよいよ太ってしまいましたからそんな気は起きないと思います」
ユッミルはネメッカの体をマッサージしていく。ネメッカはそのまま体を預けて寝る。ユッミルはネメッカを抱えて布団に入る。ユッミルはしばらくして寒さを感じたのでネメッカに服を着せていく。ネメッカは目を覚ますとユッミルを抱き留めていく。
3節 寒季の余韻
朝は早めに起き、いつも通り4人で朝食の卓に着く。
「ユッミル様、明日午後は指揮所をお願いできますか?」
「ええ、構いませんよ」
「ユッミル、帰るんですね」
「まあ家の人数次第では森の様子を見に行きますよ。フェノ、ついて来てくれ」
「はい、分かりました」
家にはミーハ、シウ、レヒーハ、メシャーナ、フーニャ、オーネがいる。シウ以外は朝食を食べている。
「今日は様子見なんだけどレヒーハもたまには来ないか?」
「足手纏いですけど大丈夫ですか?」
「ええ、今回は奥に行きませんから。ですけど術は使って下さいね」
「期待しないで下さいね」
「ええ、見学ですからピュッチェさんも呼びますしフェノもいますから私は後衛に回るので傍にいますよ」
「あら。珍しく頼りになる男を見せるの?」
「強い術者の立ち回りを見て損は無いでしょう。せっかく優秀な術者がいるんですから」
「でも私は留守番なのね」
「奥には行きませんからシウ様の手を煩わせる事も無い」
「シャーちゃんの面倒でしょ」
「それはそうですけど」
「気にしてないわ」
シウにシャーユを預けて起きていたオーネも含めてミーハ、フーニャ、オーネ、メシャーナ、フェノ、レヒーハを連れていく。途中でピュッチェと合流して森に向かう。
森に向かう。獣はいるが警戒心が強く近づく前に逃げられる。仕方なくメシャーナに魔石を使わせてフェノとの連携で誘い込む。ピュッチェと対峙したのでユッミルは光系術で支援していく。最終的にはフーニャの一撃で動きを止めたのでユッミルが支持してピュッチェを退かせてユッミルが比較的綺麗に切り伏せる。メシャも戻ってくる。獣はまだ活動が活発では無い様でこの一匹だけであった。昼過ぎに家に戻るとシウとユッミルで狩ったばかりの獣を料理に使う。
「こんな感じなんですね。木の団で狩る人は少ないですから新鮮です」
「そっか、それは良かった。もしレヒーハが行きたいなら連れていくけどね」
「いえ、あまりたくさんは」
「うん、こっちとしてもそうしたい」
夕食後はレヒーハと風呂に入り、メシャーナとシャーユを右にシウを左にして眠っていく。
翌朝、朝食後にメシャーナと二人で森に散歩に向かう。やはり獣は奥に籠っているので追わずに帰る。ユッミルは当然ながら歪曲視野で広く見て獣の姿も見かけたが遠いので狩る事はしなかった。他にも奥の方でリッネの姿も見かけた。
家に戻って早目の昼食を食べると指揮所に向かう。そこにはマッラがいる。後はソヨッハもいる。
「マッラさん?」
「今回の寒季は最後の温めですよ」
「ありがとうございます」
魔族領は基本的に低調である。夜遅くは冷えて来たのでマッラはユッミルを温める。任務を終えるとマッラを火の塔の近くまで送る。
「ソヨッハ、最近はどう?」
「はい、まだ寒季明けたばかりなので」
「そうだったね」
「寒季が明けた後は外で組んでみようと思ってます」
「それは良かった」
「ユッミルさんこそどうですか?」
「特に変わりませんね」
「ところでこれなんですけど。追加分です」
「ありがとうございます。けどあまり使ってないんですよね。ネメッカ様にも慣れましたし」
「そうなんですね」
「ですが受け取っておきます」
「お返しというとあれですがこれをあげます。近距離の雷食です」
ユッミルは網の様な多数の糸の様な雷撃が弧を描いて正面に向かう攻撃を見せる。
「ありがとうございます」
ユッミルはソヨッハと木の塔の近くで別れると急いで光の塔に向かう。また光の歪曲を感じるが急いでいるので気には留めない。塔に向かうとネメッカは待っていて夕食を四人で共にする。その日のネメッカは大人しくユッミルがさっさと隣で寝るとネメッカもユッミルの肩に手を掛ける程度であっさり寝る。
翌日、昼過ぎにユッミルは指揮所帰りのリッネを待ち伏せて人の少なそうな路地に呼び出す。
「リッネ様、もう観念しました。大事な話というものを聞きますから家でも森でも何処にします?」
リッネは少し間を置く。
「いや、いずれ話すが今では無い。もう少し君と親密になってからにしたい」
「まあ数日とは言え同居して一緒に寝はしましたけどね」
「だが私が周りに対抗して体を近づけてばかりになっていた。それはそれで重要だがまだ足りない。今の君にそこまで信用されていない状態で話しても結果は良くないだろう」
「そんな突飛な話をする気ですか?」
「さて、どうだろうね。けど君が前向きになってくれた様なのでお互いの信頼を養う為に夜営をしないか?二人だけで」
「そうしたいのはやまやまですが私ではあなたの睡眠中の護衛を遂行し切れない」
「そうかしら?その剣は飾り?」
「ですが複数から攻められた場合は対応しきれない」
「その場合は私を起こせばいい。まあ大丈夫だと思うけど」
「起きてすぐ動けますか?」
「大丈夫だ」
「であれば構いません」
「なら今日はどうだ?」
「そうですね、構いません」
ユッミルは一度帰宅する。
「ユッミルさん、今日は誰と寝るんですか?」
「えっと、出かけるので夕食は早めで願います」
「は?」
「ああ、もしかしてエッヒネとお出かけ?」
「まさか」
「じゃあ誰です?まあネメッカでは無いですよね?光の塔から出る必要は無い」
「なっ。ユッミル殿は遂にここに女が少なくなってきたから自分で狩りに行くのか」
「まさか、レヒーハがいる上にシウさんですよ。そんな必要はありません。夜営ですけど相手も強いので全く心配しなくて良いですよ」
「そういう事、まあ好きにすれば?危険に突進しない様に気をつけて」
「ありがとうございます、シウさん」
ユッミルは森に出かけてリッネと合流する。ユッミルは躊躇したが少し魔族領に近い所に夜営地を決める。そして、最早当然の様に下級魔族を一定程度狩っていく。
「何も危険は無いだろう?」
「それはあなたがいれば大丈夫でしょう」
「そうかな?では君はメシャーナちゃんと私が組んで魔族狩りをしても安全というのかね?」
「いえ」
「分かればいい。それより君は威力が高い術を使わないのか?今のままだと中級魔族には時間が掛かって先に進めない」
「威力を上げると使うまでに時間が掛かります。できなくはないと思いますが実用的かは別問題でしょう」
「話の一つはそれだよ。高位の術を習得しないか?私が手伝う」
「夜営の理由はそれですか?」
「だが今日は違う。今回は私との夜営に慣れてもらう。もちろん、こんな状況で私一人なのだから好きに触ってくれて構わない。私は側室で今日は他がいないのだから安全が確保できるならそれ以上も構わないがその場合は起こして欲しい」
「しませんよ」
「そんな気もするが私は受け入れるとだけ言っておく」
「ありがとうございます」
「こんな世界でなければどうだったんだろうね」
「あなたと仲良くする形になる世界は少ないでしょうね」
「それは君が私に見向きもしないという事かな?」
「いえいえ、お互い相手に気付きもしないでしょう」
「気づいたら相手してくれるのか?」
「そうですね、本来のあなたはもう少し話せる相手だと思いますし」
「仮面をつけているからと言って中身も偽っているとでも?」
「いえ、責めてはいません。私も全く偽っていないと言う訳ではありませんし」
「そうか、では先に寝るよ。お好きにどうぞ」
ユッミルは周囲を警戒するが特に気配はなく時間が過ぎる。
「交代だね。でも君が眠くないなら少し話してからにしよう」
「それは構いませんが」
「どう?また、私と夜営する気はあるか?」
「まだ終わってませんよ」
「だが楽しくも心配でもある時間帯は過ぎた。側室である私から許可なく君の体を求める事は礼を欠くのでできないから今日のお楽しみは無い」
「話がそれだけなら寝ますよ」
「そうだね。今度は術の訓練をするからまた一緒に来てくれ」
ユッミルとリッネは特に何も無く朝を迎え、ユッミルは指揮所に向かう。そこにはネメッカもいる。
「ああ、ユッミルが居るなら私はいりませんね」
ネメッカはゆっくり去っていく。
「ちょっと」
ユッミルは仕方なく少し前までいた場所を上から見るが前線はやはり不活発だ。そう思っていると身に覚えのある女に抱きつかれる。
「ネメ…」
「ユッミル様、今日は私が傍でお相手しますね」
「カエさん、大丈夫ですよ」
「いえいえ、私がユッミル様の傍に居たいんです」
「どういうつもりだ?」
ユッミルは放音を使ってネメッカに囁く。
「ユッミル様は私を邪険にしませんよね?私が嫌いになったんですか?」
「えっと、今は指揮所だから大人しくしようね」
「そうでしたね。けどこれ位は良いですよね?」
カエはユッミルに密着していく。カエの衣装は全般的に短い。
「あれ?もしかしてネメッカを帰らせて堂々と入れ替えで浮気か」
「光ってあの男に女を差し出してる?」
「ネメッカ様?困ります」
「浮気は事実でしょ」
「でしたら離れてもらいます」
「嫌よ。それはネメッカを拒絶するという事だけど良いの?」
「ですがそうするとネメッカ様は浮気男と付き合う事になりますよ」
「事実だから仕方ないわね」
「ですから夜営しただけです。何もしてません。この扱いは不当です」
「でも昨日心配だった分待てないんですよね」
「えっ」
「私からは離れたくない」
「だったらネメッカに戻ればいいでしょう」
「それもそうですね」
ネメッカは姿を元に戻す。
「あれ?ネメッカ様?」
「おいおい、どういう?」
結局、ネメッカの念願が成就してネメッカはユッミルに甘える為に指揮所の時間までも押しかけてくる位ユッミルを気に入っているという基本的に正しい認識が噂として広がる。エッヒネを通じてネメッカは注意を受けたが本人的には大満足の様だ。
やはり魔族軍は不活発であり、ユッミルはネメッカに抱かれたまま特に何も考えていなかった。指揮所の任務を終えると夕方まで光の塔で仕事をしてリュッサと一緒に帰宅した。
「そろそろ魔石の準備をするんだね」
「はい、早い方は狩りを再開しますしそうでなくても魔石は先に準備しようとする方もいますので」
「そろそろ集会所にも寄ってみるかな」
「そうですね。まだ少ないとは思いますが」
翌日、ユッミルはレヒーハにピュッチェを呼びに行かせつつメシャーナとミーハとフーニャと集会所に向かう。
「まだ少ないね」
「ここの依頼は協会側のも多い。協会はこの時期の狩りを推奨していないわ」
「それにしても皮の買い取り価格が落ちてる」
「はい、無性の街で皮の縫合が盛んになっていますので」
「取りすぎたとかは?」
「えっと、確かにユッミル様は取りすぎでしたが然程ではありません。そもそも皮が余っているなら縫合は不要でしょう」
「ですが皮が余ってないなら価格を下げる必要は無い」
「そうですね。皮は余ってます。無性の街と違って冒険者の街では縫合した皮は人気ではありません。夜営しないにしても念頭にはありますしね。ですが無性の需要は上回らない」
「大変ですね」
「そう思うなら魔石を市況に増やすのはやめて下さい」
「冒険者の街の人口が増えれば問題は無い」
「そんな急には無理ですよ」
「では失礼しますね」
「ユッミル、逃げるのね」
「そろそろピュッチェが来るからだよ」
「そうね。ただ、意外なのは魔石の増加でもラーハ様に不満がなさそうなのよね」
森の入り口の手前ではピュッチェとディユがいたので合流する。少し奥に向かい二体倒すが獣が少なく時間が掛かり、森から出たのは昼をかなり過ぎていた。
家に帰ると四人で昼食を食べる。
「ユッミル、獣少ないけどどう思う?」
「そうだね、時期が早すぎたかもしれない」
ユッミルは何気なく昼寝をする。しばらくしてユッミルが起きるとシウとミーハが両側に寝ている。傍ではメシャーナとシャーユが見張る様に座っている。夕方になるとテーファがやってくる。
「あれ?珍しいですね。」
「ユッミル君が来てくれないしネメッカさんに頼まれたし」
ユッミルはテーファとメシャーナ母子を両脇にして座ってシャーユに話しかけながらテーファと話している。
「たまにはシャーユの風呂はこっちでやっておくからメシャーナは後でゆっくり一人で入ってね」
ユッミルは先にテーファと風呂に入るとそのまま上がらずにシャーユを受け取る。シャーユと一緒に上がるとそのまま遊び相手になる。メシャーナが風呂から上がる前に一緒に寝てしまう。その後、メシャーナはユッミルの横で横になる。しばらくするとユッミルは起きてシャーユをメシャーナに引き渡してミーハの措置をする。部屋の中央に戻るとシウが風呂から上がってくる。
「狙ってませんか?」
「そんなのはどうでも良い事よ」
シウはそのまま抱いてくる。
「服が濡れるのでやめて下さい」
「知ってるわ。単なる嫌がらせよ」
「ユッミルも仕返ししてくれていいのよ」
「でしたらこちらは親切にシウ様の体を手で隈なく拭いてあげますよ。不要ならさっさと離れて下さい」
翌朝、目が覚めるとシウの顔は近い。そして、手はシウが握っている上にシウの体に乗せられている。
「シウさん」
「私はまだ母乳は出ないけど仕方ないユッミル坊やね」
ユッミルはシウの手を振りほどいてシウの横に寝直す。
「ごめんなさい。シウさんの体を汚してしまいました」
「気にしなくて良いわ」
しばらくするとテーファは帰っていき、入れ替わる様にリュッサがやってくる。昼前にユッミルはメシャーナを連れて火の塔に近い家に行く。
「あれ?火の女。しかも主宰のおばさんまで」
「エッヒネさんはおばさんじゃない」
「そうよ、ユッミルの事も下げる発言はやめた方が良いわよ」
「それで今日は何の用?」
「うん、前から考えていたけどメシャには土の団に入って鍛えてみるってのを提案しようと思っててね」
「ああ、良いけどシャーユは大丈夫?」
「うん、シウにお願いする事が増えるけど僕もちゃんと見るから」
「私も入り浸っていい?」
「駄目に決まってるでしょう」
「エコも投入した方が良くないかしら?」
「それはそうなんですが仕事にばかり駆り出して申し訳ないので気は進まないのですよ」
「なら遊び相手になってあげればいい」
「それも仕事でしょう」
「エコさん、どうします?」
「行きますよ。それにユッミルさんのお気遣いに甘えて仕事での遊びはしませんね」
「はい、構いません」
「ユッミル、土に可愛い男がいたら報告するけどしないという事はいないという事だからね」
「メシャ、数日では良い男は見分けられないよ。それにまずは土の術を上達させてきてね」
「分かってる」
夕食はリュッサとレヒーハの間でとり、そのまま二人と寝る。
翌日、メシャーナは土の塔に土の団の見学に向かう。シャーユと遊びながらゆっくりしているとネメッカがやってくる。リュッサは帰っていく。
「どうかしましたか?」
「今日も来る気は無いですよね?」
「ネメッカ様が要求するなら理由次第では行きますが」
「いえ、こちらに泊まります」
「大歓迎ですよ」
「ユッミル、あまり森の様子が良くないようですね」
「ええ、ですから今日も休んでいます。そろそろまた様子を見ますが」
「ユッミル、私の事は好きですか?」
「別れ話ですか…僕は好きですよ」
「別れ話ではないです。それでどこが好きですか?」
「急にどうしたんですか?そうですね、積極的に気持ちを伝えてくれる所ですかね」
「美しいとは言わないんですね」
「ネメッカ様の魅力を聞かれればそう答えたかもしれません」
「困りましたね」
「やはり別れ話ですか?」
「違います。それを皮切りに塔に来ないユッミルを責め立てようとしたのですが」
「えっと、そんな事をしなくても責めればいい」
「いえ、とにかくもう少し塔に来て下さい」
夕食を終える。
「ネメッカ様、一緒に入りたいですし寝ましょう」
「ユッミル、そういう事は塔でしなさい」
「シウさん、塔にはあなたより遥かに面倒な邪魔者がいるんです」
「ネメッカを選ぶの?」
「それはそうです。シウ様はシウ様ですから」
「一緒に入る位良いでしょ?」
「それはまあ」
ユッミルはネメッカにくっつきつつシウとも風呂に入る。
「やはりネメッカの方が大きいから」
「えっと、ネメッカ様が太っていなくてもシウさんの方が多分、魅力的な体ですよ。けどもうネメッカ様に口説かれてますから」
「でも私との方が気持ちいいでしょ?」
「えっと、シウさんとの緊張よりネメッカ様の安らぎの方が好きなので」
「まだ緊張してるの?」
「そうですね」
「どうして?」
「シウさんの機嫌を損ねたり、退屈させたくないからですよ」
「でも緊張感があった方が気分が良いでしょ?」
「ですけどネメッカ様の安らぎには負けます」
ユッミルは風呂を上がってもネメッカに甘えていく。翌日、昼前にキッシャノが訪ねてくる。
「あっ、ネメッカ様」
キッシャノは少し表情を崩している。
「キッシャノさん、きっとユッミルに用なんでしょうけどどうしました?」
「リッネ様がユッミル様に話があるそうなので伝言に来ました」
「いつですか?」
「基本は明日ですが今日が良ければ私を使って主導部屋に忍び込むようにとの事です。それと主導部屋への忍び込みはいつでも歓迎との事ですよ」
「それは流石にしません。明日ですね」
「明日でしたら普通に朝に応接室ですね」
キッシャノとの昼食後、ユッミルとネメッカは塔に向かう。
「そうですか」
「イーサさん、どう思います?」
「ネメッカ様だけ先に帰らせれば話を聞けたのでは?」
「そうでしたね」
ユッミルはネメッカと執務室で適度に話した後、夕方には帰宅する。家に帰るとシウは塔に戻ったらしい。リュッサとレヒーハにフーニャとミーハにメシャーナ達がいる。
「えっと、夕食を食べたらテーファの所に行くね」
ユッミルは夕食の準備に取り掛かる。
「ユッミル、何それ」
「そのままの意味だよ。明日はリッネからの呼び出しだからついでに月の様子を聞いてくる」
「シウがいないと止まらないの?」
「違うよ、ミーハ」
「まあ良いわ。テーファだし」
ユッミルは夕食を終えるとテーファの家に向かう。ユッミルは扉を数度叩く。
「誰ですか?」
「ユッミルだけど」
「えっ。ユッミル君?待っててね」
少しだけ間があったがすぐに扉は開く。
「急で悪いですね」
「大丈夫だよ」
「あっ。もう少し待っても良かったけど急かしたかな?」
「ううん、ユッミル君にはこういう姿を見せてもいいかと思って。嫌かもしれないけど」
「大丈夫だよ」
ユッミルはテーファの姿や周りを見回す。
「今日は私と遊んでくれるんだよね?けどその前にユッミル君の事を抱き締めて良いかな?しばらく会いに来てくれないから寂しくて」
「良いよ」
しばらくユッミルは表情が緩むが辛うじて用件を思い出す。
「明日、呼ばれたので月の塔に行くんだが月の団の様子は最近どう?」
「特に変わった事は無いですけど昼間リッネ様は塔にいないので分からない事ばかりですね」
「何しに行ってるかは?」
「それは分かりませんが日によっては魔石の持ち帰りもあります」
「ありがとうございます。そうですか、分からないのですね」
テーファはさらにユッミルを抱き寄せる。
「ユッミルがいないと暇ね」
「そう言われても困ります」
「太ってるうちだけだけど寂しいわね」
「昼間、話したばかりでしょう」
「他の女と寝てるんだから寂しいわよ」
「今だけですけどまた妊娠したらそうなりますし妊娠しない様にしたらどうです?」
「イーサ、私より先に二人目は許さないはリュッサも含めて光の団内ではより厳密。そうなったらユッミルを塔では私が独占するけど良い?」
「それは少し困りますね。事故もありますから」
ユッミルとテーファは風呂に入り、テーファはユッミルを抱いている。風呂から出ると服を着る事無く布団に入っていく。
翌朝、二人はくっつきながら月の塔に向かう。
「シェンハ、か」
ユッミルは慌ててテーファから離れる。
「何よ。その反応」
「いえ、あなたがいるとは思いませんでしたから」
「安い演技ね」
「いえいえ、テーファさんを魅力的だと思う心に偽りは無いですよ」
「それは知らないけどまあ良いわ」
「来たみたいだね」
「リッネ様、用事は何ですか?シェンハ様まで呼んで」
「来てもらったのは他でもない。シェンハ君とユッミルに術の開発訓練への参加を要請する為だ」
「えっと、シェンハ様と訓練なんてしかもリッネ様もついてくるなんて私にはついていけないのでお断りしたいのですけど」
「話は最後まで聞いてくれ。今回は別の団の術を応用する事による術開発を目指す」
「よく分かりませんね」
「君は下級魔族に対して雷撃を近くから直線的に撃って攻撃していたね」
「ええ、雷射ですね」
「月の団、少なくとも私も同様に月の呪縛を近くから直線的に放つ月射を使う。君のいう雷射と月射は属性が違うだけで魔力の形成と放出に関してはほぼ同じだ」
「であれば他の複雑な形成と放出を伴う術も模倣できるのではと考えたんだよ」
「それはそうですが射撃型はともかく他の型は使い勝手の事もあります。私は雷盾と言って雷を面的に発生させて盾の様に使いますが月術でそれをしても防御効果はそこまで期待できません。リッネ様は防御には無数の針を使ってますよね?」
「そうだな。月術はあくまで弱めるもの。雷や火と違い待ち受けて壊す事は出来ない。それでも壊したければ間合いを掛けて多段防御が必要だ。消耗は大きい。もちろん、君の言い分は分かるが一度やってみる位なら良いだろう」
「まあ忙しい訳ではないですから構いませんけどできなくても怒らないで下さいね」
「できるまで訓練すればいい」
「永久にできない事は困ります」
「もちろん、事前に決めた予定は守るよ」
「まあ良いですけどシェンハ様はどうなんです?」
「もちろん、そういう鍛えるのは好きだし構わないわよ」
「さて、ここからが問題だが我々三人は光と氷と月だが他の属性の術師も欲しい」
「まあそうね」
「という訳で二人には光と月と氷以外の術師を二人連れて来て欲しい。まあ全属性は揃わないかもしれないが仕方がない。まあユッミル君にはほぼ負担の無いお願いだし受けてくれるよね?」
「そうですね。リッネ様に失望してもらういい機会です。受けましょう。それでどの団の子が良いんです?」
「まあ自由で良いとは思うが私達に限らず伝手が無い団はあるだろう。もう一人は自由で良い。連れてくる二人は別の団で願う。そうすればかなり色々な団が揃うだろう」
「頑張って探すわよ」
「ええ、ですから探す時間を考えて出発は四日後ね。優秀な人材の日程に合わせる場合はユッミルにはキッシャノを通して連絡しますからユッミルは待っていて下さい」
「えっと、今日はこれで終わりですか?」
「そうね。ユッミルには探す手間は無いだろうから予定を確認して四日後から翌々日までが駄目な場合は今日の夜にキッシャノが行くから早目に伝えてね」
「連泊ですか」
「ええ、夜営は私とシェンハで何とかするので心配無用よ」
「まあユッミルは拠点防衛向きではないし寝てなさい」
「ですけどシェンハ様、良いんですか?僕と一晩どころか二晩寝るんですよ」
「それは襲う宣言?返り討ちにしてあげる」
「いえいえ、シェンハ様の寝相が悪ければ色々見えますよ」
「ふーん。その程度。見たければ見ればいいわ。けど触ったら返り討ちな上に氷の塔で私の小間使いをさせるわよ」
「触っても小間使いだけですか」
「返り討ちだと言ってるでしょう。それにネメッカがいるでしょ」
「それに私は触ろうが自由だよ」
「とにかく私は強いけど女としてはそこまでよ」
「ですが男性人気はありますよね?」
「そうらしいけど強いと女のセット売りね。強いユッミルには価値は無いわよ。だからネメッカやそこのがお気に入りな訳だし」
「ですけど二人はその場にいません」
「むしろ私へのちょっかいがばれたら危ういのはそっちでしょ」
「はあ、諦めてはくれないんですね」
「ええ、でも諦めさせた方が良いのはリッネの方でしょ」
「そんな可能性は無いですよ。分かりましたけど見つからなければやめてくれて良いですよ」
「そうね。けどまあ基本的には実施だから逃げれると思わない事ね」
「では待っている。テーファ、今日はこのままユッミルを送って君も帰ると良い。ただ、ユッミルの家で頼むよ」
「昼間から何かしてるかもしれませんけど気にせず連絡係を連れて来て構いません」
「テーファさん」
「別に良いでしょ。そろそろ子持ちなんだし」
「まあネメッカ様に文句は無いでしょうが。それより行きますよ」
「そうね」
テーファはユッミルと腕を組んで引っ張っていく。
「当てつけね。まあ私はこの力でこの世界にいるからこの立場にいるけど力を知らない、あるいは知ろうとしていないユッミルがああなのは分かるけどね」
「そう、だから分かってもらうのだよ」
「けど結局、ネメッカをどうにかしないとどうにもならないと思うけど」
二人は家に帰ってもくっついている。
「ユッミル君、おしゃべりも良いけどそろそろ別の事しないの?」
「えっと、そろそろ例の件について来てもらう二人を決めないと」
「私は?」
「分かってるでしょ」
「そうね」
「フーニャさん、少し先なのですが二泊三日の訓練に同行願えませんか?」
「ほう、遂にそれを口実にか。良いぞ」
「いえ、シェンハ様も同行するのでそれはあり得ません」
「まあ良い。君は優秀な術師を気に入る傾向があるからな。その話受けるぞ」
「ありがとうございます。四日後ですけど大丈夫ですか?」
「ああ問題無い。水浴びでもするのか?」
「あっ。分かりませんが可能性はありますね」
ユッミルはテーファの元に一度戻ってシウやミーハに注目されながらユッミルも周りの様子を伺う。レヒーハやリュッサはあまり気にしていない。しばらくしてユッミルはミーハの方に向かう。
「あの四日後から二泊三日なんですが訓練に同行して欲しいのだけど都合はどうかな?」
「ユッミル、そんなに後ろめたい訓練なの?」
「えっと、リッネ様も参加するので内容は優しくないかもしれないし夜営もあるし」
「いつも言ってるでしょ、私の寝床の条件はユッミル以外の男がいない事よ。それ以外は何とかなるわ。もっとも今は妊娠中だからそれも大丈夫だけどやっぱりそれは守ってね」
「そうだった」
ユッミルはキッシャノが夕方に来るとミーハの条件を伝える。キッシャノは急いで塔に向かう。ただ、明らかにすぐ帰還してくる。
「えっと、そもそもリッネ様が参加するのでそれはどうかまず聞くのが先決かと思いまして」
「そうでしたね。男かもしれませんよね」
「それは大丈夫よ。第一、前もリッネは泊めたでしょ。きちんと許可は取ってるわ」
「それって水はリッネ様の素性を知ってると?」
「いえ、表向きはユッミル様を気に入ってるのでユッミルの側室には手を出さないし手を出してくれればこれ以上ない手札だと言っているわ」
「分かりました。その様にお伝えします」
「駄目だったらシウさんにお願いしますね。ただ、リッネ様の口ぶりからして大丈夫だとは思いますが。水の術師の子が勝手にというのがラーハ様が嫌がるのは知っているでしょうし」
「私は下位の女なのね。なら躊躇せず使えばいいのに」
「今日はテーファさんがいますから」
「ユッミル君はそんな事言ってるけどあまり来てくれないよね」
「出かけると言えばネメッカ様を優先してしまうので」
「光の塔に住めばいいって事?」
「それはそうですけど」
「冗談よ。けど待ってるからね」
翌朝、テーファとユッミルは起きていなかったがキッシャノがやってくる。布団を出ようとするユッミルをテーファが抱いて止めるのでそのまま話を聞く。
「テーファさん。まあ良いです。結論ですけど大丈夫だそうです。一応、シェンハ様に女性を選ぶように伝えるそうです」
「シェンハ様に女性の他の団の伝手…」
「どうかしました?」
「火が駄目なら木を予備にしないといけないか」
「大丈夫ですよ、おそらく水以外は二人で揃えますから」
「ならこちらはいらないでしょ。一人で良い」
「ですが実力者は用意できない」
「本当ですか?」
「用意できる属性もいるかもしれませんけどね」
「隠す気ですね。リッネ様が発案者ですから一人は実力者を連れてくるのは容易に想像できる事でしょう。男性だったらご破算ですがその様子は無かったですよ」
「まあそれはそうですよね」
「今日は肩慣らしに森に行きましょう。獣は狩れなくても少し奥で撃ちましょう」
ユッミルは万が一の為にメシャーナを連れて手を繋ぎ、もう片方はテーファに抱かれている。フーニャとミーハに加えてシウやピュッチェもいる。趣旨からしてピュッチェは合わないので誘わない事にした。遠巻きでも逃げる獣に追撃としてフーニャやミーハは術を撃つがまともに当らなかった。ただ、調子は確認できたので満足そうであった。メシャーナはユッミルにずっとおぶられてテーファはユッミルにくっついていてそれはそれで満足だったらしい。ピュッチェはピュッチェで軽く運動できて満足そうであった。昼過ぎには引き上げる。
昼食後、しばらくするとシウが服を着ていない事に気付く。ユッミルは問い詰めようとシウの方に向かう。
「どうしよう。服を全て洗って干してしまったわ。けど男はユッミルしかいないし最近は見向きもしないし大丈夫よね。いっそ私から行こうかしら」
「シウさん、火の術師ですから洗濯物位すぐ乾かせますよね?」
「ユッミル、私は威力が調整できないので無理です」
「ミーハに頼めばいい」
「それほどの事ではないわ。ユッミルはテーファの機嫌を損ねたくないし何もしないでしょ」
「それは違います。服装次第で逆転する差ですから拒むなら今のうちですよ」
「あら?忘れたの?この程度で何も思わないわ」
「でしたら」
テーファは事の成り行きを頬を膨らませながら見守っていた。しばらくしてユッミルが満足そうに立ち去ろうとする。
「ユッミル、逃げるのは許さないわよ」
シウはユッミルを抱きかかえる。
「ユッミル君、夕食よ。服を着て」
「そうする。待ってて」
「そうね。今日はこの位で勘弁してあげる」
夕食はミーハとテーファを両脇に置く。テーファはユッミルに密着してユッミルに食事を食べさせながらユッミルの方からも近づかせる。
「ユッミル君、お風呂はどうするの?」
「テーファさんは?」
「ユッミル君はどうしたいの?」
「テーファさんは機嫌悪いし一人が良いかなと」
「ユッミル君は私の機嫌が分かるのに色々したの?」
「えっと、テーファと入りたいとは思うけど」
「じゃあ入ろうね」
風呂が沸くとユッミルは服を脱ぐがテーファは脱ごうとしない。
「着たまま入るの?」
「ユッミルが脱がせて」
ユッミルは服を脱がせる。
「連れて行って」
ユッミルが全身でテーファの後ろを押すとテーファは動き始める。
「ユッミル君、このまま寝てくれるよね」
「うん、でも明日は朝から指揮所だし程々にね」
「ネメッカさんじゃないの?」
「そうなんだけどたまには僕が行こうかと」
「それだけど明日は私も担当なの。ネメッカに自慢しようかと思ったけどあなたと触れ合うのもいいかもね。指揮所なら逃げられる心配もないし」
「好きにして下さい」
ユッミルはテーファとくっついて寝る。ユッミルは何かしらの感触で暗い中、目を覚ます。目を開けるとシウが裸で屈んでいる。
「シウさん」
「朝起きてあなたが他の女と寝ていたから汚い部分で踏んでしまったけど許してね」
シウはさっさと服を着に行く。ユッミルも身支度してシウと軽く朝食を食べると指揮所へ向かう。しばらくするとネメッカもやってくる。
「ああ、そういう事ですか」
「ええ、今日は私がいますからネメッカ様は休んで下さって結構ですよ」
「二人で居ても良いでしょ?」
「それはそうですがまた噂になりますよ。ネメッカ様の評判も落ちます」
「次の男はいないんだから好きな格好をしてもらうぞ。着る意味がある服かは微妙だけどな的な高圧でも構いませんよ」
「ネメッカ様」
「分かってますよ。ここでは手を繋ぐ程度で我慢します」
ユッミルはこの状況で見落とせないので必死に注視するが魔族に動きは無い。やはり少し不活発らしい。
「ユッミル、そこの女は温かそうで抱くと気持ちよさそうですね」
「ネメッカ様の場合は物怖じしてしまいますから服を着てて欲しいですね」
「つまり、私が脱げば抵抗しないという事ですね」
「そういう事ではないです」
「ユッミルこそ言葉には気を付けて下さいね」
ネメッカはシウ以外に隠してユッミルに抱き付いて頬に口づけをしたり、腰に手を回す様に仕向ける。任務を終えるとユッミルに胸を抱かせて光の塔に引き上げる。
「ユッミル様」
イーサは二人を出迎えると不満げである。
「しまった」
ユッミルはネメッカの胸から手を放す。
「ユッミル」
「えっと」
「そんなに胸を抱きたいならここの女のも抱けばいいでしょ」
「イーサさん、そういう機会はありませんしイーサさんもとりあえず目的は達しているでしょう」
「いえ、あなたが様々な女を好むという理解が広がる必要があります」
「イーサさん、何を言っているんですか」
「それだけでなく普段から仲良くしておくべきです」
「体を触る必要は無い」
「であれば何をするんです?ネメッカ様と違い、団の運営の話はできませんし一緒に家事をする訳にもいかないでしょう」
「それはそうですが」
「納得いただけた様なので準備します。ネメッカ様と共に執務室か主導部屋でお待ち下さい」
「あっ」
ユッミルはネメッカに連れられて執務室に向かう。ネメッカが流れを戻してユッミルに触らせながらゆっくり話をする。
「準備ができました。二人は今日の夜の見張り番で仮眠の予定ですからユッミル様が寝かせて下さい。で、寝る前に好きな様に体で遊んで嫌がった女は次からはしないという事で良いですよ。そんな事にはならないと思いますけど」
「分かりました」
しばらくしてユッミルは帰ってくる。
「大丈夫でしたよね?」
「まあ僕も少し寝ます」
ユッミルが目を覚ますとネメッカに抱かれている。その後、夕食を三人で食べる。
「帰ります」
「もう遅いですし」
「いえ、今日は帰ります」
「そこまで重要な用事ですか?」
「昼にも話しましたがその件でのキッシャノさんの連絡があるかもしれないので」
「分かりました」
ユッミルは帰宅する。テーファは家に戻ったらしい。
「ユッミル、今日は誰と入るの?」
「そうね、気になるわね」
「今日はシャーユだな。シウとはしばらく入れないけど我慢だね」
「その言い草が本当なら嬉しいわね」
ユッミルは宣言通りシャーユの面倒を見る。
翌朝、ユッミルは早い時間にシャーユに起こされる。ネメッカにとりあえずミルクを渡せと言われていたのでシャーユを抱えながら幻覚を投影して火をつけてお湯を沸かして火元からさっさと離れてシャーユをあやし直す。そうしているとメシャーナが起きてくる。
「ユッミル、ありがとう」
「私のをあげても良いけど折角だし待とうか」
「シャーユはすぐ飲みたいだろう」
「けどすぐ沸くでしょ」
「そうだな」
「さっさと混ぜて来て」
ユッミルは急いでお湯を取って冷まし始める。メシャーナはシャーユを抱いて近づく。少しだけ待って乾乳を混ぜる。
「シャーユ、そこのを飲めばいいんだぞ?」
「シャー、ノ?」
「言葉を教えたければ夫婦が会話すれば良いんじゃないかしら?」
「シウさん」
「おはよう、ユッミル」
「おはようございます」
「私じゃなくて母親との会話よ」
「そんな改めて言われても」
「ユッミル、私の事好き?」
「メシャ、食べ物を食べておいしいとかシャーユの良い所を褒めるとかそういうのにしておけよ」
「だったらやっぱりユッミルが私の乳を飲んで嬉しそうにおいしいって言えば良いよ。そうすればシャーユに仲間意識が生まれるし」
「シャー、じゃなくメシャ、シャーユの仲間じゃなく父親だろ」
「父親は手本になればいい。どっちにしても乳を吸うのは必要」
「そろそろミルク、熱い」
「ほら夫婦の会話だよ。ユッミルは私をどう思う?」
「その話はやめよう。それより朝食にしよう」
「シャーユのお腹がすくよ」
「なら素直に乳をあげればいい」
「そう思うなら私を脱がせてシャーユと抱いて強引にすればいい」
「少し冷めてきたし混ぜるか。」
ユッミルは冷めたお湯の注がれたコップに乾乳を入れて混ぜる。その後、哺乳瓶を用意して少し待って移し替える。シャーユを座りながら片手で抱き寄せて飲ませる。
「メシャーナは僕より力が強いから余裕そうだね」
「そう言えばリッネさんには殺されるとか怯えてるけど私には怯えないの?」
「まあメシャなら取っ組み合いで若干押されはするけど離れて幻術使えば良いしそれに小さいから手足を絡めたら止められるしね」
「いつも私を抱いて寝てるのはそういう事?」
「まさか」
「そうだね。手足を掴まれたら何もできないね。つまり、ユッミルは私なんかいつでも襲えるから襲わないのね」
「シャーユ、おいしい?」
「シャー?」
「おいしい?」
「オーシー?」
「そうそう」
「ソーソー」
ユッミルは哺乳瓶を差し出し直す。
「駄目だ、駄目だ。ご飯が先」
ユッミルはシャーユの息継ぎを見計らって抱きかかえてさっさと朝食の席に着くと再び哺乳瓶を差し出す。
「ユッミルのご飯は私のミルクで良いよね?」
「それはシャーユ専用だよ」
「二人目は無いって事?」
「その可能性が高…じゃなくてまあ違う父親との子は吸うだろう」
「まだそんな事言ってるの?呆れた。まあ良いよ。好きに思えば良い」
ユッミルはシャーユに少し待ってもらいながら朝食を食べる。メシャーナは先に食べ終えた様なのでシャーユを預ける。
「ユッミル、ありがとう。私の子の面倒をちゃんと見てくれるし好き。ユッミルもシャーユと離れたくないよね?それともシャーユと私を引き離すの?」
「なっ」
「一本取られたわね、ユッミル」
「いえ、シャーユともいつかは別れなければならない。それが早まるだけです。メシャに好きな子ができたら仕方ないです」
「心配しなくても他の男には行かないよ。急がないけど二人目も作ろうね」
「絶対に二年は作らないよ。ネメッカ様より早く二番目は絶対に駄目」
「分かってる。夫の人間関係を壊す不出来な妻にはならないよ」
「メシャ、その浅知恵何処で覚えた?」
「お母さんは頑張るよ」
「まあ良い」
ユッミルは朝食を終える。同時位にミーハやフーニャも起きてくる。しばらくするとリュッサがやってくる。その後、オーネも帰ってくる。
4節 術の整理
ユッミルはレヒーハの掃除を手伝いながら談笑している。ミーハとフーニャにシウと適当に話してもいる。昼食を終えるとユッミルはリュッサの膝で眠っていく。夕食の席にはシウを制してフーニャとミーハを両隣に据える。
「フーニャさんは期待されていないので頑張らなくて良いですからね」
「それは幼児体型だからか?」
「そういう事では無く術の訓練の話でです」
「つまり、そっちは頑張れと」
「知りません。そんな事をすれば私が困るのでやめて下さい。知らない女性も来るかもしれないので」
「知らない女性に手を出さない為に私を先に抱くのはどうだ?」
「分かりました、我慢できなくなったらそうしますよ」
「私じゃ駄目なの?」
「ミーハは目立つし」
「水術師は目立つ存在だよ」
「けど9人しかいないなら皆目立つし一番は唯一の男のユッミルよ」
「そうか、ユッミル殿は8人の女性を順に襲うんだな」
「フーニャ、君やミーハはともかくシェンハ様を襲ったら相打ち必死のお手合わせが始まる。そんな事は断固しない。リッネ様に不貞だと思われるのも大問題」
「分かった。要は私に手は出したいが今回は事情で無理だと言って言い訳を作っているのか。悲しいが我慢するよ」
「もうそれで良いですよ。あなたに限らずネメッカ様相手ですら毎日はしませんよ」
「だが夜に一緒に寝れば毎夜だろう?」
「毎夜では無いですよ」
「そういう事にしておこう。明日からは私と寝るしばれない様にやっても良いぞ」
「そんな事はしませんが今日は何もせずに寝ませんか?ミーハとは風呂だけだけど」
「断る理由は無い」
ユッミルはミーハとフーニャと風呂に入り、シウとフーニャを両脇で寝る。
翌朝、リッネが迎えに来る。両脇にはレミーカとシーリュノがいる。
「来たよ、ユッミル」
「久しぶりだね。ユッミルさん」
「レミーカさん、久しぶりです。忙しかったので中々機会が無くて」
「ああ、それはテーファみたいな可憐で魅力的な子に勝てないのは分かっていたよ」
「ご冗談を。本来、土の屈指の切り込み隊長を塩漬け等にするこちらが愚かなのですよ」
「ユッミル殿は口が上手い。だが土の気まぐれ博士のフーニャ君に気に入られてしまえば私が不要になるのも致し方無い」
「ユッミル殿、辞退しても良いか?」
「困りますよ。まあシウさんに代わりを頼む手はありますけど」
「ユッミル君、主宰として付き合いの長い私は無視?それに名目上は側室よ」
「ですが名目上の側室は多いですから」
「ユッミル殿、二人目をくれるなら良しとする」
「フーニャさん、こんな所で。それに一人目もまだなのに」
「いや、一人目は来た気がする。だからしばらくはいい」
「私は先に確定してるけど。早く行くわよ」
集会所の森とは反対側でシェンハも含めた三人と落ち合う。いたのはシェンハに加えてエッヒネとユッホであった。
「随分、知り合いばかりですね」
「エッヒネには事情を話して頼んで。で、木の団に乗り込んで厳しい鍛錬をしたい木の術師を募ったらこの子が来たわ」
「まあ問題は無いですけど」
「ああ、君以外全員女性だし新しい可愛い子を待ってたのね」
「シーリュノ様、そんな事を言うのはやめて下さい」
「そうね、後にすべきよね。行きましょう」
一行は当然の様に霊族の泉の方に向かう。
「ところでユッミルさん、私、子供を授かったのでお腹を撫でてくれません?」
「エッヒネ様、確かに見知らぬ人の目はありませんけど」
「深い意味は無いと思いますけど違いますか?」
「分かりましたよ」
ユッミルはエッヒネの相応に膨らんだ腹を撫でる。
「この人がお父さんだったらいいね」
「なっ。やはり脅し…」
「私はユッミル君が求婚するなら受けるけど?」
「しません。できません」
「年だから?」
「違います。困りますよ」
「けどもうリッネ様に絡まれているしね」
「もうネメッカ様がいます。エッヒネ様の様な思慮深い方の優しさに甘えて側室というのは気が引けます」
「ありがとう、ユッミル」
「ユッミル、逃したわね。良い女を。私は逃げないから良かったね」
「これで良いんだよ。とにかく今はリッネの理不尽に耐え抜く事だ」
「ユッミル、聞こえたのだけど」
「冗談ですよ」
「そもそも君は私と同格の術師だ。今回しんどいのはミーハ君とレミーカ君にユッホさんだろう」
「今回の目的は先に言っておくが一つは確かに君に私の類似の術を使わせる事だがもう一つは君の側近の強化だよ」
「えっ」
ミーハは少し驚いた表情をしている。
「それは」
「君は優しいからな」
「確かにそれはできているとは言えませんが」
「私はエッヒネ程ではないけど妊婦なのよ?」
「その為のシーリュノさんだよ。別に限界まで魔力を使うのが今回の目的ではない」
「まあ良いわ」
霊族の領域に入ると霊族を軽く消しながら少しだけ奥に入って魔族領の方へ北上していく。
「じゃあ一日目は皆さんの術を順に披露してもらいます」
「まあ良いけど隠すものでも無いし」
「但し、雷射が披露されたら月射は使えない等属性だけが違う術は一人しか披露できません。それと披露された術の自属性版を披露できなければそれも駄目です」
「駄目?」
「そうですね。一回失敗する度にユッミル様に体を触られる事にしましょう。ユッミル様は服を少しずつ脱いでもらいます」
「リッネ、聞いてないわよ」
「シェンハさん、あなたはそんなに術の種類が少ないんですか?私やユッミルよりも」
「良いわよ」
「というか僕だけ罰が重すぎないか?」
「冗談ですよ。私が触りますね。まあユッミル様が主賓ですから」
「それにしても流石シーリュノ様、相当の自信がおありなんですね」
「それもそうだけどユッミル君が触るってのは別に悪い条件でもない気がするのよね。それは私だけじゃないと思うし」
「ありがとうございます。で、順番は?」
「最初は私で。次はユッミル。その次はユッミルの連れ二人。次はシェンハでシェンハの連れ。その後が私の連れだ。二回目以降は二人のうち一人を私達リーダーが代行しても構わない。パスを三度したら脱落だよ」
「私はパスだ。さあユッミル君、触りたまえ」
「リッネ様、ふざけないで下さい。罰が必要の様ですね」
ユッミルは罰を与える。
「まあユッミルはここ最近、女の体ばかり触ってるし色々分かってるよね」
「なるほど、ああいう目に会うのね」
「全く問題無い。続ける」
「ユッミル君、私には優しくね」
「わざと失敗しない限り、厳しくはしません」
「では雷射を使いますね」
「なら的は私が」
シーリュノは多数の細い茎を地面から生やす。ユッミルは軽く雷射していく。次にミーハ、フーニャも撃っていく。エッヒネも難なく撃つ。
「あの、木はそういう術は無いし距離も圧倒的に短くて無理ですから。その、」
ユッホはユッミルに寄っていく。
「まずは他の人を終えてからで」
シェンハに至っては長い氷柱を生成していく。シーリュノも実戦的ではないが長い蔦を生成する。
「ユッホはできないの?」
「一個くらいならできますがああやって連射はできません」
「とりあえずやってみて」
短めで細い蔦が地面に落ちる。
「できてるね」
「ユッミル様、駄目ですよ」
「ユッホ、ごめんね」
「大丈夫です」
ユッミルはユッホの体を触っていく。
「リッネ様、ユッホ様に嫌われたらどうしてくれるんですか?これで罰を受けるのは私でしょう」
「大丈夫だ」
「まあ良いです」
「ではユッミルの連れだな」
「的は一つで良いわ」
「どうぞ」
「水挟み」
ミーハは水の帯を左右に弧を描いて標的にぶつける。これは辛うじて全員真似る。フーニャ投げナイフで曲軌を使う。他もシーリュノの用意した的を補足していく。シェンハは的は用意させずに盾を出す。全員難なく真似る。
「次は私ですね。癒しの陣」
「ちょっと回復だよね?それ」
「僕は辛うじてできるけどそれ他属性で味方にやったら攻撃だよ」
「問題無いわ。まずは誰から?」
「私ね」
「エッヒネさん、分かってると思うけど皆から少し離れて」
エッヒネは少し離れた所に立つ。
シーリュノはエッヒネを囲う様に植物を一気に生やす。次の瞬間にはエッヒネは火に包まれる。
「エッヒネ様は凄いですね。怒らせたら大やけどですね」
「言う事聞いてくれるの?」
「それは…」
「冗談よ」
「さあ次は私だ」
リッネもシーリュノの植物に囲まれると放出系を使う。植物は枯れていく。
「これはかなり消耗するね」
「私は最後にするわ」
「えっと、光の放出では駄目ですか?」
「できれば雷撃が良いね」
「でしたらシェンハさん防御を願います」
「では行くわよ」
「構いません」
シーリュノはユッミルを植物で囲いに行く。一瞬雷光が走る。その残像は空に向かう。
「早い」
植物の表面は黒く焼け焦げ、倒れている。
「ユッミル、随分強力だな」
「そうですか?」
「ああ」
「ですけど走りながらは使えない。それに一瞬ですけど動けなくなる」
「だが役に立つ事もあるかもしれないぞ」
「だと良いですね」
「私は無理ね。それに触られても良いし」
「じゃあ僕が代わろう」
ユッミルは発光する。
「まあ良いだろう」
「触ってもいいって言ってるのに」
「ミーハ君、次は私の番だよ。シェンハ君、また防御を頼む」
フーニャは土の刃で全ての蔦を切り裂く。
「まあユッミル君に触ってもらっても良かったが長い目で見ればこっちの方が良いだろう」
「はい、さっさと戻って下さい」
「なっ。そっけないな」
レミーカも似た様なものだがフーニャほどの密度は無い。シェンハは空間を凍らせるような強力な術を披露する。最後にシーリュノが回復していく。レミーカは遠隔の短距離攻撃を使う。これは全員難なくこなす。
「では私だな。流石に連続パスはしないぞ。残念だったな、ユッミル。シーリュノ、遠隔の多体術だから的を頼む」
リッネ、ユッミル、フーニャは難なくこなす。
「水術はまず水の集積からなのだけど遠くだとさっきみたいに少しならできるけど範囲は無理。流石にルールだししっかりやって」
「まずは五本の水柱をやってみよう」
「分かった」
水柱は三本だ。ユッミルはミーハの頭を撫でる。
「ユッミルさん、失敗は失敗」
「えっと、何か手慣れてない?」
「ユッミル君は家で何をしてるのかしら?」
「もう次よ、次」
何順かするとユッホとミーハにレミーカは脱落していく。
「あの、これは永久に終わらないのでは?」
「ユッミル殿、難しい術でエッヒネ様にお仕置きしないのか?シェンハもいずれはできるぞ」
「あなたもでしょう」
「いやもう私は一度やって新鮮味が無いだろう」
「降参したらどうなるんですか?」
「降参しようがユッミルが失敗した人の体で遊ぶのは変わらない。もっとも本当の意味でそれが罰になってるのはシェンハだけかもしれないが」
「シーリュノ様にも罰ですよ」
「そんな事ないわ。いつでもどうぞ。そもそもシェンハさんとエッヒネ様以外は名目上はユッミル様の側室。触られたくない男の側室にはならないわね」
「では行きますね」
ユッミルは8本の光柱をそこそこの時間自在に動かす。
「残念ね。ユッミル」
エッヒネは五本の火柱を動かして見せる。
「エッヒネ様の体を楽しみにしてたのに残念です」
「けどずっとは耐えれないから良かったわね」
シーリュノは失敗する。
「シーリュノ様もまあまあですね。それに大して思わないんですね」
「そうね。ユッミルさんは可愛らしいもの。けど本当に抱かれたらきっと私も女になるから驚かないでね」
「そんな事を言われても困ります」
「ユッミル、私はシーリュノ無しでは無理だしパスするよ。触ってくれ」
「いえ、可能でしょう。私の雷雲を弱め続けて下さい」
リッネは若干遅れたものの、ユッミルの生成した雷雲を弱めていく。シェンハは2本の氷柱を長く生成する。
「シェンハ、失敗ね」
「じゃあ次はフーニャさんですね」
「無理だ」
「では私が代わった扱いですね」
「ユッミル」
「そうよ。分かってて受けた。触りなさい」
「リッネ様。シェンハさんの機嫌を損ねてまで触りたくないのですが」
「ならシェンハがユッミル好きよと言いながら抱き締めるのね」
「ユッミル、触りなさい。下半身よ。服を捲って直接でも構わないわ。この徹底的な屈辱を味わわない為に強くなる」
「エッヒネ様」
「ユッミル、愛してるわ」
「エッヒネ?」
「何その顔。次はパスだから罰を先に実行しただけよ」
「もう離れて良いですよ」
「次は触っていいわよ」
ユッミルはシェンハの後ろに立つ。ユッミルはゆっくり触っていく。シェンハは顔を僅かに赤らめているがユッミルには見えない。ただ、下半身は少し腰が引けている感じでそれはユッミルにも伝わる。
「くっ。やはり恥ず…べき事ね」
「もう二回味わうかもしれませんけどね」
「ユッミル、次は私だが考えが纏まっていない。存分に触るがいい」
ユッミルはフーニャの両胸を両手で覆ってすぐ手を放す。
「では次はシェンハ様ですね」
「こらっ。触る量が少ないだろう。リッネ君も注意しないのか」
「ユッミル様が後で罰すると思うので次に行きましょう」
シェンハは多数の小さな氷の盾を出す
エッヒネはこなすがシーリュノは無理だったのでリッネが代行する。ユッミルは辛うじて成功するがフーニャはできない。
「フーニャさん、あまり動かないで下さいね」
「胸の小さい私はやはりそち…」
「二回分ですね」
「ユッミル」
「ユッミル君、意外ね」
「ユッミル、やりすぎよ」
「ユッミルさん、私にはそれをしてくれないのかい?」
「リッネ様はもう失敗する気ありませんよね?」
「じゃあ私ね。連射ね。真似れなったらユッミルを触るのは私ね」
エッヒネは三方向に火の射撃を五連続で打ち込む。リッネはこなす。
「私は無理。ユッミル、来なさい」
「行きます」
「ああ、何故そっちなのですか」
「触り心地が良いですね。シーリュノ様のお肌は凄いです」
「まあ高位の木の術師はそうよ。でもであればこそ全身隈なく触ればいいのにこんな機会中々無いわよ」
「いえ、触りたいのはやまやまなのですがあなたやユッホさんにミーハ、フーニャは甘かったり、優しいので大丈夫ですけどここであなたのまで触ってしまうと他の人達のも触る流れになります。そうなるとどうしても許してくれそうにない人やネメッカ様と別れて自分と付き合わないと恨まれる人達なので」
「付き合えばそれを許してくれる当てがあるのね」
「まあシェンハ様はどうしても許してはくれないでしょうけど」
「はあ?そうね、三回目は今度こそ下半身よ。さっきは気を遣ったわね」
「いえいえ、シェンハ様に恨まれたくないので私自身に気を遣っただけですよ」
リッネ、ユッミル、フーニャはこなす。シェンハも辛うじてやってのける。
「次は私だな。さあ全員一つ減らすがいい」
リッネは球状に月の術を形成する月球を発動する。フーニャができない様なのでユッミルが代わりになるが全員こなす。
「意外と優秀だな」
「確かにそろそろ展開は早くしたいですね。雷追」
無数の雷撃が螺旋に近い軌道で前進していく。フーニャは辛うじて真似る。シェンハは飛距離が短い。エッヒネは楽々こなす。シーリュノもこなす。
「やはり勝ちはユッミルに譲ろうか。これは無理だ」
ではシェンハ様とリッネ様ですね。
「珍しい組み合わせだし並んで同時だな。ユッミル、気が済むまでするといい」
「良いわ。きっちり罰である必要があるしね」
「行きますね」
「嫌な予感がしますね」
「全員女性ではありますけどシェンハ様もいますから大丈夫ですよ」
シェンハとリッネは押し倒されてユッミルは覆い被さっている。
「くっ、屈辱。負けたらこんなに失うのね。肝に銘じないといけないわ」
「ユッミル、言葉にはならないな」
「しまった。お二人が良い反応だったのでやりすぎました」
「私は構わない。こうなる事も織り込み済みだ」
リッネはユッミルを軽く抱く。
「ええ、女の弱さを思い出させてくれて感謝する面もあるわ」
「シェンハ様、申し訳ないです」
「良いのよ。私は良い女だからそれを自由にして良いって言えばこうなるわよね。二度とないんだし。ただ、これ以上は無理。屈服よ」
「ユッミル殿、私にはそこまでする魅力が無いというのか」
「ユッミルはたまにああなる。まあ私の時はもっとしっかりしてるけど」
「私にもあれ位してくれて構いません。罰は改めて後日」
エッヒネは誰に返事するか迷って見回すユッミルを後ろから抱き寄せる。
「次の子を作る為なら良いわよ」
エッヒネは囁く。
「エッヒネさんは火の主宰ですからね、この先も。僕ではどうにも」
ユッミルは囁き返す。
少し遅めの昼を食べるとミーハとフーニャが左右に陣取り、リッネが正面に立つ。この時間は自由行動である。ただ、三人以外は二人以上での行動という条件だ。ユッホは背中に乗ってくる。
「ユッミル、魔族に最も有効な属性は何だ?光と月ですね」
「そうだ、それでその光と月に同時にまたとない優秀な術師がいる。何か感じないか?」
「優秀な光の術師とは誰です?リッネ様は何故か使いませんでしたが万光矢を使える光の術師はいませんよ」
「知ってたのか。なら話は早い」
「無理ですよ」
「今は無理でいいが小規模の千光矢を放てば今回は満足する」
「分かっていますよ。この魔族の数からしていくら雷装剣でも奥の手前では対処が間に合わない。だからリッネ様は万光矢を撃たせたいのでしょう」
「万光矢を撃つなら一晩私を好きにして良い」
「あの、流石に魔族との競い合いにそういうのは持ち込まないで下さい」
「そうだな。それに私は君に強引に迫られたら断れる自信が無い」
「頑張りますから」
「そうか。だが試しすらしない様だが」
「僕は可能性が低い内から試す事はしないんです」
「低いとは思わないが」
「低いんです。これ以上言うと帰りますよ」
「まあ良い。私も良い手順を踏んでるとは言えないからな。ここは退こう」
夕方になるとエッヒネが用意した夕食を食べる。
「これは良いですけど朝はどうするんですか?」
「それなら残りをシェンハが凍らせてエッヒネが解凍する。というか予めパンを氷結してもらっている。シェンハ位になるとしばらく持つからね。溶けかけても再度凍らせればいい」
「寝てる間はどうするんですか?」
「その程度の時間なら問題無い。エッヒネさんに解凍して持っててもらう」
「まあ任せます」
「それよりもこの後は水浴びだよ。まあエッヒネに温めてもらうからほぼ風呂だが」
「えっと、まあ好きにして下さい」
「何を言ってるんだ?君は見張りだ。ついでに足だけでもつけて手も軽く流すと良い」
「は?」
「いずれにしても君の目からは逃げられないのだから隠しても無駄だろう」
「それはそうですが」
「なら決まりだ」
「シェンハ、お前は入るな。入ったら見るぞ。じっくり見るぞ。だから入るな。横で一緒に足だけつけてろ」
「分かったわよ」
「という訳で二人で見張りをしますけどリッネ様も最低限は身に着けて下さいね。体裁上」
「それって私達はそのままでいいって事?」
「僕がシーリュノ様に意見する権利はありません」
全員で荷物込みで泉に向かう。
「私も今日は遠慮するよ。明日は入るかもしれないが」
レミーカもユッミルの隣に座る。一方でミーハはさっさと脱いでしまう。
「ユッミル、服預かっててね」
ミーハは早くも温かい泉の水を身にまとって遊んでいる。
「私も預ける」
「分かりました」
「しまった。このままだと服を返して欲しければ服と引き換えに色々要求されてしまう」
「フーニャさん、良いから入ってきて下さい」
ユッミルはエッヒネが脱ぐ姿を歪曲視野で見ている。
「つまらない男ね」
「見なければ見ないでそれも天邪鬼だろう。こんな状況をリッネに作られた時点でどう転んでも下らない男だよ」
「まあそれはそうだけど」
「シーリュノ様は無視だけどね」
「もう知らないわよ」
「だろうね」
ユッミルは一度視野を広げるが特に危険は見えない。ユッミルはゆっくり顔を洗っていく。
「ユッミルは入らないの?」
ミーハはわざとらしく近くに立っている。
「今日はね」
「まあ私の体は見飽きてるよね。フーニャもだしユッホのも見た事ある。なら二人の主宰か。けどエッヒネって私と同じで腹出てるよね。いったい誰の子なのかしら?」
「本人に聞けばいい」
「ふーん。ユッミルは本当にシーリュノには興味無いんだね」
「ユッホやソヨッハは優しくていい子だから良いが木の術師とは基本的に付き合わない方が良い」
「ユッミルさん、それは酷いわね」
ユッミルはシーリュノの体に光を振りかける。
「シーリュノ様のお体は眩しすぎて直視できませんね」
「ちょっと、ユッミル。何してるの?」
「木の術師は危険だ。昼のあれもシーリュノの仕業かもしれないぞ」
「まさか」
「とにかくシーリュノが近くにいる状況ではまずい」
「酷いわね。私を毒虫みたいに言って」
「そんな事は無いですけどシーリュノ様は能天気なので巻き込まれたくないですね」
「木の主宰に向かって。もう少しゆったりとした気分になった方が良いわね」
「シーリュノ様、ネメッカ様に報告しても良いのですか?」
「分かりましたよ」
しばらくしてユッホやフーニャも寄ってくる。しばらくゆったり話をすると上がる事にする。ユッミルはフーニャとユッホを隣にして寝る様に促される。少し離れてシェンハも先に寝るらしい。
ユッミルが目を覚ますとまだ夜は開けていない。ミーハとリッネは寝ているしフーニャとユッホも寝ている。流石にシェンハは起きている。シーリュノは寝る気配が無い。
「私も寝ますね」
レミーカは寝床に向かう。
「ユッミル、少しいい?」
エッヒネはユッミルを押し倒す。
「どうしたんですか?」
「寝るまで横に居て」
「まあそれ位なら」
程なくエッヒネは寝る。ユッミルはシェンハとシーリュノと言葉を交わすとユッホを起こしに行く。ユッホはユッミルの隣でゆったり話していく。しばらくしてユッミルやシェンハは朝食を先に済ませる。ユッミルは小規模な多数の光の矢を撃ってみる等いくつか使ってから戻る。
しばらくしてシーリュノやリッネが起きてくる。
「ユッミル、何故添い寝しつつ、触ってこない?」
「あなたは女ではありませんし他の子にもしてませんよ」
「君は私が怖いと言いつつ機嫌を取りには来ないんだな」
「機嫌の取り方が分かれば苦労しません」
「そうだな。君はネメッカの機嫌を損ねたくないんだったな。だがここでの事は何も言わないぞ」
「他にも人はいますしそういう事ではありません」
「まあいい。我々が食事をしたら二日目の訓練だ」
ユッミル達は北に向かう。
「リッネ様、まさかとは思いますが」
「この辺りで目ぼしい試し撃ちの相手はここしかいないだろう」
「今日のルールは昨日負けた順にここから魔族相手に術を撃って討伐数を競う。魔石は全てユッミルが回収するから安心してくれ」
「待て。それはどういう」
「シェンハと私の支援の下、ユッミルには全ての魔石を回収してもらう。ユッミルが回収できない程遠くの魔族を仕留めた人はユッミルが強制的に抱き締めるので嫌な人は遠くの敵を倒さないよう。最下位の人間は今夜の泉に入る際の着替えをユッミルがするという事で」
「リッネ様」
「仕方ない。全員が五周で10体倒せば着替えさせられるのは私にしよう」
「はい、もうそれで良いです」
「諦めが良いのは良い事だと思うぞ。当然ながら五周とも全て違う術を使う事がルールだ。一周毎にユッミルが魔石を回収するから姿を隠したユッミルを攻撃しない自信があるなら加勢しても構わない。シェンハは動きを封じるだけだし私は走ったり攻撃にはやる魔族に直接行く。後、ユッミルは伝音が使えるらしいから指示してくれるだろう」
ユッミルは雷装剣を構えながら全員の姿を消している。左右にはリッネとシェンハが構えている。今回の課題は明らかに遠距離攻撃だ。最初はミーハだが次々に入れ代わり立ち代わりで攻撃していく事になっている。一撃一瞬で倒せなければユッミルが迷わず処断するというルールだ。昨日の勝負の脱落順なのでミーハ、ユッホ、レミーカと順に続いて最後はエッヒネである。
「ユッミル、私が元の位置に戻ったら号令お願いね」
リッネは近づいてきて囁く。しばらくしてリッネが位置に付いたのでユッホにも少し聞こえる程度に伝音する。
ミーハは少し溜めて四方向に二連撃の水射をする。三体倒す。倒れなかった一体はユッミルが雷射で仕留める。次はユッホであり、遠隔の蔦攻撃で三体倒す。レミーカも普通の土射で五体倒す。他の三人は強力な術で十体近く狩っていく。特にエッヒネは散乱型攻撃で固まっていた場所に攻撃して効率よく狩る。一周終えると六人は少し下がってユッミルは魔石を拾う。二周目はミーハが一瞬で中距離に水を溜めこんで放出、六体ほど狩っていく。ユッホは蔦で切り裂く苦肉の攻撃だったが他は上々で特にエッヒネは5連続八方向の弾幕で一気に制圧してしまう。ユッミルは魔石を拾ってくる。
「リッネさん、もう良いんじゃないかしら?申し訳無いけどもう魔族はこの辺りにはいないしそれにユッホさんも厳しそうだし」
「場所を変えよう。ある程度当たりはつけてある」
「そこまでして続ける必要はあるのかしら?」
「そうですね。少し下がって休憩しましょう。その間に状況を見てきます」
「安全な場所なの?」
「エッヒネ様にとっては安全でしょう。ユッミルの同行者はユッミルに守ってもらいますし私もレミーカさんの事は守りつつ援護しますし危ないなら全員で引きます。その判断はユッミルに任せて良い」
「そもそもこの訓練はユッミルの為でしょ。今、やってるのは私達よね?」
「エッヒネ様、昨日しましたよね?他属性術の自属性化。あなた方はユッミル様に参考材料を与えているんですよ」
「まあ良いわ」
「それより魔族を引き寄せる方法とか無いんですか?」
「生肉とかかな。そもそも魔族は匂いだしね」
「匂いを術で出せればいいのにね」
「そんな事ができれば人類の勝ちは確定だよ」
「そうでしたね」
「ああ、風術なら多少はできるんだがな」
「風術は魔族を溶かす様に消す。けどそれは中級以上の術。けど下級の風術でも匂いを乗せられるから風術師は貴重」
「とにかく魔族が少ないですから早めに切り上げましょう」
「まあ待っていてくれ。もう少しだけ引いてユッミルとシェンハが警戒しておいてくれ」
しばらくしてリッネは両手に色々抱えて戻ってくる。
「ユッミル、雷装剣でこの肉を薄く切ってくれ」
リッネは獣肉片を掲げている。
「そこまで薄くはできませんが」
「二枚だな」
ユッミルは二枚の肉片をリッネに渡す。
「では行こうか。流石にエッヒネはもう良い。後ろを警戒していてくれ」
リッネは獣肉と弁当をエッヒネに持たせて歩いていく。
「リッネ様、お待ち下さい」
「何か?」
「まさか続行するのですか?」
「先程と同じ環境を整える」
「あっ」
「そういう事だ」
ユッミル達がゆっくり元の場所に向かうと魔族は戻っていた。
「リッネ様、まあ良いでしょう。私は荷物持ちです」
「とはいえ時間は押しているから後二周だ」
「あの、その点でいえばユッホも限界そうなので撤収で良いよね?」
「だがそれだとお着替えはユッホで確定だが」
「分かりました。余計な事を言いました」
「あの、やはり私は遠隔系は苦手ですので撤退します。ユッミルさんの支援をしておきます」
「ユッホが良いなら良いけど」
「残念だがまあ良い」
全員配置につき、またユッミルが伝音で合図して再開する。ミーハは一個のみとは言え散乱系水術で一気に八体ほど狩ってしまう。フーニャは相手を土で包む様に押し潰す包土を使う。レミーカは土人形を魔族に突っ込ませて三体ほど狩っていく。
「ユッミル殿、私はもう10体以上狩ってしまったが着替えさせたいなら構わないぞ」
「いえいえ、フーニャさんのお着替えを手伝いたいのはやまやまですがルールですから」
「手伝いたいのならやりたまえ」
シーリュノも4体ほど狩っていく。ユッミルは下級魔石を回収に行く。リッネも近づいて援護する。リッネは汚れたマットを変える様に肉を入れ替える。
「匂いですか」
「そうだな」
位置に着くと魔族は少し戻ったが明らかに少ない。
「ユッミル、やるぞ」
ユッミルはミーハに合図する。ミーハは四方に一気に水射するが二体のみ仕留める。他の四人も数は減るが相応に倒す。
「では一度引き上げるぞ」
「ですけど残念です。シーリュノ様やエッヒネ様に触れる機会なんてそうそうありませんから」
シーリュノの姿を一瞬見失う。
「ユッミル君は私を触る貴重な機会が欲しいんだよね?」
シーリュノはユッミルの懐に入り、ユッミルにもたれている。
「シーリュノ様、私に恥をかかせたりはしませんよね?」
「けど町では私に手を出せないならあなたも私に触れる機会は少なそうね」
「ユッミル、私も別に触る位なら好きにして良いわよ」
「エッヒネさんは何を言っているんですか?」
「私は子供ができそうだけど男はいないからユッミルさんに触ってもらって興味を持ってもらう事を拒む理由は無いわ」
「では遠慮なく」
ユッミルはエッヒネに抱き付く。
「ユッミル様、それだと子供ですよ」
「シーリュノ様に狙われたので怖いのです」
「ユッミルさん、それはどういう意味ですか?」
「勝手に自分の気分が変わるのは怖いですよ」
「分かりました。何もしませんから親愛の抱擁を願います」
ユッミルは要求に従う。
泉の畔に引き上げて昼食を食べる。ユッミルはフーニャとミーハにユッホと並んでいる。リッネはさっさと食べ、シェンハは視界の良い草原側で一人で食べている。エッヒネやシーリュノは二人やユッミルの状況を時折確認しながら食べている。ユッミルも広く警戒してはいるが特に危ない気配は無い。
「ここの辺りは冷たいですけど少し寝る分には良いかも。けどユッミルさんに抱かれながら寝る方が良いですけど」
「僕は構わないけどね」
「なら私にもしてもらおうか」
「とこういう事を言う人がいるので今日は無理ですね」
「くっ。魔族を狩れなければ強制的に体を触らせてやれたのに。だがユッミルは術を使えない女の扱いが悪い」
「フーニャさん、そんな事を言い出せばシェンハ様の事を必死に口説く筈ですよ」
「諦めが良いだけだろう」
「シーリュノ様やエッヒネ様のご機嫌をとる筈だ」
「だがそれも諦めというか結論が出てるんじゃないか?」
「ならフーニャさんはもっと結論が出てますよ」
「仕方ない。まあここは退こうではないか」
次章は年末ですね。その次の章を年始に終えれそうな程早ければ11月後半ですが。
追記:小幅に話を追加




