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最終話 その2(終)


 あの変な電話を受けた日から僕はおかしくなってしまったみたいだ。

 

 僕はその人の死期がわかる。

 といってもだいたいのだが。

 生きている人間の後ろに影が見えるようになった。


 それは通勤に使っていた電車のホームで、日勤の穴埋めに夜勤の僕がシフトで入った病棟で、様々な場所でそんな影が見えるようになっていた。


 なぜそれが人の死期だとわかったか、というと。

 僕は駅のホームから飛び込み自殺をした人を見たからだ。

 その人は影に包まれて顔も見えない真っ黒な状態だった。


 そして、僕が乗るはずの電車が来た時、おもむろに電車に飛び込んだのだ。


 僕はその経験で、この影が人の死期を表している事を確信した。


 それはあの職場を離れた今でも時々見えるが、自分の死期を知って喜ぶ人間は世の中には居ないだろうと思い、口に出すことはない。

 

 他にも、色々あったが本題はこれではなく、例の電話の件だ。


 あの日から1か月おきに、僕の元へ○○ファイナンスからのSあての電話は来ていた。


 それも、もう3か月目になろうとしていたある日、僕はその○○ファイナンスからの電話だと確信を持って電話に出た。

 ちなみに、その時の着信画面は非通知拒否設定にしていたのに『非通知』と表示されていた。


「もしもし? またなんとかファイナンスなんだろ? いい加減にしろよ」

「はい。○○ファイナンスです。S様のお電話でしょうか?」


 僕は怒りをあらわにした感じの声で電話に出たのに、電話先のいつもの相手は機械的な声でこう言ってきた。

 僕はそのことにも、自分に関係ない人の電話を受けるのにも、うんざりしてきていたので


「Sはな! 同級生だったけど! 死んだよ!」


 そう電話口に叫んだ。今思うと他の住民に迷惑な大声だったと思う。

 そして、僕は再び電話先の相手の返答を待った。

 どうやら、僕が叫んだことで上司と代わったらしく、ヤ〇ザのような、いかつい男性の声で僕に返事を返して来た。


「あー、おたくSさんじゃないんけ? じゃあだれね?」


 こんな感じのなまりで僕に話しかけてくる電話先の男性。


「それを言う必要ないでしょう? 僕は、Sじゃないです」


 僕がそう言うと電話は切られた。


 その日以降、自宅で寝ていると、深夜に窓やドアを叩かれるようになった。

 僕が住んでいたのは2F建てのアパートの2Fの角部屋だったので、聞き間違えという事はまずない。


 それは、日に日にエスカレートしていき、最終的に部屋の窓が割れるような勢いでドンドンと叩かれていた。

 

 関係あるかは、定かではないが、僕の真下の部屋に住んでいた面識がない大学生らしき男性はこの音が聞こえ始めたと同時期くらいに夜中になると狂ったように叫び声をあげるという事で強制退去させられた。

 

 僕は極力構わない様に努めていたが、さすがに連日ドンドンと窓やドアを深夜に叩かれて寝不足気味だった。

 

 そして寝不足を加速させるかのように、職場でも自宅でも金縛りにあうようになっていた。

 

 金縛りにあって目を開けると、誰かの気配はするのだけど、視界には誰も居なくて、その誰かは僕の耳元で毎回


「お前は35歳で死ぬ」


 そう言って去っていく金縛りだ。


 そんな中、僕がもう限界だと思った出来事が起きた。

 それは件の○○ファイナンスからだった。


 その日も「非通知」となっていたが、この時の僕はそんな事を気にする精神的余裕はなかった。

 むしろ、35歳でどうやって死のうかなとか考えていた。


 電話に出る。


「……もしもし?」

「○○ファイナンスです。S様のお電話ですか?」


 いつもかけてくる女性の声だった。

 僕はいい加減にしろ! と怒る気持ちもこの時は失せていて、静かに


「Sは死んだんだって……」


 と半分泣きながら女性に返事をした。

 女性は僕の返事を聞くといきなり電話先で壊れた様に笑い始めた。


「あはははははははははははあははあははあああっははああああ」


 僕は電話先から流れてくる謎の○○ファイナンスの女性の笑い声を聞き続けた。


「知ってました! 知ってました! 知ってました!」


 何を知っていたんだろう? 笑いをやめて僕に向かってそう言ってきた彼女の続きの言葉を待った。


「あなた! Aさんですよね? 35歳で死ぬ」


 ぞわっと全身に鳥肌が立つ。

 金縛りにあったときの事を僕は誰にも言っていない。

 だって金縛りはほぼ夢みたいなもんだとその時は思っていたから。

 だから電話先の誰かは知らないが、この人が知っているのはおかしい。

 僕はその場でそう判断して、女性に返事をした。


「なにをおかしな事を言ってるんですか? 僕が35歳で死ぬって誰から聞いたんです?」


 すると、電話先の女性はさっきよりも狂ったように笑い始めた。


「あはひゃははやああああやあはあやあひゃはやあやああ」


 そして、ひとしきり笑って満足したのか、僕に話しかけてくる。


「はぁ、残念ですね。そう残念」

「なにがですか? ていうかあんた誰なんだよ!」


 そこで電話は切られた。

 通話が終わったことを告げる音が鳴る。



 僕は来年35歳になる。

お付き合いありがとうございました。

なにかありましたら、どこへでもいいので一報ください。

すぐに全話消します。

3/28 追記:作者がこの話をした後に彼から聞いた霊障は、私と同じく「非通知」の電話が来たというものでした。くれぐれも「非通知」の電話には出ないようにお願いします。

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