ヴィアール辺境伯領編 28話 「人魔大戦とは?」その4
「あの時は本当に驚いたよ。絶対イノセントは死んでると思ったからね」
当時を思い出して笑う国王ヤニック。
「若い頃のイノセントさんはヤンチャだったのですね・・・」
いやアイツは今も充分にヤンチャだと思うけど?
「イノセントか・・・
彼奴は我の所へも殴り込んで来よったからのぅ」
「ええ?!地龍王様の所へですかぁ?!」
これにはビックリの王妃ファニー。
「ふふふ、奴は儂の所へも殴り込んで来たぞ」
天龍王アメデが楽しそうに笑う。
「天龍王様の所へまで・・・」
「イノセントは軒並み高位存在には喧嘩売ったんじゃ無いのかなぁ・・・
私もいきなり喧嘩売られてビックリしたよ、まぁ、瞬殺してやったけど・・・
ノイミュンスターは?イノセントに喧嘩売られた?」
天舞龍リールの質問に、
「ぬっ?当然瞬殺したぞ?」と答える地琰龍ノイミュンスター。
「滅茶苦茶ですわ・・・」
「あの子って確かジャコブの所でも修行してたんじゃなかったかしら?」
んー?と言った感じの海龍王アメリア。
さすがに深い海中で生活している海龍王アメリアまでは到達出来なかった様子だ。
「まぁ、この話しはイノセントがイリス老師の元でしばらく修行した後の事だね。
私も誘われたよ「力試しに三龍王に喧嘩売りに行こうぜ!」って。
当然断ったけどね」
「正解ですわ旦那様・・・」
「結局はクルーゼの兄貴に「いい加減にしろ!」って〆られたけどね」
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「ヤニック!三龍王に喧嘩売りに行こうぜ!」
「何でそうなるんですか?!嫌ですよ!殺されるに決まってますよ!」
いきなり兄貴分のイノセントが無茶振りをして来た!
悪い人では無いが強さへの執着心が強すぎる!
「ん~?
まぁ、イノセントがやって見たいなら私は止めないよ。
でも生死は自己責任だよ?一応は私の加護は与えるけど三龍王には通用しないよ」
「師匠?!」
「さすが師匠だぜ!じゃあ行ってくるぜ!」
イリス老師の加護をぶん取って、そう言って走り去ったイノセント・・・
てか走って行くの?!ここ南の大陸だよ?!
「師匠・・・イノセントの兄貴は大丈夫なんですか?」
「大丈夫では無いね・・・でも勇者覚醒を目指すなら必要な行程なんだよ。
・・・ヤニックちゃんは勇者覚醒は目指さないんだよね?」
「俺はピアツェンツェア王国の国民の為に人魔大戦に勝ちたいだけですから」
「そっか、それも人生だよね。「異界門」で反応があった・・・
アトランティスから新手の魔王が来る!本気でレムリアの勢力を制圧しに来たよ!」
そうか・・・師匠の「ユグドラシルの瞳」に反応があったのか。
黙示録戦争が近い、早く修行を終わらせ無いと・・・
「しかし何故アトランティスはレムリアを目の敵にするのでしょうか?」
「レムリアと言うより他の人間全てを掌握したいんだよ。
そうしないと自分達に存在意義を見出せないんだと思う」
そうか・・・そんな事にしか存在意義を見出せないなんて哀しい連中だな。
しかし、そんな物に付き合うほど俺も甘くは無い!来るなら叩き潰すのみだ!
「ヤニックちゃん・・・
修行のレベルを上げるよ?ここからは失敗は生死に関わる「極大魔法」の領域・・・
覚悟はある?」
「もちろんですよ師匠」
少し悲しい表情の師匠だが俺の覚悟はとっくに固まっている!
覚えてやろうじゃないか!極大魔法を!
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「こんな感じで極大魔法を覚えたのが黙示録戦争の1年前、14歳の時だった。
今思うと準備時間が全然足りな過ぎだったよね」
「新手の魔王・・・ですか?」硬い表情のファニー。
「そうだね、来たのは現魔王軍第6軍将軍のブレストだよ。
私はすれ違い様に一度交戦したけど強かったよ、彼も極大魔法の使い手だった」
「ええ?!現魔王軍第6軍将軍って!魔王が複数人居ると言う事ですか?!」
「そうだね「スペクター」魔王の人数は黙示録戦争開戦時に362名だと聞いたよ。
対するレムリアの勇者は183名・・・ほぼ倍だよね」
「倍・・・人類、レムリアの末裔・・・わたくし達の滅亡危機ですわ・・・」
真っ青な顔色になった王妃ファニー。
「おいおいファニー、これは過去の話しで勝ったのは俺達だよ?」
昔話しを聞き泣きそうなファニーが可愛くて笑ってしまうヤニック。
「あら!いやですわ!そうでしたわ!」
今度は恥ずかしくて顔が真っ赤になったファニー。
「お互いに魔王と勇者のみで戦ったのですか?軍勢を率いる事なく?」
ラーナ的には兵士を率いる事無く大将同士のみの戦いに違和感がある様子だ。
「ラーナ・・・敵も自分達の民を養う為に戦争を仕掛けて来たんだよ?
相手も民の被害は最小限に食い止めたかったんだ」
「あ・・・そうですわね・・・お恥ずかしいです」
すぐに戦略、戦術のみで考えてしまう自分を恥じるラーナ。
自軍の被害=民が死ぬのだ。
もし総力戦ならば黙示録戦争での両軍死者は数百万人になる試算だったのだ。
それを避けるべくアトランティスとレムリアは大将同士での決戦に同意したのだ。
「総力戦か?もしそんな事態になれば我も黙って静観などしなかったろうよ」
総力戦なら地龍王クライルスハイムの言う通り、世界の根幹を揺るがす異常事態だ。
世界の調停者の三龍達も全力で阻止に動いただろう。
「それから、いよいよ両軍が激突した訳なんだけど・・・」
人魔大戦、黙示録戦争で何が起きたか話し始めたヤニック・・・




