ヴィアール辺境伯領編 18話 「結婚式の始まり」
礼拝堂が開き新婦が結婚式会場へ入場して来て少し会場がどよめいた。
その隣には文官姿のピアツェンツェア王国国王のヤニックがエスコート役として一緒に入場して来たからだ・・・とヤニックは思った。
しかし、そのどよめきは驚きと言うより笑いを堪えてると言うか何と言うか・・・
少し不思議な雰囲気だった。
何より新郎のガイエスブルクが真顔で無表情なのだ。
新婦のシーナは新郎のガイエスブルクのこの表情を知っている・・・
ガイエスブルクのこの表情は、今にも大笑いしたいのを必死に我慢している時の表情だと。
「あれ~?何か面白い事があったのかな?」そんな感じで首を傾げるシーナ。
ヤニック国王は義理の息子が最愛の女性が父親と一緒に入って来て怒っているのだろうと勘違いしていた。
「やっぱり不味かったかな?」
と思いつつもシーナとガイエスブルクの所まで到着すると・・・
ガイエスブルクは俯いて少し震えながら・・・
「・・・ヤニック国王、道中の会話全部聞こえてましたよ・・・
一応公衆の面前なので全力で笑わせに掛かるのやめて下さい・・・」
と今にも笑いそうに小さく呟いた。
「え?」予想も出来ないガイエスブルクの言葉にヤニックは何を言われているのか分からなかった。
するとシーナは「ああ!そうだった!」と言う感じになって、
「そうでした!ヴァージンロードの様子は新しく開発した新型の撮影用の魔道具の実験を兼ねて会場に放映してました!しかも音声付きで!」
なるほど!納得行きましたよ!と言った様子のシーナ。
ああ~、そう言えばヴァージンロードを新婦が1人で歩く「演出」とか言ってたね、
誰も見て無いのに演出とかも無いもんね。
「えっ?ええ?それってどう言う事?」ヤニックは混乱して来た。
「つまり・・・ファニーさんが血塗れとかの話しの全部が会場の参列者にも聞かれていたと言う訳ですよ・・・」もう我慢するのムリポな様子のガイエスブルク。
すると今回の結婚式で祝詞をしてくれる枢機卿ケルンが、
「ヤニック様とファニー様の今後の幸せを天龍王アメデ様も見守って下さる事でしょう、どうか末永くお幸せに」と茶化した。
それを聞き「ブッ!」遂に吹き出してしまったガイエスブルク。
「えええー?!」ヤニックは困惑の悲鳴を上げて「ハッ?!」と何かに気がつき貴賓席を見ると頭から煙を出した王妃ファニーが撃沈していた。
若かりし時の黒歴史を夫に暴露されたのだ!これは恥ずかしい!
すると会場全体からもクスクスと温かい笑いが起こる。
王妃ファニーが犠牲にはなったが和やかな雰囲気での結婚式の始まりになり、決して王妃ファニーの犠牲は無駄では無いのだ!
するとファニーは顔を上げて笑顔で役目を終えたヤニックに「早くこちらの席へどうぞ」とばかりに手招きしてヤニックも素直にその席に座ると、
「いっ?!!」小さく悲鳴を上げる、どうやらお尻をつねられている様子だ。
「幸せな夫婦の子である新婦の結婚も幸せになる事でしょう。それでは結婚式を始めましょう」
小難しい形式に捉われない地龍らしく随分と破天荒な結婚式の開始を宣言する枢機卿ケルン。
するとどこからか「ピィーヒョロロロロ、ピィーヒョロロロロ」と出番を待ちきれない様子の飛竜の鳴き声が会場に響き、
「キュイーン、キュウウウーン」と樹竜の鳴き声が答えた。
「おやおや、「早くしろ」と竜達にも急かされてしまいましたな」
と冗談っぽくケルン枢機卿が戯けると、会場にまた小さな笑い声に包まれた。
ケルンは竜の鳴き声をこの後、竜の大群が現れて会場がパニックにならない様にイベントの一つとして利用したのだ。
可愛いらしい飛竜と樹竜の鳴き声で竜祭りが不安だった参列者にも少し安心感を感じる様になって来た。
この結婚式で竜に対する人間達の偏見を少しでも改善させたい思いもあるのだ。




