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ヴィアール辺境伯領編 17話 「ヴァージンロードにて」

三龍王が控え室で子供の様に戯れていると知らずにヴァージンロードを歩くシーナとヤニック。


三龍王の隠蔽能力は完璧なのでその場に居た人間の他は誰もその降臨には気が付いていない。

警備責任者の天龍レンヌが三龍王の登場に悲鳴を上げるまで後5分だ。


最初は緊張していたヤニックだが徐々に娘と2人きりで歩ける嬉しさが込み上げて来たのがニコニコと笑顔になっている。


「お父様とお母様の馴れ初めが聞きたいです!」


「え?私とファニーのかい?」


「はい!是非聞きたいです!」


礼拝堂まで15分以上かけてゆっくりと歩く演出なので、今まで聞く機会が無かった両親の事を聞く絶好の機会だとシーナは思った。


「そうだね・・・最初の馴れ初めは王太子の頃に視察に赴いたヴィアール辺境伯領都で血塗れのファニーと出会って時だね」


「うえええ??!!血塗れってなんですかぁ?!」


「ビックリするだろう?!

自分で狩った3mのジャイアントベアーを担いで大通りを歩いてたんだよ!

慌てて声を掛けたら「夕食のおかずです」とか言って」


「それはまた・・・」


「なので最初のファニーの印象は「怖い少女」だったね」

当時を思い出して笑うヤニック。


「その後、辺境伯邸で再会した時なんて存在感がなさ過ぎてファニーがその時の血塗れ少女だなんて気が付かなくてねぇ。

ファニーも無口で大人しい辺境伯令嬢を演じていたから余計にね」


「お母様が無口で大人しい令嬢ですか・・・ちょっと想像出来ませんね!」

ズバッと失礼な事を言うシーナ。


「後から聞いた話しだと、その時のファニーは私の婚約者候補だったのが嫌で嫌で堪らなかったらしくて、なるべく私と話しをしたくなかったらしいんだよ・・・」

当時を思い出してガックリと落ち込むヤニック。


「お父様?!大丈夫ですよ!今はお二人共愛し合ってますから!」


「そっそうか?そうだよね?」


「そうですよ!その愛の結晶が私とラーナとロミオ君ですから!」


「うんうん!そうだよね!君達がその証だもんね!」


娘の言葉で立ち直るヤニック。

あれ?シーナの話し方ってファニー似とガイエスブルクが言っていたが、

素のヤニックと話し方が同じだね。


シーナが思い切りヤニックの血も濃く受け継いでいる証拠だ。


「それからすぐに私が滞在しているヴィアール辺境伯領が反乱軍の襲撃を受けてしまってねぇ、ファニーが軍団を率いて出陣した時にあの時の血塗れ少女だと気が付いてショックを受けたなぁ・・・」


遠い目のヤニック、どうしてここから結婚に至ったかは確かに気にはなるシーナ。


「反乱軍の襲撃?!なんで物騒な話ししか無いんですかぁ?!」

しかしシーナ的には今は両親のラブラブな話しを聞きたいのだ!


「実は結婚するまで血生臭い物騒な話しがずっと続くんだけどね!」


「結婚!結婚後の話しをしましょう!」

何か一つでも心が温かくなる話しを聞こうと必死なシーナ。


「う~ん結婚後かい?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

え?!なんなの?!その長い沈黙は?


「最初の1年間は「白い結婚」が条件だったから夫婦らしい事はおろか1週間で1時間のお茶会でしか顔を合わさ無かったねぇ」


「1週間で1時間?!後の時間はお母様は何をしていたのですか?!」


「報告では日々鍛錬をして冒険者として魔物討伐の仕事をしていたらしいね。

つまりヴィアール辺境伯領に住んで居た時と同じだね」


「何ですかそれぇ?!」


「白い結婚」契約結婚とも言える、表向きは夫婦だが夫婦的な事は一切しませんよ。

と言う結婚で離婚したら未婚に戻る。


アストリッド王女とヤニック国王の結婚がそれに当たる。


「1年間が過ぎて「白い結婚」の契約期間が過ぎたら、その内にファニーの方から私にちょっかいをかけ始めてねぇ」


「ほうほう!それで?それで?」

やっと来た来たー!とワクワクするシーナ。


「ああ・・・ちょっかいって武力で襲撃して来るって事ね!」


「だから何なんですか!お母様ー?!」


「何でも「白い結婚」の期間が終わっても契約解除しない私に業を煮やしたらしくってね。

私をボコボコにすれば牢には入るだろうけど結婚は解除されると思った行動だったと本人が言っていた」


「国王をボコボコ?!牢に入るどころの騒ぎじゃないじゃないですか?!」


「普通はね。

ただイノセントから「私が強い」と聞いてたらしくて、襲っても怪我はしないだろうと踏んだらしいよ」


「そっ・・・それで結果は?」


「そりゃあ私は「勇者」だからねぇ。

シーナはもう聞いたと思うけど、私は「大魔導士」の勇者だったが体術もSランクの技量はあるからねぇ。

素手でファニーの槍を受け止めてから足払いしてから宙に飛んだファニーを抱っこして終了だったよ」


「お父様強いです!」


「今後は負けたのか悔しかったのか、度々ちょっかいを掛けて来る様になってね。

私もストレス発散出来るから喜んで相手をしていたんだよ」


戦いから愛が生まれた・・・なんか地龍に通じる物がある国王夫妻である。


「そんな事をしてたら4年目だったかな?

1人で鍛錬していたファニーの膝に異常が発生しちゃってねぇ」


「い・・・異常とは?」これは初耳のシーナ。


「医者曰く「疲労蓄積による骨折」だったね。

医者から1年間の鍛錬禁止を言い渡されて落ち込んでるファニーを鍛錬相手としてほっとけなくてねえ」


「ほうほう!」やっと来た?ねえ!来たでしょ?的な様子のシーナ。


「そしたら「慰めなんてやめてよ!」ってヴィアール辺境伯領へ逃げられちゃって」


「お母様・・・」ウェディングドレスじゃなかったら膝をついてたシーナ。


「その時にはファニーは私にとって変えの利かない女性になっていたから、公務全てぶん投げてヴィアール辺境伯領へ追いかけたんだよ」


「おおー!」下げてから上がったー!


「ここで詳しく話す時間はもう無いけど丸1年掛かりで口説き落として正妃として王都に連れて帰ってたんだよ」


気がつけば礼拝堂の入り口の扉の前だった。


「式が終わったら詳しくお話し聞かせて下さい!お父様」


「もちろんだよシーナ」


そう言って笑い会う父娘の2人。


いよいよ波乱の結婚式が始まる!

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