ヴィアール辺境伯領編 16話 「結局のところで三龍は仲が良いのか悪いのか」
「はあ~、アメリアよ、
海龍側には正式な抗議書を送っておく。リールよ、お主は始末書の作成をするのじゃ、良いな?」
「そんな!待ってアメデ!それだけは!やめてぇ!」
「お父様!そんな酷い!せめてトイレ掃除2週間とか!」
処分を聞き天龍王アメデに縋り付き懇願する海龍王アメリアと天舞龍リール。
アメデは困った様な呆れた様な表情だ。
ってかリール、トイレ掃除ってなんなんだ?小学生?
知らん人が処分内容を聞く限りは「ん?それだけ?」と思う処分なのだが、罰を受ける本人達には非常に面倒くさい処分と言えるのだ。
天龍側からの海龍側への正式な抗議書、これを出されたら海龍側は否応なく対応を迫られて海龍王アメリアもその対応で一週間は忙殺される事になるだろう。
当然、側近達からのお小言も凄いだろう。
何せ自分で自分を処罰せにゃならんので恥ずかしいったらありゃしない。
多分海龍王の側近からは「そんなモン、お前が自分で書類を書け」と言われるので、忙しい書類作業になる事も間違い無しだろう。
リールはお約束の始末書だ。
これも2週間は執務室に缶詰になり自分で作成して自分で受理せにゃならんのだ。
「自業自得じゃのう・・・」クライルスハイムが呟くと、
「クライルスハイムも止めてくれれば良かったのに・・・」
天龍王アメデも地龍王クライルスハイムを見てポツリと呟くと、
「ぬ?いやすまんな、我が娘の結婚式を盛り上げたいと言われてしまうとな・・・」
クライルスハイムは少々申し訳なさげに答えた。
他に唯一、2人の弁明を行えるだろう龍王達の同世代の地琰龍ノイミュンスターは宣言通りに静観しながら「だから言ったであろう?」と言う目で見ている。
神話の中に出て来る主役達による、どーしよーも無い喜劇に唖然としてる人間達。
そんな中で天龍アリスはラーナ王女の後ろに隠れてラーナを盾にしている。
なぜ皆んなラーナを盾にするか?それはラーナが天龍王アメデの愛し子だからだ。
しかし、その愛し子も「とばっちりは嫌です」と他人事だ。
「どうしました?アリス」
「私、怒りに任せて地龍王様を叱り飛ばしてしまいました」
あー、そうだったね、地龍王もまとめて叱り飛ばしたんだったね~。
「うふふふ、かっこよかったですわアリス」
「うう・・・やめて下さい~」
そうこう言ってる間に結婚式が始まる時間が近づいて来ていた。
控え室に居る者達も移動したいが目の前に三龍王が居るので動けないのだ。
そんな気配を感じとって地龍王クライルスハイムが、
「ふむ、どうやら時間の様じゃぞ?アメデよ我等も式場へ向かうか?」
と気を利かせてくれた。
「そうじゃな、ほれ、いつまでも拗ねてないで行くぞアメリア」
天龍王アメデが、いじけてる海龍王アメリアの手を引くと、
「うう~・・・」ジーとアメデを見つめるアメリア。
こうして並んで歩き出す三龍王、本人達は気にもしていないが、歴史に間違い無く残るだろう前代未聞の一大事なのだ。
「・・・・・・・三龍王様は、本当に仲がよろしいのですわね?」
仲良く並んで歩く三龍王の背中を見て呆然と呟く王妃ファニー。
「ぬ?うむ、そうじゃの昔から仲は悪くは無いのぅ、争う理由も無いし同じ時代を生きた同世代の龍種じゃからな」
「本当に神話の話しはデタラメだったのですね・・・」
三龍王が争った事は一度も無いとノイミュンスターから聞いてはいたファニーだが、こうして目の当たりすると、やはり少し神話がガセだったことにショックを受けたのだ。
地龍王と天龍王との一対一の決戦は神話の中でも最高のクライマックスの話しで、
ファニーも子供の時から大好きだったからだ。
そもそも天舞龍リールと地琰龍ノイミュンスターも神話の中では不倶戴天のライバルと描かれていて現在も戦っていると思われているが、実際は仲が良いのだ。
「そうだねー、私とノイミュンスターが戦った事は無いねー。
だって戦うと私が絶対に負けるからねー、そうなったら一目散に逃げるさね」
近接戦での物理的な戦いの一点においては天龍より地龍の方が強いのだ、しかし地龍は空を飛ぶのは苦手なので空を飛ぶ天龍に攻撃出来る技は少ない。
その反面に万能なのが天龍で空を飛べるし回復能力も高い、何より集団戦も得意だ。
海龍は当然、水の中で最強だが、意外と飛行も難なくこなしてしまう。
特筆すべきは海龍の能力はとにかく防御能力がもの凄く高い、
もし地龍王クライルスハイムと海龍王アメリアが戦うとクライルスハイムの攻撃は全てアメリアに弾かれるだろう。
しかしアメリアにもクライルスハイムを倒せる攻撃手段は無いので確実に千日戦争になるだろう。
クライルスハイムとアメデが戦っても同様でお互いに倒す決定打に欠けるので千日戦争は必至だ。
三龍王が争っても意味が無い理由の一つなのだ、お互いに倒せ無いからね。
「神話は人間が作った創作じゃからのぅ。
しかし物語としては面白いと我も思うぞ?良く考え込まれておる」
ショックを受けたファニーを精一杯慰める、優しいノイミュンスター。
「現実は小説より奇なり」なのだ。




