ヴィアール辺境伯領編 15話 「三龍王降臨!」
エレンの出産も無事に終わり、魔力枯渇状態も地龍王クライルスハイムによって回復して何の憂いも無くなったシーナ。
「シーナよ、これからは、ただ結婚式を楽しむが良いぞ。
そしてヤニックよ、異世界では新婦のエスコートは父親が務めると聞く。
お主がガイエスブルクの所まで連れて行くが良い」
地龍王クライルスハイムに思いもよらない提案を受けて驚くヤニック国王。
「しかし私は無理にここに来ております。他の者への体裁が・・・」
「娘の結婚式に参加する以上に大切な物などあるまいて。
なに、この事でグダグダ言う者がおれば我が喝を入れてやろう」
地龍王クライルスハイム直々の喝・・・やだ!怖い!
「うふふ、お父様!よろしくお願いします!」
そう言ってヤニックの腕を取るシーナ。
「しっしかし・・・この姿では・・・」
サボりを誤魔化す為に側にいたクルーゼの兄貴の文官用の上着を強奪して着ているのだ。
「なにぃ!結婚式だぁ?テメェは何ボヤボヤしてやがんだ!
地龍王の旦那にとっとと連れて行って貰え!後は俺が何とかしてやらあ!」
そう言ってヤニックの顔面に上着をぶん投げたクルーゼの兄貴。
相変わらずの男前だね!
「大事なのは心じゃ、異世界での言葉で確か「ボロは着てても心は錦」とか言うのじゃたかな?うむ!良い言葉ではないか?
のう?ヤニック、そうは思わぬか?どんな姿でも構わぬので無いか?」
「はっ、はい!その通りです!」
ヤニックはクライルスハイムの言葉で覚悟を決めた様子だ。
文官姿のまま、満面の笑顔の新婦と一緒にしっかりと前を向いて歩きだす。
こうして腕を組みヴァージンロードへ向かう2人を見送る一同だが・・・
さて誰が先に正気に帰って状況を理解するかな?
10秒後「ふええええ?!」王妃ファニーがシーナの様な悲鳴を上げた。
どうやら正気に帰った第一号だ。
「くくくくくくクライルスハイム様!
ごごごご御尊顔を拝しました事、このファニー・フォン・ピアツェンツェア!
余りに過分とは思いますが光栄の極みに御座います!」
と深々とクライルスハイムに頭を下げたファニー。
そこで全員が気がついた!「地龍王クライルスハイムが目の前に降臨した事に」
「ははー!!!」全員が深々とクライルスハイムに頭を下げた。
平伏はこの世界では命乞いに使う物なのでこの場合は失礼になるのだ。
膝まつき手を組む動作も信徒の中でも神官にしか許されていない高尚な作法なので間違いだ。
土下座はその道のプロにしか使えない高難易度の技なのだ!どこぞの宰相補佐くらいしか使い熟せないだろう。
「おや?これはタイミングが悪かったかな?」
美しい鈴の音色の様な声が部屋に響く。
その声を聞き地龍王クライルスハイムは笑顔になり、
「おお!!アメデではないか!
リールの後見人の時以来じゃから3000年ぶりと言った所か?
うむうむ、変わりないな?息災な様で何よりじゃ!」
クライルスハイムの言葉を聞き金髪の美丈夫も笑顔になり、
「ふふふ、クライルスハイムよお主も息災な様子で何よりじゃ。
お主の娘には儂の娘が本当に世話になった、礼を言うぞ」
地琰龍ノイミュンスターは軽く頭を下げて、
「おお・・・アメデ様では御座いませんか!お懐かしゅう御座います」
「お、お父様、お早いお越しで・・・」
天舞龍リールはラーナを盾にした。
盾にされたラーナは「うふふ」と嬉しそうに笑った。
「はあ~、リールよ・・・儂はお主を叱りに早めに来たのじゃ。理由は・・・自分が良く分かっておろうの?」
無断での竜祭りに天候操作、怒られ案件満載のリールは思わず明々後日の方に向く。
龍種達の会話の内容から、この金髪の美丈夫が天龍王アメデと分かり王妃ファニー他、部屋に居る者全てが再び騒然とする。
ここで更にトドメの爆弾が落ちる!
扉がバターンと開き、
「リールちゃ~ん!竜達の準備は完了よおおおお???!!」
竜祭りにおいてのリールの共犯者である海龍王アメリアまでもが部屋に飛び込んで来た!
これにて三龍王全てが控え室に降臨したのだ!
・・・・・・・いや!ここって、いたって普通の控え室だよ?!
せめて礼拝堂で信者に囲まれて厳かな降臨を!やり直しを要求します!
キィー・・・パタン・・・
アメリアはゆっくりと扉を閉めた・・・
「はあ~、アメリア・・・やはりお主が黒幕か・・・」
もはや言い逃れ出来ない現行犯を確保したアメデが深くため息を吐いた・・・
カチャ
キィー
ゆっくりと扉が開きアメリアが隙間から半分顔を出して、
「お久しぶりですわ、クライルスハイムにアメデ、お元気そうで何よりですわ」
うふふふ~と、愛想笑いをする海龍王アメリア。
約3000年ぶりとなる、めっちゃ締まらない三龍王の同時降臨となったのだ。




