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ヴィアール辺境伯領編 11話 「引き出物の準備」

ノイミュンスター到着してからすぐに結婚式の準備が大急ぎでスタートした。


通常の貴族の結婚式は2週間前から新郎新婦を交えてアレやコレをする物なのが、

シーナ達の到着が遅すぎたのだ。


その様子を遠巻きに眺める大物の龍種2人。


「相変わらず人間の結婚式は面倒くさいねー」

今日は普通の話し方の天舞龍リール、有能メイドさんゴッコは飽きた様子だ。


「それで!ノイミュンスターどう?叔父様OK出してくれた?」

竜祭りを地龍王クライルスハイムが認めてくれたか気になるリール。


「大筋では認められている、しかし事前告知は必須との事よな。

既にピアツェンツェア王家より参列者に竜の催し物の告知が出されておる」


「ちぇー、いきなり皆んなをビックリさせたかったのに」


「そのビックリで心臓発作を起こす者が居そうなのでな」


「確かに!おめでたい席でそれは不味いね・・・」


「そうであろう?

それより内容的には、クライルスハイム様より天龍王アメデ様の方が難色を示しそうだが・・・ ちゃんとアメデ様には説明しておるであろうな?」


父親の天龍王アメデの名前が出るとスッと目線を外すリール。


「全く・・・叱られても我は助けぬぞ?」


「・・・ケチンボ」


「それよりエレンの出産に医師を派遣してくれて助かった。ありがとうリール」


「いいよー、私もさエレンは妹の様に感じてるからさ」


「最近は龍種でも子を作れる様になったのは天龍のお陰よな、感謝する」


「うん、その感謝は有り難く頂戴しておくよ・・・」

実はリールには兄か姉がいた・・・らしい。


7000年前に天蒼龍シーナが身籠った時、彼女はまだまだ未熟で、とても出産など出来ずに諦めて消滅させたそうだ。


それから天龍達の医療への執念が始まったのだ。

その甲斐があって5000年前にようやく天蒼龍シーナも死なずに天舞龍リールが誕生出来たのだ。


しかし代償で第二子は絶望的になった、リールに兄弟が増える事はもう無い・・・


「最近は、新しい兄弟がたくさん増えて私も嬉しいのさ」

リールにして見ればこれから身近で産まれる龍種は全て兄弟の様な者達なのだ。


「お主も早く子を作れ」


「そう言うノイミュンスターはどうなのさ?」


「我か?そうさのぅ、シーナの子が出来たら考えても良いかもな」


「おろ?想像と違う答え。心境に変化でもあったの?」


「かも知れぬ、シーナが嫁に行くのを「寂しい」と感じておる」


「まぁ、良い事さね」と笑うリール。


何だか良い感じの2人ではあるが残念ながら2人が夫婦になる事は無い。


今でこそ人化の技術が発展して異種の龍種間でも子が作れるが、古き龍種の2人には種族間の壁が大き過ぎて子を作るのは無理なのだ。


「・・・エレン無事に乗り切ってくれるよね?」


「あの子も強き地龍じゃ、心配は無い」


「そうだよね、エレンだもんね!」


そんな2人の会話の中で結婚式の準備は進む。

新郎新婦はもっぱら引き出物の、金のブレスレット作りしかやる事は無かった。


リハーサル以外は新郎新婦は邪魔なのだ。

魔力枯渇で物質変換魔法が使えないシーナはガイエスブルクとドレスデンが作るブレスレットを磨く。


物磨きに一日の長があるシーナは磨き職人だ!


ちゃちゃちゃ、拭き拭き、ちゃちゃちゃ、拭き拭き。


同じく魔力枯渇状態で一緒に磨く作業をしていたアリーセが

「ママの磨くスピードはおかしいです!」と言うくらい早くて綺麗なのだ。


「うわっ?!眩しい?!」

お茶を入れに来たアリスが磨かれて金ピカのブレスレットの光に目潰しを食らう。


その横ではマッテオが箱詰め作業をしている。

調略から箱詰めまで何でもこなせる有能な男マッテオ。


「マッテオさんのリボンの結び方が可愛いです!」


「いやー、実はこう言うクラフトの仕事をするのが夢なんですよ。

公爵家が落ち着いたら工房を作ってのんびりと工芸の仕事がしたいですね」


そう笑うマッティオはいつもの作られた笑顔と違い幼さすら感じる笑いだ。

人は見かけによらない良い例ですね。


その内に手持ち無沙汰なノイミュンスターとリールまで加わって4000個の金のブレスレットが式の前々日に完成した。


「いやー、こう言う作業もたまには良いよねー、熱中出来るわー」

積み上がった箱を見て御満悦のリール先生だった。


こうして出来上がった何の変哲も装飾も無いブレスレットだが龍種達のお手製として結婚式に参列した貴族家の家宝となってしまうのだった。


「こんなブレスレット、偽造なんて簡単ですよ!?」

と驚くシーナだが、龍種が魔力を封入しているので鑑定は容易との事だった。


こうして思わぬ、お宝のプレゼントに大喜びする貴族達だった。

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