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ヴィアール辺境伯領編 4話 「アストリッド妃の帰国」

当初の計画通りに親征軍を率いてグリーンランド王国へ進軍した王妃ファニー。


「王妃の親征軍?女の分際で馬鹿なのか?」と武装集団の司令官は笑った。

武装集団の兵力は8000に対してピアツェンツェア王国の親征軍は5000・・・

数の上でも負ける要素は無い。


「正面からこづいてやれば簡単に瓦解するだろうさ」

そう言って正面に鶴翼陣で展開した武装集団を見て王妃ファニーは、


「あら?勝ちを譲ってくれるなんて、随分と気前が良いお方だ事」と笑う。


重装槍兵が高台で円陣を組んでる軍団に鶴翼陣で包囲殲滅など愚の骨頂だ。

勿論、親征軍は偽装を駆使して陣形を解り辛くしているが軽率としか良い様が無い。


「では!わたくし達はこの場を動かず敵を迎撃致しましょう!」

ファニーがそう言うと「徹底防戦」の合図の鐘が鳴る。


「突撃!!」

敵前衛指揮官の号令で親征軍に対しての武装集団の攻撃が始まる!


この時点で背後にいるコロンバス王国とピアツェンツェア王国との間で戦争状態になったのだが、コロンバス側はその事に気が付いていない。


今や大国から超大国になったピアツェンツェア王国を本気で怒らせたのだ。


ウオオオオオオオ!!!鬨の声を上げながら進む友軍にご満悦の司令官。

ここで勝てばコロンバス王国の将軍職は間違いないからだ。


しかしここでいきなり敵の前衛隊の突撃スピードが落ちる!見た目以上に高台が急勾配だからだ。


足が鈍くなった敵軍に、


「バリスタ隊撃てー!」ファニーの号令が飛ぶ!

高台からの直線での打ち落としだ!効果は絶大、敵の前衛がバタバタと倒れた。


「第二斉射!撃てー!」今度は上方へ打ち上げての面制圧射撃だ。


「クソ!怯むな!取付ければこちらの勝ちだ!突撃!」

降り注ぐ矢を盾を使い何とか防ぎながら前進を続ける敵歩兵、そこそこの精鋭の様子だが・・・


敵軍前衛隊が親征軍の前衛まで後100m!との所まで迫った時、

ズドドド!ブシッ!ズン!バシュ!「ぐああ?!」「ぎゃああ!」「うわぁ?!」


ここで凹みに隠れていた本命の重装槍兵の突き落としが入る!

きっちりと三層陣になっているので次から次へと突き落としが入り完全に敵の突撃の足が止まる!


突かれて斜面を転がり落ちる歩兵に巻き込まれて騎兵の馬が驚き飛び上がり後ろに倒れると数人の歩兵が馬の下敷きになった。


そんな光景があちこちで見られて更に盾を失った歩兵の上に矢の雨が降り注ぐ!


「うわわ!」ヒュンヒュンヒュン!と落ちてくる大量の矢に大混乱の敵軍。


そうこうしていると鶴翼の右の翼の瓦解が始まる!

ピアツェンツェア王国の重装歩兵の突撃が開始されたのだ!


右の翼を失った鶴翼はもう飛べない、右陣崩壊からの全面崩壊が始まる。

鶴翼陣攻略のお手本の様な攻撃だった。


「突撃!」この機会を逃す訳も無く重装槍兵の鶴翼の胴体目掛けての中央突撃も始まる!


「クソ!撤退!撤退だ!」大声で叫ぶ司令官の声はもう誰の耳にも届かない。

ピアツェンツェア軍の猛攻は続き、開戦30分で敵武装集団は壊滅してしまった。


かろうじて左陣だけが全面崩壊せずに後退出来たが武装集団の被害は甚大だ。


最終的な結果、敵武装集団は4000名の兵士が倒れて3000名ばかりが東へと潰走して行った。


「あら?東ですか?そちらはお兄様が待ち構えてますのに」

残された1000名ほどの兵士を捕虜にしながら王妃ファニーが呟く。


潰走した敵軍は残さず、待ち構えていたアンソニー・フォン・ヴィアール辺境伯が率いる辺境伯軍団に完全に討ち取られとの報告が3時間後に届く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「以上が戦況報告になります」


「お母様!強いです!」伝令から戦況を聞いたシーナは大喜びだ。


「うむ!これでコロンバスの連中も懲りたであろうな!」


「コロンバス?海沿いの国か・・・

でもシーナの話し方ってスティーブンさんと一緒なんだな。今やっと気がついた」

とのガイエスブルクの指摘に、


「えっ?!そうですか?」


「む?!そうかの?」


「曾祖父さんとママの喋り方一緒です!」あっ!本当だ!と言った感じのアリーセ。


「本当ですわ、私も気付きませんでした」

あらまあ、と言った感じのスージー、クスクスと笑っている。


「お爺様と一緒なら嬉しいですよ!」


「おお?!可愛い奴じゃのシーナ!」


「私は1番最初に気づいてましたよ、思わず笑ってしまいました」


「ええ?!ラーナが最初に笑ったのそうだったんですか?!」


「ヴィアールの血を感じますねぇ」しみじみと言うカーラ女史。


この戦いの後、ピアツェンツェア王国はコロンバス王国の有責での宣戦布告をした。

その他の諸国はこの事に驚き沈黙してコロンバス王国を支持する国は無かった。


まさかピアツェンツェア王国がここまで本気で来ていると思ってなかったコロンバス王国は大混乱になった。


それはそうだろう、コロンバス王国は海沿いの国なので自国沿岸にピアツェンツェア王国の戦艦艦隊が間違い無く来るからだ。


海上から戦艦主砲の斉射が王都に降り注ぐのは明白だ。


「降伏!無条件降伏とする!」

戦艦艦隊に打つ手などないコロンバス王国の国王は無条件降伏をピアツェンツェア王国に打診して自らは、宮殿に引きこもってしまった。


まぁ・・・コロンバス国王の自国民を戦いに巻き込まない姿勢は評価されて王族の処刑などはされずに男爵位に封じられて一族共に僻地での謹慎を命じられた。


国王代理は穏健派だった侯爵が据えられた。


今まで好き勝手にやっていた中央大陸の東側諸国に超大国ピアツェンツェア王国からの強烈なお仕置きが始まったのだ。


こうしてピアツェンツェア王国軍が睨みを効かせる中、アストリッド妃の祖国への帰国が行われる。


「本当にお世話になりました、この御恩は一生忘れません」


深々と王妃ファニーに頭を下げるアストリッド妃、改めてアストリッド姫。

「白の婚姻」は解消されて正式に未婚状態でアストリッド姫はグリーンランド王国へ帰国するのだ。


「うふふふ、幸せな人生を歩んで下さいましね」

泣き顔のアストリッド姫の頬を撫でる王妃ファニー。


「今後は友人として仲良くして下さいね、アストリッド様」

同年代のラーナ王女の言葉にブワッと涙が溢れるアストリッド姫。


「はい!是非にお願いします」そう言ってラーナの手を強く握る。


ラーナ的には「お姉ちゃん」が欲しかったのだ。

シーナもお姉ちゃんなのだが、いかんせんシーナなので姉より妹?の感覚なので

アストリッド姫はお姉ちゃんに最適だと思っている。


こうしてグリーンランドの近衛騎士団に守られてアストリッド姫はグリーンランド王国へ帰って行った。


そしてその日の午後には無事に到着したと伝令が来た。

こうしてグリーンランド王国を巡っての紛争は一応の収束を見せたのだった。


「しかし何でグリーンランド王国ばかり狙われていたんだ?」


ガイエスブルクの質問にラーナが答える。


「当然「水の利権」ですわ、国名のグリーンランドを指す様に水が多く緑豊かな土地で昔から紛争が絶えませんでしたの」


「なるほどね」


「うふふふ、でもヴィアールはその「水の利権」を見事に手に入れましたわ、

何かを力で奪おうとしても成功した例などありませんわ」


ピアツェンツェア王国の多大な協力はグリーンランド国民の中で長く残るだろう。


「しかしピアツェンツェア王国は中央大陸を制覇するつもりなのか?」


コロンバス王国を属国にした今、ピアツェンツェア王国は東部の海路を手にした、

その気になれば東部諸国に大軍を送る事が出来るのだ。


「そのつもりは全くありませんね、コロンバス王国は調子に乗りすぎてお仕置きしましたが、グリーンランド以外の他の国は勝手にやってくれですわ」


「まぁ、当然経済制裁はしますけど」との注釈が入るが。

コロンバスの海路を塞がれた今、この一手でほとんどの国が死んだ様になるので属国を願う国は後を絶たなくなるだろう。


「ラーナ怖いです!」


「本当に似てるの顔だけだなぁ・・・」


「わたくしでもそこまで考えてませんでしたわ・・・」


情け容赦が無い、軍師ラーナの戦略に怯える一行だった。


この後はラーナの予想通りに東側諸国は大人しくなり複数の国から従属の申し入れがあったので東方諸国連合と言う枠組みを作り、

連合内での紛争の禁止、破った場合には連合を強制的に脱退させての残りの諸国が全て宣戦布告すると言う恐ろしい条約が作られた。


紛争開始、即滅亡と言って良い。強制和平案とも言っても良い


無論、基本的な構造はラーナの発案だと言うのは公然の秘密だ。


「本当にラーナが怖いです!」

東方諸国連合の詳細を聞いたシーナが何度目かわからない同じセリフを叫んだ。


余談であるがアストリッド姫はかねてからの想い人の公爵家子息と無事に婚姻した。


妻と言うよりは娘と思っていたピアツェンツェア王国国王ヤニックから沢山のお祝いの品が届いたのは言うまでもない。

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