新緑のアリーセ編 最終話 「新しい命の誕生」
アリーセの婚約も済んだ事だし!ヴィアール辺境伯領へ行くぞー!
と気合いを入れた視察団一行、ヤニック国王のはからいで特別にヴィグル帝国のアンドレ皇子が視察に加わる事になり嬉しそうな顔のアリーセが可愛い。
エフレム皇太子は後数日間、公務を行い先にヴィグル帝国に帰国する。
今回はガッツリと政略的な視察なので、総台数52台の馬車と護衛騎士128名の騎兵での大行進になる。
先に転移陣でトンズラかまそうとした、ラーナとシーナは王妃ファニーに捕まり頬をビョーンと引っ張られて泣かされた。
密かにロミオ王子も現地で合流予定だ。用意万端だね!
出発まであと3日、準備で慌ただしい王宮で事件が起こる。
「ファニー様!大変です!エリザベス様が破水しました!」
とフローラが大慌てでファニーの私室に飛び込んで来た。
「!!!何ですって?!・・・早すぎます!」
第3側妃のエリザベス妃の早産の知らせだった。
やはり身重には厳しい公務が続いたのが原因だと思われた。
「陛下は?!」
「既にエリザベス様の元へと!ファニー様にも来て欲しいと!」
「分かりましたわ!」
急いでファニーはミリアリアとトリー女史を連れて部屋を出て行く。
丁度その時にファニーの部屋に居たシーナの胸に強烈な思いが駆け巡る。
「絶対に助けなきゃ!」自らが死産で周囲の人達に救われたのだ、その思いは強烈で眷属のアリーセにも強く伝わる。
すぐにアリーセは立ち上がって、シーナに、
「ママ!創生魔法を使います!ごめんなさい!」
そう言いアリーセはエリザベス妃の元へ駆け出してしまう。
「!アリーセ!待って下さい!」
シーナとアリーセとユグドラシルだけの絶対の秘密、アリーセが「緑の創生魔法」の使い手、「次期霊樹候補」だと言う事実。
緑の創生魔法を使えばそれが周囲にバレてしまう危険があるのだ。
「緑の創生魔法」命を産み出す唯一にして究極の魔法だ。
まだ全然使いこなせてないが既に生まれて命を繋ぐ事はアリーセにも出来る。
こう言う時には絶大な力になるはずの天龍達がタイミング悪く全員が不在なのだ、
「あたしがやらないと!」アリーセは決意を固める。
ヒュンと自分の横を駆け抜けて行くアリーセを見て驚くファニー。
「アリーセ?!待ちなさい!」
しかしアリーセは待たない、アリーセには分かるのだ!命が消えるのに残された時間は少ない事に。
「大丈夫!間に合う!」
アリーセは走りながら自分の体内の魔力を練り上げて行く。
それでも足りない!「どうすれば良いの?!」とアリーセが頭で叫ぶ!
《アリーセ!ユグドラシルの瞳を使いなさい!》アリーセの頭の中で母のユグドラシルの言葉が響く!
《強く世界に願いなさい!ユグドラシルの瞳が答えてくれます!》
「ママ!分かりました!」アリーセは強く願う。
「産まれた赤ちゃんを!側妃さんを助けて!」そう願うと自分の両目が熱くなる。
すると信じられるほどの魔力がアリーセの中に入って来たのだ。
これは・・・ユグドラシルの瞳を持つ人達の力?
「皆さん!ありがとうです!」
そしてアリーセはエリザベス妃の私室へ飛び込んだ!
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「エリザベス!しっかりしろ!」ヤニック国王が叫ぶ!
そう呼び掛けるがエリザベス妃の反応は無い・・・
産まれた赤ん方の産声も聞こえない・・・
その周りでは4人の熟練の聖女達が頑張って「光の回復魔法」を掛けてくれて2人の命を支えてくれているが時間の問題だろう・・・
優秀な聖女が4人掛かりでも無理・・・もう打つ手が無い。
絶望感がヤニックを覆った時、
「えっ?!アリーセ様?!」とメイドが驚いた声を上げると、
「お爺様!!」
アリーセがヤニックの隣へ滑り込み手を組んで世界へ祈りを捧げる。
「大地の力、天空の力、大海原の力、そして緑の力・・・どうかアリーセに力を貸して下さい!」
「創生の陣!!」」
エリザベス妃と赤ん坊を中心に創生の魔法陣が浮かび上がる!
往年のユグドラシルの1/1000ほどの規模だが2人の命を救うには充分だ!
「2人を助けて!!!」
魔法陣が起動を開始して「緑の回復魔法」発動する。
緑色のオーラが2人を包み込み癒しを与えて行く・・・
すると・・・「オギャー!!」と赤ん坊が産声を上げる!
「おお?!エリザベスは?!」ヤニックがエリザベス妃を見ると、エリザベス妃の顔に赤みが差してきた!
聖女達はここぞとばかりに聖力を高める!
光と緑のオーラが混じり合い部屋の全てを満たして行く。
オーラが消えて部屋に静寂が訪れると・・・
元気いっぱいに泣く男の子の赤ん坊と力を使い果たして気絶して倒れている4人の聖女と気絶してベッドに突っ伏しているアリーセ、
そのベッドの上で穏やかな寝息を立てるエリザベス妃がいた。
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「痛ーーーい??!!」
アリーセは全身が痛くて飛び起きた!
「なっなんですか?!何ですかこれー?!」
お・・・おお・・・おお~?と言った感じに上手く体が動かず痛い?!
随分と長く気絶していたと思ったら気絶していたのは5分ほどだったらしい。
ファニーがアリーセを追いかけて部屋に飛び込むと緑のオーラが眩しくて何も見えなかったらしい。
「!!赤ちゃんと側妃さんは?!」そうアリーセが叫ぶと、
「お二人共に無事ですぞ」と典医のお爺ちゃん先生が教えてくれた。
「そうですか・・・良かったです」アリーセはホッとすると体がズキーン!とする。
「痛ーーーい?!何ですかこれ?!」
「どれどれ」お爺ちゃん先生が診察魔法でアリーセを診察すると・・・
「ふむ、酷い筋肉痛ですな、まぁお若いので明日には良くなりますな」と笑う。
「きっ筋肉痛ですか?」何で筋肉痛?と思うアリーセ。
ふっと気が付くとアリーセはヤニックに抱っこされていた。
「ひゃあ!ごめんなさいです!お爺様!」
そう言いながら退こうとすると、キュッと抱きしめられて、
「ありがとう・・・本当にありがとうアリーセ・・・」ヤニックは泣いていた。
そう言われて、やっと2人を救えた事に感動して
「あたしの力だけではありません、たくさんの人が助けてくれました」
そう言って、「ハァッ?!」と声を上げて顔が青くなるアリーセ。
「どっどうした?アリーセ?」心配そうにアリーセを見るヤニック。
「あたし!クライルスハイム様とアメデ様とアメリア様とシルヴァーナ様の力を強奪しちゃいましたぁ?!後知らない人達からも!」
「えっ?どう言う事だ?」
「だから!ユグド・・・ヌグゥ??」シーナが汗だくでアリーセの口を塞いでいた。
えへへへへと愛想笑いをしつつシーナが周囲を見渡すと・・・
ジーと直近でファニーがシーナの目を見ていた?!
「ふええええ??!!違います!何も知りません!お母様!」
「わたくし、何も言っておりません、何が違うのです?シーナ?」
「それより!エリザベス様ですよ!早く診て上げないと・・・」
シーナがエリザベス妃を見ると10名以上の典医が診察と処置をしていた。
「入りこむ隙間ありませんねぇ~」遠い目のシーナだった。
ファニーに引き摺られてエリザベス妃の私室から少し離れた部屋へと連行されるのであった。
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こうしてアッサリとゲ・・・真相を話す事になったシーナ。
詳しく話すには役不足だったのでユグドラシルと交代している。
「あくまで「候補」ですわ」とユグドラシルが説明をする。
「おそらく次の霊樹はシルヴァーナとなるでしょう。
しかしシルヴァーナは精霊の中でも高齢ですので、次の候補はシルフィーナです」
「では、アリーセはその次の候補ですか?」
ファニーが尋ねとユグドラシルは首を振ると、
「その次はエルフの女王のエイドリアンです、わたくしは、彼女が霊樹になる予感が強くします、シルフィーナは・・・その、お調子者でして・・・」
要は世界の調整者としてはいい加減だと言う事だ。
「他にも後2人候補が居ますがまだ力が足りません、アリーセは更に力が劣りますから、次代の次の次代の候補・・・2000年後くらいでしょうか?」
「アリーセは2000年生きるのですか?!」
「いえ、地龍の寿命も加算されますから・・・ミリオンクラス、10000年以上の寿命があると思います」
「10000年・・・」
「ウフフ、そんな未来の事を心配しても仕方ありませんわアリーセ、
そう言う物だと覚えておけば良いのです」
「・・・はいです!」
確かにそんな未来の事心配しても仕方ないです!と地龍らしく割り切るアリーセ。
「シーナ以外の方はさすがにその時までに寿命が尽きていますので、皆様も深く考えなくてもよろしいと思いますわ!」
そう笑うユグドラシルだが1人それどころじゃ無い人物が、
《ふええ?!私も10000年生きるのですか?!》
「いいえ?シーナの寿命は更に数倍だと思いますよ?」
《ほへ~・・・確かに気にしても仕方ないくらい長いですね~」
数万年の寿命を長いですね~の一言でアッサリ割り切るシーナ、これくらいじゃ無いと数万年など生きれないのだ。
「とりあえずは「問題無し」で良いのかな?」ヤニックが尋ねると、
「はい、今の時を楽しんで下さいね」
こうして考えても仕方ない秘密は、そのまま秘密として処理されたのだった。
そりゃ10000年後の事を言われてもね・・・
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エリザベス妃はその後1週間眠り続けた。
当然、視察団の出発は無期限の延期だ。だが母子共に問題無しとの典医達のお墨付きなので全員比較的のんびりと過ごしていた。
その間、シーナとガイエスブルク、アリーセとアンドレの2組のカップルのいちゃつきを見せられてラーナの婚約者オルランドへの態度が少し変わった様に見える。
1週間後、眠りから覚めたエリザベス妃のお見舞いにファニーとアリーセが訪れた。
全員で行くと絶対にやかましい事になりそうだったからだ。
「エリザベス様、御気分はいかがですか?」
「オギャーオギャー」「可愛いいです!」
「ええ・・・意識がなくてあまり苦しいと言った記憶がないのです」
「フヘッフヘッ」「手ぇちっちゃいです!あっ!握りましたよ!」
「聞けば、アリーセ様が私の命を救って下されたと・・・」
「きゃっきゃー」「今!笑いましたか?」「笑いましたねぇ」
アリーセが赤ん坊に夢中で十分やかましくなっていた。
「アリーセ、エリザベス様に挨拶なさい」アリーセを小さな声で嗜める王妃ファニー
「あっすみませんです、御気分はいかがですか?」
ああっ!と言った表情をしたアリーセが小さな声でエリザベス妃に挨拶すると、
「いいえ、幾らでも愛でてあげて下さいな。この子はアリーセ様に救われた命なのですから」アリーセに優しく微笑むエリザベス妃。
これが本来の彼女の姿なのだろう。
伏魔殿の王宮で生き延びる為に被っていた仮面が剥がれ落ちたのだ。
「この子の名前、決まったのですか?」
「ウフフ、陛下がまだ悩んでおられて、まだなのですよ」
普通、王女の名前を決めるのには1週間だが、王子の名前を決めるのには1か月は掛かるのだ。
様々な機関と教会と協議して他国の王族の名前と被って無いかを調べてようやく貴族院の審議を受けれるのだ。
特にロミオ王子の場合は王太子なので2ヶ月に渡り大騒ぎになったのだ。
「大変ですね王子様も」「きゃっきゃっきゃっ」
笑顔のアリーセが赤ん坊に話し掛けると赤ん坊も笑い出した。
「この子は感情の表現が早いですわね・・・さすがに1週間では・・・」
ファニーが思うのは娘達の事だ、地龍だの天龍だのユグドラシルだのと超常の存在との関係・・・もしやこの子も?と思った。
はい!ファニーさん正確です。
この世界でも最高クラスの加護をまともに受けた赤ん坊が普通な訳がありません。
この子の事はその内詳しく話しましょう。
「それでは、わたくし達はヴィアールへ視察に行きますので、くれぐれも御無理をなされなき様に」そう言ってエリザベス妃の頬を撫でるファニーだった。
「ええ、ファニー様もお気をつけて」笑顔で答えるエリザベス妃。
「では、帰って来たら遊びますよ!」
「きゃー」アリーセに話し掛けられて今日1番の笑顔の赤ん坊だった。
「・・・やはり、この子は」疑惑が確信に変わったファニー。
これでようやくヴィアール辺境伯領へ向かう事が出来るのだ!
だから行くまでが長いよ!
やっと次話から新シリーズの
「ヴィアール辺境伯領編」開始です。
次回から新シリーズです^^
土曜日あたりに投稿します




