新緑のアリーセ編 12話 「シーナとガイエスブルクの結婚」
自分達の事で王宮内が凄く騒然となっているなんて夢にも思ってもいない、
アリーセとアンドレの楽しい晩餐会デートは続く。
最初は騎士と兵士しか居なかった謁見会場だったが貴族達もチラホラと姿を現し始める。
目的はアンドレ皇子とアリーセの様子を見る事だ。
「ほう、あの御令嬢がヴィアール家一門の・・・」
「何でもアンドレ皇子の婚約者候補の筆頭だとか」
「ふむ、商売的に御令嬢と懇意にしたい所ですな」
「なかなか素直なお嬢様らしいですぞ、懇意にしている商人がファンになったと、
申しておりました」
「ほほう、素直で可愛いらしい所にアンドレ皇子も惹かれたのですかな?」
集まった貴族は政争とは関係のない商売気の強い者達が多い。
なのでアリーセに対しては好意的なのだ。
将来的にこの貴族達がアリーセに力を貸してくれる事になるのだ。
夢中で話しをしていたら夜の10時をまわる。
15歳以下の未成年者は退場する時間だ、これからは酒がメインの大人の時間だ。
遠巻きに見ていたアンドレの従者がその事を伝えると残念そうに退席するアンドレの腕を掴みアリーセが頬にキスをする。
さすが地龍!
不意打ちを食らったアンドレは真っ赤になって倒れた?!
が、ガイエスブルクが寸前で支えたので他の者には分からなかっただろう。
従者に支えられながらヨロヨロと退場するアンドレ皇子。
それを見ながら頬を赤らめて小さく手を振るアリーセだった。
「よ~し、アリーセ!逃げるぞ?」
「えっ?!なぜですか?師匠?」
「お前、このまま終わる訳ないだろう?
今までは2人の邪魔をしない様に見ていた奴らが押し掛けてくるぞ」
そう言いながらガイエスブルクはアリーセの肩に手を置き転移魔法を起動させる。
ヒュン!刹那、2人の姿が消える。
「ああ?!逃げられた?!」誰かの叫びが聞こえる・・・
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「逃げられたぁ?!」
王妃ファニーはミリアリアの報告によろめく・・・
「ウフフ、ガイエスブルク様も中々やりますね?
大丈夫ですかファニー?相手は一筋縄には行かない人物の様ですよ?」
実に楽しそうにファニーを煽りまくるスージー、実際楽しいのだ。
「何でしたら私が説得係をやりましょうか?」
「いいえ!お母様にばかり頼っては王妃の名が廃ります!
久々に燃えて来たくらいです!直接出向きます!」
ズンズンと部屋を出て行く王妃ファニー、彼女もかつて英雄と呼ばれた女傑なのだ!
最近はダメダメだが・・・
ガイエスブルクが転移した場所は射塔の隠れ家だ。
ファニーは見つける事が出来るか?
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ガイエスブルクが転移するとちゃっかりとラーナが居た。
ここは自分の逃げ場所でもあるのだ!
そう・・・たとえ「お尻ぺんぺん」されても簡単には吐かないのだ!
「おかえりなさいませ」
優雅に笑うラーナだが中腰のまま手でお尻をスリスリしているので、なんか締まらない感じだ。
「姫さん?お尻どうかしたのか?」
「いいえ、何でもありませんわ、うふふふ」そう笑うラーナの目には涙が・・・
「ラーナ様!ただいまです、お尻が痛そうです」
そう言うとアリーセはラーナに緑の回復魔法でお尻の痛みを消してあげると、
「アリーセ!ありがとう!」感極まったラーナがアリーセをウリウリする。
ラーナが椅子に座れる様になったので全員が座り色々な事の説明を始める。
「ええ?!そんな大事になってるですか?!」
「えっ?俺もガッツリと巻き込まれてんの?なんで?」
「ガイエスブルクがシーナといつまで経っても結婚しないからですわ!
とにかくガイエスブルクへのヴィアール領招待の説得が急務になってますわ」
「う~ん?姫さんの考えは?」
特にシーナとの結婚以外は興味が無い事柄なので、とりあえずラーナの考えを聞く事にするガイエスブルク。
「シーナ次第ですわ、
ガイエスブルクがシーナを元気にしてくれない事には何処にも行けませんわね、
頼みましたよ、ガイエスブルク」発破を掛けてくるラーナに、
「ああ、シーナの事は任せろよ」と力強く頷くガイエスブルク。
「ママと婚約ですか?師匠?!」
目をキラキラとさせながらガイエスブルクに詰め寄るアリーセ。
「ん?いや、今更婚約は無いだろ?もう結婚一択だろ?」
地龍的に婚約など、そんなまどろっこしい事をやる意味がないのだ。
「あっ・・・そうですね」この数日で人間社会に馴染むアリーセ。頭をポリポリ
「本当ですか?!地龍君!!」
シーナがいきなり転移して来てガイエスブルクに抱きついた?!
「シーナ?!・・・ああそうか、思念で伝わったのか・・・」
隠れ家の射塔には思念通話の術式が施されている。
つまり他の術式がある所に居る者達にも丸聞こえで・・・
《おお!!やったね2人共!おめでとう!》
超久しぶりの天舞龍リールが会話に乱入して来た、北へ南へクソ忙しいレンヌの代理で警備の指示を出していたのだ。
ちなみにオーバンも現在は行方不明になっている、お疲れ様です。
「ああ、ありがとうリールさん」
照れてオタオタするかと思ったガイエスブルクだが、意外と冷静な様子だ。
シーナはガイエスブルクを抱きしめたまま動かない。
ガイエスブルクはシーナの頭を優しく撫でると、
「俺と結婚してくれシーナ」と伝えると、ピクンと肩を震わせて、
「うん」と答えて更にガイエスブルクに抱きつくシーナ。
これで2人の結婚が成立したのだ、2人共おめでとう!
「おめでとう!、では!ありませんわ!」
ラーナからの「ちょっと待たんかい!」が入った?!
「ああ、いえ、結婚はおめでとうございます!2人共」とラーナは笑うが、
「それはそれ!です!貴方達の結婚式は盛大にしなければならないのです!」
次の瞬間、「でないと、私のお尻が死んじゃいます!」と叫ぶラーナ。
ここでシーナは顔を上げてラーナを不思議そうに見て、
「盛大ですか?一応結婚式はしたいですけど盛大とまでは・・・」と首を傾げた。
「またお尻ペンペンですか?」
シーナはここまでのドタバタを全く知らないのだ。
《あ~、ごめん!複雑な所で悪いけど話しがあるから私もそっちに行くね》
そう言うとヒュン!とリールが現れて直ぐに室内の思念通話の術式を切る。
「どうしたのリール?」ラーナも首を傾げる。
「ラーナに詳しく王家とヴィアール辺境伯家のシーナの結婚についての決定事項を聞きたいんだ。
天龍・・・と言うかお父様がシーナとガイエスブルクの結婚に介入したいって言って聞かないんだよ、シーナの後見人だしね」
「えっ?!俺とシーナの結婚はアメデ様に反対されてんの?」
「違うわ!馬鹿者!逆だよ!盛大に祝いたいんだってさ。・・・このままだと地龍と天龍と海龍が合同でね・・・」
なんか話しがまた大きくなって来た?!さばけるか俺?!自爆か!
「でも人間の邪魔をするつもりも無いから詳しく話しを聞いて来いってさ」
「盛大にお祝いして頂けるのは嬉しいですけど、全然話しが見えなくて困ってます」
シーナは不思議そうにラーナを見て「説明プリーズ」と言っている。
「うう・・・一応言っておきますけど私が悪い訳でありませ・・・
はい・・・私が悪いですね、ごめんなさいシーナ」
自分の非を認めた上で先程の決定事項を話し始めるラーナ・・・
みんな静かに話しを聞いているが、だんだんと目が半目になって来ている。
そして話し終えると、
「うん!ラーナが悪いね!どうしてそこまで拗れるかなぁ?」さすがに呆れるリール
「えっ?!俺どうすれば良いんだ?一緒にヴィアールへ行くのは構わんが」
「アリーセがいつの間にかヴィアールに住む事になってます?!」
「それよりアリーセの婚約ってなんですかぁ!本当に泣きますよ?!」
そう言いながら既に泣いてるシーナ。
「あっ・・・」最大の懸案事項だったはずのアリーセ婚約についてのシーナへの説得が、他の事柄がアホ見たいに大きくなり過ぎてスルーされていたのを思い出した。
アリーセはシーナ向き合って、
「ママごめんなさい、アリーセはアンドレと結婚します」
アリーセがそう言うとドブワァ!!とシーナの目から涙が溢れた?!何せユグドラシルとの2人分の涙だから量がヤバい!
「うわあ!大丈夫か?シーナ!2人分の涙流すって、お前器用だな!」
ガイエスブルクが慌ててハンカチ、じゃ足りないからバスタオルでシーナの介護?を始める、なんか笑っているが・・・
アリーセはせっせと水を作り出して塩と砂糖を混ぜてシーナに水分補給を始める!
なんだこれ?
想像の斜め上を行くシーナの反応に大騒ぎになり30分話しが中断した。
「ううう・・・本当にごめんなさいシーナ」
そう言いながらバスタオルからも溢れて床に落ちたシーナの涙を雑巾で拭きながら謝るラーナ。
「まぁ、気持ちは分かるけど祝福してあげないとダメだよシーナ」
腫れた目に回復魔法をかけるリール。
「でも、でもぉ・・・」もう完全に自分の結婚話しが飛んでしまったシーナ。
「ママ、アンドレと一緒ならアリーセは幸せになれると思ったのです・・・」
アリーセは棒立ちのシーナの胸に抱きついて離れない。
「やっやっと・・・見つけましたわ・・・」
そこにフラフラの王妃ファニーが参上する!ここでの増員は作者も大変頭が混乱して泣きそうなのですが?
ファニーが泣いてるシーナを見て自分も泣き出した?!なんでだぁ?
「そうですかシーナ・・・結婚良かったですわ、おめでとう」
違うわ!いや違わなくもないが、これまたファニーが面倒くさい勘違いを始めた。
その言葉を聞き、自分の結婚の事を思い出して今度は嬉しくてシーナが泣き出す!
しかもまたユグドラシルと2人分だ!誰か何とかして下さい・・・
そこから更に30分、全員でシーナとファニーの介護が始まったのだった・・・
それから話しの概要がやっと始まり話しを聞き終わったシーナの感想が、
「それ、私と地龍君がその新しい子爵家を継いでアリーセを養子にすれば良くないですか?別にそれくらいなら構いませんけど?ねえ地龍君?アリーセ?」
「そうだな、その方が当たり障りないし良いんじゃないか?」
「アリーセも構いません」
こうしてアッサリと問題解決したのだった。なんじゃい!今までの騒動は!
「シーナって私より頭良いよね」ラーナがそう言うと、
「単純に物事を考えてるだけですよ?」と答えた・・・確かに!
「じゃあ、その子爵家の領地は天龍からプレゼントするよ、ヴィアール辺境伯領の隣の山脈は天龍の領域だから」リールが提案を始める。
「えっ?南の天龍教の御山ですか?」ファニーには思いあたる様子だ。
「そうそう、あそこなら神域扱いで変な介入は少ないだろうし、近隣の住人の説得は私がすれば簡単に受け入れてくれるよ」
「素晴らしい提案ですが、枢機卿の方々から反対されないでしょうか?」
いつの時代も教会の土地に手を出す権力者との騒乱は尽きない物、天龍教は国教でもあるので王家でも介入し辛いのだ。
「大丈夫だよ、お父様が天龍教本山に天啓を降ろすからね、それでもダメなら私が直接言い聞かせるよ、勿論、龍の姿でね!」
天龍王アメデの天啓だけで十分過ぎると思う。
「それに天龍教の教会で結婚式上げれば良いじゃん、新領主の御披露目もかねて」
「それ良いですわ!リール」ラーナが猛然と食い付いた。
「なんか凄い恥ずかしいですけど、それならお願いしたいです」
シーナ張本人が賛成したのでこの話しは決まりだ。
「わたくしは早速手続きに入りますわ!ラーナも来なさい!」
「ええ?!嫌ですー?!」問答無用でラーナを引き摺りファニーは去った。
「それにあそこなら、天龍王、地龍王、海龍王が式に参加出来るしね」
そうイタズラっ子の笑顔で爆弾を落とすリール。
「ええ?!お父様もアメリア様もアメデ様も参列するんですか?!」
超ビックリのシーナ、有史以来初の3龍王が一同に会するのだ、凄い事になった。
「その前にアリーセの婚約をバシッと決めないとね!」
リールの言葉でまた泣き出したシーナ・・・
もう、放っておこう!はい解散!




