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新緑のアリーセ編 10話 「晩餐会デートからの婚約」

ようやくアリーセを探し出したヴィグル帝国第二皇子アンドレ、

散々探し回ったのか疲れてげっそりして可哀想だったので、そっと認識阻害の術式が入ったペンダントをアンドレの首にかけて上げるアリーセだった。


自分を探してくれていたことに恥ずかしいと思ったのと同時に嬉しかったので照れ隠しの行動でもあった。


「これあげるですよ、認識阻害魔法付きですよ」


「おお?凄いなこれ!ありがとうアリーセ・・・ああ・・・だからお前の事見つけ辛かったのか・・・」


ガックリと項垂れるアンドレ皇子。


「そのペンダントだけではないですよ」そう言いながら耳のイヤリングをピンっと指で弾くアリーセ。


「でも、それなのにあたしを見つけたアンドレ様凄いです!」


「ん?ああ!俺は鼻が効くからな」鼻を摘み笑うアンドレ。


「鼻?ですか?」うん?と言う表情のアリーセ。


「俺は狼の獣人の血が入っているからな、アリーセの匂いで分かるんだ」


「!!れっ!レディの匂いを嗅いではいけません!」

これはちょっと恥ずかしい!汗くさくない?!大丈夫?と混乱するアリーセ。


「何でだ?アリーセは良い匂いだぞ?花の匂いだ」


「だからダメです!」顔が真っ赤になるアリーセ。


「なに?この甘酸っぱいやり取りは」アリーセの後ろに控えるガイエスブルクは自分とシーナの事を棚に上げて内心で笑っていた。


目の前の2人より自分達の方が、周囲から生暖かい目で見られている事実を知らないガイエスブルク。


「そっ、それより獣人の話しに興味があります!」


「獣人」この世界では「神使」として扱われており、人数も少なく神殿や神社とかに住んでいてほとんど人前に出てくる事は無い。


人狼族ともなれば地方によって土着神として崇められる存在で龍種よりレアなのだ。


「ああ、俺の母さんは銀狼族なんだ」


「なんと?!」これにはアリーセもビックリだ。


一般的に銀狼族は想像の存在として認識されているほど超レアな存在だ。


実はアリーセは自分自身の方が余程、超激レアな存在なのだが・・・

その事実はシーナとユグドラシルが全力で隠蔽しているので本人も知らないのだ。


「じゃあ、アンドレ様は獣人化出来るのですか?」


「一応な、あまり長くは出来ないけど」


「銀色の髪って珍しいと思ったらそう言う事だったのですね」


「いやアリーセの緑色の綺麗な髪の方が珍しいって」


「!!だから綺麗とかやめて下さいです!」

アンドレは明らかにアリーセを口説いてるのだが、アリーセもまんざらでない反応をしている。


それを間近で見せられて「甘酸っぱい!」ガイエスブルクは身悶えしそうだ。


ちなみにアンドレは、この時点でもガイエスブルクの存在に気がついていない。


ガイエスブルクの魔力操作が卓越し過ぎているせいだ。

アリーセもテンパってガイエスブルクの存在を忘れている。


「そう言えばアリーセって辺境伯家の出身だったんだな?」

いよいよ本題に入るアンドレは真剣だ。


「本当は違いますけど・・・一応は、はいです」


「そうか!なら俺の婚約者になってくれ!アリーセ!」


「ふえ?!」


「こいつ言ったー!!凄え!」ガイエスブルクは感動した!


超ストレートな告白にガイエスブルクは種族を超えてアンドレに対して尊敬の念を覚えたのだった、・・・いやお前が奥手過ぎるんだよ!


「俺の婚約者はピアツェンツア王国の貴族から選ばれるらしいんだ。それなら俺はアリーセが良い!」真剣な顔でアリーセを見つめるアンドレ。


さあ!どうするアリーセ?!


しかし!そこは地龍なアリーセ、恋の駆け引きなどしない、答えはYESかNOのどちらかないのだ!即断即答あるのみ!


「分かりました、いいですよ!」

倒れそうなほど顔を赤くしてアリーセは婚約のOKを出した!


「そうか!ありがとう!アリーセ」両手でアリーセの手を握るアンドレ。


このやり取りを見てガイエスブルクは思った!絶対にこれだけは、言わねばならないと・・・息を吸い込み、

「アリーセ!シーナとユグドラシルに相談しないとマジでヤバいぞ!」


「きゃあああああ???!!!」


「おわああああ???!!!」


いきなりの意識外のガイエスブルクの叫びに超ビックリの2人だった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いや悪かった。認識阻害の魔法陣を起動してたの忘れていたよ・・・」


ガイエスブルクは、めっちゃドキドキでテーブルに突っ伏したまま復活しない2人を見て謝る。


「きっ貴殿はどなたですか?」

さすがはヴィグル帝国の皇族のアンドレだ!どうにか復活した。


「いや本当にすまなかった。俺はガイエスブルク、これでも地龍だ。

今回はアリーセの護衛として来ているんだ、よろしくなアンドレ」


「!!地龍様ですか?!始めまして!アンドレです!」アンドレが思わず手を出すと

ガシッと握手をする2人、ドキドキアリーセはまだ復活しない。


するとアンドレはおずおずとガイエスブルクに尋ねる。

「あの・・・やはり地龍様であるアリーセとの婚約は問題ありますか?」


「敬語はいらないよ、その点は地龍としては別に問題はないぜ、異種族との結婚は結構あるからな。

問題なのはアリーセの母親だ、このまま話しが進むととんでもない騒動になりそうだからな」


自分に何の相談無く、娘のアリーセが婚約を決めた・・・

これがどれだけの大騒ぎになるのか、想像も出来ないガイエスブルクだった。


それから龍都の学園でアリーセの帰りを待つ1人の男の子の存在・・・これも何とかしないとお祭り騒ぎが必至だ。


しかし、


「アリーセが決めたんだから俺は協力するぜ。でも今日の所は保留だ。

とにかく絶対に、シーナ、ユグドラシルには先に相談するべきだ。」


「わっ・・・分かりましたです、師匠・・・」どうにかアリーセも復活した様子だ。


「やはり半獣人の俺では地龍様には問題があるのですね・・・」


「いや?シーナは半人半龍だからな、そんな事は気にしないぞ、・・・多分な、

アリーセが承諾したんだからアンドレとの婚約も反対しないと思うぞ?」


「えっ?ではなぜ?」


「自分抜きで話しが進むのが嫌なんだ、寂しがり屋だからな」

そう言いながら笑うガイエスブルク。


「でもファニーさんがなんて言うかは俺にも分からん」


「何故、王妃様が出てくるのですか?」 

同じヴィアール辺境伯家の一門だから?と考えたアンドレだが、予想もしていなかった答えが返って来る。


「ママは王妃様の実の娘なのです」


「・・・・・・・・はっ?」


「話せば長くなるんだけどな・・・」

ガイエスブルクは簡単に今までの経緯を説明する。


「なるほど・・・」

考え込んだアンドレを心配そうに見つめるアリーセ、「嫌われてたかな?」と悲しい気持ちになると、


「俺がアリーセを幸せにすれば良いんですね?!」


「そう言う事だ、ちゃんとシーナを説得すれよ!アンドレ」


超前向きな結論に達したアンドレと、それを煽るガイエスブルクにずっこけた。


「でも、冷静に考えると問題が山積みです!でも頑張ります!」


アリーセも超前向きになった!


「それで師匠・・・」ガイエスブルクは嫌な予感がした。


アリーセのこの言い回しはいつものあれだ!

「あたしの婚約とママの婚約は一緒にします!」


アリーセはガイエスブルクとシーナの成人後に結婚をやたらと勧めてくるのだ。


「!ガイエスブルクさんはアリーセの母君と結婚するんですか?

・・・では、俺の義理の父親になるんですね?凄え!」


「大きな声で騒ぐなって・・・みんな見てるぞ」


「「あっ」」


認識阻害の魔法を解除してこれだけ騒げば当然注目の的だ。


いきなり始まった婚約騒動にみんなポカーンとしている。


「・・・すみませんです」


「まぁ俺に関してはちゃんと考えてるから大丈夫だよ」

ヘタレのガイエスブルクだがシーナの事はちゃんと考えている。


単にシーナがやたらと動きまくるから話すタイミングが全然無いだけだ。


これに関してはガイエスブルクは悪くない。


「お前達は勢いで婚約の話しになってるだろ?

俺は話しが聞こえない位置まで下がるから、もう少し2人きりで話した方がいい」


そう言うとガイエスブルクは少し距離を取り2人に背を向けて立つ。

注目を浴びてしまったので周囲を牽制する為でもある。


「ありがとうです、師匠」


「・・・なんで師匠なんだ?」


「地龍の学園での指導者が師匠なのです!」パァと笑顔になるアリーセ。


「えっ?地龍にも学園があるのか?

凄え!始めて聞いた!教えてくれよアリーセ!」


「学園ではですね・・・・」


また2人で楽しく会話を始めた2人。ガイエスブルクはそっと防音結界を張る。


「婚約か・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こちらの貴族の令嬢とアンドレ皇子の婚約ですか?」

国王ヤニックはヴィグル帝国皇太子エフレムの提案に少し困惑していた。


今となっては引く手数多だろう皇子アンドレの結婚相手をピアツェンツア王国の貴族令嬢から選びたいとの提案だ。


「本来なら私とラーナ殿下との婚姻が一番なのでしょうが私には既に息子が2人おりますので」と笑うエフレム。


暗に妻の他の女性と関係を持つつもりは無いとの意思表示だ。


現在進行形で側室問題を抱えてるヤニックはジト目のファニーとスージーからそっと視線を外した。


ラーナは難しい顔をしているが口元は笑っている。


ラーナの側室への本心は、

「早く妹と弟をたくさん作って下さいまし!」だ。


当然兄弟がもっと欲しいのも事実なのだが、兄弟が増えれば自分の負担が軽減するからだ。


しかし困ったとヤニックは思う。

それは、丁度世代的にアンドレと年齢が合う高位の貴族令嬢が居ないのだ。


これは本当にただの偶然でこの年代はなぜか子息ばかり生まれたのだ。


その為に王子ロミオの婚約者を国外の姫から探している最中なのだ。


悩み始めたヤニック国王にエフレム皇太子が、

「実は、アリーセ・フォン・ヴィアール子爵令嬢をアンドレの妻に迎えたいのです」


「ブホォ!!」「ブハァ!!」静かに食事をしながら話しを聞いていた王妃ファニーと王女ラーナが同時に水を吹き出した?!


貴女達!シーナじゃあるまいしなんですか?!王族の淑女がはしたない!


「お前達・・・」これにはさすがに呆れるヤニック国王。


「ケホケホ、もっ申し訳ありません」ここまで盛大に吹き出した事が無かったラーナは恥ずかして仕方ない、珍しく動揺しまくりだ。


「ケホケホ、申し訳ありません」昔はよく食事中に吹き出してた王妃ファニーは堂々としたものだ。


しかし真横で母スージーが物凄い形相で睨んでいるぞ!ファニー!


「しかし何故、アリーセを?」横にいる母スージーが怖くて見れないので真っ直ぐ皇子エフレムから視線を外さない王妃ファニー。


「実はアンドレがアリーセ嬢に一目惚れしたらしいのです」


「おお!そうでしたか」

渡りに舟だと思ったヤニックだが一つ疑問がある・・・


「アリーセ子爵令嬢とは誰だ?」と


ヤニックの頭には貴族の顔と名前は全て入っているはずだが、ヴィアール辺境伯家筋のアリーセ子爵令嬢と言う人物は知らないのだ。


確かヴィアール子爵家は3家あったはず・・・

まだ会った事が無い令嬢かな?と本家のスージーを見ると首を振られた。


?でもファニーとラーナは知っている令嬢だよな?とファニーを見ると凄い勢いで視線を外された?ラーナを見るとやはり視線を外した?


「ほほほ、とりあえずこのお話は本家ヴィアール辺境伯家で前向きに検討します」

笑顔で答えるスージーの手はファニーの腕を掴んだまま離さない。


「どう言う事かしっかりと説明してもらいますからね!」

と言う母の心の声が聞こえて背中の汗が止まらない王妃ファニー。


「ラーナ?貴女もですよ?」と祖母の声が聞こえたラーナも背中の汗が止まらない。


この同じ時、2人で楽しく会話を続ける、アリーセとアンドレを尻目に、スージーの娘と孫娘への尋問タイムが確定した。


母親のシーナは完全に蚊帳の外だった。

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