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新緑のアリーセ編 5話 「ヴィグル帝国の使節団」

樹龍アリーセは、王都の正門前の射塔に陣取り監視任務についていた。

単純にヴィグル帝国の使節団を見学したかったからだ。


「あっ!ママー、見えましたよ!」シーナに魔道具を使い連絡するアリーセ。


アリーセの視線の先には、大勢の兵士に警護された一団が見える。

一団は王都手前500mで一旦停止して整列して待機していた王都憲兵隊に警護任務を引き継ぎ、軍団は左右に分かれ整然と進軍して行く。


裏門まで行軍して彼らの任務は完了だ。

その後は休暇になり建国祭を思い思いに楽しむ事だろう、お疲れ様でした。


警護を引き継いだ憲兵隊も今日は正装で固めている、日本で言うと刑事さん達も正装していると言った感じでレアな光景だ。


憲兵隊が左右に分かれ、真ん中をヴィグル帝国の使節団が行進する。

周辺に見学に集まった15万人の群衆が歓迎を表わす歓声を上げ始める。

ゴルドの大戦で共闘した同盟国の使節団なので人々は心から歓迎している様子だ。


「わっ!わっ!凄いですよ!カッコイイですよ!ママ」

アリーセは初めて見る大規模な式典に大興奮だ、龍種はほとんど式典とかしないので大規模な人間の式典はアリーセには斬新に見えるのだ。


「う~ん・・・王子様は見えないですね」

残念そうなアリーセだが、パレードは王都中央部の大広場から王城までなので、皇子はまだ馬車から出て来ない。


大広場で歓迎の式典が準備完了して、国王ヤニックと第一側妃が待っている。


《アリーセちゃん、そこはもう良いから大広場に来て下さい!》

「はい!了解しました!」と大広場の監視所に転移陣で転移するアリーセ。


アリーセに大広場の式典を見学させる為に移動させるシーナ、監視は?と言うと、

そこはガイエスブルクがしっかりフォローしているので大丈夫だ。


「大丈夫、今のところは問題無しだ」とガイエスブルクから通信が入る。


アリーセが転移して来るとシーナがチョイチョイと手招きする。


大広場脇の射塔は式典を見学するのに一等席だ、アリーセはヒョイと顔を出し、

「わあ!こっちはもっと凄いです!」と感動している。


大広場に近衛兵団3000名と儀仗兵1000名が正装で一糸乱れる事なく整列し、

使節団が通る大通りの両サイドを正装した憲兵隊が並んでいる。


式典会場の周囲を各家からの代表の貴族と官僚達が固めている。


正に国を上げての歓迎だ、王城の謁見場ではこの規模の式典が出来ないので、

ここ大広場が会場になったのだ。


「凄いです!皆んな綺麗に並んでます!」と感動するアリーセ。

龍種でも特に感受性が高いと言われている樹龍らしい姿にシーナはホッコリした。


土龍のシーナの感想は「凄い人ですね~」くらいで特に感動はしていない。

地龍の中でも、かなり種族によって感性に違いが有り、面白い。


すると式典会場にヴィグル帝国の5台の馬車がヴィグル帝国の騎士団と共に式典会場に到着した。


この式典は警備上の観点から近くでの見学は出来ないが遠くの民家の屋根で見学しているのか民衆から拍手と歓声が上がった。


馬車が止まり歓声と拍手の中、馬車からヴィグル帝国のエフレム皇太子が降りると更に歓声と拍手が大きくなった。


「あれえ?あの人・・・どこかで会った事ある様な・・・」

そう言うと、ん~?首を傾げるシーナ・・・


「えっ?ママは王子様と会った事があるのですか?!」目をキラキラさせて、

期待の眼差しでシーナを見るアリーセ。


「ん?んん?・・・いえ、気のせいかも知れないですね」とシーナが言うと、


《あの人はブザンソン丘陵でシーナについて来てくれた重装歩兵の人だろ?》

とガイエスブルクから思念波が届いた。


「えっ?ああ!思い出しましたよ!そうですよ!隊長さんですよ!」


なんとビックリ、地下要塞の探知の時にシーナの護衛について来てくれた重装歩兵の隊長がヴィグル帝国のエフレム皇太子だったのだ!


その後のお祭り騒ぎのせいでシーナはすっかりと忘れていたが仕方ない。

それくらい海星龍ジャコブの印象が強すぎたからだ。


そもそも、あの時のエフレム皇太子は徹底的に重装歩兵としての任務に集中していたので、お互いに名前も名乗ってないのだ。


「ほへー、変わった王子様ですねぇ」


《いや!皇太子もお前にだけは言われたくないと思うぞ》と笑うガイエスブルク。


「それで?それで?」ワクテカなアリーセだが、あの時はそんな甘いイベントなどがある様な空気じゃ無かったので返答に困るシーナ。


「え~?困りましたねぇ・・・あの時は緊張状態でしたから、お互いに必要最低限のお話ししかしてないのですよ」とシーナが言うと、

「え~」と不満そうな声を上げるアリーセだが、戦闘中だからね。


《はいはい!貴方達、今は監視に集中、集中!》思念波は龍種のチャンネル全通なので会話は全て天龍レンヌに聞かれているので、当然怒られる。


「あっ!そうですよね、すみません」とシーナは意識を外に向ける。


国王ヤニックとエフレム皇太子が挨拶を交わしてから握手をする。

その後は第一側妃から順番に大臣の紹介と公爵家の代表、侯爵家の代表の紹介が始まっている。


この辺りは多分読んでて面白くないと思うのでカットします。

・・・《書くのが面倒くさいだけだろ?》・・・煩いですよ地龍君!


エヴァリスト宰相と高位貴族の当主は謁見会場で王妃ファニーと一緒に待っている。


王女ラーナは謁見会場での式典の後に会談があり、その準備があるので欠席中だ。

上手くサボれて良かったね!


一通りの挨拶が終わり、豪華な装飾の白馬8頭立て8人乗りのフルオープンの馬車に国王ヤニックとエフレム皇太子が中央の列に並んで座る。


前列には次期宰相のクロッセート侯爵と同行して来た、ヴィグル帝国の外務大臣が並んで座り、後列には第一側妃と外務大臣が座る。


最後列は近衛騎士団長のティボーとヴィグル帝国使節団の警備隊長が座った。

この配置で王城までパレードする。


戦闘の近衛の騎馬兵がゆっくりと動き出す。


パレードが市街地に出ると大歓声が上がった、街の民家の屋根には沢山の、

ピアツェンツェアの国旗とヴィグル帝国の国旗が靡いてる。


エフレム皇子が乗る馬車が通ると先々で花びらが撒かれて歓声が上がる!


これにはエフレム皇子も少し驚き、隣りに座るヤニック国王に、

「こんなに盛大な歓迎、ありがとうございます」と思わず笑顔になる。


「いえいえ、私ではなく民自ら歓迎を示してくれているのですよ、エフレム皇子、

どうか民の歓迎に応えてやって下さい」


ヤニック国王を促され少しぎこちなくはあるが、エフレム皇子が笑顔で民に手を振ると、


ワアアアアアアアア!!!と大歓声が上がった。


この歓声を聞き「来て良かったな」とエフレム皇子は思った。


戦後すぐの警備の問題から僅か1,500mの短いパレードだったが大成功と言っても良い、素晴らしいパレードだったと、次の日の新聞の表紙に大きく書かれたのだった。


そのまま王城へ入り、ヤニック国王とエフレム皇子は並んで謁見会場へ入る。


今度は身重の第三側妃がヤニック国王と並んで、ヴィグル帝国使節団を迎える。

王妃ファニーも第一側妃の隣りに居るのだが見事なくらいに空気になっている。


紹介された時におお?!とエフレム皇子が驚いたくらいだ。


ここでの式典は両国の正式な同盟の調印式だ、むしろこの調印式に出る為に、

エフレム皇子はピアツェンツェア王国に来たと言える。


2冊の調印書にヤニック国王とエフレム皇子のサインがそれぞれ書かれて両国に、

1冊づつ渡されて同盟が正式に締結された。


会場は拍手喝采に包まれて調印式も滞りなく終わった。


この同盟は後に「300年同盟」と呼ばれて長く両国は同盟関係になるのだ。


よし!次は晩餐会と舞踏会だ!とはならず、今日はこのまま解散になる。

さすがに立て続けでは、長旅をして到着したばかりの使節団が大変だからだ。


大晩餐会は明後日、大舞踏会はその2日後だ、今日は各人の部屋でのんびりと食事と酒を楽しみ、ゆっくりと寝るだけだ。


武人のエフレム皇子もさすがに疲れたのか、簡単な挨拶をヤニック国王と交わして早々に客室へと向かい、今日の行事は終了。


この後は国王ヤニックと妃4人が集まる、恐怖の晩餐会があるのだが、当然、王女2人は逃走するのだ、あれ?ラーナとの会談は?


そんなのお客様が疲れてるのにやる訳ないでしょう?


さすが軍師ラーナ王女殿下、会談は中止して自分は既に行方不明になっている。


まぁ、自分の私室の屋根裏部屋に隠れているのだが、今や屋根裏部屋は下の部屋より

設備が充実している最高の隠れ家なのだ。


今日だけは天龍レンヌも王妃ファニーも見て見ぬふりだ。

シーナ?奴が姿を現す訳ないでしょう?


そう言うと言い方が悪い?じゃあ彼女はこれから夜間の警備の仕事があるので。

と言う建前だから同じだよね。


こうして各々のそれぞれの夜がやって来た。

王都外の会場は煌々と照明が焚かれて今日はオールだぜ!状態だが。


その夜、アリーセは夜間の見廻りの任務を買って出た、シーナとガイエスブルクは日中の間ずっと索敵魔法を使い疲れただろうから、と思ったからだ


それを聞きシーナは少し考えてから、

「んー?何かあったらすぐに思念を飛ばすか警報の魔道具を使う事、いいですね?」

それから幾つかの見廻りの注意点を教えて見廻りを任せた。


「はい!分かりました!ママ!」アリーセは意気揚々だ。それから装備を確認してすぐに外に出て行った。


そんなアリーセを見送り、

《アリーセ、大丈夫でしょうか?》やはりアリーセが心配な様子のユグドラシル。


「アリーセちゃんもそろそろ仕事を自分1人でこなす訓練しないとダメです。心配をするだけが親の仕事じゃないですよ?」珍しく正論を言うシーナ。


「ユグドラシル、大丈夫だって、アリーセはしっかりと訓練を頑張ったからな、貴女が思ってるほどアリーセは弱くないぜ」とガイエスブルクが太鼓判を押す。


《そうですね・・・わたくしもしっかりとしないと・・・》


今回に関してはコッソリと後を尾けるのもナシにする。

アリーセを信じて自分達はしっかりと仮眠を取るのだ、それが仲間と言う物だから。


見廻りに出たアリーセは覚えた手順をしっかりと守り項目毎に点検をして行く。

途中、別の見廻りの者と遭遇すると、きちんと情報交換も忘れない。


情報交換した憲兵の兵士に「君、しっかりしてるなぁ、この調子で頑張れよ!」と

激励され「はい!ありがとうございます」と元気に答える。


「あっ!そうだ!」兵士は何かを思い出して、


「これは極秘だが、実はヴィグル帝国の第二皇子の「アンドレ」様が今回お忍びで、

使節団に同行して来ている、歳は12歳で髪の色は銀髪で目の色は黒だ、一応頭に入れておいてくれな」アリーセが予想してなかった情報を出す兵士。


「えっ?そうなんですね?「アンドレ」・・・はい!覚えました!」


こうして兵士と別れて見廻りを再開するアリーセ。


一通り担当の地区を見て廻り、

「大丈夫ですね、おかしな魔力も感じませんでした・・・

一回帰りましょう!」見廻りを終えて拠点の射塔へ帰る為歩き出すと・・・


龍眼が300m先の茂みから茶色の髪の少年が出て来て、キョロキョロと辺りを見回している姿を捉えた。


「どこかの貴族の子息でしょうか?・・・

特に大きな魔力は感じられませんね、普通の男の子です、迷子でしょうか?」

でもこんな夜中に何を?と不審に思い少年に接近して見るアリーセ。


万が一の場合に備えていつでも警報の魔道具を作動可能しておく。


すると変な方向に歩き出す少年、そっちに行くと行き着く先は城壁しかない・・・

いよいよ不審感を募らせて更に歩くスピードを上げて少年に接近するアリーセ。


城壁が見えて立ち止まる少年、またキョロキョロと周囲を見回している。

少年から50mまで接近したアリーセは歩くスピードを緩めて後ろからゆっくりと近づいて行く。


5mまで接近したアリーセは声を掛けるべく息を吸い込んだ。

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