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新緑のアリーセ編 4話 「ピアツェンツェア王国建国祭」 その2

王都内の警備状況が安定したのでシーナ、ガイエスブルク、アリーセの3人は、

2時間の休憩を貰えたのでお祭り見学をする事になった、明日からは休憩がないはずなのでイノセントの心使いなのだろう。


シーナとガイエスブルクは余り食事はしないがアリーセは結構食いしん坊なので付き合う事にする。


「ママ!アリーセはあれを食べたいです!」

アリーセが騒いだので見ると串焼肉屋だった、それを聞きシーナは「そう言えば食べた事なかったですね」とファンタジー系主人公に有るまじき暴言を吐いた?!


「そう言えば俺も食べた事ないな」ガイエスブルクお前もか?!


そこで早速、初串焼肉を食べる3人は・・・


「美味しいです!」アリーセは普通に喜んでいる。

「おっ、結構美味いな」ガイエスブルクは普通の反応だ。

「んー、もう少し塩が欲しいです」この塩辛好きめ!


「次はアレです!」とアリーセが指差したのは、ラーナが絶賛した、卵パン屋だ、相変わらず客が多いが丁度列が途切れそうなので並んで購入して食べて見る。


「これ凄い美味しいです!」アリーセも卵パンを絶賛した。

「ああ、これは美味いわ」ガイエスブルクも気に入った様だ。

「美味しいですけどもう少し塩が欲しいです」君はもう良いよ。


するとアリーセが・・・

「ママ、あまりお塩を取り過ぎると頭の血管切れるからダメです」

と至極真っ当なダメ出しをシーナに食らわせた!


良く言ったアリーセ!

大ショックのシーナはシオシオと引っ込み、ユグドラシルと交代した。


苦笑しながらユグドラシルは卵パンをパックンチョすると、

「あら、卵にお砂糖が少し入ってますのね、それにお出汁とパンの相性も素敵ですわ、大変美味しいですね」とシーナとは全く別の感想を言ったので舌の異常でなく、シーナがおかしい事を証明してしまった。


「シーナが食事すると胃もたれが酷くて・・・」 

相棒の愚痴をこぼすユグドラシル、やはり胃もたれしてたんだ。


本格的にシーナはいじけたままなので、そのままユグドラシルがお祭りを回る事になった。


「ごめんなさいねガイエスブルク君、シーナはいじけて返事してくれませんの」


お祭りデートに割り込んだ事を謝るユグドラシルだがこれは仕方ない、塩の取り過ぎで頭の血管がプッチンと切れてからでは遅いのだ!


龍種でもプッチンといくのかは知らないが。


「ああ、いや良いよ、のんびりデートとかする時間も無いしな」

笑うガイエスブルクはもう以前の可愛いらしさは無く精悍な青年だ、

その笑顔にシーナと同一存在のユグドラシルはクラっとした。


《ほらほらシーナ、ガイエスブルク君カッコいいですわよ》


《・・・ユグドラシルが代わりに見ておいて・・・》


《もう・・・》



そんな事を魂の中で話しをしているとアリーセがまた騒ぎ出す、

「あっ!変なのがあります!」とアリーセの指の方向を見ると小弓を使った射的だった。


5本の矢で射って合計点数で景品が貰える様だ女の子を対象にしているのか景品は可愛いらしい物が多い。


目がキラキラしてるアリーセを見て「よし、やって見るか?」とガイエスブルクが挑戦する、狙うは50点満点の大きなウサギのぬいぐるみだ!


シュッ・・・トン・・・・シュッ・・・と5本放って合計は38点で髪を結うリボンだった。


「ありがとうございます!師匠!」と赤いリボンに大喜びのアリーセ、早速いそいそとユグドラシルに付けてもらってる。


「お姉ちゃんもやるかい?」と射的屋のおっちゃんがユグドラシルに尋ねる、どうやら姉妹と思われてる様だ、って当たり前か。


「弓ですか?久しぶりですわ」と代金を払い矢を5本受け取るユグドラシル、

おっちゃんは霊樹の力を甘く見ていた、当時、世界全ての森の長、霊樹ユグドラシルにとって弓は自分の体も同然なのだ。


・・・・・・・・


オオオオオオー・・・とユグドラシルの弓術に周囲から歓声が上がった、50点、素晴らしいお手本の様な弓術で見事に全て的のど真ん中に全的中だった。


「いやあ!お見事!参ったよ」とおっちゃんからウサギのぬいぐるみを受け取り、

「うふふ、弓術は久しぶりでとても楽しかったですわ」と満足気なユグドラシル。


それをアリーセに渡すと「ママ!ありがとうです!アリーセはとても嬉しいです!」とウサギを持ってぴょんぴょんともう大はしゃぎだ。


「えっ??ママ?!」とおっちゃんはビックリだ。


「あら?そうですわ」


「いやあこれは失礼、姉妹にしか見えなかったよ」とのおっちゃんに、

「うふふ、ありがとうございます」と笑顔のユグドラシル。


次の出店に向かう3人の背中を見ながら店員の若い青年が、

「親父さん、あの人エルフだったんかい?ローブであんまり見えなかったよ」

と言うと、


「ん?はて?どこかで見た顔な気がしたがエルフじゃなかったぜ」

少し不思議そうにした、銀仮面装備の認識阻害魔法が効いていたからラーナ王女殿下と同じ顔だと認識出来なかったのだ。


気を良くしたユグドラシルは次は輪投げで無双だ!と意気込んだが全部外した、残念ながら弓とは違うのだよ弓とは。


ここはガイエスブルクが魅せて全輪見事棒にくぐらせて景品の水彩画セットをゲットして、これにもアリーセはもう大喜びだ!


ユグドラシルはなぜアリーセがこんなに喜ぶのか不思議だったが、アリーセの趣味で書く水彩画がプロ級なのはまだ誰もあまり知らない事だった。


いじけたままのシーナだが、アリーセが母親のユグドラシルとここまでのんびりと楽しめたのはシーナの作った装備の恩恵そのものなので気にする事はない。


そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて休憩時間が終わりシーナ達は冒険者ギルドに集まって明日の打ち合わせを行う。


シーナは仕事になるとシャンっとするから不思議だ。


「お前達が発見した容疑者は全員「黒」だった、良くやったぞ!

尋問の結果、王都内に潜んでいた仲間もほとんど憲兵隊が拘束した、まだ他のグループがいるそうだが、かなりの打撃を与えただろうな」


資料を見ながらイノセントが今日の結果報告を開始する。


「やはり魔族の関与はありませんか?」

先程のおばかさん全開とは全然違うキリッとした表情のシーナ。


「調査中だが資金提供だけは受けていた様子だな、なので装備はそれなりに充実していた、魔道砲まで装備していやがった」携帯式小型魔導砲を見せるイノセント。


シーナは魔導砲を手に取り鑑定を始める、地龍は鑑定魔法無しに鑑定できる種族能力がある、他の種族だと人間の思考加速と天龍の自己再生能力がそれにあたる。


「・・・作りは悪くないですが材料が良くないです、5発ほどで壊れそうですね、

命中率は70%と推定します、形状的には西の大陸で出回っている物で現在の魔族の支配領域から流出したと予想します」


鑑定結果を報告するシーナ。


「ここまでは予測範囲内だな、他に何かありますか?イノセントさん」

別の魔導砲の鑑定をしながらイノセントに尋ねるガイエスブルク


「コイツが何か解るか?」とイノセントは黒い球状な物を机の上に置いた、シーナは手に取り鑑定を始めると、

「材質は鉄製です、中身は・・・これは「爆弾」ですね」


本当の爆弾発言をしおったコイツ?!


「爆弾ですか?!」慌ててガイエスブルクの後ろに隠れるアリーセ。


「でも作りが雑過ぎてこの状態では爆発しませんね、威力も弱いです、上手く爆発しても扉くらいしか破壊出来ませんよ」


「お前ならどうやって効果的に起爆させる?」

さすがにイノセントも不発だと知って机の上に置いた様子だ


「私なら10個ほどを何か導火線の様な物で連結させて連続して起爆します、それなら大きな扉でも破壊・・・敵の狙いは王城の裏門ですか?」


この爆弾が対人用でなく扉などの施設破壊用だと見抜くシーナ。


「正解だ、潰したアジトからコイツが100個以上と鉄線やら魔石やらが発見された、それも全てのアジトからな、奴ら結構前から潜んで準備していやがったな」

押収品のリストが書かれた資料をよこすイノセント。


資料を見てシーナは、

「これ本隊は別にいますよね?逮捕した人達は扉の破壊の工作員です、裏門を破壊して本隊が城内に攻め込むつもりですよ・・・

なんて馬鹿なんでしょうか?自殺行為です」


城の扉と言う物は破壊した所で余り意味は無いのだ。


いや、意味はあるのだが最初から扉を突破される事を前提に防御施設を併設するので防御施設を先に破壊してから扉の破壊、それから突入である。


扉の破壊=落城、などは地球の歴史でも紀元前まで遡る概念である。


まぁ、扉は破壊されないに越した事はないのだが、戦争になればまず間違いなく破壊されるのだ。


扉が破壊される度に落城していたらキリがない、特にピアツェンツェア城は戦城なので裏門からは逆千鳥の塀が幾重にも設置されている。


分かり易く説明すると中から出易く、外から入りにくい斜めに交互に設置されてる侵入してくる敵に視覚混乱を起こさせる防衛施設だ。


ピアツェンツェア城は更に塀の色を変えて視覚の混乱効果を高めている、

塀は機械仕掛けで平時では真っ直ぐになっているので、

このカラクリ余り気づく者は少ない。


本気で扉からの突破を図るなら正門から正面通路の正面突破が1番突破が出来る可能性が高い。


外国からの使者などが来城した時に通路を一直線にしてすんなり通り易くなっており圧迫感を無くす設計になっているからだ。


しかしそれも謁見場までで、戦時には謁見場は「キルゾーン」に設定されている。


戦闘時は謁見台に三段階の段差が出来て、敵を大広間に集めて上下3方向からバリスタの集中攻撃が待っているのだ。


基本攻城戦でいきなり正門と裏門を狙うは下策だ。

狙うなら別働隊が城壁を登り側面攻撃で門周辺を制圧してから扉を破壊して大軍で場内へ強行突破だ。


それでも強行突破は味方のかなりの損害は覚悟しなければならない、なので包囲してからの兵糧攻めが歴史を見ても圧倒的に多い訳だ。


「連中は夢の中の住人だからな、成功する想像しか出来ないのさ、捕らえられた連中も「今から仲間が助けに来るから見てろ!とまあ、本隊の存在を盛大に白状してるのだから笑えるな」


イノセントは別の資料をシーナに手渡す。


それを見たシーナの眉間に皺がよる

「何でこんなに本隊の詳細な編成が判明しているのです?」


「連中、煽れば煽っただけ喚き散らしてくれるからな、尋問が楽で仕方なかったよ、ちょっと小馬鹿にすると○○伯爵が来るぞ!X○子爵もいるぞ!ってな」

あはは!と思い出してイノセントが馬鹿にした様に軽快に笑う。


「でも数は盗賊や傭兵も加わって2000人と多いですね、外の会場にいる人達の安全を確保しないと行けませんね」

資料をイノセントに返すシーナ。


「もう敵の合流地点にガエル侯爵が5000名の兵士を引き連れて出撃してるぞ、公爵家のマッテオが副官だ」ニヤリと笑うイノセント


「ほえ?!マッテオさん、いつの間にそんな出世したんですか?!」

将軍の副官ですか?と驚いたシーナ。


「地道に功績を積み重ねたからな、アスティ公爵家は再興を認められて、マッテオ自身は男爵閣下だ」


「なんでこの馬鹿な連中もマッテオさんの様な発想にならないんですかね?」

ガイエスブルクは笑っている。


討伐の結果、ガエル侯爵が率いた討伐隊が敵本隊と接敵した瞬間に盗賊と傭兵のほとんどが金を持ち逃げをして、嫌々参戦していた従僕達もそれに習い次々に逃走。


その場に残ったのは50名弱と何ともお粗末な反乱騒動に終わった。


捕まった者達は「祭りの恩赦だ」と国王ヤニックの温情で死刑にはならず、

ヴィアール辺境伯領の農園で農奴として働く事になった。


ホッとした彼らだがヴィアール辺境伯領の恐ろしさをまだ知らないのは幸せな事だ。


「これで大分落ち着いてお祭りを楽しめますね!」


と喜ぶラーナ王女殿下、まだまだシーナとのお祭りデートを諦めた訳では無かった。

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