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片腕の王女編 5話 「ユグドラシルの瞳」

シーナを養女として育てると決めた地琰龍ノイミュンスター。


その後、森の中で今後のシーナについての王妃ファニーとの関係などの相談事などを話し合うノイミュンスターと王妃ファニー。

ふと会話が途切れた時にノイミュンスターがファニー告げる。


「「ファニーはすぐに帰った方が良いな」」


「えっ?」


「「当然だ、王妃が忌み子を連れ出して行方不明だ、下心を持つ貴族からして見れば格好の攻撃材料だ、スカンディッチ伯爵領でずっとシーナと共に暮らすならば話しは別じゃがお主にはもう1人の娘がおるのだろう?」


そうだった、死が迫るシーナの事ばかり目が行ってしまっていたが自分にはもう1人命より大事な娘がいる。


シーナの死の危険が遠のいた今、もう1人の娘「ラーナ」にも目を向けるべきだ!早く王城に帰らないと!


バッと顔を上げ「何から何まで諭して頂き申し訳ありません。自分の不得に目を覆うばかりでございます」と言いファニーはノイミュンスターに深く頭を下げる。


「「うむ、時間は最早無いな急いでラーナの所へ戻るが良い、我がお主を転移魔法で王城まで送る、暫しの別れだシーナの顔を良く覚えておくが良いぞ」」


なぜラーナの名まで?!と思ったが時間が無いのだ。

ファニーはシーナを強く抱きしめて「はい!・・・・ああシーナ、母は別れが寂しくて苦しくて仕方がありません」ファニーがシーナの頬に口付けする。

すると「だーあーう」シーナはファニーの頬に片手を出しペチペチと叩く。


その行動を少し不思議に思ったが、「貴方には妹のラーナがいます、いつの日にか2人が会える事を心から願っています」と別れを急がなくてはならない。


「らーなー?」更にシーナはファニーの頬をペチペチと強く叩くのだが・・・


「はい、ラーナです」シーナはファニーに何かを一生懸命に伝え様としているのだが、この時ファニーはそれには気が付かなかった。


「「最後にひとつ、シーナは天龍王様の眷属であった初代国王の血が強く出ている、シーナの右腕が生まれつき無いのもそのせいであろうのぅ、初代国王も生まれつき右腕がなかったからのぅ」」とノイミュンスターは笑う、勿論ファニーを少しでも安心させたい嘘だが、その嘘は真実に近かった。


だから呪いでは無く祝福だ、その初代国王の義手を作ったのは自分だからシーナの右腕の事は我に任せろ、そう優しく言ってくれるノイミュンスターにだんだんと信仰に近い感情を抱くファニーであった。


こうして王妃ファニーの娘を救わんとする苦しい旅は終わった。


「はーは、あーうー」まだシーナはファニーに何かを訴えている。


この時のシーナの訴えがファニーに伝わるまで10年以上の月日が必要だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




転移魔法でファニーを王城まで送り、自らは人化してシーナを抱きながらスカンディッツ伯爵領まで連れていく為に歩きだすノイミュンスター。


喋り疲れたシーナはノイミュンスターの手の中でスヤスヤと寝ている。


ノイミュンスターが歩き出して数分が経った頃、フッと不意に森の木々がフワリと揺れる。


「おおっこれは!お懐かしゅうございます地龍王クライルスハイム様」


最初からそこに存在してた如く地龍王クライルスハイムが現れる。


自然そのものの地龍王が現れるのに予兆は起きない、周辺の小動物ですら地龍王が降臨した事に気がついていない。


自身の足が触れる地の全てが地龍王クライルスハイムの領域だ、予兆など起こる事は無い。


「「ふふふ、久しいな地琰龍ノイミュンスターよ、

お主は近くに居っても我の所に姿を見せてくれぬからな、寂しい限りじゃ」」言葉と裏腹に楽しそうな地龍王クライルスハイム。


「はははは、なんの、我は常に地龍王様と共にあります故に視覚で会う必要はありませぬからのぅ」つられる様に楽しく笑うノイミュンスター。


「「ふふふ、そうか、そうであったな」」とクライルスハイムも更に笑う


地龍王クライルスハイムに最も近い存在と言える地琰龍ノイミュンスター、クライルスハイムが存在してなければ間違い無くノイミュンスターが地龍王だった事だろう。


そして地龍王クライルスハイムの唯一無二の親友でもある。


「「ふむ、してその子がお主の子か?」」とノイミュンスターに抱かれるシーナを見るクライルスハイム


「はい、シーナにございます」とクライルスハイムにシーナの顔が見える様に抱き位置を変える。


その場に居なくても山の中での出来事の全て把握している地龍王、その事を良く知っているノイミュンスターは今までの経緯の説明をする事は無い。


「「そうか、お主の娘なれば我も祝福を授けなければな」」と地龍王は優しい瞳でシーナを見て笑う。


「おおっ!それはまた、有り難き事にございます!是非にお願い致します!」とノイミュンスターはクライルスハイムのすぐ側に近づいて行った。


祝福を授けるべき手をシーナにかざす地龍王、魔力が森を覆い始め風が木々を揺らし始める、するとシーナがパチリと目を覚ました。

そうしてシーナは小さな片手をクライルスハイムに出して「だーあうあー」と話し掛けた、すると地龍王の目が淡く光を放つ


「「むっこれは?・・・・・」」地龍王の薄緑色の目とシーナの青色の目が強力な光を放ち共鳴を始める。


「地龍王様・・・これは?」ノイミュンスターも突然の事に驚く。


「「解らぬがユグドラシルの瞳が何かを訴えておる・・ふむ・・・どれ?こうか?」」


「!!!!!地龍王様?!!なにを?!!」驚いたノイミュンスターが叫ぶ!


なんとノイミュンスターが叫ぶよりも早くクライルスハイムは自分の右目を抉り出してしまったのだ!

しかし取り出した目は宝石と言って良い美しさだ。


それを地龍王はシーナにかざして見る、すると・・・


シュッ!


クライルスハイムの右目はシーナの右目に当然の様に吸い込まれてしまう!


「!!!!なんと?!!!」驚愕するノイミュンスター。

ユグドラシルの瞳が他者に移動するなど10000年近く存在していたが初めて見る現象だったからだ。


「「定着したな」」


クライルスハイムも驚愕したと言っても良い表情だ、自分の目は既に幼子の中で一体化してしまっている。


それから自分の記憶、龍種としての能力、ユグドラシルから授かった力の一部が譲渡されているのも感じている。


「「ふむ・・・・ノイミュンスターよ、この幼子の親となる決意をしたお主には申し訳ないが・・・

この幼子は我の娘となった様だ、我に直接繋がる分身体とも言える」」シーナと魂の繋がりを感じるクライルスハイム


「おお・・・これは驚きですなぁ、しかしシーナがクライルスハイム様の娘になったとは喜ばしい事ですな!」シーナの父になれなくなって少し残念だが、ノイミュンスターは本当に喜んでいる。


「「しかし幼子には過ぎたる強すぎる力だ自身で扱える様になるまで我が封印を施す事にしよう。


お主は我が娘の側にあって時期がきたら開封を施す役目を頼む、我は人間の中で生活するのはかなわぬからな。


龍種の中でのみ生活するのも悪影響が及ぶ、お主が人の町で娘を導く師となってくれ」」ノイミュンスターに軽く頭を下げるクライルスハイム


「はは!!不肖の身なれど地龍王のご息女を導き健やかに成長出来る様、全身全霊をもって役目を果たす所存!」

とノイミュンスターもクライルスハイムに頭を下げる。


眷属は数多く居れど、自身に子など持った事などなかった地龍王、よもや自身が子育てに忙殺される未来が待っていようとは、今は考えもつかない地龍王クライルスハイムであった。


「「ふふふ、我が娘を持つなど長生きはして見るものじゃ」」


「はははは、左様ですなぁ」


「うーうーうーだーあーうー」とシーナはまだ何かを言っている。


しかし2人にもシーナが何かを訴えている事に気がつく事は無かったのだった。





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