新緑のアリーセ編 2話 「エレンお姉さんの幸せ」
エレンとガイエスブルクの2人はガイエスブルクの兄である龍戦士ブリックリンの家で学園から移り住んだ樹龍アリーセと一緒に住んでいるのだそうな。
その事をクライルスハイムの警護の龍戦士から教えてもらい早速ブリックリンの家へ向かうシーナ、特にエレンと会うのは4ヶ月ぶりくらいだ。
楽しみのあまり少し早足になるシーナだった。
「アリーセちゃんもブリックリンさんのお家に住んでるのですね、アリーセちゃんから、ユグドラシルは何か聞いていましたか?」
《えっ?うーん、・・・わたくしも初耳ですわ、進化の眠りから覚めた直後に会った時は何も言ってませんでしたわ、何かあったのでしょうか?》
まあ、皆んな一緒に住んでるなら問題ないか・・・
シーナはあまり気にしないでブリックリンの家に到着して呼び鈴を鳴らそうとした瞬間に・・・バタン!
扉が開き、樹龍アリーセが中から飛び出してきた!
しかしこれは通常運転なので冷静に「えい」とアリーセを抱き止めるユグドラシル。
「ママー!ママ!ママ!」いつも通りにユグドラシルに甘えまくる樹龍アリーセ、
大分背が伸びて来たね!もう幼児で無く少女になったアリーセだった。
ユグドラシルも何度もアリーセにキスを落としながら
「うふふ、アリーセ、元気そうで安心しました」と優しく背中を撫でる。
「そう言えば、アリーセはブリックリンさんの所に住んでいたのですね」
ユグドラシルが問いかけると、
「はい!アリーセは今、エレンお姉さん達と一緒に住んでいます!学園の課題の社会勉強なのですよ!ママ」と元気に答えるアリーセ。
すると人化したガイエスブルクが笑顔で奥から出てきた。
「よお!何か久しぶりになっちまったな、元気だったか?シーナにユグドラシル」
久しぶりのガイエスブルクも元気そうだ。
「はい、ガイエスブルクも元気そうでなによりでしたわ」
ぴょんぴょんと戯れ付くアリーセをハイハイと宥めながらユグドラシルが微笑む。
「ああ、ありがとうな、兄さんは仕事で居ないけどエレン姉さんは奥に居るから入ってくれよ」
と家の中にユグドラシルを招き入れるガイエスブルクだが・・・
《ん?地龍君って「エレン姉さん」って呼び方だったけ?あれ?》
少し違和感を覚えるシーナ、お姉さんだよね?
ブリックリンの家は何と言うか「武家屋敷?」と言った佇まいで味が有る作りだ、
龍化すると爪で畳を痛めるので龍化禁止の家だそうだ。
《ほへー初めて見る造形です!何か落ち着きますよ!この造形は》
初めて見る和風の佇まいに興味津々のシーナ、これが最近の地龍の流行りだそうだ。
「いらっしゃい」奥の座敷に赤い浴衣?を着たエレンが笑顔で出迎えてくれた。
銀髪ロングの人妻が着る赤い浴衣が放つ色気がヤバい!
ヤバいのだが、ここに居る地龍なメンバーは「服が赤いですね」との感想しかない。
いや!赤いのは見れば分かるわい!
《ユグドラシル!交代ですよ!》シーナに変わり早速エレンに抱きつこうとすると
ガイエスブルクにヒョイと抱っこされて阻止された。
「ふえ?!地龍君?」と不思議そうな顔をするシーナにアリーセが、
「ママ!エレンお姉さんのお腹に赤ちゃんがいるのです抱きついてはいけません!」とアリーセに怒られた。
赤ちゃん・・・って?子供ですね、エレンさんに子供・・・・・
「ええええ??!!子供ぉ?!!」と驚いたシーナが絶叫すると、
「ママ!騒いでも赤ちゃんが驚くからダメです!」とまたアリーセに注意された。
聞けば妊娠3ヶ月目だそうだ・・・それって、いや、余計な事は言うまいて。
「ほへー、驚きましたぁ、だから鍛冶屋にいなかったのですねぇ・・・エレンさん!
とにかくおめでとうございます!」
ビックリしたが冷静になると物凄い喜びの感情が湧き出して来たシーナ。
「うん、ありがとうシーナ。貴女は色々大変な事を考えないとダメな時期だから伝えるの躊躇しちゃったんだ、ごめんね」
姉の妊娠に嬉しさを隠そうともしない妹分に思わず笑顔になるエレン。
「はい!それよりも優しくしますから触って良いですか?」
もう触りたくて限界です!とばかりにエレンににじり寄って行くシーナ。
「うんいいよ」とエレンはシーナの手を取り自分のお腹に持っていくと・・・
シーナは優しくエレンのお腹を撫でる、まだ3ヶ月目なので手にこれと言った感触は無いのだが、シーナは手の平から微量の龍気を感じる。
他の誰の物でも無いお腹の中の子だけの龍気だ。
「ふわー、この子は女の子ですねぇ、とても元気な龍気です!」
シーナが迷う事なく女の子と断言した事に全員が「ええ?!」と驚いた。
「えっ?シーナ、女の子だって分かるの?」驚いたエレンが聞くと、
「はい、龍気から女の子だって分かりますね」シーナはまた断言する。
「ママ!ママ!女の子なの?」とアリーセもエレンのお腹を優しく撫で始めた。
「そうですよ、私とアリーセちゃんと同じ女の子ですよ」
アリーセに微笑むシーナは自分の龍気をお腹に流す。
するとポウとエレンのお腹は暖かくなり「そっかぁ、女の子なんだぁ」とエレンも自分のお腹を撫でるとフッと何かを思い付いた顔をする。
「シーナ、良かったらこの子の名前、貴女が付けてくれる?」
真剣な表情でエレンがそんな事を言い出した。
その言葉に驚いたシーナが「イヤイヤさすがにブリックリンさんに悪いですよぉ」
両手と首をフリフリと振る。
「男の子ならブリックリン、女の子なら私が名前を付けるって決めていたの、だから貴女に付けて欲しいの」
エレンはシーナの目を真剣に見つめる、「あっ本気だ」と悟るシーナ、エレンは自分の子にシーナの加護が欲しいのだろう。
名付けの重要性はアリーセの時に痛感しているシーナは断ろうとも思ったがエレンのお腹の子に加護を与える事が出来るのは自分だけだと直感する。
この胎児に加護を与える力は半分が人間のシーナの特別な能力なのだ。
実は名前は考えるまでも無い、もし自分に女の子が産まれたら付けようと決めていた名前があるからだ。
後はシーナの覚悟次第だが、地龍の王太女として臣下の願いを無視するなどあり得ないのだ。
目を瞑りひとつ息を吐き覚悟を決めてシーナはエレンのお腹に手を当ててお腹の中の子の龍気と自分の龍気を同調させて、
「貴女の名前は「リリーアンナ」です、地龍の王太女たるシーナが名を授けます」
お腹の子に自分の練り上げた特別な龍気を分け与える。
するとエレンのお腹は更に温かくなり何がカチンとはまる・・・
リリーアンナとシーナ、そしてシーナと同一存在のユグドラシルとアリーセにも
リリーアンナとの新たな眷属の繋がり生まれた。
こうしてエレンのお腹の子であるリリーアンナとシーナとユグドラシルに親子の絆がリリーアンナとアリーセに姉妹の絆が生まれたのだった。
「ありがとうシーナ、良かったねリリーアンナ、素敵なお母さんが2人、お姉さんも出来たよ」と愛しい我が子に微笑みながら話し掛けるエレンだった。
そう遠くない将来、幻夢の大魔導士リリーアンナが姉の霊樹龍アリーセが世界をひっくり返す様な大騒動を巻き起こすのだが、そのお話しはまたの機会にでも。
「リリーアンナ!リリーアンナ!」とアリーセは妹が出来た事が嬉しすぎてエレンのお腹に顔を埋めて離れない。
「リリーアンナはいつ生まれるのですか?」と聞くアリーセに「そうね、来年の夏頃かしら」と答えるエレン。
「早く生まれるのですよ!リリーアンナ」と一生懸命にエレンのお腹に話し掛けるアリーセが可愛い。
「そう言えば2人の結婚式っていつやるのですか?」とシーナが聞くと、
「えっ?しないわよ?」とエレンが当然の事の様に答えてシーナが驚く。
「ええっ?!なんでしないのですかぁ?」
「なんでって・・・龍種にそんな風習は無いじゃない?子供が出来たら結婚した事になるじゃない?」
義妹の言葉に心底不思議そうなエレンだった。
「良く無いです」シーナが呟く「えっ?何が」
「良く無いですね、やはり結婚式はした方が良いです!龍種は特に地龍はそう言う面でタンパク過ぎます、人間の良い所はドンドン取り入れるべきなのです!」
地龍王太女シーナが演説を始めてしまう。
「結婚式と言われてもな・・・それって何か意味があるのか?」
ガイエスブルクも結婚式をやる意義が分からない様子だ。
「お黙りなさい!地龍君!意味が有る無しでは無いのですよ!
要するに結婚した時をちゃんと思い出に残して大事にする為に結婚式はやった方が良いのです!」
「あっ!アリーセには何となく分かります!龍種はもっと結婚を大事にするべきと思います!」ここで結婚式賛成派の樹龍アリーセがシーナの援護をする。
「うーん・・・俺にはちょっと分からない話しだけど後はエレン姉さんの気持ち次第じゃないか?エレン姉さんがしたいなら俺も協力するよ」
ガイエスブルクも徐々に結婚式賛成派に傾いて来た様子だ。
「えっ?私?・・・そうね・・・正直結婚式には余り興味無いけどウェディングドレスには興味あるわね、ちょっと着て見たいわ」
「では!ウエディングドレスは私が用意しますから結婚式をやりましょう!」
エレンの手をガッシリと掴みゴリ押し体制のシーナ。
何でシーナがこんなに結婚式に拘るか?それは当然自分が結婚式をしたいからだ!
シーナの人間の女の子の部分がそれはもう結婚式に憧れているからだ。
「えっ?ええ、分かったわ、でも出産してからよ?ブリックリンも任務で暫く帰って来ないからね」シーナの勢いに完全に負けたエレンは結婚式開催を承諾する。
「やったー♪アリーセちゃん!私達も準備頑張りますよぉ!」
「はい!ママ!アリーセも頑張り増す!」と手を取り合ってキャッキャと喜ぶ2人を見て少し困った様子のエレンだが結婚式には少しワクワクして来てる。
「この子が生まれた後に結婚式もするのね」と呟きながらお腹を撫でるエレンは幸せそうだった。
しかし・・・ここでのシーナの結婚式の話しが、とんでもない大騒ぎの末にとんでもない結婚式になるのだが。
「それで?シーナはピアツェンツェア王国の王女の地位返上とかの話しは上手く行ったのか?」ガイエスブルクが大事な事を聞いて来た。
「あっ!そうでした、色々と報告する事がありましたね」
ヘラリと笑うシーナはピアツェンツェア王国滞在時の出来事の報告をした。
「なるほどね、シーナには地龍の王太女とピアツェンツェア王国の王女の兼任は嫌なんだな?俺はそれも有りだと思うが」
「私の事だから絶対に両方共に中途半端になりそうなんですよぉ、私にそんな器用さはありませんねぇ」
実に自分の性格を良く分かってるシーナ、確かに君にそんな器用さは無いよね。
「それで地龍君には私の相棒として色々と手伝って欲しいです!」
妊娠中のエレンお姉さんにそんな無理掛けられないので当然の人選だ。
代わりにガイエスブルクを相棒として連れて行くのはシーナが寂しいからだ。
「俺か?そりゃ良いけど、王都にはアリーセも連れて行くぞ?俺は今アリーセの監督官だからな」
社会勉強の為に学園からブリックリンの家に居候してるアリーセを監督する為に
ガイエスブルクは地龍の総務省から正式に監督官に指名されていた。
それでピアツェンツェア王都にいるシーナの所へ行けなかったのだ。
「本当なのですか?師匠!アリーセもママのお手伝い出来るのですか?!」
アリーセがガイエスブルクに猛然と詰め寄る!と言っても子猫が詰め寄る感じなので可愛いだけなのだ。
「ああ、アリーセはもう世界に出て修行を始めて良い時期だからな、シーナの話しは渡りに船だ」笑いながらアリーセの頭を撫でるガイエスブルク。
「良かったですわね!アリーセ!」これからは娘と過ごせる喜びで思わず飛び出したユグドラシルは思い切りアリーセを抱きしめる!
「はい!アリーセは頑張ります!」えいや!とアリーセも負けじとユグドラシルを
抱きしめ返す、どうやらアリーセはもの凄い負けず嫌いな性格の様だ。
こうして、シーナ、ガイエスブルク、アリーセと言う少し変わった面子で、
ピアツェンツェア王国建国祭に挑む幻夢の銀仮面一行。
そしてこれがアリーセにとって運命の旅立ちになる。
エレンお姉さんが産休に入りしばらく登場しないので外伝で書いた話しを加筆して2話投稿します^^




