幻夢の銀仮面編 閑話 「学園内かくれんぼ大会!ですよ。」
「建国祭ですか?」
冒険者ギルドでガッツリとギルドマスターねイノセントに叱られて、
高威力装備品管理不手際の改善計画の書類作業をようやく終えてその足ですぐに、
王城でラーナの護衛に復帰する為に帰って来た働き者のシーナに王女ファニーが建国祭の事を告げる。
「そうなんですよ♪シーナは王都に中々来てくれなかったので知らないと思いますが年1番の大きなお祭りなのですよ」とニコニコ顔の王妃ファニーが楽しそうに話す。
「そうなのですね!建国祭ですか、楽しそうですね。」と一瞬テンションが上がったシーナだが、成人してもう子供でないシーナに今までの甘い飴は通用しない。
「ん?これって私が王女として参加しなきゃダメじゃない話しでは?」と王妃ファニーの思惑を正しく予想したシーナ、「ぬう・・・これは不味いです。」
と念の為にここは逃走する事にする。
とは言え王都を離れるほどの深刻な話しでもないので王立学園に潜む事にした、
警備状態の確認もしたいのは事実なので、
「私も楽しみです、お母様」とニコリと笑う。
その後、逃走はアッサリ成功、逃走の際に警備責任者の天龍レンヌにはキチンと報告しておく、ホウレンソウは大事だからね。
それを聞き「分かったわ、貴女も大変ね」と笑う天龍レンヌはこの件では中立だ、と言うよりこの後の展開をコッソリと覗き笑うつもりだ。
そう言うと言い方は悪いがレンヌは犯人捜査のデモンストレーションに利用する気だ。これで警備の穴が見つかると良いな程度だが・・・
本気で隠れる高い隠蔽能力を持つシーナと王城から来るプロの捜索隊、これはなかなかのサンプルが取れるとシーナにも本気で隠れる様にアドバイスを送る。
「了解しました!」とシーナのやる気も俄然と上がる。
こうして天龍レンヌのサポートと受けて幻夢の銀仮面の装備に身を包んだシーナは無敵だ・・・と思われたが状況が一変する。
たまたま王城を来ていた王妃ファニーの母親である、スージー・フォン・ヴィアールがシーナ捜索に動いたのだ。
その情報は思念でレンヌからシーナに伝達された。
「私の見立てだと彼女はかなりの実力者よ、気をつけなさい」とレンヌから注意喚起が出された。
こうして、シーナ(孫)対スージー(祖母)のかくれんぼ大会が始まったのだ。
シーナはスージーに会った事は無いが時折聞こえて来る話しでは、自分が全く歯が立たない王妃ファニーが全く歯が立たない相手との事で気合いが入りまくる!
「凄く良い修行になりそうです!」と入念に準備を整える。
《そちらに向かったのはスージー1人よ、他は邪魔だとスージーが拒否をしたわ、凄い自信ね、ウフフ、シーナ不味いわよ、貴女逃げ切れるかしら?》
とのレンヌの煽りに、
「大丈夫です!迎え打つ準備は万端です!」と答えるシーナ。
最近のシーナは自分の最大の能力は魔道具作成能力だと自覚している、無論、龍戦士の道は諦めて無いがその能力を高める事も止めるつもりは無いのだ!
今回の作戦は徹底的に拠点防衛型と決めている、身体能力任せに移動しては格上の相手から逃げ切れないと、シーナは直感で分かっている。
そしてそれは正解だ、もし移動しながらの撹乱戦法を選択したらスージーの索敵能力の前に瞬殺されていた所だった。
とにかく隠蔽魔法を施した魔道具を学園内に大量に配置してスージーに自分の居場所を悟らせない事だ。
拠点は裏をかいて、ラーナの私室に・・・なんてベタな事はしない、実は学園の初等部体育館の裏手の林の地下に拠点を構築済みなのだ!
いや、お前マジで学園で何やってんの?と思うが地下に何かを建設するのは地龍の本能の様な物なので仕方ないのだ。
今回は「かくれんぼ」なので攻撃型防衛機能は全て停止済み、拠点の扉の施錠も解除済み、見つかったら終了だ。
毎日せっせと仕込んだ監視用魔道具に隠蔽魔法魔道具と感覚誤認させる魔道具を起動させるシーナ、
「お婆様!私は負けません!」と気合い充分だ!
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テクテクと王都を見学しながら歩く、スージー・フォン・ヴィアール、髪と瞳の色以外はファニーとシーナ&ラーナと強く血縁を感じ美しい顔立ちの女性。
ヴィアール辺境伯軍の軍服を少し小柄な身を包み、少し白髪混じりの濃紺の髪を後ろに束めて、濃紺色の瞳で楽しそうに街を見ながら、学園を目指してゆっくりと歩いている。
少しシワ混じりの顔は凛々しく、町娘達はスージーを見てその凛々しい男装の淑女にキャアキャアと騒いでいる。
「うふふふ、さて私の可愛い孫はどこに隠れているのかしら?」
孫のシーナが仕掛けた「かくれんぼ」に期待が膨らむ、とてもヴィアール辺境伯家らしい初対面に可笑しくなり思わず笑いを堪えるスージー。
学園の門で国王の署名入りの手配書を見せて入門の手続きを済ませて、学園内に入ったスージー、さあ勝負開始だ。
「来ましたね!お婆様!」無論、全て門には監視用魔道具が設置されている、その映像は拠点に居るシーナの魔石を加工したモニターに映し出されているのだ。
すると、スージーが魔道具越しにチラッとこちらを見た。
「!!!不味いです!」と監視用魔道具との回路を慌てて切るシーナ。
今のはスージーが魔道具を通してモニターの位置を探っていたのだ。
「この術式の回路を簡単に突破してくるなんて・・・お婆様、凄いです!」
危なかったぁと、フウと息を吐いたシーナだった。
「あら?気付かれちゃった」と楽しそうに笑うスージー、すでに祖母に手玉に取られる感じがヒシヒシとする。
「じゃあ、裏をかきそうな所から探しましょうか?」と迷いなく真っ直ぐラーナの私室へ向かうスージー。
裏をかいてラーナの私室を拠点に選んだら1発終了だった。
留守番のメイドに事情を話してラーナの私室に入れてもらい一通り目をやり、
「あら残念、ここじゃなかったのね」と呟いて、シーナの痕跡を探すスージー。
勿論ここにもシーナの魔道具が設置されている、微弱な魔力を発する銀製のブローチだ、この魔力を遮ると拠点に居るシーナへ警報として鳴る仕組みだ。
「!やっぱり、ラーナの部屋に来ましたね、お婆様」予想通りです!と言った感じのシーナだった。
しかもこの魔道具は一回発動すると魔力放出が止まるので追跡不能の優れ物だ、それが学園各所に150ヶ所以上仕掛けられているのだ。
「お婆様でもこの監視網から逃れられませんよ!」既に勝った気のシーナだが、そう上手くはいかない様子だ。
万全のはずがスージーはアッサリとブローチを見つけて手に取り、微笑む。
「まぁ可愛いブローチだこと、シーナは銀細工の才能があるのね?」
と、まだ見ぬ孫に思いを馳せる余裕があったのだ。
「さて、ドンドンと私へのプレゼントを見つけちゃいましょうね」
それから学園各所の銀のアクセサリーを次々と見つけるスージーだった。
最初は余裕綽々と構えていたシーナだが、80ヶ所目辺りの魔道具のアクセサリー奪取された辺りで慌て出す。
「ふえええ?何でぇ?何でお婆様はこんなに的確に魔道具を見つけられるのお?」
と泣きそうなシーナ。
理由は超単純、スージーは探知魔法を「銀」に絞っているからだ、娘のファニーから孫のシーナは白銀が好きと聞いていたので「銀」を辿るとシーナに行き着くと思っているのだ。
当然、ここまで来たらその事に気付いたシーナ、涙目で自分の周囲の銀製品を箱にしまって封印する、しかしこれでシーナの隠蔽魔法能力は半減したと言える。
1番強力な隠蔽魔法能力の銀仮面が使用不可になったのだから。
まだだ!まだ終わらんよ!とばかりに別の素材に隠蔽魔法の刻印を猛烈ダッシュで施すシーナ、銀仮面ほどでは無いが即興で魔道具を生み出したのだ!
その頃には、銀製のアクセサリーを全て回収し終えたスージーが食堂の机に戦利品を並べて紅茶を飲みながら優雅にアクセサリーを鑑賞していた。
「うふふ、シーナは大人っぽい物より可愛い物の方が好きなのね」
と涙目のシーナを尻目に楽しそうなスージー、もうこれ勝負着いたんじゃね?
しかし!シーナは諦めないのだ!
自分の限界を超えたスピードでこの短時間で様々な素材で隠蔽魔法能力を刻印した魔道具を20個も作ったのだ!
それを「えいや!」と転移陣で学園各所にばら撒く、しかし、これが悪手になった。
「うふふ、だいぶ絞れちゃったわ」当然ながらスージーは様々な探知魔法で捜索の網を張っていたのだ!
当然、転移陣の探知をしている、発信源から学園の1/5まで特定範囲が絞られる。
しかもこれでシーナの魔力波動パターンは完全にスージーに知られてしまう。
今までは漠然としていたのがシーナ個人の魔力パターンを完璧に特定したスージーだった。
少しして自分のミスに気が付いたシーナはもうワチャワチャだ、開始1時間弱で追い込まれてしまった。
「どうしよう?」と最後の悪あがきを真剣に考えるシーナ。
「うぬぬぬぬー」と自分の全ての能力を使い考えるシーナ。
何か?何かがあるはずだ!お前はそんな物なのか?シーナ。
「いや!こんなのもう無理ですよ!詰んでます!ゲームオーバーですよ!」
どうやらゲームオーバーらしい・・・
残念だシーナよ、お前では相手が悪過ぎたな。
こうして天龍レンヌにシーナより敗北の知らせが届き、「早っ!」とレンヌに大爆笑されたシーナでしたとさ。
しかーし、このまま座して死を待つ気は毛頭無し!
最後まで隠蔽魔法を駆使して隠れるのみ!拠点入り口も木や草を効果的に使い物理的に解り辛く作られているのだ!
銀製品以外の全ての装備を付けて最後は隠蔽魔法術式入りの野戦用の毛布で自分を包み粘るのみ!
と気合いを入れたシーナだが毛布の感触が気持ち良く5分で寝てしまう?!
何じゃい?そりゃあ!と思ったら野戦で速攻で仮眠出来る様にと睡眠魔法を組み込んだ事をテンパって忘れていたシーナ、それを作動させてしまった訳だ。
・・・そっすか、ゆっくりお休みおばかさん。
この睡眠が案外と切り札になる、意識を無くしたのでシーナの魔力の波動も穏やかになり加えて装備した各種魔道具の効果も加わり魔力的に限りなく無になったのだ。
「あら?これは困ったわ・・・寝ているのかしら?・・・ウフフ、ファニーと一緒だわ」と楽しそうに笑うスージー。
かつて幼い時のファニーも隠れながら寝てしまいスージーから逃げ切った事があったのだ、結局は物理的な捜索で見つかったのだが。
「では、祖母の直感を信じて探しましょうね」と地道に歩いて孫が隠れそうな所を探し始めるスージーだった。
1/5まで範囲が狭まったとは言え結構探すのは骨が折れるのだが、一つ一つ丁寧に探すスージー、本当に意味での「かくれんぼ」になったのだ。
探し始めて1時間、遂に初等部体育館裏手の小さな林の中にある秘密の入り口を見つけるスージー。
「シーナいるー?」と呼びながら入ると光を放つ魔石に照らされた10畳ばかりの部屋に術式の資料の紙や素材が散乱している中でスヤスヤと毛布に包まって寝る1人の黒髪の少女が居た。
起こさない様に静かに近づいて、ちょこんと、シーナの前に座り眠っている孫の顔を良く見る為に顔を覗きこむ・・・
「ラーナより目が少し垂れてるのね、耳はお父様に似てるわ、お口はラーナの方が少し小さいのかしら」と手を伸ばす。
優しく髪を撫でると「髪質は陛下に似て硬めなのね、やっぱりラーナと違うわね」
と祖母にしか解らないラーナとの違いを次々と見つける。
次は散乱している術式の走り書きしてある紙を取り、
「シーナは頑張り屋さんなのね」と祖母に全力で掛かって来てくれた孫の頑張りを愛おしく思うスージーだった。
スージー自身まさかこんなにシーナが粘るとは思って無かったのだ。
我が娘の王妃ファニーも負けず嫌いで根性の固まりだったか。シーナにはそれに劣らない根性を感じる。
「でも少し無理をし過ぎているわね」とスージーがシーナの頬をなでると、
「ふふくっひゃいれふ、おはあひゃま」といつもの様に何言ってるか分からない寝言を言うシーナ。
「よし!お婆様がシーナをヴィアール辺境伯領へ連れて行きましょう、
王女だの王太女だの周りの大人は騒ぎ過ぎです、この子はまだまだ羽を伸ばして飛び足りてませんね」
シーナをヴィアール辺境伯領へ拉致すると決めたスージー、生真面目なシーナはこのままだと潰れてしまうと思ったからだ。
ラーナは比較的楽観主義で精神力も非常に強いので大丈夫だがシーナはガラスの様な脆さが有ると感じたのだ、祖母として捨て置く訳には行かない。
「とりあえずは王城に帰って建国祭が終わってから手を回しましょう」
とシーナをヒョイと軽々とお姫様抱っこするスージー。
彼女も黙示録戦争で戦った双剣使いの勇者の1人だったのだ、その関係でファニーとヤニックの結婚が決まった裏話が有る。
孫をお姫様抱っこしてテクテクと帰路につくスージーを見た学園の門番にギョッとされて、「孫が寝てしまいました」と笑顔で答えて悠然と学園を去る、そろそろ日が傾き、空が茜色に染まる時間だ。
少し歩くとシーナがムニャムニャし出して、ほへーと目を開けた。
「おはようシーナ」と声を掛けるとシーナは寝ぼけて、
「おひゃようございますぅ、お婆様」と目をゴシゴシと擦る、子供っぽい仕草に思わず吹き出すスージー。
「あれえ?私、いつお婆様に見つかったのですか?」と、ようやく自分の状況を理解して不思議そうに首を傾げるシーナだった。
「ウフフ、詳しい事はお城に帰ってからですよ」とのスージーの言葉に前を見ると既に王城の裏門が見える所まで来ていたのだ。
「あっ!お婆様!凄かったです。完敗でした」と満面の笑顔で敗北宣言をする。
「ウフフ、そうですね、お婆様の完勝でしたね」と満面の笑顔で勝利宣言をする。
こうして一風変わった、祖母と孫の初対面は終わったのだった。
続きは新シリーズ「ヴィアール辺境伯領編」にて、
完成した閑話を投稿します^^
外伝の方にも何話か投稿して本編の方は7月頭くらいから再開して投稿間隔が開きますが続編を投稿して行きます
よろしくお願いします^^)/




