幻夢の銀仮面編 6話 「幻夢の銀仮面(ラーナ)の冒険 その2
ラーナの街中での散歩は続く、自分の足で歩きながら見る街は新鮮そのもので馬車の中から見るのと全然違う風景を写し出す。
誰もラーナを気にも留めない自分が街の風景の一部分なのだ。
「本当はシーナと歩きたかったなぁ」シーナと一緒ならもっと楽しかったのに、と思うラーナだったが仕方ない、姉を生け贄に捧げないと自分は王城から出る事すら叶わなかったのだから。
姉の犠牲を無駄にしない為にこの限られた時間を存分に楽しもうと決意するラーナだった。
大通りの店は粗方見終わったので少し小道に入るラーナ、普段なら絶対に出来ない行動に冒険者の気分をちょっとだけラーナは味わうのだった。
大通りの裏側は平民達の住宅街で大通りの雰囲気と違い生活感で溢れている、小道に入ってすぐに見慣れない食べ物を売ってる屋台を発見する、5、6人の女性が並んでるので変な物では無いのだろう、何やら美味しそうな香ばしい匂いもする。
「そう言えばお腹が空きましたね」起きて速攻で逃走したので何も食べてないラーナ、しかし先程のオレンジジュースと違い見た事も無い食べ物だ、しかし何事も経験と列に並び看板を見ると「卵パン」と書いてある。
「卵パンですか?サンドイッチではない様ですけど・・・」と屋台の中を覗くと男性が四角く焼いたパンにといた卵を塗り再度焼いている、「なるほど、卵焼きとパンの合体した食べ物なのですね?」と屋台の見学を続ける。
男性は手馴れた手付きでドンドンとパンを焼いて行く、この辺りでは人気商品なのだろう、何年も毎日毎日、1日に沢山作っているのか男性の動きに一切の無駄がない。
どうやら主に昼食用だったらしくお店も今から開店らしい、焼きたてを食べたくて開店前から女性が並んでいたのだ、出来上がった物から男性の奥様と思しき女性が紙に包み銀貨1枚とパンを交換して行く。
銀貨1枚だと500円相当だ日本だとマックの感覚だと思って良い、
ラーナも銀貨1枚渡しパンを受け取り近くのベンチに座り包みを開けると何とも良い匂いがする、焼きたてだからだ、意を決してパックンチョ・・・・・
「美味しいい!」初めて食べたそれは物凄く美味しかった。
とにかく熱いのだ、王城だと毒味が終える辺りで少し冷めてしまうので新鮮な熱さだ、何よりも味付けされた卵が美味しい、王侯貴族は卵は添え物なので余り凝った調理を卵にはしない。
この味は屋台の男性の研究の成果だろう、パンとの調和も素晴らしい、少食のラーナだったがコレはペロリと食べてしまった。
もう1個・・・と思い屋台を見るとやはり人気店だったのか既に30人以上の人の行列が出来ていてしまい、更に小道の奥から籠を持った大勢の人達が屋台を目指して歩いて来ている、また並ぶのはどうやら無理な様だ、「残念です」と諦めて小道の奥へと進むラーナだった。
奥に進むにつれていよいよ本格的な住宅街に入りめぼしい物がなくなってしまう、「あら?失敗しましたね」と大通りに戻ろうと引き返そうとすると泣いてる8歳くらいの男の子がラーナに向かって歩いて来た。
「どうかしましたか?」ラーナは膝をつき男の子に話し掛ける、弟のロミオの相手をずっとしているので男の子の扱いは慣れた物だ。
「おかーさんが帰って来ない」と男の子は泣きながらラーナに答える。
帰って来ないとは?と思いながら「お父様は?」と尋ねると「ずっとおかーさん探している」と男の子は答えた。
男の子の様子を見てこれは只事で無いと直感したラーナはとりあえず男の子の家に行って見る事にした、幼い子の足なので家は近く歩いて10分ほどで男の子の家に到着すると10名ほどの憲兵が集まって何か相談していた。
若い憲兵の1人が男の子の手を繋いで歩いているラーナを見つけるとこちらに走り寄ってきた。
「良かった!急に居なくなって心配したぞ!ん?おおっ、君は幻夢の銀仮面だね、応援に来てくれたのかい?」と尋ねて来た、どうやら先の工作員撲滅作戦で銀仮面に協力した憲兵の1人だったらしい。
「いえ、私は・・・」なんて言う訳もなく即断で「はい!一体何があったのですか?」と何が起きているか分からないが王族として民の一大事に遠慮なく介入する気満々のラーナだった。
「最近、若い女性が突然失踪する事件が多発しているんだ、我々は人身売買組織の関与を疑っている、この子の母親は昨日の朝、市場に買い物に出て帰って来てないんだよ・・・え?」おや?どうした事か説明をしている憲兵の様子がおかしくなって行く・・・
あっ!マズイ!ラーナは今、銀仮面を付けてない、認識阻害の術式は相手が人物を特定してしまうと効力を失ってしまう、この憲兵は王女ラーナを認識してしまった様だ、それに気がついたラーナはシレッと銀仮面を付けて、
「私は幻夢の銀仮面ですよ、この事は二人の内緒ですよ」と人差し指を若い憲兵の唇にチョンと押し当て口止めするラーナ、この辺りはシーナには無い小悪魔的な所だ。
若い憲兵は「はっはい!了解しました!」顔を真っ赤にして敬礼をする、「それで?続きをお願いします」と説明の続きを促す。
「はっ!それで現在は小隊25名で周囲の聞き込みを行なっています、現在までに分かっている情報では、行方不明の女性は市場からの帰り道で失踪しています、怪しいと思われるポイントは三ヶ所あり調査している最中です!」とさすがに若い憲兵の言葉使いが変わってしまったがこれは仕方ない、銀仮面は少し考えて、
「そのポイント3ヶ所に連れて行って下さい、私が遠視で探知して見ます」実はラーナは銀仮面の性能をシーナより熟知してしまっている、銀仮面の遠視能力は世界でも最高峰の術式が組み込まれており、男の子の生体反応から近親者の特定も出来るのだ。
加えて遠視自体の有効距離は半径5kmもあり、ポイントをずらせば王都全域の探知も可能だ、但し膨大な魔力消費に耐えられる者限定との注釈はつくが、ラーナの魔力なら全然問題無い、・・・これ、シーナ必要?ラーナを主人公にした方が作者的に楽・・・?
「私の存在意義わぁ?!」とシーナが泣くから止めておいて、男の子を近所のおばさんに預けて早速最初のポイントに移動する銀仮面と若い憲兵。
お母さんの買い物道なので家からすぐ側なのだ。
ポイント到着した銀仮面は遠視の魔法術式を起動させる、銀仮面の視点が探知モードへ変換されて膨大な数の生体反応が写し出される、通常の人間には処理し切れない情報量だが50倍の思考加速能力が発現したラーナにはなんて事ない。
天龍王アメデの加護により消滅したと思われた思考加速だが人間のラーナには、しっかりと残っていたのだ、ラーナは努力して再取得に成功している・・・だから本当にシーナ必要か?これ?
探知を終えて溜息をつく銀仮面、「ダメでした、次のポイントに向かいましょう」どうやら行方不明の女性は発見出来なかった様だ。
次のポイントに到着して遠視の術式を起動させるとおかしな反応を確認した、これは?・・・魔族?、いえ違いますね・・・人に化けている魔物?その反応に全探知波動をぶつけて見る、人間に見せる様に生体反応が精巧に擬装されているがやはり魔物の反応だ。
「ここより北北西1200m先に怪しい反応を確認しました!すぐ追跡しましょう!」と銀仮面は走り出して憲兵が慌ててそれを追った、反応があった住宅街の奥の人気の少ない公園の脇にラーナと同い年くらいだが少し幼い印象がする可愛いらしい顔立ちの少女がいた。
銀仮面と憲兵は200mほど離れた場所から彼女の監視を始める、周囲には行方不明の女性の反応はない、近づいたので彼女の正体がハッキリと分かる、「バンパイヤ」吸血鬼の女性だ、人間とは敵対してはいないが味方でも無い、少量だが血液を奪われるからだ。
ピアツェンツェア王国ではバンパイヤの定住は許可されているが治安維持の観点から吸血鬼の吸血活動は認められていない。
普通に生活する分には法的に問題は無いので彼女がここにいても別段に問題は無いのだが何故こんな人気の無い所で佇んでいるか疑念が発生する。
彼女は何かを監視してる様子だ、ずっと公園そばの建物を睨んでいる。
魔法技術にかけては世界最高水準のはずのバンパイヤな彼女だが銀仮面の探知魔法に全く気がついていない、体の隅々まで調べられているのにだ。
罠かな?と思った銀仮面は試しに精神干渉の魔法をかけて見る「眠れ!」と、こんな真似をされたらさすがに何か反応があるだろうと、しかし彼女は思いがけ無い反応をする。
パタリ・・・と彼女は倒れた・・・
「えっ?!」と銀仮面は思わず声に出す、警戒しながら近づいて覗きこんで見ると・・・完全に熟睡している・・・.精神干渉魔法をモロに受けたのだ、いっそ清々しいまでに見事なほどに・・・
幸せそうに熟睡するバンパイヤの少女を見ながら銀仮面は思った
「この子どうしましょう?」




